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労福協 活動レポート

2023年3月13日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第284号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

巨大災害に弱い日本列島、3.11から12年、関東大震災から100年

このところ「3.10東京大空襲」、「3.11東日本大震災」といった過去の巨大災害や戦災事故に遭遇した日程が目白押しで、改めて日本という地理的な位置が構造的に災害に弱いことを教えてくれる。100年から150年周期で大地震が起きており、今年が関東大震災から100年ということもあり、先日NHKが南海トラフ地震についての特集を企画し、災害列島の脆弱さに思いを致す今日この頃ではある。それにしても、トルコやシリアの巨大地震による5万人を超す犠牲者が出たことには、本当に痛ましい限りであり、心より哀悼の意をささげたい。133年前の和歌山沖トルコ船遭難事故に対する県民の救援活動と、その返礼(?)としてのイランイラク戦争時のトルコ航空機の提供を思い出し、日本は何としても国際的な人道支援の先頭に立ってほしいし、既に医療チームが派遣されているとのことだ。

日本経済の舵取り役、日銀の植田総裁、二人の副総裁国会同意へ

もう一つの大きな転換(変化)は、自然災害とは性質の違う日本の経済政策のかじ取り役が変わろうとしていることだ。3月10日、日銀の新しい総裁・副総裁の国会同意人事が衆参両院で承認され、植田和男総裁、氷見野良三副総裁、内田真一副総裁という新体制が確定した。植田総裁と氷見野副総裁には野党第一党の立憲も賛成したが、内田副総裁候補にはアベノミクスを推進してきたことを理由に支持しなかったようだ。かくして、初めて学者出身の植田日銀総裁が誕生するわけだが、世界から見ると学者出身の中央銀行総裁は珍しくないわけで、留学中の仲間にも中央銀行に勤めておられる友人もおられるようで、これから5年間の任期中にどんな金融政策を展開されるのか、注目されることは間違いない。

植田日銀がどんな「出口戦略」を打ち出すのか、内外の注目点だ

とりわけ、黒田日銀時代に異次元の金融緩和と称して国債や株式を買いまくり、今やGDP比2倍の国債発行額の半分を超すまで日銀が所有するに至っているわけで、今後どのような政策を展開していこうとされているのか、日銀の政策委員会時代に初めて「時間軸政策」を打ち出すなど、新総裁としてどんな出口政策を打ち出すのか世界も注目していることも間違いない。日銀の総裁や副総裁は、国会の同意が必要とされる重要人事であり、植田氏は国会での所信表明では今までの金融緩和路線を踏襲され、2%のインフレ目標も明示していくことを明言されているわけで、白川前総裁から黒田総裁に転換した時のような急激な「大転換」が進められていくとは思えない。状況次第ではあるが、着実かつ堅実に事を進められるような気がするが、こればかりは進み始めてみないと何とも言えないだろう。ましてや、南海トラフ地震など想定外のショックがありうるだけに、それがどう実態経済に影響が及んでくるのか、なかなか想定しにくいことも確かであろう。大変な難局に遭遇していることは確かだろう。

黒田総裁最後の記者会見、2期10年間は成果ありとみるべきか

新総裁が確定したこと以上に、10日の金融政策決定会合終了後の黒田総裁の定例記者会見に注目が集まった。というのも、9~10日と開催された日銀の黒田総裁時代最後の金融政策決定会合で、何かサプライズが起きるのではないかと一部の市場関係者が予想をしていたが、決定会合での結論はこれまでの路線を踏襲していくもので、サプライズなく最後の記者会見に臨まれたわけだ。

黒田総裁が任命されたのが安倍第2次政権直後の2013年4月、2期目の就任となった18年4月はそれほど問題なく再選(何よりも安倍総理が長期政権だったことによると見ていい)され、結局アベノミクスの一番目の矢としての異次元の金融緩和を10年の長きにわたって推進し続けてきたわけだ。アベノミクスについて、経済がわずかでもマイナスとなる「デフレ」(と言えるかどうか?)状態からはどうやら脱却できたし、雇用も非正規雇用の増加という質の面での問題はあるが、量的には増加してきたことを成果と挙げる向きはあるものの、何よりも国際経済(とりわけEU)の好転による円高の是正と株価の上昇(日銀のETF買いやGPIFの国内株式購入増が背景にあり)となって経済界を中心にまずまず評価されてきたのだろう。果たしてどう評価していいものか、今後の副作用を考えたとき、及第点は上げられないように思う。

2%のインフレ目標未達成が心残りか、進む賃上げに僅かな期待

この記者会見において黒田総裁は、先ほど述べたようにデフレを脱却させたことや雇用の拡大とともに、インフレ率が4%を超えたこともあり、岸田総理の物価上昇率以上の賃上げ要請などを受け、最近少し賃上げムードが高まりつつあることなども指摘されている。この賃上げが中小企業も含めて国民的な広がりを持てるのかどうか、そこに本格的な2%目標が達成できるかどうかのカギがあると見ておられるようだ。

この会見全体を通じて感ずることだが、アベノミクスの縛りからどうにも抜け出せなかったことが節々に出てきている。2%の引き上げについては、当初2年で実現するという意気込みだったわけだが、「物価や賃金」が上がりにくいという現実は予想以上に強かったと吐露されていた。おそらく、口にこそ出されていないが、最大の心残りとなる問題と思っておられるのだろう。人口減少に入った日本にとって自然成長率が2%に達していない中で、2%のインフレ目標実現は難しいと思う。

10年間の国債爆買いやETF購入、「負の遺産ではない」とは驚き

私自身が驚かされたのは、10年の任期中に買い入れた国債やETF(上場投資信託)などの大量購入について、「負の遺産ではないのか」という質問に対して、「何の反省もありません。負の遺産だとも思っていない」と強い口調で反論されたとのことだ。

日銀が保有する国債が日本全体の半数を超える異次元ともいうべき膨大な水準にまで高まっていることに対して、「何の反省もない」という認識でおられることの異常さが、黒田総裁はどうなってしまったのかな、と思わせられた次第である。また、ピーターパンのたとえ話「飛べるかどうかを疑った瞬間に永遠に飛べなくなってしまう」について、あれはスタッフが入れたもので、自分は詳しくないと述べておられる。

何とも、「期待」に願望を託してこられた黒田総裁ではあったが、10年間ですっかり「自信に裏付けられた意欲」を喪失されかかっているのではないかと思えてならない。ある有力誌では「黒田氏 色あせた発信力」とある。あの10年前の「2%のインフレを、2年以内に、今の2倍以上のマネー供給で」と「2」を強く意識した数値目標いりの自信にあふれた姿は、何故か最近の言動が弱々しく感じてしまうのは、加齢に伴うものだけであろうか。

黒田総裁、10年間の歴史の総括書を書いて欲しい

小生と同年齢の黒田総裁には、アジア開銀の総裁時代にはマニラで、内閣官房参与時代にもEU各国の大使館関係者との勉強会など、いろいろと個人的にもお世話になった事が思い出される。それだけに、黒田総裁「ご苦労様でした、ゆっくりとお休みして欲しいとともに、是非とも過去10年間の自らの歩みを総括した著作を書いて欲しい」と思う。それが、黒田日銀10年間の歴史への証言になるのだと思うし、世界の中央銀行に向けて日本の貴重な経験を発信することへと繋がるはずだ。白川前総裁は、すでに日銀時代の金融政策についての論文を書かれ、日本の経験を世界へと発信すべく大活躍されている。黒田総裁も、是非とも自分の経験してこられた歴史を総括して欲しいし、待ち望んでいる者の一人である。

【始まった大阪場所に想う 番外編】

前回は野球の話をさせていただいたのだが、大相撲大阪場所が12日から始まった。体が弱かったこともあり小さい頃は、栃錦、若乃花や大鵬、柏戸といった名勝負のテレビ放映に目を輝かせ、個人的には先代の朝潮のファンであった。最近では稀勢の里を応援していたのだが、案外早く引退してしまい今でも少し早く引退しすぎたのでは、と残念な気持ちでいる。

いよいよ今場所、大阪場所で貴景勝が綱取りをかけて優勝を目指す場所になりそうだ。どんな相撲を見せてくれるのか、横綱照ノ富士が4場所連続休場するわけで、早く新横綱の誕生が望まれるところだろう。

番付をみて、”おや”と思ったのは、朝乃山の東十両筆頭となった事である。先場所十両優勝して、今度は幕の内だろうと思っていたが、あと一歩というところで逃してしまっている。番付委員会でどんな議論があったのか知る由もないが、何と幕の内は幕尻の17枚目には東がいて西はいないのだ。なぜ、この西前頭17枚目に朝乃山を上げなかったのか、あの規則違反に対するお仕置きは、もうすでに十分償っているのではないか、と思えてならない。もしかすると我々が知らない何かがあるのだろうか。何とも、理解に苦しむ番組編成だ。朝乃山関には、出来れば再び十両で優勝して幕の内に堂々と凱旋して欲しいものだ。


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