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労福協 活動レポート

2019年3月4日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第85号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

第2回米朝首脳会談、両首脳の思惑に隔たり大きく合意に至らず

先週27~28日は、第2回目となる米朝首脳会談がベトナムの首都ハノイで開催された。金正恩委員長は、何とピョンヤンからハノイまで延々3日間かけての列車による移動だったようだ。会談の結果、合意至らず共同記者会見も取りやめとなってしまった。北朝鮮に対する制裁の全面解除を求める北朝鮮側と、核開発の全面的な廃止に持って行こうとする両首脳の思惑が外れたのだと言われているが、詳しい経過が十分明らかになっておらず、詳細は不明なままである。

トランプ大統領にとって、自らのロシア疑惑をはじめ数々の不法行為を、元側近の顧問弁護士マイケル・コーエン氏による非公開の3日間にわたる議会証言を通じて暴露された事の方が、今後の政局に与える大問題だったのだろう。コーエン氏の数々の議会証言は、証拠品も提出され報道を読む限り実に酷いものだ。コーエン氏はトランプ氏の人格について聞かれると、「人種差別主義者」「詐欺師」と厳しく批判すると共に「トランプ氏には米国を率いる意思などはない」し「大統領に当選する事すら想定していなかった」とも語っている。今後のトランプ疑惑がどこまで解明され、弾劾にまで持ち込められるのかどうか、米国民のみならず世界の注目するところだろう。

盛り上がりに欠けた「三・一独立運動」100周年、文在寅演説

注目されていた3月1日の「三・一独立運動」100周年記念日の文在寅大統領の演説も、米朝合意に至らなかったことにより、南北の経済交流を高らかに宣言する予定だった「新朝鮮半島体制」構想は言及されず、トーンダウンしたようだ。もしかすると、一番米朝首脳会談の失敗が痛かったのは文大統領だったのかもしれない。

沖縄県民投票結果を無視する安倍総理、「県民に寄り添う」発言は??

もう一つの動きは、先週24日に実施された沖縄県の辺野古埋め立ての是非を問う県民投票の結果、投票率は52%と過半数を超え、「反対」が70%台にまで達して、有効投票の25%を超える県民の反対という意思が示された。3月1日玉木知事は、安倍総理と会見し結果を伝え辺野古埋め立ての中止を求めたものの、総理はこれまでの主張を繰り返すだけだった。あまりにも沖縄県民の意向を無視し続けて辺野古埋め立てを強行しようとする姿には、「県民に寄り添う」という言葉の空しさだけが浮かび上がってしまう。140年前の琉球国併合に対する県民の怒りとともに、独立への機運が燃え上がらないとも言えない危うい状況になりつつあるのだろうか。

世界史の動きは21世紀に入って大きく転換し始めており、特に北東アジアにおける中国の台頭による地政学的変化が、日本の立ち位置にまで徐々に影響しつつあることは確かであろう。求められているのは、確かな歴史認識に裏打ちされた本物の外交力なのだろう。丹羽宇一郎元中国大使の言葉が頭をよぎる。

西川・日産社長インタビューや「迫真」記事、日経新聞が迫る

日産カルロス・ゴーン事件の当事者である西川社長CEOのインタビュー記事が、日本経済新聞2月28日に掲載され、なおかつ2面を飾る「迫真」欄では、「ゴーン退場100日」と題して3月2日まで5日間連続して連載されるなど、大きく取り上げられている。日経紙は、既に逮捕・収監中のゴーン氏に対してもインタビュー取材を進めており、この問題について他紙にない特別な対応を進めているようだ。経済紙である以上、世界の自動車生産量第2位となる日産・ルノー・三菱グループの経営陣逮捕の動きに注目するのも当然の事だし、国際社会からの注目も大きいことはもちろんである。

世界から問われている、日本の刑事司法(人質司法)制度の異常さ

だが、もう一つの国際社会の注目点は、日本の刑事司法制度とりわけ刑事被告人となった者が、刑を認めなければ保釈される事が殆ど無いまま収監され続ける、「人質司法」という現実への批判があることだろう。こうした批判に対して、世耕経産大臣は今年1月のダボス会議の場で、「各国の司法制度は成り立ちが全然違う。その一部を切り取った議論は私はすべきではないと思う」と一応の反論をしてはいる。しかし、日本の刑事司法制度のあり方については多くの問題を孕んでいる事は間違いないわけで、今や国際社会からも注目されているだけに、このインタビュー記事に注目した。

郷原信郎元検事、「何故先ず取締役会で議論し、解任しなかったのか」

西川氏とのインタビュー記事「日産・西川社長『あの時、議論すべきだった』ゴーン元会長に全権 2005年が転機」のなかで、どうしても看過できないのは「昨年10月頭に社内調査の結果が来た」「刑事事件になるかどうかにかかわらず、トップとして守るべきことから完全に逸脱していた」とゴーン元会長の不正自体が問題だと述べている点である。それならば、なぜゴーン会長も含めた取締役会を緊急に招集して調査結果を示し、本人の弁解を聞いたうえで解任という提案をしなかったのか。取締役会の場で全く議論することもなく、調査結果を検察に持ち込むという行動を取った事こそがこの事件の最大の問題点なのだ、と指摘し続けて来られた郷原信朗元検事に全面的に賛成である。
郷原氏は自らのブログ『郷原信郎が斬る』3月1日号「日産西川社長の”デタラメ”を許してよいのか」の最後に次のように述べておられる。

「コーポレートガバナンスを無視したクーデターで前経営トップの体制を覆し、その理由とされ、検察の起訴事実となった有価証券報告書虚偽記載について、自らの重大な責任について説明責任を果たすこともなく、いったん表明した『当然の辞任』の意向もあっさり否定し、自らも年間5億円もの高額の役員報酬を得てきたCEO社長の地位にとどまろうとしている西川氏。日本社会は、いつから、このような”デタラメ”が罷り通る社会になってしまったのだろうか」

まことにもっともな指摘であり、日本の経済界だけでなく、事態は世界が注目している国際的な問題でもあることを忘れてはなるまい。

重大なのは、裁判の行方と政治的な背景なのだが???

問題は、単にこれからルノーと日産の資本・経営関係がどうなるのか、といった点だけにあるのではない。最大の問題は、これから始まるゴーン事件の裁判の行方であり、さらにこのゴーン事件を仕組んだ背景は何だったのか、という根源に迫れるかどうかだと言えよう。

先ず、裁判の行方であるが、一連の刑事司法を担当したのは東京地検特捜部である。過去の特捜検察はロッキード事件を始め、「巨悪を眠らせない」と多くの悪質な政財官界の腐敗を暴き、国民の喝采を浴びてきた。

組織存亡をかけた裁判へ、特捜検察のあり方は
村木事件や証拠改ざん事件で地に落ちた、どう跳ね返せるのか疑問!!!

ところが、最近では取り調べに於いて被疑者に対する利益誘導や恫喝が横行し、裁判員制度の導入による裁判官の見方の変化もあったのだろう、検察側は「裁判官が事実と認定しやすい」調書の作成を求め、行き着いた先が大阪地検による村木厚子元厚労省局長の無罪事件であり、なんと主任検事が無理筋の調書に沿うよう押収証拠に手を加えた証拠改ざん事件などが2010年に露呈し、特捜検察に対する疑惑が高まる。その後、取り調べの可視化や日本版司法取引の導入などが導入されるまでに至っていた。まさに、ゴーン事件はこうした特捜検察のあり方を問われた中での「組織の存亡をかけた戦い」になっている事を見逃してはなるまい。

ゴーン氏側の主任弁護士交代、「無罪請負人」弘中弁護士就任へ

この司法取引で日産側からのゴーン氏に対する問題点を指摘する調書は恐らく相当のものが準備されていると思われる。だが、ゴーン氏は最後まで自らの犯罪については否認を取り続けており、裁判の行方はそう簡単ではなさそうだ。有価証券報告書虚偽記載の罪や特別背任罪についても、専門家の判断は刑事罰の適用は困難だと見られている。さらに、注目すべきは主任弁護士が交替した事実である。これまで、かつて東京地検特捜部長で鳴らした大鶴弁護士から、「無罪請負人」で有名な弘中淳一郎へと交替したのだ。その理由は定かではないものの、弘中弁護士に対する評価は高く、これからの裁判の行方は検察との激しい闘いが展開されていくことは間違いない。日経新聞の報道によれば、弘中弁護士は「日産内部で処理しなければならない問題を検察が取り上げたという側面が強い」と事件化そのものに疑義を呈しているとされる。何を争点に絞り込むのか、「公判前整理手続き」から激しい攻防になるとのことだ。

特捜検察と戦った細野祐二会計専門家、裁判での闘いが重要に

この裁判の行方について、会計の専門家であり、特捜検察と長い間闘い続けてきた細野祐二氏は、月刊誌『世界』3月号で「日産ゴーン事件の研究」という論文を寄稿されている。この中で細野氏は克明に問題点を指摘し、検察側の指摘する点についての問題点を的確にとりあげ、ゴーン氏を確実に有罪に持ち込めるかどうかについては難しいが、司法取引の下で収集した多くの検面調書で記載されていることを、裁判官が論破して無罪判決にも持ち込んでいくのは至難の業と見ている。

裁判官が安心して無罪判決が出せるような「冤罪構造」暴露せよ

今回の日産ゴーン事件は、特捜検察にとってその存在が問われている「執行猶予中」の立件であり、ゴーン氏無罪の判決が出れば今度こそ特捜検察制度は本当に解体となる、とまで見ておられる。それだけに、検察と弁護人の有利不利は、ほぼ拮抗しており、それだけ検察官と弁護人の力量が裁判の帰趨を大きく左右すると指摘しつつも、ただし最終的には「国民世論」が決め手になると結論づけられている。

そのためにも、「弁護側は、本件の冤罪構造を法定で明らかにしなければならない。そして、特捜検察の冤罪構造が公開の裁判により明らかとされ、国民の激昂を誘った時、その強い国民世論を背景として、初めて、裁判官は安心して無罪判決を出すことができる」(72頁)ことを強く望んでいる。ちなみに、この細野論文は主任弁護士の交替前に書かれており、弘中氏への期待は大変強いものと考えていい。

われわれ日本人は永い間、特捜検察による冤罪構造を知りながら、自国民の力でこれを矯正・根絶する事ができていない。再び、問題を改革できるかどうか、国際的な問題になった事も受け、われわれに問われている課題は大きい。

日産ゴーン事件、西川社長らだけで進められたはずはない、
政治はどうかかわったのか、疑惑を解明して欲しい

一方で、この日産・ゴーン事件の政治的な背景は何なのか、一向に解明が進んでいない。とりわけ、国会での論戦をふり返った時、与野党からの問題提起は新聞やテレビ報道を見る限り皆無であったようだ。私自身、この通信でダボス会議での世耕経産大臣発言についての郷原氏の問題指摘を受け、是非とも国会で取り上げるべきではないか、と問題提起したことがある。いまだに、進められていないようだ。

私には、生死をかけた刑事事件にまで司法取引を通じて持ち込んだのが、西川社長以下の日産側の取締役だけの経営判断だったとは思えない。背景には、日本に残された数少ない外貨が獲得できる産業として、自動車産業の世界NO2たるルノー・日産・三菱グループが、このままではルノー側に経営の全権が持って行かれる危機感を抱いた経産省・官邸の動きがあったに違いない、と見ている。ただ、未だにそれらの問題に迫る解明はなされていない。今からでも遅くはない、ぜひともこの問題の政治的背景に迫る解明を、国会においてもマスコミも強力に進めて欲しいものだ。


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