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労福協 活動レポート

2019年2月25日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第84号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

黒田日銀の異次元緩和政策は、大企業と株主の利益に貢献しただけ

日銀の大規模な金融緩和が始まって、早くも6年近く経過しようとしている。当初、2年で2倍のマネタリーベース拡大によって、2%の消費者物価引き上げを実現するという目標は、その後の追加施策が在りながら、一向に実現する気配がない。テレビなどで見る2期目に入った黒田総裁の表情も、心なしか精彩を欠いているようだ。アベノミクスの第一の矢として進められてきた金融緩和について、結果的に円安による輸出大企業の利益拡大と、株価や地価といった資産価格の上昇にはつながったものの、物価は0~1%の間を上下するだけで、一向に2%への着地が見えてこない。

何時までこうした金融緩和や資産買い入れを継続するのか、多くの国民の批判や不満が投げかけられている。2%が国際的なスタンダードだと総裁は主張するのだが、果たして日本で2%が妥当なのかどうか、そろそろ再検討すべき時ではないだろうか。労働力不足に見られるように、経済は絶好調なのであり、2%の物価上昇率に固執すれば、日本経済の安定に支障すら出かねなくなっている。

特に、安倍政権が進める財政赤字の拡大について、日銀が大量に買い入れることによって長期金利はゼロ近くで推移し、辛うじて金利上昇による財政赤字が発散する事を阻止しているわけで、政府の財政ファイナンスの役割にしかなっていない、と言った批判が強くなっている。

何時まで2%に拘泥するのか、黒田日銀総裁のインタビューを読んで

そうした中で、朝日新聞23日朝刊の「オピニオン&フォーラム」欄で、かなり長いインタビュー記事「異次元緩和何処へ行く」が掲載されていた。インタビューワーは丸石伸一東京本社経済部長である。黒田総裁が言いたい事は、2つの小見出しに要約されていて、「順調に経済成長 遅れは事実だが 目標を達成できる」「2%は世界標準 副作用に注意し 粘り強く続ける」ということなのだろう。

白川総裁時代の終わりを前にした2013年1月22日、日銀が政府と結んだ協定(アコード)には、インフレ目標2%を目標とすることは明記されていたが、政府側は「財政の持続可能性について責任を持って改革を進めて行くこと」も約束していたわけで、財政再建の第一歩となるプライマリー黒字の達成時期を、2020年から25年まで勝手に伸ばしている安倍政権の責任こそ厳しく批判するべきなのだろう。というより、日銀が大量の国債を購入する事により長期金利がゼロまで下げられ、財政赤字を拡大することには何の痛痒も感じない条件を創りだしていることの責任こそ問われるべきだろう。

これだけ2%達成に向けた金融緩和が続けられても実現できないわけで、人口が増加し経済成長率が高まっている時代ならいざ知らず、成熟化した経済の下、需要不足と供給過剰が構造化した日本である。その需給ギャップが続く下、人口減少時代で自然成長率が低下している下では、金融緩和によるマネタリーベースの増加は日銀当座預金勘定の増加となるだけで、経済の良循環をもたらさなくなっているのではないか。

米欧の経験ではなく、日本の実践経験こそパイオニアなのだ

白川前総裁は、最新の著書『中央銀行』のなかで、日銀が世界で最も早くから金融緩和政策を取り続けてきたにもかかわらず、なかなか物価上昇に至らなかったことを指摘され、先進国(特にアメリカ)で実現できたからといって、人口減少期に入った日本で「貨幣数量説」が機械的に適用できない事を自らの実践の中から学ばれている。それだけに、2%のインフレ実現に向けて、更なる金融緩和策を強化しようとしている事は、日本の経済・金融・財政を持続可能なものからますます遠ざけてしまう危険性を指摘せざるを得ない。もはや、2%にこだわることなく、金利という経済の体温計が有効に機能するような正常な金融政策への復帰を強く望みたいものである。

「薔薇マークキャンペーン」にも悪用される国債の日銀買取策

注目すべきは、こうした日銀の異次元緩和政策がもたらしたものに、政府が財政赤字をもっと増やしたとしても、日銀がそれを買い取れば政府・日銀という統合政府で見たら財政赤字は問題にならない、という見方が安倍政権寄りの高橋洋一氏等だけでなく、むしろ反安倍政権側に立ってきた人たちに広がり始めてきているのだ。それが、「薔薇マークキャンペーン」と呼ばれる運動で、今年に入って経済学者の松尾匡立命館大学教授が代表呼びかけ人になっている。今年の統一自治体選挙と参議院選挙に向けて、立候補予定者に「反緊縮の経済政策」を提起し、趣旨に賛成する候補者を「薔薇マーク」に認定するキャンペーンである。

松尾匡教授、消費税増税ではなく5%へ減税など「反緊縮の経済政策」を候補者に提示、
薔薇マークを付けた候補者支援の呼びかけへ

1月5日付の「趣意書」には、短期の経済政策として「需要」の側からみた経済成長が求められ、不況から脱却するため政府が積極財政を進めると同時に再分配政策と一体で市場に介入すべきだと主張される。その際、消費税の引き上げはデフレ不況の下では消費にブレーキをかけ景気の悪化をもたらすとともに貧困層を直撃する。たから「薔薇マークキャンペーン」は消費税増税に反対し、逆に景気刺激策として5%への減税を提起する。

もちろん、法人税や富裕層増税は主張しているのだが、それが実現するまでは社会保障や教育の充実等に必要な財源は、「国債発行」に頼ろうとしている。つまり、「財政規律」なんか問題ではなく「反緊縮」の経済政策を取ることが安倍政権への対抗策として必要なのだ、という主張だ。そのような主張ができるのも、一時的にせよ国債発行しても日銀が買い取れば財政破綻することなく経済が成長でき、その成長による正規雇用増加などによる増税によって歳入を確保できるというもののようだ。

何やら民主党時代のマニフェスト、16.8兆円財源を思い出す

なにやら、民主党政権時代の「マニフェスト財源16.8兆円は無駄を省いたら捻出できる」に近い妄想に思えてくる。だが、選挙で増税を訴えることができにくい政治家が、喜んで飛びつきそうな公約を並べており、とてもついていけそうにない。はたして、こうした「薔薇マークキャンペーン」にたいして、野党側はどのような対処していくのだろうか。さらには、日銀の進めてきた異次元の金融緩和政策の実践が、こうした誤った経済政策に適用されようとしている事に、何とも薄気味悪さを感ずるのは小生だけであろうか。

世界的な「反緊縮の経済政策」の「政策思想」は本物か、
権丈教授の「手にする学問が異なれば、政策も異なる」考えに注目

アメリカの民主党のサンダース上院議員は、ふたたび大統領候補に立候補することを明言している。さらに、昨年の中間選挙で当選したオカシオ・コルテス下院議員も「反緊縮の経済政策」を打ち出したと報ぜられている。世界的に進むこうした動きに対して、今求められる経済政策は何なのか、しっかりとした「政策思想」が必要になっているのだと思う。慶應義塾大学の権丈善一教授が指摘されるように、「手にする学問が違えば、政策も異なる」のであり、本当に国民が必要としている経済政策が何なのか、これからもしっかりと主張していきたい。

NHK第10回日本人の意識調査の結果について、速報を読んで

勤労統計の問題が政局を揺るがす大問題になりつつある中、5年に一度NHKが実施する「第10回『日本人の意識』調査」の結果が1月7日公表された。最初の調査は、オイルショックに見舞われた高度成長の曲がり角でもあった1973年6月、以来45年間の国民の意識を、原則として同じ設問で個人面接法によって16歳以上の国民5400人(最初だけ5436人、302地点×18人)を対象にしている。それだけに、貴重な結果を提供してくれており、他の多くの国民世論調査とは比較にならないだけの高い価値を持つ調査となっている。

ただ、昨年6月に実施された調査は、回答者が2751人と有効率は50.9%にまで低下しており、過半数ぎりぎりとなっている。最初の1973年は回答者4243人、有効率78.1%だったことを考えると、この45年間一貫して減り続けたこと自体が一つの歴史的な研究対象にしても良い事なのかもしれない。おそらく、この調査結果の分析は、これまでと同じ扱いになるとすれば、NHKブックス『現代日本人の意識構造』(第9版)としてNHK出版から年内には出るものと考えられるが、あくまでも私の勝手な予想であり詳細は全く未定である。

少子化の進展、女性の社会進出が進む社会、国民意識大きく変化

今年の調査結果の主な特徴として、少子化問題に結びつく「結婚観」と「子供を持つこと」の二つの設問が先ず取り上げられている。この設問は、1993年から新しく設定されたのだが、「結婚するのが当たり前」が大きく低下して27%(93年は45%)、他方「必ずしも結婚する必要なし」が68%(93年は51%)と一貫して増大している。子供を持つことについても「結婚したら子供を持つのは当たり前」が33%(93年は54%)へと減少し「かならずしも子供を持たなくてもいい」は60%(93年は40%)にまで増えているのだ。

「1.57ショック」を受けた90年代以降、少子社会は着々と進んでいる事をこの意識調査からも垣間見ることができよう。そのほか、今回の調査結果での特徴として、結婚した女性は子供が生まれても職業を持ち続けた方が良い、という数値が1973年の20%から2018年には60%へと一貫して大きく上昇している事や、同じく女性が大学まで教育を受けさせたいと考える人が22%から61%へと、これまた45年間で一貫して急増している。女性が社会に進出し活躍する時代へと動き始めている事を、この数値は物語っていると言えよう。

平成天皇への尊敬の気持ち、年々高くなってきていた重い事実

次に、いよいよ平成が終わろうとしている中で、天皇に対する「尊敬の念を持っている」という見方が2008年の調査から急上昇し始め、昨年は遂に41%にまで高まり、「好感を持っている」の36%を加えれば77%の国民が平成天皇に対する尊敬・好感を持っている事に注目させられる。平成天皇が、国民の象徴として努力されたことを、平成が終わろうとする今「尊敬の念」を持つレベルにまで国民意識を高められている事に敬意を表すべきだろう。

国民の生活満足度92%へ向上、「1億総中流崩壊」との関係は???

一番注目した結果として、今の生活への満足度を問うた質問への回答であるが、45年前は満足が21%、どちらかといえば満足が57%で合わせて78%だったが、最新の結果は、満足が39%、どちらかといえば満足が53%と合わせて92%が満足していると回答している。1億総中流が崩壊したのではないか、といわれて久しいのだが、国民全体の意識としては「満足感」を以て生活している現実は見ておく必要があろう。さらに、「仕事」優先か「余暇」優先かを問うた質問では、仕事優先が35%から19%へと45年間で大きく減り、「仕事・余暇両立」が21%から38%へと増えている。モーレツ社員時代から「働き方改革の見直し時代」へと変化しつつあるようだ。

相談したり、助け合ったりしない人が増える「無縁者会」日本

最後に指摘されている「職場、親戚、近隣」の3つの人間関係において、「何かにつけて相談したり、たすけ合えるような付き合い」を望む人は、多い順は職場、親戚、近隣の順位には変化はないものの、何れも長期的に減少し続けている。特に10年前に比較して「親せき」と答えた人の割合が35%から30%へと急速に減少しているのが目立っている。どこにも相談したり、助け合えるような付き合いが失われていることに注目していくべきであろう。

残念だが、政党の支持意識については、この45年の調査を見ても余りにも政党が乱立し、自由民主党、公明党、日本共産党以外の政党では時系列を追ってまともに分析できる状況になっていない。それ自体が、日本の過去45年間の政治を特徴づけるものになっているのだろう。

いずれにせよ、これから本格的な分析がNHK放送文化研究所で進められるに違いない。その結果は、私たちがこれからどのような日本にしていくのか、大変貴重な材料を提供してくれるに違いない。その分析を待ちたい。


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