2015年11月16日
独言居士の戯言(第11号)
元参議院議員 峰崎 直樹
風邪をこじらせ、やや2週間ちかく体調不良で仕事もあまりはかどらず、すっかり迷惑をかけてしまう事が多かった。特に、咳がひどく、体力を消耗してしまったようだ。これから寒さも厳しくなる冬を迎えるだけに、皆様方におかれてもくれぐれも風邪にはご注意していただきたい。この通信も、やや1か月近く休んでしまい、もう辞めてしまったのではないか、と思われたに違いない。何とか、これからも元気を出して頑張って行きたい。
パリのテロ事件、国際社会は一致結束して問題の根本解決を
それにしても、パリのテロ事件、ISの仕業という事のようだが、いつまたほかの国で起きるとも限らず、何とかしたいものだ。日本もやがて例外ではなくなるのかもしれない。どう国際的に対抗していけるのか、世界の英知を集めて欲しいものだ。
マイナンバー、安倍政権になって民間活用拡大への動きに懸念
小生のところへマイナンバーの通知が未だ届かない。来年1月から税や社会保障の届け出にマイナンバーを付番することになるわけで、本来は10月5日以降、順次簡易書留でもって届くことになっていた。今のところ、番号の通知が出来ているのは全世帯の10%程度でしか無いようで、総務省はその遅れを認めているようだ。マイナンバー通知が10月から進められると宣伝されていたわけで、その準備に備えていた国民にとって、やや肩透かしを食ったような感じを持たざるを得ない。この番号の通知カードを、写真付きのマイナンバー・カードに変えるのがこれまた大変な作業のようだ。
マイナンバーの定着までには、ある程度の時間がかかりそうだ
先日、全国中小企業連合会の研修会があり、マイナンバーについて国や税理士、社労士、弁護士の方たちからマイナンバー制度についての今日時点での導入に向けた準備についてお聞きする機会があった。そのなかで、1年目に写真付きのマイナンバーカードの作成能力はせいぜい4,000万枚だそうで、国民全員が申請しても最低でも2年はかかるという話であった。鳴り物入りでマイナンバーの導入に向けた宣伝活動が繰り広げられているのだが、1億人を超す国民全員をカバーする現実は大変なことなのだと改めて痛感させられた。ちょっと残念な気がするのは、この制度導入に力を入れてきたからなのだろう。
それ以上に驚いたのは、清水勉弁護士さんのお話を聞いた中で、政権交代後安倍政権になって、マイナンバーを積極的に民間利用に道を開こうとしているという点を指摘された事であろう。清水弁護士は、小生が内閣官房参与として全国47都道府県で開催したシンポジウムの多くの会場に共に足を運んでくださった方で、その当時は日弁連情報対策委員会委員長をされていた方である。清水弁護士は、民主党政権時代には出来るだけプライバシーを守るために情報漏洩を少なくするよう、マイナンバーの適用を最小限にするべく努力していたのだが、政権交代以降、民間資本の言いなりになりつつある実態を指摘され、厳しく批判されていたことが印象的であった。今後、民間への適用拡大は国会での法律改正事項になっているわけで、国会での厳しい監視の目が不可欠になっている。
どうなっているのか、軽減税率によって社会保障財源が削減とは
それにしても、消費税の軽減税率導入に向けた自民党・公明党の動きにはあきれてものが言えなくなる。特に自民党の税制調査会は、これまで時の政権の責任者である総理・総裁と言えどもなかなか手を出せず、自民党税調は聖域とされていたのだが、今回の軽減税率問題に対して公明党側からの執拗な導入要請に対して頑張っていた野田毅会長を更迭させ、後任に宮沢洋一前経済産業大臣を任命する強硬策に打って出た。来年の参議院選挙を含め、公明党・創価学会の強い要請に屈する形で無理筋の税制改悪がまかり通ろうとしている。
何といっても、食料品に軽減税率を導入する際に、食料品の範囲をめぐって出来るだけその範囲を少なくしたい政府・自民党側と、出来るだけ大きく拡大しようとする公明党側の攻防があるようだが、なかなか決着がつかないようだ。最大の難問の一つにぶち当たっているわけで、軽減するために必要な財源も精米だけだと400億円だが、アルコールを除く食料品まで拡大すれば1兆円を超す大規模なものになり、既に4,000億円かかる医療・介護にかかる費用の上限を設定する総合合算制度の導入という「三党合意」が反故にされることになったようだ。社会保障の充実のために消費税の引き上げをすると言っておきながら、社会保障の充実を放棄してまで軽減税率の導入をするなど、とんでもないことが進んでいるにもかかわらず、今のところ国民的な反発はあまり起きていないようだ。来年の参議院選挙の争点の一つとして、大いに問題視していくべきだろう。
インボイスの入らない消費税は、益税を堂々と公認することだ
もう一つの問題は、軽減税率を入れるのにインボイスを導入しないことになりそうだ。これまで多段階に亘る前段階税額控除を進めるためにはインボイスが不可欠だと言われてきたのだが、単一税率でインボイスではなく請求書などを保存することで簡便な方法を取ってきたのは、中小商工業者への配慮からだと言われてきた。その結果、非課税業者にもかかわらず課税したものとして手元に益税が発生することを容認してきていたのだ。という事は、もともとインボイスを導入する必要があったわけで、軽減税率を入れるのなら絶対に必要になると指摘され続けてきた問題である。非課税業者の方たちには、インボイスの発行が認められなくなるわけだが、取引から外されないためには課税業者になれば良いわけで、コンピューターが一般的になりつつある今日、インボイスによる事務処理にはそれほどの困難さがあるとは思えない。
インボイスを入れることによって、仕入れと納品を通じてお互いに税が転化されていることをチェックできるわけで、転嫁問題もクリアーできるのだ。税のコンプライアンスの向上にとって、インボイス制度は優れた仕組みと言えよう。今度の与党税調にとって、最大の問題であり参議院選挙に向けて国民にその問題点を大きく訴えていくべき課題である。民主党をはじめとする野党は、しっかりと国会での追及をしてもらいたいものである。
(続く)