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2018年6月25日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第52号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

参議院選挙制度の改悪、実に筋悪く、歴史に禍根を残すだけだ

国会は、7月22日まで延長された。政府・与党が重要法案とする、働き方改革法案やカジノ解禁に向けたIR法案など、多くの法案が成立していないなかで32日間の延長を議決した。いまの衆参の議席数からすれば、国会の会期の延長など、それこそ朝飯前なのだろう、簡単に議決・延長されたわけだ。

それにしても、何とも理解できないのが、参議院の選挙制度の改悪である。島根県と鳥取県、高知県と徳島県が1票の格差是正に伴い合区され、現職でありながら各県から選出されない選挙区が出ることとなる。そこで選挙区からはみ出てしまった2名の現職を抱える自民党は,選に漏れた現職議員を比例代表に回し、比例代表の1~2位に拘束名簿制を導入して救済しようと考えてきたわけだ。

選挙制度は民主主義の在り方を大きく規定する、無理筋は中止を

戦後憲法の下で、参議院の比例代表選挙制度は幾多の変遷があったが、2000年の公職選挙法の改正で、それまでの比例代表が拘束名簿であったものを、今の非拘束名簿方式に切り替えたのは自民党である。それを自分たちの政党の利害得失によって部分的にせよ、あるいは総ての比例議席にせよ、再び拘束名簿を導入する改革を強引に通そうとしているわけだ。これが民主主義の根幹をなす参議院の選挙制度なのか、狙いが狙いだけに、とても認められるものではない。そのために、比例区の定数を2名増員(半数改選のため全体で4名増)するという余りにも露骨な党利・党略になっている。埼玉選挙区の定数1名増員も含め、自民党だけでなく公明党も賛成に回っており、今のままでは来年の選挙をにらんで強行して行くに違いない。各県から代表者を出したいという考え方は理解できないわけではないが、政党が離散・集合する事が多くなった今日、選挙区が競合する衆議院では、比例区と選挙区で棲み分けしてきたことが多く、参議院では例えば3年に1回ずつ合併区の両県で交互に候補者を変えて行くことも出来るわけで、どう考えても無理筋だと言えよう。

どだい、今の選挙区の定数では、参議院選挙区の1票の格差が2倍以下にならないわけで、抜本的に選挙制度の改革が求められていることは間違いない。なぜ3倍以内なら合憲なのか、最高裁の判断の根拠もあやふやだ。衆議院のブロック制で比例代表選挙が実施されているわけで、選挙区選挙を廃止し、衆議院のブロック単位で参議院議員を選出して行く案も民主党時代に出してきた。

世界の2院政、参議院ほど権限の強い国は稀、筋を通すべきでは

少なくとも、今の日本の国会では、総理大臣の選出と予算の議決などは衆議院が優越するものの、法案の採決や人事案件の承認などは、衆参でほぼ同等の権限を持っている。世界の2院政の中でも強力な権限が付与されているわけで、それだけに参議院の選挙制度を国民の代表にふさわしい筋の通った者にしていかなければならない事は言うまでもあるまい。法治国家日本の基本は、やはり自分たちの代表である国会議員選出の「1票の価値の平等」であり、3倍以内なら合憲とする根拠はどこにもない。衆議院の2倍以内も、本来は1倍に限りなく近づけるべきだろう。

議院内閣制のお手本、イギリスでも貴族院の機能強化が進む

この参議院の選挙制度の在り方については、今後の政治の動きを考えた時極めて重要な問題を秘めている。最近、高安健将成蹊大学教授の書かれた『議院内閣制—-変貌する英国モデル』(中公新書2018年1月刊)を読みながら、議院内閣制のモデルと思われていたイギリスにおいて、国民の政治不信にたいして政党側からの改革が進められ始めており、選挙で選ばれない貴族院の改革も進められつつある。その改革は、むしろ日本の参議院のように内閣に対するコントロールを強化すべきである、とされ始めているようだ。

日本の場合、選挙によって選出される参議院の存在は、今の安倍一強といわれる自民・公明政権にとって、衆議院と同様過半数を大きく超える議席を確保できているが故に安定政権足り得ているのだが、参議院選挙で過半数を失えば「ねじれ国会」となり、議会運営が極めて難しくなる。それだけに参議院の選挙制度の改革は重要である。今回の自民党内のご都合主義で選挙制度を変えたことは、国民をあまりにも舐めきっていないか、今後の議会制民主主義の行方にとって大きな禍根を残すものとなるに違いない。

政権交代と2大政党制の存在が必要な議院内閣制、日本はどうなる

それにしても、高安教授のこの著書を読みながら、政権交代と2大政党制がイギリスのモデルでは十分に機能する事が必要になっているし、イギリスにおいては、政党に対する国民の不信があるが故に、政権の座から引きずり降ろされる危険を回避すべく、様々な改革が進められているようだ。日本の場合、自民党・公明党の連立政権に対抗する野党側の力が余りにも弱すぎるだけに、イギリス型の議院内閣制がほとんど機能しなくなっている。

どのように日本の議会制民主主義を改革していくべきなのか、今のままでは自民・公明政権の実質的な「独裁」にちかい政権が継続して行くだけで、国民の政治不信は解消どころか、どこかで民主主義が実質的に破滅して行く危険性すら出てきてもおかしくない。今回の参議院の選挙制度の改悪を見る限り、政権を失う危険性など全く意に介さないでいる姿に唖然とせざるをえないのは、小生だけだろうか。もう少しイギリスの議会制度民主主義の改革の動きを日本の与野党政治家は注目し、学習する必要がありそうだ。

朝日新聞「平成経済」第4部「老いる国 縮む社会」4回目のインタビュー記事、
野田佳彦元総理の発言に注目

さて、朝日新聞の日曜日に連載されている「平成経済」「第4部 老いる国 縮む社会」の4回目の記事は、3人の政策決定の渦中にいた経験者に「民主主義下の財政再建は」と問うている。今回は、インタビュー記事であり、担当はこれまで同様大日向寛文氏と今回新しく古屋聡一氏の二人である。3人の経験者は野田佳彦元総理、武藤敏郎元財務事務次官、作家で元通産官僚の堺屋太一氏である。

この中で注目したのはやはり野田元総理大臣で、民主党政権がマニフェスト財源15,7兆円は、増税なしでも創りだせると豪語したものの、結局財源問題での行きづまりに直面せざるを得なかった。参議院選挙に向けて、菅内閣は消費税増税を打ち出し敗北する。その後を受けた野田総理は、自民・公明両党と共に2012年8月に「三党合意」をまとめ上げ、消費税率の5%から2段階で10%へ引き上げを決める。野田総理は、その引き上げ分を社会保障4経費以外には使わない、という方向を打ち出した際の責任者である。

「三党合意」の取りまとめ、歴史的な意義を持つ快挙だ

野田総理は、2009年の総選挙でのマニフェストについては、選挙戦でも忠実に民主党の方針に従って増税の必要性を否定されていたわけだが、予算編成を担当する副大臣・財務大臣としてその困難さを痛感されたこともあるのだろう、消費税の引き上げに向けて財務大臣から総理大臣へと、ぶれることなく突き進んで行かれた方である。一度舵を負担増へと切ってしまえば、小沢一郎氏のグループの抵抗などを乗り切りながら、歴史的な「三党合意」を結実させた力は高く評価されてしかるべきだと思う。

谷垣総裁時代に解散・総選挙を実施する事を予定、突然の韓国との竹島問題で遅れ、誠に残念な結果へ

このインタビュー記事で注目したのは、野田総理が2012年8月8日、「近いうちに解散する」と自民党谷垣総裁に約束し、2日後に消費増税法案を国会で成立させるに至ったのだ。「近いうちとは何時なのか」と問われ続けていたのだが、韓国の李明博大統領が竹島に上陸するという出来事への対応に追われ、解散時期が自民党総裁選挙前ではなく、後になってしまったことを上げておられる。野田元総理は、「近いうち」とは、通常国会中で自民党総裁選前を予定していたわけで、もしそれが実現していたら、谷垣総裁と野田総理の信頼関係の下で、社会保障と消費税の引き上げが順調に進められ、今頃は、次の消費税率の引き上げに向けた三党間の話し合いが進められていたに違いない。

谷垣総裁が継続していたら、三党合意は更なる進展が進めたはず

もちろん、歴史には「もし」「たら」「れば」はご法度なのかもしれないが、今の安倍政権のように消費税の引き上げで合意していた政党の責任者が、2度にわたる実施の延期や使い方の変更など、当初の方針とは異なる方針へ転換する際、何の事前調整もなく進められることは無かっただろう。谷垣総裁と野田元総理の約束事が守られ続けなかった事の政治的なダメージは、やがて何時かの時点で噴き上がるに違いない。このインタビューの中で、次の野田元総理の最後の発言は、なかなかの至言だといえよう。

「魂が分かっていない人がトップになると、苦労して作った物が壊れていきます」

このまま、安倍総理が三選され、国の財政再建などを極めて安直に考える政治家がリーダーになる国は、やがて破滅への路を歩み続けるに違いない。その時、一番苦労させられるのが、普通の国民であることを深く自覚しておく必要がある。


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