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労福協 活動レポート

2025年1月27日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第372号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

トランプ政権と孫正義ソフトバンク会長の蜜月の意味するもの

1月20日、第47代アメリカ大統領に共和党のドナルド・トランプ氏が、1期4年のブランクを経て再度就任した。就任演説は、予想された以上に平穏なもので、これからどんな過激な言動が繰り出すのか世界は注目し続けることになりそうだ。日本の石破政権にとっても少数与党という政権基盤が弱体化しているなかで、戦々恐々として待ち構えざるを得ないのかもしれない。

そうした中で、大統領就任式の翌日21日には、ソフトバンクグループの孫正義会長を含む経済人3名が、AIインフラをアメリカで整備すると発表したことが目に留まった。トランプ大統領も同席してのことだが、側近中の側近にのし上がったテスラCEOイーロンマスク氏は、AIインフラプロジェクトは資金不足という問題を指摘していたが、約78兆円にも及ぶ投資額と聞いて、そのすべてをソフトバンクが引き受けるのではないとしても、日本国内投資ではなくアメリカでの投資であることが気になった。

家計部門の海外向け投資信託、企業部門も海外投資へと円売り加速

そんなニュースを見た後で、週刊『東洋経済』2月1日号電子版の「マネー潮流」という定期コラム欄で、佐々木融ふくおかフィナンシャルグループチーフストラテジストが書かれた「『本当の円売り』が始まる条件は何か」が目にとまった。小見出しとして「家計も企業もキャピタルフライトを加速させている。投機筋は仕掛けどころを探っているのかもしれない」とあり、条件次第では投機筋による「円売り」が一気に進む危険性に触れておられる。

ここで指摘されていることも、日本における資金の動きであり、家計部門での最近の動きは海外向けの投資信託が好調で、財務省統計では昨年の海外株式に対する投資信託の純投資額は10兆円と23年の2.9倍に達しているとのこと。今年に入って倍増に近い伸びを示しており、今の勢いで行けば20兆円になるかもしれないと予想しておられる。つまり、家計部門からの資金の海外流出がかなりの勢いで伸びているわけだ。

企業部門でも増加基調が続いており、昨年11月までの直近の数値で26兆円となり、過去最大の伸びを記録したとのことだ。つまり、「円」は日本国内ではなく海外に向けて大きく投資を増やし続けているわけで、それだけ「円安」となって日本経済(とりわけ物価高による家計)を直撃しているのだ。

ソフトバンクの孫会長は、すでに昨年末トランプ大統領との共同記者会見で、アメリカにおいて今後4年間で1000億ドル(約15兆円)の投資を行い10万人の雇用を生み出すと宣言しており、他の日本の巨大企業も追随していく可能性が高いとみておられる。

日本経済の2極化、世界に投資できる巨大企業と衰退化する企業

かくして、日本「円」は国内市場ではなく、世界市場へと投資先を増加させており、結果として日本市場が先細りし続けて国内雇用は弱体化させられてしまうのだろう。人口減少に伴う生産年齢人口の減少があるため、今のところ雇用問題の深刻化には至っていないものの、今後の日本経済の衰退への道は、一握りの世界市場で勝ちあがった巨大企業と、劣化し続ける国内市場向け企業という二極化への道をひたすら進み続けるのだろうか。あまり嬉しくない予測ではあるが、肝心な事はどうやって日本国内へと投資が再び活性化できるのかに掛かっているのだろう。


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