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労福協 活動レポート

2019年2月18日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第83号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

「統計偽装疑惑」問題の予算委員会集中審議、徹底解明を

国会では依然として毎月勤労統計問題を巡って、野党側は安倍政権による統計データへの介入問題疑惑を取り上げ、厳しく追及している。いろいろ経過を辿って行くと、2015年11月4日に開催された経済財政諮問会議の場でのやり取りにまで行き着く。その時の出席者の発言内容について、朝日新聞2月17日付3面「総合欄」で要領よく報道されている。

そこでは、2015年1月厚労省に中規模事業所の調査対象を全数入れ替えたが、その結果はデータが低く出たため、過去のデータを実勢に合わせる下方修正を実施した。こうしたサンプル入れ替えに伴う低下は、よくあることでその都度修正していたようだ。

15年1月の入れ替え時も下方修正になり、民主党政権時代の11年水準を上回ったはずの14年賃金指数が、逆に「下回る」事になってしまった。11月に開催された経済財政諮問会議の場でこの問題が論議され、黒田日銀総裁が口火を切り「直近の名目賃金のマイナスは統計上のサンプル要因が影響。実勢は緩やかに上昇していると考える」と発言し、麻生財務大臣や高市早苗総務大臣、甘利経済再生大臣なども続けて発言している。

経済財政諮問会議の方針と統計委員会での議論、食い違いは明白

こうした指摘を受けた総務省統計委員長の西村清彦氏は、「11月の諮問委員会の議論を重く受け止める」と12月11日開催された統計委部会で対応を指示したが、その際の西村委員長の対応方針は明確ではない。ただ、厚生労働省の担当課長は、「全数入れ替え」から「部分入れ替え」にして数値変動を縮小させ、「過去の増減率が変わるのは望ましくない。各方面から意見を頂いた」と修正をやめる方針も示したとのことだ。おそらく統計委員長もそうした修正をすることに同意していたのだろうか。

それに対して他の統計委員は「(数値が低く出る)新サンプルの方が真の値に近い。入れ替えのたびに(真の値と)乖離する」と指摘し、担当課長も認めたが、「注釈で注意喚起する」として方針を変えなかった。かくして統計委員会は翌16年、部分入れ替え導入を盛り込んだ報告書を作成。勤労統計は18年1月、この報告書通りに部分入れ替えを導入し過去データの修正もやめたことで、その後の賃金の伸びが上振れする要因の一つになったと報道している。

国際社会からの信認にまで影響するだけに、確りとした解明を

こうした経過を振り返る時、安倍政権の成果として労働者の賃金が上がっているという結果が、サンプル入れ替えで民主党政権時代よりも下げなければならない修正を迫られるという事態に直面して、「とても容認できない」というバイアスや偏見が投入されているのではないか、と思えてならない。この点については、本日18日に開催される予算委員会集中審議の場でより明確になるものと思われるが、安倍政権への「忖度」が黒田日銀総裁や西村統計委員長にまで広がっていない事を祈るばかりである。日本社会の国際的な信認にまで影響するだけに、国会の場でしっかりと明らかにして欲しい。

野口悠紀雄氏の『ダイヤモンドオンライン』論文の指摘に納得

こうした生々しい国会でのやり取りとは別に、「ダイヤモンドオンライン」2月14日付の、野口悠紀雄早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問の書かれた「『総雇用者所得が増えた』のは女性や非正規の就労数が増えたから。賃金は低下した」において、今国会で問題になっている毎月勤労統計の論争を別の角度から分析されていて興味深い。

国会の予算委員会では、野党側が「実質賃金の伸びがマイナスだから、アベノミクスは失敗した」と批判しているのに対して、安倍総理は「総雇用者所得が増えているから、アベノミクスは効果を上げている」と主張している。野口顧問は、結論的として総雇用者所得が2018年に急に増えたことは事実であるが、しかし、それは女性の非正規就業者数が増えたからで、それによって平均賃金水準は押し下げられ、安倍総理の言う「総雇用者所得の増加は、望ましい結果を持たたらさなかった」事になると指摘されている。さらに、「なおこれは、配偶者特別控除が拡大された事の影響と考えられる。したがって、1回限りの効果だ」と断言される。

以下、雇用統計や賃金統計などを駆使されてその点を実証されており、実に納得的である。なお、就業者数の増加に於いて、65歳以上の高齢者の伸びも2018年はもとよりここ数年増加し続けているが、2018年に限れば女性の伸びが突然大きく増加していることは間違いない。今後の予算委員会での質疑に於いて、野口顧問の提起された事実を基に、野党側も政府も是非とも参考にして欲しいと思う。

配偶者特別控除の改正で「103万の壁」から「150万の壁」へ、
働き方の改革にまで大きく影響した制度改正に注目

私が特に興味深く感じたのは、「配偶者特別控除の拡大」という税制改正によって、それまで「103万円の壁」といわれていた専業「主婦」のパート労働のあり方が、今度の改正によって「150万円の壁」へと引き上げられたわけで、その結果が女性の非正規就労者数の増大となって顕在化したわけだ。わずか1つの税制改正が、このような多大な効果をもたらすわけで、今必要なことは「150万円の壁」をなくして、非正規労働者から正規労働者へと転換させていく事なのではなかろうか。

もう一つの「130万円」の壁、社会保険制度の専業主「婦」制度だ

他方、この論文では指摘されていないもう一つの壁がある。それは、年金や医療と言った公的社会保険制度において、配偶者として保険料の支払いを免除される専業主「婦」の130万円の壁があるわけで、この問題の解決も同時に進めなければ、大きな効果が生まれてこない事にも注意すべきだろう。

労働力不足が叫ばれて外国人労働者の拡大にまで踏み込もうとしている日本において、高度成長期の前提となっている働き方を前提とした専業「主婦」優遇税制が存在することで、労働時間を自ら制限してしまうことは実に残念な事であり、正規労働者化して労働条件の引き上げを勝ち取ることの重要性を指摘しておきたい。

最低賃金の底上げを図っても、「壁」に阻まれて働き方の制限へ

ちなみに、デビット・アトキンソン氏が指摘する「最低賃金の引き上げ」ではあるが、「150万円の壁」が残存していれば、賃金単価の引き上げは就労時間の短縮をもたらす可能性もあるわけで、最低賃金の引き上げが日本の労働者の生活向上と日本経済の需要不足を解消していく為にも、所得税の配偶者控除・特別控除の大改革が必要なのだ。「働き方改革」において、このような税制を残したままでは「改革」にはならない事をしっかりと認識する必要がある。

世界経済は変調、米中のバブルの崩壊前夜という中前忠氏の警告

世界経済は、明らかに変調をきたし始めているようだ。とりわけ、経済大国第1位のアメリカと第2位中国がおかしくなり始めており、リーマンショック以来、比較的順調に推移してきた世界経済に暗雲が漂い始めている。

中前国際研究所の中前忠代表が書かれた『家計ファースト』(日本経済新聞社刊2019年1月)では、「3つのバブル」の崩壊が近付いていると警鐘を鳴らされている。詳しくは、『家計ファースト』を直接読んでほしいのだが、アメリカのバブルはリーマンショック以降進められた金融緩和政策によって、再び次のバブルを用意したことに起因する。

アメリカも「企業ファースト」になっていて、資産バブル崩壊か

アメリカ経済も、経済成長の成果は企業利益の増大となって経営者や株主に多く還元される「企業ファースト」になっている事を指摘する。労働者の賃金水準は上がらないのに、株式など資産価格の上昇や各種消費者ローン市場の拡大によって景気の上昇が進められたものの、FRBの資産圧縮や利上げの継続によって景気が落ち込み始め、資産バブルがはじけると予想されている。特に、「可処分所得に対する純資産の割合」が、リーマンショック時は669%であったのだが、最近では692%へと過去最高値を示しており、金融緩和政策による家計資産はバブル状態で、何時はじけてもおかしくないと見ておられる。

中国は、成長率低下、就業人口減の下、経常収支赤字で外貨不足へ

中国についても、2月17日付の日本経済新聞一面で「中国経済 ドル調達苦戦」の表題にあるように、国際収支の黒字が減少し始め、外貨の調達にまで支障がきたし始めている。そうした中で、何と就業人口が減り始め、成長率が急速に落ち込み、膨張した借入の返済ができなくなる企業のデフォルトが多発しており、社債の発行金利の上昇はもとより資金繰りの目途がつかない事態が多発しているようだ。

中国の場合、各種工業製品を大量に生産し過ぎており、セメントや鉄鋼などでは世界市場の過半数を大きく超える過剰生産設備・能力にあえぎ始めている。それだけに、低成長の下で中国の工業製品バブルの崩壊も時間の問題ではないか、と予測されている。

アメリカと中国、貿易戦争をしている場合なのか、大波乱の予兆

こうした米中の経済大国のバブル崩壊への足音の下で、貿易の激突がどのように進むのか、今年は経済の大波乱の年になるのかもしれない。トランプと習近平の対立は、大統領選挙を控えたトランプの方が、2期10年という任期を撤廃した習近平よりも不利な状況であることは間違いないのだが、経済的な落ち込み方如何によっては中国国内の大混乱を招くことに警戒の目を持つ必要がありそうだ。


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