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2017年12月19日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第25号)

元参議院議員 峰崎 直樹

永らく休刊していました「独言居士の戯言」を復刊いたします。と言っても、中身は私が発刊しています「チャランケ通信」を中心に内容をまとめていく事にしたいと思っています。毎週、原則として月曜日に発刊したいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

民進党の行方、統一会派結成へ動くが、うまく纏められるのか

いよいよ2017年も、あと僅かで終わろうとしている。20世紀を大きく変えたロシア革命から100年というのに、あまり大きく取り上げられることもなかった。現実政治の世界では、突然の解散・総選挙の実施と、それに伴う野党第1党の民進党の3分解、結果として安倍政権の国政選挙5連勝をもたらしてしまったことが残念である。

参議院を中心に残された民進党は、今後の党の在り方について3つの方向性を打ち出している。今さら解散して新党を作るという事には抵抗が強く、報道によれば、とりあえずは民進党のままにして国会での「立憲民主党」と「希望の党」との統一会派結成の方向を打ち出したようだ。それでも、統一会派が実現できるかどうか、相手次第の面もあるわけで、すんなりとまとまる可能性は疑わしい。政党助成金の関係もあり、民進党から少しずつ離脱して「立憲民主党」と「希望の党」への参加も、一人一人の自主的判断で行くことになるのかもしれない。地域によってさまざまであろうが、何とも日本の政党政治の行く末は前途多難である。

政党支持率、「希望の党」はジリ貧状態、立憲民主に勢い残存か!?

時事通信社が今月8~11日にかけて実施した世論調査の政党支持率は、自民24,8%、立憲5,0%、公明4,1%、民進1,8%、共産1,7%、維新1,0%、希望0,9%、社民0,6%、支持政党なし58,7%であった。立憲は前月の支持率が5,4%だったので0,4%と微減だったが、希望の党は10月2,6%、11月1,5%、12月0,9%と落ち込み続けており、党勢は明らかに立憲民主党に勢いがある。にもかかわらず、民進党から立憲民主党へと雪崩を打って出て行かないのは、それぞれの地域ごとの選挙情勢が大きく左右しているのだろうか。もう一つ考えられるのは、連合の組織内議員が参議院で多く、それぞれの産別組織ごとに政党支持の違いがあり、個々の政治家の動きに大きな影響を与えていると言えるのかもしれない。

いずれにせよ、民進党のままで統一自治体選挙や参議院選挙を戦えるのかどうか、一度別れてしまった政党の選挙協力は感情的なしこりもあってなかなか難しいだけに、先ずは国会内の統一会派づくりから取り組んで行くしか無いのかもしれない。それについても、立憲民主党や希望の党がどのように対応していくのか、今後の推移を見守っていきたい。

あのオリックスの宮内義彦氏が大変身、一瞬目を疑ったのだが!

実に興味深いインタビュー記事を拝読した。朝日新聞の連載で「平成経済」<第1部グローバル化と危機>の最終回は、「海図なき時代の航海」(かじ取りを担ったトップ3人に聞く)で、企業人からオリックスの宮内義彦氏と日立製作所の中西宏明氏、それに元金融庁長官佐藤隆文氏の3人である。その中で、宮内氏が「資本主義観が変化、分配により力を」との表題の下、次のように語っておられる事に、「間違いではないか」と、やや目を疑ってしまった。ちょっと長くなるが、重要なので引用したい。

「経済が行き詰まった平成では、『会社は誰のものか』という問題も突きつけられた。『経営者は株主に奉仕する』というのが、資本主義の原則だ。私もそれが最も効率的に社会に富をもたらすと訴えてきた。『業績を上げるのが最優先だ』と。今は、この考え方が変わった。

米国は企業の稼ぐ力では抜きんでているが、貧富の格差が社会の亀裂を生んでいる。これを調和させるために社会が払うコストは高い。ここ5年ほどで『そういう資本主義でいいのか』と疑問を抱くようになった。

会社は人、モノ、カネをうまく使って経営する。だが、人はモノやカネとは違う。最大限の配慮が必要だ。経済活動は人に奉仕するために存在する。『昔言っていたことと違う』と言われるかもしれないが、時代に合わせて人は変わるべきだ。次の時代は、より分配に力を入れた社会を目指すべきだ。」

これが2000年代の初めに、小泉・竹中路線の柱だった規制緩和路線を熱心に推進してきたオリックスの宮内義彦氏の発言だとは、驚きでしかなかった。まさか、嘘ではないのか、と何度も読み返してみたのだが、間違いない。人間は、変わり得るものなのだ、と再び確信を持つことができた。

「人」が大切にされる企業社会につくり直して欲しい

経済界の中心が、相変らず製造業中心に動いていることに対して、経済同友会を基盤に活動してこられただけに、厳しい批判をしておられる事にも注目すべきなのだろう。その製造業が、いま、製造現場で何かがおかしくなっている事を感じているだけに、宮内さんのような「資本主義は変わらなければならない」という自覚を持った経営者が多数派になり、「人」が大切にされる企業社会を作り上げて欲しいと思う。

「分配重視」は「再分配」だけでなく、働く者の賃金や労働時間など、「一次分配」から重視して欲しい

「分配」を重視する際、一番重要なのは企業と従業員との間の賃金・労働時間なのであり、「一次分配」を重視して欲しい。それでも、一次分配だけでは「人」が人間らしく生きて行くためには十分ではなく、誰でもが共有地のように使える「医療・介護・子育て・教育」を「再分配」によって充実させ、その再分配がもたらす豊かな土壌のなかで、個々の企業が公正な市場間競争を繰り広げていく事によって、経済が活性化することに努力して欲しいのだ。

経済界の中で、宮内さんのような考え方をする経営者が生まれていることを知る時、日本の社会はまだまだ捨てたものではないな、と思う。宮内さんの発言をあまりウオッチしてきていなかったので、もう既にこうした考え方は周知の事実だったのかもしれないが、朝日新聞の特集欄で見ただけに印象深いものだった。願わくは、今後の宮内さんの言動が経済界だけでなく、社会全体にどのように展開されていくのか、マスメディアに継続してウオッチして欲しいものだ

書評:小野義康著『消費低迷と日本経済』(朝日新書2017年刊)

最後に、最近読んだ本の書評を付しておきたい。小野義康大阪大学名誉教授の書かれた『消費低迷と日本経済』(2017年刊、朝日新書)である。

著者である小野義康教授とは,菅元総理のブレーン役として野党時代にも会ったことがある。民主党政権時代に、内閣府参与として経済社会総合研究所長時代にお会いして、いろいろと経済についてのお話を聞く機会があり、時にはメールを交換していた。

菅元総理とは、東京工業大学と同窓であり、経済理論としてはケインズ派に属するのだろう。理工系出身のエコノミストというやや毛色の変わった経済学者であり、その意味では、主流派の経済学とは別の道を歩まれている。この著書でも本人自身の言葉で語られているのだが、1992年に著書として発刊された『貨幣経済の動学理論』において、日本経済は長期不況の縁に立っていることを予言され、それが現実になってしまったことから見ても、なかなか鋭い問題提起をされるエコノミストだと思う。

読みやすく、今の日本経済についての解り易い内容になっている

この新書は、もともと朝日新聞大阪版・電子版に連載のコラム「ミダス王の誘惑」を中心に『新潮45』に掲載された2つの論説を加え、加筆されたものである。それだけに、大変読みやすくなっている。ミダス王とはギリシア神話で豊穣と葡萄酒の神ディオニュソス(ローマ神話ではバッカス)から、ディオニュソスの教師を助けたお礼に「触れた物を総て金に変える能力を授かった」が、食べ物でもなんでも金に代わり、食べる事さえできなくなり、元に戻してもらったという逸話に触れる。丁度、今の日本経済と同じで、成熟社会になり、何でも得られる社会になったのに、お金を貯めこむばかりで消費を高めようとしない日本経済が、需要不足に陥ってしまっていることを分かり易く説明していく。

「セーの法則」と「合成の誤謬」について、本質的な問題指摘も

アベノミクスによる異次元の金融緩和も、いくら金融を緩和したとしても、肝腎の需要が増えない限り上手く行くはずはなく、金融緩和による余ったマネーの行き先は、株式や土地といった資産価格の引き上げに向けられ、実体経済には回らない事を丁寧に説明され、手厳しく批判している。とくに、現代経済学の「主流派」の基本をなしてきた「セーの法則」を引き出し、作った物だけ売れ、売れ残りも失業も生じないということは、お金が貯蓄に向けられ需要にならない成熟した日本経済では成立しないと批判する。

他方で、ケインズ経済学の中核を為す「合成の誤謬」により、人員削減と支出の抑制が一斉に行われれば、雇用不安と需要減・収益減となってしまって経済が上手く回らなくなると批判。

日本経済への処方箋、再分配政策の重視に基づく財政支出重視へ

ではどうしたら良いのか、ここで登場するのか「再分配政策」の重視である。成熟した社会では、生産能力に余裕があるわけで、再分配政策や公共サービスの拡大を通じた格差是正が景気回復と両立できる。今政府がやるべきこととして、需要を直接創りだす事であり、国民が充実を望む保育・教育・介護・医療などいくらでもあるわけで、まさに再分配政策の重視こそ求められていることを強調する。その点を整理して、「良き社会を創る財政の使い道」の在り方として、次の3つの原則を打ち出す。

①生産力増強や金儲けではなく、国民の生活の質の向上に結び付く
②民間の製品の代替品ではなく
③安定した雇用創出を継続的に保証するもの

また、民間のイノベーションについても、次のような考え方を提起する。

プロセスイノベーションよりはプロダクトイノベーションを目指すべきで、民間企業にとってのライバルは、同業他社ではなくお金であり、魅力ある商品サービスを作ってお金を使わせることが必要だと説く。

必要なことは、日本人が稼いだお金を有意義に消費する事だ

最後にグローバル化した経済の下で、為替の安定化の問題についても触れている。為替相場は、所詮は経常収支の動向に依拠して決まるわけで、円高が進み国際競争力が落ち込む中で、更なる生産効率の向上や外国人による「瀑買い」への依存は、ますます円高をもたらす。必要なことは日本人が稼いだお金を有意義に消費することなのだ、とここでも一貫した需要サイド重視の視点が強調される。今の大企業は政府からチヤホヤされているが、結果として日本経済への貢献度合いは低く、国内需要の喚起に努める事こそ力を入れるべきことを主張している。

実に、清々しい読後感がでてくる一書である。


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