2018年4月2日
独言居士の戯言(第40号)
北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹
平成から「新元号」への転換、どんな時代になるのだろうか
昨日から新年度に入ったわけだが、変則的だが平成来年5月1日には新しい元号に替わることになる。思えば、昭和から平成への転換した1989年は、バブル経済の絶頂期であり、デフレ経済への突入となる分水嶺の年となっている。年末の大納会で付けた日経平均株価38,915円という水準は、未だに超える事のないバブルの象徴的株価として今日まで語り継がれている。国際的には6月4日に中国で天安門事件が起き、11月9~10日はベルリンの壁が崩壊し、1991年のソ連邦の崩壊にまで至ったきっかけとなったわけだ。まさに、激動で以て平成を迎えたことになる。
今から振り返ってみると、冷戦の崩壊は自由民主主義の勝利だとして「歴史の終焉」という言葉に酔いしれていたのかもしれない。その後の世界史の動きを見る限り、「歴史の終焉」どころか核保有大国間の対立という「歴史の再現」が起こりつつある。アメリカを中心とした自由と民主主義の旗は、トランプ政権の下で色褪せ始め、経済大国として登場した共産党1党支配の中国や、崩壊したソ連邦の後を継いだロシアはプーチン独裁体制とも形容される下で、欧米各国との間で政治的対立を深めつつあり、双方が外交官の追放という外交的報復競争に至っている。どんな結末を迎えることになるのか、まことに激動する世界が眼前に展開されている。
来年5月以降の新元号の下で、どんな日本になっていくのか、世界はどんな展開を示していくのか、全く混沌とした時代へと漂流し始めたのかもしれない。こうした時代にこそ、しっかりとした歴史認識の視座を持っていないと、時代の流れに翻弄され続けるだけだ。どんな?元号?になるのか、分からないが、頭文字がM,T,S,Hにはしないだろうと言われている。それぞれ明治、大正、昭和、平成の頭文字のアルファベットで、様々な文書で主として生年月日を記載する際に使われる事があるからだという。でも、さすがに「明治は遠くなりにけり」で、Mが頭文字になってもそろそろ良い頃かもしれない。いっそのこと、元号を廃止する事にならないだろうか。西暦と元号を使い分ける事は、文書管理などで苦労させられることが多いのだが、天皇制に関わるだけに、もちろん簡単な事ではないのだろう。案外、時代区分をする時に役に立つのかもしれないが、国際的汎用性に欠けている事は確かだ。
国会での佐川前局長証人喚問、あまりにも酷い証言拒否の連発へ
さて、先週27日の佐川前理財局長の国会での証人喚問は、前号で予想した通り、肝腎なことは「刑事訴追される可能性があるので証言を拒否したい」という答弁の連発に終始し、一番知りたい誰が、何時、何のために改竄をしたのか、全く明らかになることなく終わってしまった。ただ、政治家・昭恵夫人・官邸関係者の関与については、自分が色々と勉強するかぎり、きっぱりと「なかった」と明言した事と好対照だった。ひとえに財務省内の一局にすぎない理財局のなかだけで責任を取り、財務省の政治的責任者である麻生財務大臣ですらその責任を認めようとしなかった誰も、こんな事は想定していない事は明らかだろう。恐らく、官邸はもちろん、自民党側とも綿密に連携しながら証言内容の確定を進めたことは想像に難くない。
政治家や昭恵夫人・官邸の関与が無いと断定するのに、改竄前文書への印象すら拒否するダブルスタンダード
改竄前の文章を見た時、昭恵夫人の名前があった事を見た時の印象を聞かれても、訴追されるからと言って拒否していながら、総理や明恵夫人、政治家や官邸からの関与がなかったという事だけは明言するというダブルスタンダードには、大問題だと思わざるを得ない。それだけに野党や国民の側は、問題を隠蔽する為の証言でしかなかったと思わざるを得ないわけだ。
本予算が通ったことにより、今後、この森友問題は国会論戦の舞台からはやや後景に退いて行くように見えるのだが、誰しもが総理や昭恵夫人、さらには総理周りの関係者の有形・無形の関与や忖度があったという印象はぬぐえない。それだけに、加計問題も含めて自分のお友達に対して政治的便宜を図る安倍政治には、強い不信感を持ち続けて行くに違いない。自民党内でも、心ある政治家は「佐川氏だけに罪をなすりつけて政治の責任を問われないのはおかしい」と思ったはずであり、これからの政局に大きなダメージを与え続けて行くに違いない。ここは民主主義国家であり、今後の国民の政治判断の行方が注目される。
麻生財務大臣の新聞批判、あまりにも酷い発言内容と態度
そうした中で、国会での質疑で早くも麻生財務大臣のトンでも発言が物議を醸している。29日、参議院の財政金融委員会で、「森友の方が、TPPより重大だと考えているのが日本の新聞のレベル」と発言したり、「TPPについては一行も取り上げていない」等という間違った発言をはじめ、新聞に対して全面的に批判する発言をしでかしたのである。さすがに翌日反省の弁を述べたようだが、どう見ても心底からの反省ではなく、自分が森友問題の財務大臣としての責任者である自覚など全く感ぜられない。これまでの麻生財務大臣は、国会での答弁だけでなく、記者会見などでも真面目さに欠け、かつ高飛車な態度なども目に余るものがあるだけに、即刻辞任されるのが一番の処し方だと思われる。消えかかった森友問題の火が、再び点火するのではないか、野党だけでなく与党側からも不満が聞こえてきそうな今日この頃ではある。
NHK幹部が番組内容への露骨な介入、という「情報」、民放と比較して「さもありなん」が常識では!?
さらに、驚くべき情報が入ってきた。日刊現代の3月31日付の報道によれば、NHKの内部の通報者からと見られるタレコミが共産党議員の事務所に届いたとの事だ。それによると、NHKの幹部が「ニュース7(N7)」「ニュースウオッチ9(N9)」「おはよう日本」の番組責任者に対して、森友問題の伝え方について連日、細かく指導しているとのことだ。その内容について、
<トップニュースで伝えるな>
<トップでも仕方がないが、放送尺は3分以内に>
<昭恵さんの映像は使うな>
<前川前文科事務次官の講演内容と連続して伝えるな>
こうした点について、実際の報道を検証しているが、22日以降変化が表れたと見ている。さらに、国際放送についても官邸から注文がついているとのタレこみもあるという。実際にはどんな事があったのか、確かな証拠は未だ無いものの、最近のNHKの報道ぶりについては、官邸や自民党への「忖度」があるのではないか、と思えてならない。「報道ステーション」や「ニュース23」等と比較してみてそう感ずるのだが、思い過ごしだろうか。NHK予算を国会で承認する時に、官邸や政権与党の無言の圧力を意識するのだろう。今の政治状況の下では、政権交代が現実性を持てないだけに、報道面から民主主義が形骸化する危険性がますます強まろうとしている。それにしても、これから提出されると言われている放送法改正問題が、大変気になるところではある。
人口減少社会の衝撃、2045年の人口推計では大都市以外は激減へ
それにしても、これから続く少子・高齢化と人口減少に関する新聞報道が、一面トップを大きく飾るようになってきた。3月31日付の朝日新聞と私の住んでいる北海道新聞は、厚労省の国立社会保障・人口問題研究所が30日発表した全国の地域別に見た2045年人口推計を取り上げている。2015年の国勢調査をもとに推計したものだという。
朝日の見出しは「75歳以上43道府県で2割超 2045年推計人口 社会保障に影響」とある。総人口で減少しないのは東京だけで、後の道府県は人口がすべて減る。一番減少するのは秋田県で、実に4割以上減少する。
私の住んでいる北海道では、総人口538万人の実に138万人、率にして25%減少して400万人にまで落ち込むことになるとみている。さらに良く数値を見てみると、札幌市は2015年には約195万人だったものが、2045年には180万人に減少するものの、道内での減少率は最も少なく、高齢化しながら都市部に人口が集中していることが解る。
人口減少社会は、社会保障だけでなく街づくりも深刻な問題に
問題は、社会保障の在り方だけでなく、どのような街づくりをしていけば良いのか、という問題にもかかわってくる。高度成長時代やバブル崩壊後に公共事業を拡大してきたインフラが老朽化するわけで、その維持・補修だけでも大変な財源が必要になってくる。人口増加や経済成長さらには税収増を前提にしてきた事を前提に作り上げた街づくりから、人口減少や低成長、税収の増加が見込めない高齢社会へと大きく転換するわけで、そのような転換を真剣に考えざるを得なくなってきたと言えよう。ちょうど京都大学の諸冨徹教授が、今年になって『人口減少時代の都市 成熟型のまちづくりへ』(中公新書)を出版されている。その問題意識は、まさにその点にあるわけで、これから熟読玩味してみたい。