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2018年2月13日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第33号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

世界同時株安の衝撃、ビットコイン下落は「炭鉱のカナリア」か

先週、ニューヨーク株式市場から始まった株価は、大幅な下落が進み、東京株式市場も連動して下落するなど、世界的な金融市場の不安定さが露呈した。東京市場では、2月9日も大きく下落しており、今週の動きが気になるところではある。日本は12日が休日で市場は休み、週明けのニューヨーク市場の動きが注目される。

この株価の大幅な下落の前に、ビットコインという仮想通貨のバブルの崩壊があったことも忘れることは出来ない。昨年1年間で、ビットコインの価格が20倍にも上昇し、年末には一気に半値にまで下落したわけで、今度の株式市場や債券市場の価格下落と一体のものとして見ておく必要がありそうだ。背景には、言うまでもなく世界的な金融緩和の蔓延がある。もしかすると仮想通貨ビットコインの動きや、コインチェックからの仮想通貨ネムの簒奪騒動は、「炭鉱のカナリア」だったのかもしれない。

GS元会長ジャック・オニール氏やグリーンスパン元総裁の指摘が正鵠を突いていたのでは

この「通信」でも、つい1カ月前の事だが、1月8日の第204号で、元ゴールドマンサックス会長ジム・オニール氏の発言を引用した記事を再掲しておきたい。(出所は『週刊エコノミスト』1月2・9日合併号より)

「問題が出で来るとすれば、米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECBなど世界の中央銀行が金融引き締めに転じる時だ。国債利回りが大幅に上がり、金融市場のボラティリティ(変動率)が高まりかねない。だが、それまでは大丈夫だ)」。さらに「認識できる世界経済のリスクを上げるとしたら、利上げだ」と断定していたことが印象的である。ズバリ、今回の事態を予見しているのだ。

というのも、ニューヨーク市場の株価が下落し始めたのは、2月2日の米雇用統計が公表され、労働市場は失業率が4,1%にまで低下し事実上の完全雇用状態であつた。また、1月の時間当たり賃金が対前年同月比2,9%上昇したことに連動するかのように、アメリカ長期国債(10年物)金利が2,8%台へと上昇したことに端を発している。長期金利の上昇は資産価格の下落をもたらし、株価の下落へと連動するわけで、オニール氏の指摘が見事に当たったと言えよう。

もっとも、オニール氏だけでなく、元FRB議長のグリーンスパン氏も、今の株式市場だけでなく債券市場もバブル状態にあると警告し続けてきたわけで、今回の債券市場の要である長期金利の上昇は、債券市場のバブル状態の解消が始まり株式市場へと連動したものと見ることができる。2月4日からFRBの総裁になったパウエル氏が、就任早々これから金融政策をどのように展開していくのか、まさに試金石なのだろう。

パウエルFRB新総裁の「出口政策」完遂に向けた試練に注目

これまで2018年は3回の金利引き上げをするのではないか、と予想されていたのだが、ひょっとするとそれ以上の引上げになる可能性すら出てきた、と市場関係者は判断し始めたのかもしれない。つまりは、アメリカ経済が絶好調なところへ、トランプ大統領が進める大幅な減税(10年間で1,5兆ドル)や大型の公共事業投資(10年間で1,7兆ドル)が加わることによって、景気の過熱、インフレの危険性から長期金利の大幅な上昇が進展するのではないか、と見込み始めたのだ。

そうした声が出ている中での株価の下落であり、本来多くの国民にとって喜ぶべき経済指標が、下落の要因になる経済状態こそ問題なのだろう。これまで、「適温相場」という微温湯のような状態の中で株価の上昇が進んでいたわけだが、完全雇用状態の下で賃金上昇が始まり金利の上昇が進むという普通の状態になることが、株価(資産価格)の下落をもたらすわけで、この問題を乗り越えなければ「出口戦略」は完遂できない。

トランプ大統領にとっては、株式市場大幅な下落は政権へのダメージに繋がり、今年秋の中間選挙への影響が心配されるわけで、FRBへの露骨な介入も十分に予想されるところである。アメリカはリーマンショック以降今年で9年間継続して景気が好調で、そろそろ景気循環的には不況へと進むのではないか、と見られるだけに、今後のアメリカの金融・財政政策の行方が注目される。

黒田総裁再任へ、日本の金融政策は大きな変化はなさそうだ

アメリカの動きと並んで、日本の金融政策の行方を占うものとして日銀総裁・副総裁の人事の動きが大手新聞にも報道され始めてきた。黒田日銀総裁の続投という事のようだ。総裁の任期は、4月8日までであり、副総裁の任期が3月19日で切れるため、国会での同意人事を得るためにはそろそろ総裁・副総裁の人選が固められる時期に来ていた。黒田総裁の再任以外には、スイス大使の本田悦郎氏や伊藤隆敏コロンビア大学教授等の名前が挙がっていたし、日銀からは今の中曾副総裁や雨宮日銀理事の昇格も予想されていた。

結果的には、無難なところで黒田総裁の再任となったようだが、本田悦郎氏が総裁になれば、今まで以上に金融緩和政策を強化するだけでなく、「シムズ理論」なる考えによる赤字財政支出の更なる拡大をすすめ、消費税の引き上げは当然延期する考え方を取るのではないか、と見られてきた。どうやら、そういった方針にまで踏み込むことは無さそうだ。黒田総裁には、今進めている金融緩和政策を早く手仕舞いして欲しいのだが、なかなか「君子豹変する」というわけには行かないだろう。

岩田副総裁、「再任されないと確信」発言、未だ辞めていない理由は

こうした日銀総裁・副総裁の人事の問題が世間で論議され始めた中で、実にいやな発言が飛び出してきた。1月31日大分市で副総裁の岩田喜久男氏が、「再任されないと確信しています」と言い切ったと報ぜられている。2月5日には国会でも議論になり、岩田氏は「自らの再任うんぬんに言及したのは適切でなかった」と答弁したようだ。

なぜ私がこの発言を問題にするのか。5年前日銀副総裁に就任する際、日銀が量的金融緩和を進めて行けば必ず2%のインフレは達成できると断言され、達成できなければ責任を取って「辞任」するとまで明言されたのだ。結果として、2年以内に実現できなかったどころか6回も延期し、量的緩和からイールドカーブコントロールという実質的な金利政策に移行したにもかかわらず追認し、未だに副総裁の座についていて「再任はされないと確信しています」と発言されること自体が理解できないのだ。はたして、学者としての矜持はどこへ行ったのか、よく恥ずかしくなく日銀副総裁として座っておられるな、と思うからに他ならない。

アメリカの長期金利上昇、日本で起きたらどんなことになるのか

さて、日銀の人事問題はさておいて、日本に取って今回の株式相場へ大きな影響を与えたのが、出口戦略を進み始めたアメリカ発の金利水準だったことを深刻に考える必要がありそうだ。というのも、長期金利の上昇は、一体どのような問題をもたらすのか、財政赤字の累積額がGDPの2,5倍近くある日本の場合、深刻に考えておく必要があるからだ。

内閣府が1月末に発表した「中長期の経済財政に関する試算」が公表された。これによると2020年度の国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)は11兆円近い赤字であり、2020年度の目標から遅れること7年という事になる。もちろん、この試算を前提にさらなる財政支出改革を進めることで前倒しをするのだろうが、安倍政権の財政改革に対する本気度は感ぜられない。

政府の「中長期の経済財政に関する試算」、前提条件が酷過ぎる

この試算の前提条件が余りにも甘く、「成長実現ケース」では、相変わらず実質2%強、名目3%台半ばの高成長を前提にしている。潜在成長率は1%程度でしかないのにどうして高い成長率を達成できるのか、是非とも国会での明快な説明を求めるべきだ。さらに、問題にしたいのは、この間財政赤字の累積額が大きく増大したのに、政府債務残高の対GDP比率が大きく低下するシナリオを維持している事だろう。「成長実現ケース」では2017年度の189,4%から2027年度の158,3%へと低下する。それが実現しない「ペースラインケース」でも189.4%から2025年度は181,3%へと低下する。何ということは無い、いずれのケースでも名目成長率よりも名目長期金利が低く設定され、累積債務額の対GDP比が下がるように設定されているからなのだ。日銀の金融政策によって、長期金利をゼロに抑えているから実現できるだけに、何時までもゼロのままになるわけではないはずだ。そもそも、プライマリー赤字の解消こそ、先ずは実現をしなければならない目標だったはずだが、それが後景に退き始めているのではないか。

日本も労働力不足は深刻、賃上げが進めば長期金利にまで影響必至、やがて財政赤字は発散し国民生活は塗炭の苦しみへ

ここで、アメリカの今回の長期国債利率の上昇が起きたことが、日本でも同じように起きたらどうなるのだろうか。2%のインフレ目標達成に向けて、政府ですら3%の賃上げを経済界に要求しているし、労働力不足はますます深刻化している。それが、実際に賃上げとなり、2%のインフレが実現されたら長期金利2%を上回ることは確実であろう。そうなれば、とても対GDP比でみた累積債務残高は低下するどころか、発散することになるわけで、日本財政の抱える最大の問題は金利の上昇に脆弱になっている事なのだ。日銀が、必死になって国債金利の上昇を抑えようとしても、抑えきれなくなればその時に日本の深刻な財政が国民生活を破壊する。それがいつ来るのか、間違いないのは確実にその道を歩んでいる事だろう。実に無責任な政治が罷り通ろうとしているのだ。


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