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労福協 活動レポート

2023年10月2日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第312号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

10月1日から変わることの数々、世の中の動きは速そうだ

いよいよ10月、猛暑の続いた今年の異常な夏から実りの秋を迎えようとしているが、猛暑の影響もあり農水産物への被害も多く出てきそうである。いろいろな分野で10月1日から変わることが気になる今日この頃である。

インボイス制度導入、複数税率制度を採択した時から必要だった

まず第一に、消費税(付加価値税)制におけるインボイス制度の導入である。インボイス制度は、仕入れる際に支払った消費税額が書かれた送り状のことで、それを今度は売上先に売却する際に売上高から仕入れ額を差し引き、その額に消費税率(食料品は8%でそれ以外は10%)分から仕入れ時の支払い済みの消費税額を差し引いて、税務当局に納税していく仕組みの事である。2019年に消費税率が8%から10%になる前は単一税率であったために、インボイスを使わないでも8%の税率が適用されるとみなして売り上げから仕入れを差し引いて計算できていたのだが、10%に引き上げる際に公明党の提案によって食料品の税率は8%に据え置くことに決まった経過がある。複数税率の採用となれば、何が10%か8%を明確にするためにインボイスが必要になることが不可欠となっていたわけだ。

零細企業、ギグワーカーやフリーランスなど、非課税で済んだ人たちに大変な影響、
当局は激変緩和措置導入へ

ここで問題になるのが今まで売上額が1000万円の零細業者の方達は非課税扱いとなっていたため、消費税率を課税されることなく商売が続けられてきたわけだが、複数税率の採用に伴いインボイス制度を導入して正確な課税を取らざるを得なくなったのだ。そのためにはインボイス制度の導入が不可欠となり、非課税業者を選択するということはインボイスを使えないことになり、そのことは今までは計算上課税されていたと仕入れでみなしていた納入業者はインボイスがないと仕入れ分の税額まで自分のところで税負担せざるを得なくなってしまうことになる。そうなると、インボイスを持たない非課税業者は取引から排除されることになるわけだ。全国的に中小零細業者やギグワーカー、フリーランスといった多様な働き方をしてきた人たちにとって死活問題となり、国税当局との間で激変緩和措置が取られることになっているようだ。しかし、制度自体は10月1日から適用になるわけで、何年か後には、インボイスの導入がこの国の全ての企業に入ることになりそうである。

公明党案を採択した安倍元総理の責任、どんな効果があったのか

公明党の食料品軽減税率の導入は、低所得層対策と名打って導入されてきた経過があるが、果たしてどの程度の逆進性緩和効果があったのか、寡聞にしてそうした研究成果にお目にかかることは無かったと記憶している。ほとんど効果がないというのが本当のところではないだろうか。

財務省案の戻し税方式ならマイナ保険証問題は出なかったはず

実は、前にもこの通信欄でお話したことがあるが、財務省は8%から10%への引き上げに際して、マイナンバーカードを国民に持ってもらい、日々の買い物とマイナンバーカードを結び付け、一人当たり年間最大で4000円程度現金をそれぞれのマイナンバーと結び付けられている預金口座に払い込むというアイディアを提案し、10%の税率はそのままにしていくことを提案したことがある。残念なことに、これを提案されたキックバック方式は採択されずに公明党案が実現し今日に至っているわけだ。当時、この提案をした柳沢伯夫税制調査会長は更迭され、宮沢現税制調査会長に変えられたことが思い出される。もし、あの時、戻し税によるマイナンバーカードの採用が採択されていれば、10%の単一税率によって中小零細商工業者やフリーランサーたちがインボイス導入で迷うことも苦労させられることもなかったし、国民の多くの人たちはマイナンバーだけでなくマイナンバーカードをこぞって所有して毎日の買い物に使い続けてきたことは間違いない。マイナポイントなんてものも必要がなかったに違いない。今、健康保険証を廃止してナンバーカードに一本化しようとしている動きがあるが、あまりにも拙速に進められていることへの反発が強まっており、つくづくこの財務省案が採用されていたならどう展開していただろうか、と思えてならない。まさに、バタフライエフェクトの類いの問題なのだろう。

野田元総理のインタビュー記事、給付付き税額控除案で行きたかったと述懐、
でもマイナンバーが必要ですぞ

そんなことを考えていたら、朝日新聞の9月30日付朝刊の経済総合欄で、野田佳彦元総理が「インボイス 野田元首相の心残り」と題して伊藤裕香子編集委員による短いインタビュー記事が掲載されていた。いうまでもなく、野田元総理は消費税率を10%に引き上げる時の三党合意の責任者であり、こうしたインボイスがなぜ導入されたのかについての特別な思いがあるようで、次のようなインタビューとなっている。

「消費税率を10%にすることは、2012年に、自民党、公明党と政権を持っていた民主党で決めました。税率引き上げで負担が増える所得の低い方々への対応には、税金の控除と現金の給付を組み合わせた『給付付き税額控除』がいいと私は思っていました。その後、民主党は政権を手放し、与党となった自公の協議で軽減税率へと進みます。小規模事業者泣かせのインボイスは、軽減税率になった事で減ってしまう1兆円以上の税収を穴埋めする財源の一つとなり、導入に至ります」

未だインタビューは続くのだが、三党合意の中に給付付き税額控除導入まで書き込んでおればよかったと述懐されている。実は「給付付き税額控除」の導入においても、所得の正確な捕捉や資産についての補足も不可欠であり、やはりマイナンバーが所得や資産情報と正しく結びつけられていなければ成り立たないものである。消費税収は所得税収と並んで国税収入の中で最も税収の多い税源の一つとなっている。ただし、複数税率にしたにしても消費税による所得再分配制度の機能は十分に発揮されないわけで、税収を専ら社会保障財源に投入することによって格差社会を是正することが不可欠になっている。

溶鉱炉2本もろとも無くなる呉海軍工廠継承の工場群、故郷の今

10月1日から無くなるものの中に、鉄鋼業のシンボルであった溶鉱炉が全国的に縮減される動きが進んでいる。そうした中で、私の生まれ故郷である広島県呉市の2本の溶鉱炉と共に新日鐵住金の呉工場自体も閉鎖されるとのことだ。幼いころからの友人が、地元の新聞の切り抜きを贈ってくれたほど、呉界隈で大問題になっているようだ。なにせ、戦艦大和を製造した海軍工廠の跡地に建てた製鉄所や造船所などがずらりと並んでいたわけで、幼いころ友達たちと有名な「第4ドッグ」のあたりをうろうろしたことが思い出される。私の父や兄姉、母方の両親や叔父など、何らかのお世話になってきた工場群であり、明治以降日本の軍需産業の中核となってきたし、戦後も軍艦ではなくタンカー製造では三菱長崎造船所と世界一の座を争って建造していた高度成長時代が懐かしい。まさに、明治維新以降の重化学工業化のシンボルとしての呉海軍工廠が、いろいろと経緯はあったにせよここに幕を引くことになったわけだ。長い間ご苦労様でした、と感謝したい。もっとも、大和ミュージアムなど海軍工廠から作られた艦船(10分の1の縮小されたもの)が展示されるコーナーもあり、一度拝観を進めたい。

まことに残念な北海道新聞夕刊の「廃刊」ではなく「休刊」

もう一つ10月1日以降なくなるものがある。私の住んでいる北海道新聞の夕刊である。会社は「廃刊」と入っておらず「休刊」と公表しているが、最近の新聞各紙の経営状況からしておそらく復刊することは難しいだろう。始まりが1942年というから90年にまでは至らなかったわけだが、北海道新聞がどんな論説を張っていくのか、道民は注目して読んでいたと思う。それだけに、夕刊だけの「休刊」とはいえ、なんとも寂しい限りである。願わくは、これから朝刊の充実に努めていただき、北海道を代表するクオリティペーパーとしての存在感を一層高めて欲しい。

NHKの朝ドラ、「らんまん」から「ブギウギ」へ、牧野富太郎博士から笠置シズ子さんの生涯へ

もう一つ私の生活にとって大切なことがある。NHKテレビの朝ドラが「らんまん」から「ブギウギ」へと変わることだ。家にいることが多くなって10年近く経つ、毎週月曜日から金融日にかけて15分間とはいえ26週間連続する番組はなかなか興味深い物語が多い。先週までの「らんまん」は植物学者牧野富太郎博士の波乱に満ちた生涯の物語であり、学歴のない牧野博士が植物学に傾倒され、寿衛子奥様との深い愛の絆の下、国際的な植物学者になられていくその姿には、感動の連続であった。何時の番組だったか、「雑草という草花はない」という博士の言葉にハッとさせられたのが思い出される。朝ドラとしてもなかなか評判の良い作品ではなかったかと思うのだが、どうだろう。次は、大阪局が作る「ブギウギ」、笠置シズ子さんの生涯を描くとのこと。なかなか楽しそうな番組になりそうだ。期待したい。


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