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労福協 活動レポート

2024年11月11日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第364号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

アメリカ大統領選、共和党トランプ圧勝へ、上下両院も制する勢い

今年は世界的な選挙イヤーになっており、日本の10月27日の総選挙に引き続き11月5日アメリカ大統領選挙が実施され、元大統領の共和党トランプ氏が、激戦区も含めて民主党の副大統領ハリス氏に圧勝し4年ぶりの再選となった。投票率も戦後第2位となる60%を超え、アメリカ国民の選挙への関心の高さが示されたと言えよう。同時に戦われた上院選挙では過半数を獲得し、下院でも大接戦の末過半数を確保する可能性が高まっているとのことだ。かくしてトランプ大統領にしてみれば、このままいけば上下両院まで自らが大きな影響力を持つことができたわけで、政権運営は思い通りに進めれるに違いないと思ったのだが、吉崎達彦双日総研チーフエコノミストによれば、話はそう簡単ではなさそうだ。吉崎氏が書かれた11月9日付の『東洋経済オンライン』で、「『選挙圧勝』でも次期トランプ政権は簡単じゃない」を読むと、議会内下院共和党内の「フリーダム・コーカス」という暴れん坊集団がいて、なかなか共和党内のガバナンスがうまくできるかどうか、不透明さを指摘されている。

共和党が「労働者の政党」になったのか、その投票行動に注目

私が注目したのは、吉崎論文の表題についている副題として「何と共和党は『労働者の政党』になっていた」という点である。吉崎氏はCNNの出口調査を引用して、所得階層別の投票分析を引用されている。年間世帯所得が5万ドル以下の人たちは、トランプ氏支持50%、ハリス氏支持47%と3ポイントも共和党のトランプ氏が多いのだ。逆に、10万ドル以上のお金持ち層では、ハリス氏51%でトランプ氏氏の46%を5ポイントも上回っているとのこと。

吉崎氏は「ほんの10年くらい前には年収5万ドル以下の層は、全体の4割ぐらいを占めていた。そして民主党支持者が多かった。逆に10万ドル以上の層はせいぜい3割で、共和党支持者の方が多かった。それが普通の感覚であろう」と述べ、それが2024年には逆転し、「トランプ氏の下で、共和党は労働者の党に変貌しつつある」と述べておられる。民主党は「気候変動問題やジェンダー、人種問題などを重視する『意識高い系』の支持者の政党」になっていたのだと驚かれている。これでは、ラストベルトの白人ブルーカラー層の票を取れないのは当たりまえで、彼らの関心事はインフレや不法移民といった生活に密着した問題だったのだ。とかく、リベラル派の人たちが陥りがちな、ややもすると「理念先行」の「上から目線」といった問題点を指摘されている。

日経紙が報じた「AP通信投票調査」でも同じ傾向が見て取れる

この点、9日付日本経済新聞によると、所得階層別の民主党への投票が、前回バイデン氏が勝利した2020年に比較してどのようになっているのか、「AP通信の投票調査」を図示(下図参照)し、低所得階層ほど民主党支持が落ち込み、10万ドル以上の富裕層になって初めて1ポイント上回っているというデータと符節が合う。まさに、民主党がかつての支持基盤としていた中低所得層労働者から見放されてしまったことが投票行動調査で明らかになっている。

果たして、今後この傾向が定着するのかどうか、4年後の選挙で確かめなければならない点であろう。共和党がトランプ党化しつつあると言われるが、どうなっていくのだろうか。注目したい。

少数与党政権としてスタートする石破自公政権、前途多難の船出

さて、日本の政治に目を移そう。先月27日の総選挙の結果を受け、敗北した自公政権は少数派政権となっても政権維持向けて国民民主党を巻き込み、同党の求める経済政策である所得税(いわゆる「103万円の壁」)やガソリン税などの減税を協議することで何とか石破政権発足にこぎ着け、11日の特別国会で石破総理の選出が確実視されてはいる。ただし、今後の国会運営の舞台となる衆議院の各委員会委員長人事で、野党側に大きく譲歩せざるを得なくなり、特に予算委員長を立憲民主党に譲らざるを得ない事態を迎えることになった。政策論争の重要な舞台であり、さっそく12月初旬にも予定されている補正予算を審議する場となるわけで、これまでの様に時間が過ぎれば予算が成立していくことにはならなくなる。答弁次第では内閣不信任案、個別閣僚の不信任などが野党側から提起されることも予想されるだけに、緊張感の高まる場面が連続するに違いない。

国民民主党の政策ごとの与党協議、「103万円の壁」はどうなる

もっとも、野党側の方も非自民の連立政権に向けた結束にまでは至らなかったわけで、来年の参議院選挙に向けてどう石破政権を攻撃していくのか、臨時国会を乗り越えたとしても、来年の通常国会こそが主戦場になっていくに違いない。予算を中心にした政策において譲歩を迫っていく国民民主党の動きがどうなっていくのか、とりわけ「103万円の壁」を「178万円」にまで引き上げていくことを石破政権に迫っているわけだが、約7兆円強の財源を伴うわけで、どこまで譲歩を勝ち取ることができるのかがとりあえずの見所だろう。

立憲民主党は政治改革法案を用意、参議院の壁があるが効果は大

それ以上に重要になってくるのが「企業団体献金の禁止」を軸に野田代表率いる立憲民主党が政治改革法案をまとめ、野党側が結束してその成立を目指そうとし始めている事である。国民民主党も賛成する方向だし、その他の野党が一致結束すれば、参議院での与党側多数の壁があるため一気に成立することは困難ではあるが、国民への引き続くアッピールとなり参議院選挙での争点としても重要なものとなる。ただ日本維新の会は馬場代表が選挙結果に対して責任を取り代表選挙が実施されるわけで、次の代表がどういうポジションで政治改革に臨んでいくのかにかかってくる可能性が高い。自民党にとって国民民主党だけでなく日本維新の会の動き如何が、石破政権の死活にかかわる深刻な問題となるだけにその動向は注目すべき点となるだろう。

政局の行方、総ては来年の参議院選挙に掛かってくる

もっとも、敗北した自民党や公明党の動きだが、自民党内で7日に開催された議員総会の場で、執行部に対する批判が噴出したとはいえ、石破総裁や森山幹事長の辞任には至らなかったようだ。総裁選挙で負けた高市早苗氏自身はこの会合に出席すらしておらず、反執行部側は次の参議院選挙を見据えての中期的展望を持ちながら、党内の結束を目指すのかもしれない。

とはいえ、参議院選挙の候補者選定にあたって、再び裏金に関わっていた議員をどうするのか、自民党にとって再び難問に直面するわけで、衆議院に続いて参議院でも議席を失う危険性を孕んでいる事を見ておく必要がある。私自身、この間の自民党内の動きの中で、注目すべきは総裁選挙で立候補した小林鷹之氏ら若手のグループの動きだろう。これから自民党がどう立て直していけるのか、よくよく注視してく必要がありそうだ。

(お詫び)
前号で、「キャスティングボート」とすべきところを「キャスティングボード」と誤って書いていたことの指摘が何人もの方からあり、訂正させていただきます。大変失礼いたしました。


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