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労福協 活動レポート

2018年5月14日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第46号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

加計学園問題の疑惑深まる、国会での柳瀬発言に違和感を感ずる

連休明けの1週間が過ぎ去った。国会の方は、柳瀬元総理秘書官の参考人招致を実施することによって正常化へと踏み切り、今週の14日には安倍総理も出席して衆議院予算委員会での集中審議が実施される予定である。柳瀬元秘書官の今回の国会答弁では、安倍総理が加計学園獣医学部新設問題に関与していた疑惑は晴れるに至っておらず、むしろ加計学園関係者らと3回も会っていたことを認めたものの、総理には何も報告していなかったと明言していたことにやや違和感を覚えた。それは私だけではなかったようで、前川喜平元文科事務次官は12日徳島市での講演で、「首相に報告もしていないと言うのは信じられない」と批判し、当日の柳瀬氏の答弁は「一生懸命裸の王様に服を着させようとしているが、その服が透け透け」と例え、会場からの笑いを呼んでいた、とロイター通信は報じている。

中村愛媛県知事、柳瀬元総理秘書官を厳しく批判、国会の参考人に呼ぶべきでは

さらに、愛媛県の中村知事は「嘘は他人を巻き込むことになる」と改めて厳しく柳瀬氏を批判しており、野党側は愛媛県知事の参考人招致を求めたが、与党側は拒否していて実現の可能性は未だ開けていない。是非とも、国会の場で引き続いて事実の解明が必要なようだ。加計学園問題も、全容解明はまだまだ先にまで長引きそうで、安倍政権への支持率を引き下げ続けて行くに違いない。さらに、財務省の事務次官のセクハラ問題に関連した麻生財務大臣の「記者にはめられた可能性、否定できない」発言や、自民党「魔の3回生」の一人である衆議院議員が、結婚式の披露宴での子供を作らない女性は税金泥棒、といった趣旨の問題発言など、一体全体自民党内はどうなっているのか、と言わざるを得なくなっているようだ。自民党は劣化し始めているのだろうか。

石原信雄・園田博之、両元官房副長官経験者のヒアリングを読む

こうしたことが続くなか、朝日新聞13日朝刊「日曜に想う」で、曾我豪編集委員が「平成の長老 平衡感覚と自省の念」と題して石原信雄、園田博之の二人から、平成を回顧する企画でのヒアリングに痛く感銘を受けたことを論じている。ちなみに、石原さんは現在91歳、園田さんは76歳の現役衆議院議員だが、どこか体調が悪かったのだろうか、退院直後のインタビューだったようだ。ともに、内閣官房副長官を事務・政務の違いはあるが担当されてきた。特に、石原氏は竹下内閣から村山内閣まで7人の総理大臣を支え、政治と官僚との間を取り持たれてきた。また、今問題になっている政治主導と官僚人事に伴う忖度の問題など、縦横に論じておられる。さらに園田議員は、今の政治を変えて行くためには選挙制度を変える必要があり、政界の再編成が必要だと論じておられる。

お二人のヒアリングの一部は、4月26日の朝日新聞朝刊にインタビュー記事として要約されたものが掲載されていたが、今回はWEBRONZAに要約前の詳細なインタビュー記事として掲載されており、多くの貴重な発言を知ることとなった。以下、このWEBRONZAの詳細版について取り上げてみたい。

石原信雄氏の内閣機能強化=各省割拠主義から官邸に人事権移管、
強くなり過ぎて各省委縮=権限は持つだけで各省原案尊重すべき?!

石原氏のインタビューで印象的だったことは、やはり人事の問題だろう。石原氏は内閣機能強化に携わり、橋本内閣の下で「割拠主義を克服するために、内閣の指導力を強くした方がいいんじゃないか」、特に危機管理が求められる時には「官邸の機能強化」が必要だ、と阪神淡路大震災の時の反省を踏まえて発言されている。その際、官邸の指導力強化のために必要なのは「結局ね、人事権なんです」と明確にされている。その後の2014年に実現する内閣人事局に繋がるわけだが、こうした経過と最近の森友・加計問題など、今日の政権・官邸と省庁官僚の関係については、次のように指摘されている。

「今は内閣の指導力は強くなっているが、若干感想を言わせてもらうと強くなりすぎたかなと。各省が委縮しちゃう心配があるんですね。内閣が人事で強い権限を持つのはいいけど、もってるだけで意味があるんですから、あんまり行使しない。基本的には各省の原案を尊重する方がいい。」

ここは、微妙なバランスが重要だと発言されているのだろうが、この間の各省庁内の人事への官邸の介入は、かなり各省が委縮させられてきたわけで、どうしたら制度的にバランスを取れるのか、その仕組みの必要性への言及はない。一部官邸内の政治家だけで決定している事の是正が必要ではないか、と思えてならない。

さらにヒアリングの中で、財務省の決裁文書の改竄問題について、石原氏は、
「国会答弁は何でもかんでも全部しゃべるわけじゃなくて、必要最小限ですよ。聞かれた以上の事を答弁でしゃべる必要はない。なのに答弁内容と整合性とるために決裁文書を書き換えるなんて考えられない。自信がなくなったからなんですかね。」

ちょっと、「行き過ぎ」だとか「自信の無さ」といった事の背景にある「人事権」行使の弊害の是正をきちんと進めて行くべきだ、という指摘は無い。

ただ、中央省庁の再編については例えば10年に一度行政組織を見直すことをルール化すべきことを主張しておられる。仕事が少なくなった経産省が手つかずで残って他省庁への越権を次から次へと繰り広げている弊害など、是非とも考えるべき点だろう。

園田発言の「真っ当な第二保守政党」づくり、
枝野幸男立憲民主党の立ち位置=「保守リベラル」に良く似ている

次は、園田衆議院議員のヒアリングである。「政界再編の仕掛け人」と言われた園田衆議院議員とは、自社さ政権時代に何度かお会いしたことがあり、なかなかの人情家・苦労人で将来頭角を現すのではないか、と嘱望されたこともあった人財だった。特に、もう一人の「切れ者」で政界屈指の論客であった田中秀正代議士とは好対照だっただけに、印象深く記憶に強く残っている。

このヒアリングを読んで今の時点で興味深く感ずるのは、「さきがけ」が自民党を飛び出して政界再編成に乗り出す時の気持ちとして「まっとうな第二の保守勢力」を作るのが目標だった、という指摘である。この言葉は、どこかで聞いたことがある、そうだ枝野幸男立憲民主党代表が「保守リベラル」と自分の作った党を表現し、最近造られたポスターには「真っ当な政治」を掲げていることを思いだした。枝野氏は、国民新党からさきがけ、そして民主党へと進んだわけで、園田さんとは接点があったことは間違いない。それだけに、これからの立憲民主党と園田衆議院議員の連動した動きがあるのかどうか、ウオッチングして行く必要がありそうだ。立憲民主党と国民民主党との関係が注目されているが、案外政界再編成に向けて、特に選挙制度の改革に執念を持っておられる園田議員だけに、何らかの動き始められる可能性を見ておくべきだろう。

細川政権誕生と選挙制度改革、なぜ小選挙区比例代表併用制にしなかったのか?
民主党設立時、興味深い鳩山排除発言の裏話!?

それにしても、園田さん達さきがけが、細川政権誕生の際、選挙制度改革を提示する際、何故小選挙区比例代表「並立制」にして、「併用制」というドイツのような事実上の比例代表制にしなかったのだろうか、残念ながらそうした件にはあまり触れられていない。

さらに、民主党が立ち上がる時、何故武村正義代表や村山党首が「排除」されたのか、という背景に触れられていて興味深かった。後で聞いたら「私とか武村とか田中秀征とかし一緒になるのが嫌だったようですね、鳩山さんは。『すべてこの3人(武村、園田、田中)で決めて、自分の意見を聞いてくれない』と言ったらしいが、違うんですよ。いつも4人で決めようとしたんだけど、鳩山さんが意見を言わないんです」とのことだったと発言している。思うに、鳩山さんと他の政治家とは、政治力量が違い過ぎたのではないだろうか。

それにしても、今の野党の乱立状況を考える時、政界再々編成に向けてどのような展望を持つべきなのか、元気になられた園田氏は未だ75歳、最後の御奉公が残っているようだ。頑張って欲しい。

いよいよ歴史的な米朝首脳会談、6月12日シンガポール開催決定

話は国際関係に替わるが、北朝鮮問題の動きがかなり進んでいるようだ。歴史的な米朝首脳会談は、6月12日シンガポールで開催される事が明らかになった。当初、板門店での会談という話もあったようだが、色々な理由があったのだろう。また、時期について、当初5月下旬かと言われていたが、カナダでのG7の後、ロシアでのワールドカップ開催前という絶妙の時機が選ばれたようだ。

どんな背景があるのか、突如として習近平と金正恩両首脳による首脳会談が大連で開催され、他方で北朝鮮に拘束されていた3人のアメリカ人が解放されるなど、慌ただしく事態は進展しているようだ、そうした最中に開催された中国・韓国・日本の首脳会談が東京で開催され、何とか共同声明に漕ぎ着けたものの、北朝鮮との和解に向けた韓国と中国によって声明内容はかなり抑制されたものになったようで、安倍政権の外交成果を上げるまでには至っていないようだ。こんご、日ロの首脳会談がモスクワで今月26日から開催されるようだが、北方領土の返還への展望は全く見えておらず、ここでも安倍外交の行きづまりが誰の目にも明らかになりつつある。

白井聡著『国体論 菊と星条旗』(集英社新書)、実に興味深く読了

最近ベストセラーになって話題を呼んでいる『国体論 菊と星条旗』(集英社新書)を読み終えた。著者である白井聡氏は『永続敗戦論』で話題を呼び、石橋湛山賞などを受賞されている。今回は、その続編とでもいうべきものなのかもしれないが、明治維新以降第二次大戦敗戦、そしてGHQ占領と戦後の憲法体制から平成が終焉しようとする今日までの150年間を、『国体』という概念で以て形成期、相対的安定期、崩壊期に分けて分析されている。戦前の「天皇制という『国体』」が終焉したのではなく、戦後の「アメリカという『国体』」へ再編成され、今日に至っているという捉え方をされている。いまや「アメリカという『国体』」をどのように乗り越えていけるのか、それなくして日本の自立は有りえない事を知るにつけ、昨今の朝鮮半島をめぐる世界の動きや、日本に対する鉄鋼・アルミニウム関税強化を除外しないアメリカの動きなども、この著書を読むことで良く理解できるようになったと思う。是非ともお勧めしたい好著である。


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