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2018年4月16日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第42号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

いよいよ安倍総理は窮地へ、加計学園問題の面談記録が嘘を暴く

安倍政権が森友・加計問題の「ドツボ」に嵌って、政権運営が怪しくなり始めて来た。森友問題に続いて加計問題についても、愛媛県と今治市の担当者及び加計学園幹部が官邸を訪問し、当時の柳瀬首相秘書官だけでなく藤原豊内閣府審議官と話し合った面談記録が愛媛県庁だけでなく農林水産省でも発見されたことを農水大臣が明らかにした。その中には「首相案件」という表現だけでなく、安倍総理と学園理事長(加計孝太郎氏)が会食した際、加計学園の獣医学部新設の事が話題になったという事が明確になったのだ。これは実に重大な面談記録であり、これまでの総理発言との整合性が問われる。安倍総理は、特区に認定される2017年1月20日までは知らなかったと国会で答弁しており、この面談記録は2015年4月2日のものであり、明らかに嘘をついたことになる。この面談記録を書いた愛媛県関係者には、嘘の記録を書く必要が無いわけで、その点は国会で参考人招致をすべきであろう。

さらに、現在経産省のナンバー2と言われる経済産業審議官柳瀬元総理秘書官を国会に喚問する方向のようだが、なんと今週中にもアメリカのトランプ大統領と会談する安倍総理に随行することになっているそうだ。それを止めて国会審議に参加するのか、帰国して国会に出席するのか、まだ決まっていないようだが、柳瀬氏が述べている「記憶する限り、会ったことはない」という発言は、だれも信用できない事が明確になりつつある。既に国会での答弁が為されているわけで、議院証言法に基づく証人喚問をすべきであろう。当然、柳瀬氏だけでなく藤原審議官も一緒に、ゴールデンウイーク前に呼ぶ必要がある。

国会での徹底的な追及、柳瀬氏や藤原氏の証人喚問を

いずれにせよ、安倍総理の森友学園や加計学園の問題については、どこまでも疑惑が続いて行くわけで、内閣支持率の低下とともに政権自体の体力が低下して行くことは間違いない。今回の加計学園問題の面談記録は、安倍総理が嘘の答弁をしたことが明確になりつつあるわけで、それだけに、今秋の安倍総理の3選どころか、内閣が瓦解してしまう状況に追い込まれつつあると見ていい。今後、状況を打破できるだけの起死回生のホームランは期待できないし、外交でも北朝鮮問題での圧力強化路線が完全に浮き上がりつつある中で、拉致問題の解決も考えられない。さらに、プーチン大統領が3選し、北方領土問題の解決という道筋も、例え歯舞・色丹の2島返還がテーブルに上がったとしても、ロシア側が求めている日米安全保障条約の対象外にするわけにはいかないわけで、今の世界情勢からすれば進展は期待できそうにない。

どうやら、安倍退陣へと流れは加速して行くのではないか。

90歳を超えられた伊東光晴名誉教授の論文
「安倍経済政策を全面否定する」(『世界』5月号)を読んで思う事

そうした中で、アベノミクスと称される経済政策だけが、何とか自分ではうまく行っていると思っているかも知れない。取り巻きの御用学者に近い人たちも、それを「ヨイショ」しているのだから困ったものだ。だが、最新の月刊誌『世界』5月号には、90歳を超えられてなお健筆を揮われている伊東光晴京都大学名誉教授が「安倍経済政策を全面否定する」という論文を寄稿されている。また、『中央公論』5月号にも「アベノミクスの賞味期限」という特集を組んでいて、興味深い論点が提示されている。今回は、伊東論文を中心に、安倍経済政策についてどのように捉えて行くべきなのか、考えてみたい。

安倍第二次政権が発足して、「3本の矢」と称する経済政策が打ち出されてきた。その第一の矢である「金融緩和」が黒田総裁の下で進められたのが丁度5年前で、2%のインフレを2年以内に実現するべく今までの国債購入額の2倍にする「異次元の金融緩和」政策が取られてきた。多くの国民は、その結果によって円安が進むと共に株式市場も上昇し、物価も1年後には1%台半ばまで上がり始めて来たと思い込んでいた。

伊東教授、GPIF保有140兆円基金のポートフォリオ変更に注目

この点について伊東教授は、アベノミクスが提唱される前の11月13日(翌日が党首討論で、野田首相が解散を提起)から上昇しはじめ、その株価の上昇は海外投資家の買いによって実現したものだとされ、安倍政権の運の良さを指摘される。その後、株価の上昇は、日銀の更なる金融緩和策と共に、REITと共にETFの購入へと突き進む。中央銀行の施策としては異常な展開であるが、株価の上昇が内閣にとって命綱とも言えるものとなった事を見逃すことは出来ない。さらに、後に述べるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、140兆円にもなんなんとする世界最大の運用基金のポートフォリオを変更し、国内外の株式運用の比率を倍以上(いずれも12%から25%へ)に引き上げたことも見ておく必要がある。

安倍経済政策の肝腎な点は、円高から円安への転換であり、
GPIF約31兆円が外国債券・株式に投入、大規模為替介入で円安を実現へ

株価の引き上げについては、概ね自分もそのように捉えていたのだが、肝腎なのはGPIFを使っての円安誘導についての指摘であり、あまり指摘されることが少なかった点ではないかと思う。伊東教授はGPIFの140兆円にも及ぶ巨額の資金の一部が、外国債券や外国株式の購入に使われ、その額は2012年3月末の22兆9506億円から2017年3月末の54兆6079億円へと、実に31兆円を超す大規模な資金投入が進められていた事を数値で明らかにされる。

ちなみに過去財務省が実施した為替介入で大規模なものは、榊原・黒田介入で約25兆円、溝口テイラー介入で約32兆円となっており、今回のGPIFを使った約31兆円は、その規模に於いて過去最高額に匹敵するものになっている事実に注目すべきだろう。

GPIFをソブリン・ウエルス・ファンド化する構想に反対した事は正しかったのだろうか???

このGPIFの140兆円の年金積立基金について、当時私がどのように考えてきたのか、思い出してみた。2006年から2007年にかけて金融担当大臣であった山本有二衆議院議員から、世界的に注目すべき動きとしてSWF「ソブリン・ウエルス・ファンド」を日本でも動かすべきではないか、という提案を受けたことがある。その際、GPIFという年金積立基金を運用してはどうか、という中身であったと記憶している。当面、その設立に向けた超党派の議員連盟をつくるため、小生に会長になるよう勧められたのだが、断ったことを思いだす。

というのも、国民の公的年金の大切な積立金であり、市場に晒すことはあってはならないのではないか。あの市場重視のアメリカにおいてすら、公的年金の積立金は「非市場性国債」で運用されているわけで、日本の公的年金の積立金をSWFで運用すべきではないと拒否をしたのだ。今でも、その考え方は変わらないのであるが、日本経済が抱えていたデフレからの脱却や失業者率を低下させるために、1ドル80円を割るような超円高への対抗策として、外債や外国証券を購入することによる為替相場の正常化を進める以外に手段がないと判断されれば、柔軟に考えるべきだったのだろうか。

輸出主導で日本経済回復へ、しかし「流動性の罠」は解消せず

話を元に戻したい。外国の債券や株式を購入することによって、1ドル80円を割るような円高から、一時は120円近くまで円安へと為替相場は下落させ、輸出企業の利益が大きく増加するとともに、輸出主導の景気回復をけん引してきたことは周知のことである。われわれは、為替相場への介入と言えば、財務省による直接介入という手段だけを頭に浮かべてきたのだが、伊東教授はGPIFをつかった大規模な外債・外国株への投資が進められたことを指摘される。たしかに、2012年から13年頃にかけてGPIF改革が焦点になり、資金運用のポートフォリオに於いて国内債権の比率が60%から35%へと大きく削減され、外国債券は11%から15%へ、外国株式は12%から25%へと大きくそのウエイトを高めたのだ。その結果が、円安となって日本経済の輸出主導の景気回復へと連なったわけだ。

それにしても、為替介入をどのように理解したらよいのだろうか

伊東教授は、為替介入については次のように捉えておられる。

「近隣諸国に不況を輸出してはならない。だが一国経済の調整メカニズムとして、為替率の変動は重要な手段であることを忘れてはならない」(82p)

今、振り返ってみる時、1997年の金融危機以降、デフレ下の日本経済の円高にたいして、円安への転換を進めるべきではないか、と思ったことがあるが、為替介入という手段は採るべきではないし、やったとしてもその効果は一時的でしかないと判断していたことを思いだす。もし、伊東教授が指摘されるような柔軟なやり方が、巨額な公的年金基金を使って進められならば、その後の円高の下で長く続いたデフレによる苦しい時代を乗り越えることができていたのでは、と思われてならない。

為替による調整ができないで苦しんでいるEU内のギリシアやスペインを見る時、そのことを痛感させられる。逆にドイツのようにユーロ相場が国際競争力の強いドイツは有利に作用しているわけだ。GPIF改革についても、国内の株式運用の拡大に眼が向く余り、海外への円売りドル買いとなることには目が向いていなかった。当時の多くの専門家は、寡聞にして円安政策への転換を前面に出すことは殆どいなかったように記憶している。マクロ経済から見た時、経常収支の黒字国は、結果として為替による通貨高によって調整されるものと考えていたわけだ。

安倍経済政策は、大企業の利益を擁護・対抗勢力たるべき労働組合の衰退・弱体化、
労働者政党の崩壊や社会の保守化を問題指摘

もっとも、伊東教授は日本経済が貨幣供給をいくら増やしても利子率は低下しないため、不況対策として金融政策が機能しないという「流動性のわな」に陥っているとみておられ、貨幣供給を増やしても金融機関は日銀の当座預金に積み上げるだけだと喝破される。事態の推移は、まさにその通りに推移してきたわけで、貨幣数量説に対する厳しい批判として受け止めるべきだろう。

では、ケインズも追及した雇用の安定が今の日本で実現している事については、どう捉えておられるのだろうか。それは大幅な国債発行による財政支出によるもので、それを可能にしているのが円安による国際収支の黒字であり、それに基づく好況だと見ておられる。もちろん、ゼロ金利による国債金利負担の低下という国債ファイナンスで支えていることも指摘される。

かくして、この日本経済は悪くはないが、「流動性のワナにはまった斜陽経済だ」と性格付けられ、輸出大企業には良いが非正規労働者は酷い状態にあると、厳しく見ておられる。安倍経済政策が始まって法人税が40%から20%まで削減されながら内部留保だけが100兆円近く増加しているのに、働く労働者・国民の賃金は殆ど上昇することなく、労働分配率は2013年の72,3%から2015年の67,5%へと大きく低下している。対抗勢力としての「労働組合の衰退・弱体化、労働者政党の崩壊」と同時に、その背後にある「社会の保守化」を指摘されている。警世の言葉をしっかりと噛みしめる時なのだろう。


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