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労福協 活動レポート

2024年9月30日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第358号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

自民党総裁に石破茂元幹事長、民主党代表に野田佳彦元総理、
どんな政治が展開されるのか、ワクワク感と若干の不安

先週は日本政治の大きな転換点にあたっていたようだ。まず23日の立憲民主党の代表選挙で、野田佳彦元総理大臣が選出されたことに引き続き、27日に自民党総裁選挙の投開票が実施され、石破茂元幹事長が第28代新総裁に選出された。勝利した石破氏は67歳、「これが最後の挑戦」として戦った5度目の総裁選での勝利だった。第1回目の党員票が含まれる開票結果は2位で何とか勝ち残り、上位二人による決選投票で高市早苗候補に勝利して、ようやく総裁の座を勝ち取り、10月1日開催の国会で第102代内閣総理大臣に就任することになる。

高市早苗氏、靖国参拝への危惧と政治家の資質としての欠陥も

27日当日、唯一の派閥である麻生派が、第1回目の投票から高市氏に投票することを決めたとの情報に接し、もしかすると高市氏が憲政史上初の女性総理大臣になるのではないかと思われた。だが結果として石破氏が逆転勝利を勝ち取ったわけで、私自身内心ほっとした思いで選挙戦の結果を眺めてきた。おそらく自民党内のかなりの国会議員は、総理大臣として靖国神社に公式参拝することに伴う対中国や韓国、更にはアメリカとの外交関係がうまくいかなくなるのではないか、という思いがあったのだろう、結果として岸田氏が逆転勝利となった事に安堵した国民も多かったのではないかと思う。

もう一つ重要なことは、「高市氏は政策以前の問題として、放送法の『政治的公平』の解釈をめぐる、やり取りの文書を『捏造だ』と主張し、総務省が公文書と認めても非を認めず、うやむやにした印象がある」と28日付毎日新聞オピニオン欄で批判していた上西充子法政大学教授の指摘も、政治家の資質の欠陥として見過ごすことはできない。

高市氏への地方党員票トップ、保守派の結束と本人の努力の成果

第1回目の開票結果で注目したのは、地方党員票では石破候補が優位に立つと見られていたのだが、ふたを開けてみると僅差ではあるものの高市氏が石破氏を抑えてトップとなっていたことだ。自民党内「保守派の危機感」が高市氏への投票となって表れたと観ていいのだろうが、気になるのは三大都市圏を中心とした大都市圏での高市氏の地方党員獲得得票数の多さである。聞くところによれば、この間こまめに地方での講演会などに出向き、党員の拡大に大きく寄与してきたとのことだ。石破氏も、さすがに地方票での高市氏にリードされた事への焦りを感じたとのこと。若手の小泉候補などにとって、今後の総裁・総理を目指すうえで必要とされる課題が浮き彫りになったのではないだろうか。自民党だけでなく、どんな政党でも政治家として多くの国民の中に入って、いろいろな考え方を聞くことが必要な事であるに違いない。

石破新総裁の僅差の勝利、党内結束をどう確保できるのかが課題

ちょっとわき道にそれてしまったが、石破新総裁誕生についての感想を述べてみたい。決選投票の結果は215票対194票で、内国会議員票だけで見ると189票対173票でその差は16票でしかない。極めて僅差であり、今後の党内運営における細心の注意を払い続けていく必要性があり、人によっては分裂の危機があるとまで厳しく見る向きもある。それだけに、党内をどのように取りまとめていけるのか、特に総裁候補だった8人の人材をどうするのかが大きな課題となりそうだ。今のところ、党3役を中心に人選が進められているようだが、幹事長に森山裕現総務会長という「まとめ役」としてはうってつけの人材を配したのが印象的だ。27日夜のテレビ番組「報道1930」で、政治評論家の後藤謙次氏が森山総務会長を「必要不可欠な人材」として登用すべきと進言されていたが、党運営の要として石破政権内で大きな役割を果たすことになる。その他の党運営の人事、とりわけ高市氏の処遇などが難航していると伝えられるが、森山幹事長と相談されながら進められていくのだろう。党内の亀裂をどう最小限にとどめられるのか、最初の難関なのかもしれない。

野田立憲民主党新代表、期待される国会での「論戦力」発揮を

一方、政権交代を目指す野党第1党の代表に野田佳彦元総理が就任し、いよいよ1日から始まる国会での論戦がスタートする。今の状況では本会議での施政方針演説に対する各党の代表質問までは当然だが、本格的論戦の舞台として衆参予算委員会が開催されるのではないかと思われる。また党首討論の開催などにも言及されている。どれだけの時間をかけた本格的な論戦になるのかどうか、野田代表は短時間の論議では不十分であるというメッセージを送ってはいるが、今後の与野党の合意がどのように進められるのかを占う意味でも重要なことといえよう。

論戦の主要テーマとして、政治とカネの問題や旧統一教会と自民党との関係など、国民からの不信を招いてきた自民党の宿痾ともいうべき蓄積された深刻な課題が中心になると思われるが、新総裁は自身の持ち味である「逃げない、ぶれない、誠実な答弁」で自民党の改革を進めて欲しい。

野田元総理と石破新総理との民主政治のレベルアップに期待

さらに望みたいことといえば、自民党の中で最もリベラルに近い保守という立場の石破総理と、リベラル派の枝野氏を破っての穏健な保守を目指す野田元総理との間で、国会運営においても民主主義の在り方として、お互いにリスペクトを持った対応ができるようになることを望みたいものだ。やがて解散・総選挙となるわけだが、国会という民主政治のアリーナにおいても、今までの頑なな与野党の対立を前提としたものから、正論に基づくお互いの論戦を通じて改革が進められることを示して欲しい。この二人のリーダー間であれば、そうした民主主義のレベルアップができる可能性があると思うだけに、是非とも努力してもらいたい。

立憲民主党内「リベラル」グループ、今、求められる政治的判断

それにしても、立憲民主党内では代表選挙後の人事を巡って、リベラル派と称する人たちが主要ポストから排除されたとの恨み節が聞こえてくる。ここは野田氏が「政権交代に向けての最大のチャンス」を進めるための勝負時であり、中道保守にまでウイングを拡大するための動きとして理解しながら、一致結束して進めていくべき時ではないだろうか。かつて枝野氏は、自分の政治的な立ち位置は自民党の「宏池会」に近い趣旨の発言をされていたことを思い出す。リベラル陣営の人たちが陥りやすい「主観主義」「独善主義」からの脱却を望みたいが、それには時間がかかるのだろう。やはり、政治は結果責任なのであり、野田新代表の表裏のない誠実な取り組みの結果が良い方向に出てくることを待つしかないのかもしれない。


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