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労福協 活動レポート

2018年5月21日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第47号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

佐川元国税庁長官不起訴へ、これで日本は法治国家といえるのか

予想されていたこととはいえ、大阪地検特捜部は佐川元国税庁長官を不起訴(嫌疑不十分)にすることを5月18日決めた。はたして日本は、これで法治国家と堂々と胸を張って言えるのだろうか。財務省として公式に改ざんを認めたわけで、刑法156条にある「虚偽文書作成罪」にあたる事は間違いないだろう。にもかかわらず不起訴処分にしたことは、政権中枢に都合のいい行動を官僚がとるなら、例え違法行為であっても見逃してもらえるという悪しき前例だけが残ってしまう。

検察にとっても、今回担当した大阪地検特捜部は、数年前に証拠改ざん・ねつ造して冤罪を作ってきた過去を持ってきただけに、絶好の汚名挽回のチャンスでもあったわけだ。地検特捜部がいくらやる気だったとしても、検察上層部が最後は決めたとされているが、今回の不起訴処分で検察全体のモラルやモラールがダウンする事は必至だ。当然佐川氏を告発していた弁護士グループは、検察審査会に訴えるだろうから、事件の究明はそれなりに続くに違いない。佐川氏だけでなく事務次官のセクハラ問題も加わり、財務大臣の政治責任も取らないなかで、この問題がウヤムヤなまま終わることの無いよう、せめて国会に第三者委員会を設置して真相を政治の場でも解明していくべきだろう。

柳瀬発言に加計問題の疑惑解消せず、国会の野党質問は不十分

もっとも加計学園問題の方は、柳瀬元総理秘書官の参考人招致と安倍総理も出席した衆参予算委員会の集中審議が連休明けに実施されてきた。野党側も今一つ追及する力が不十分だったが、国民の安倍総理と加計孝太郎理事長との友人関係による獣医学部新設容認疑惑は、依然としてすっきりと解明されていないようだ。最新のNHKの世論調査でも、柳瀬氏の説明に「納得できない」とする回答が全体の8割近くに達している。今後、どのように問題点を追及して行けるのか、野党側の質問力が問われているようだ。

元検事郷原信郎氏、ブログで加計問題の黒幕・今井政務秘書官を厳しく批判、
操られる安倍首相のお粗末さに呆れる

そうした中で、元検事の郷原信郎氏が開設しておられるブログ『郷原信郎が斬る』での「首相が秘書官に『口裏合せ』を懸念されることの”異常”」(5月19日)という問題指摘に注目した。

ここでは、昨年7月の閉会中審査と5月10日に開催された参考人招致時における柳瀬元総理秘書官の答弁内容、それと18日に開催された安倍総理の答弁内容を丁寧に精査され、それに柳瀬氏の参考人招致日当日である10日に発売された『文芸春秋』6月号の今井尚哉政務秘書官インタビュー記事を引用されながら、安倍総理に火の粉が転化しないよう巧妙に絵を描いてきた今井政務秘書官こそが諸悪の根源であり、更迭すべきことを主張されている。

ちなみに、今井政務秘書官は安倍第二次政権で政務秘書官に就任以来初めて公的なメディアに、しかも自発的にインタビューに応じたとのことだ。それだけ柳瀬氏の国会での再度の参考人発言が、今回の加計問題の重要な局面だと見たのだろう。

詳しくは郷原さんのブログを直接読んでいただきたいのだが、私なりに要約すると、次のようなことを指摘されている。

加計学園側と会った重要事実、
今井政務秘書官がゴールデンウイーク中まで報告しなかった経過・理由についての安倍総理答弁

まず、柳瀬氏が昨年7月の閉会中審査に於いて、2015年4月に加計学園関係者とは面会した記憶はあったが、愛媛県、今治市側とは合った記憶は無い、という事を国会で答弁する前に、今井政務秘書官に報告していたことが今回の参考人質疑で明らかになった。

さらに、続けて開催された衆参の予算委員会の集中審議の場で、安倍首相は次のように答弁している。

「柳瀬氏と加計学園関係者とが首相官邸で面談していたことは、柳瀬氏から聞いた今井秘書官から、ゴールデンウイーク中に『柳瀬元秘書官が国会に呼ばれれば学園関係者と面会したことを認める』との報道がなされた際に、報告を受けて知った」と述べている。つまり安倍首相は、今井秘書官が昨年7月に柳瀬氏と加計学園関係者の面談の事実を知りながら、それを今年のゴールデンウイークまで知らせなかったというわけだ。

そこで、何故そのような重大な報告をその時まで受けなかったのか、理由を質問されたことに対して、つぎのように答えている。

「柳瀬元秘書官から、『加計学園関係の獣医学の専門家から話を聞いた記憶はあるが今治市の方と合った記憶はない』との話を聞いたとのことでした。ただ当時は今治市との面会の有無が争点になるなかで、このやり取りを含め私に報告が来なかったということですが、同時に、いわば私が柳瀬元秘書官と、こういうことについて口裏を合わせているという事はあってはならない事でございますので、その柳瀬元秘書官は参考人として呼ばれていましたので、このやり取りについては、私に伝えない方がいいだろうという事であったとのことでございます。その後、今井秘書官も柳瀬秘書官とは、こうしたことについては連絡を取っていないという事でございます。」

『口裏合わせ』を防ぐために重要事実を知らせなかったとは???

何という事だろう、今井氏は安倍首相が「口裏合わせ」をすることを懸念して、柳瀬氏と加計学園関係者との官邸での面談の事を伝えなかったというのだ。最も近い立場で首相を支えるべき政務秘書官が「安倍首相がそのような軽率な行為を行う恐れがあると思っていた」ことであり、本来であれば余りにも時の総理大臣に対して失礼な対応と言わざるを得ない話だ。これだけ問題になっている事実を隠し続けてきたという事であれば、罪は大きい。

それ以上に、安倍首相はゴールデンウイーク時に「口裏合わせ」をしないように今までお話ししていなかったという事を聞いたとき、どんな反応をしたのか、「やはり今井さんは頭がいいね」と思ったのか、「そんなことをするとでも思っているのか、と激怒したのか」、おそらく、この場を切り抜けるために、そんな屁理屈を受け容れたのであろう。実に情けない総理だと思わざるを得ない。

要は、安倍首相は今井政務秘書官の思い通りに操られている存在

郷原氏の分析は、この一連の発言の裏にある今井政務秘書官が加計問題(もちろん、森友問題もあるだろう)において、企てたことを次のように痛烈に批判する。

「少なくとも、加計学園問題についての重要な事実が、できるだけ表に出ないようにしていること、そして、その『隠ぺい』について安倍首相は全く関わっていなかった話にしようとしていることは間違いない。その結果、『首相が秘書官に《口裏合わせ》を懸念され、重要事実を長期間知らされなかった』などという”異常”な話になってしまっているのだ」と。

かくして、影の総理と揶揄される今井政務秘書官の姿が浮かび上がってきたようだ。このような秘書官に牛耳られている首相のもとで、官僚の人事も思い通りに進められていることは容易に想像できよう。それだけに、郷原氏が最後に述べているように、今井政務秘書官が加計問題で何をしてきたのかをすべて明らかにさせたうえで、「今井政務秘書官の更迭」を検討すべき時なのだろう。それこそが、安倍首相が言う「膿を出し切る」事なのだ。

物価は2%目標に向けて、ようやく動き始めたのだろうか

話題を経済の方に向けてみたい。黒田日銀が2期目に入って2%の物価目標を据え置いたものの、4月の「展望レポート」に於いて達成時期については設定しなくなった事は既に述べたところである。ただ、2%という目標に何時まで拘泥するのか、日銀ウオッチャーの中には疑問視し始める人も出始めている。黒田総裁は、国民の間に根強くあるデフレマインドからの脱却には依然として進まないでいる、と講演で語っている。

ただ、経済産業省傘下のRIETI(独立行政法人経済産業研究所)の中島厚志理事長は、最新号のホームページで「動意が見え始めたか、国民のデフレマインド」というコラム記事を掲載されている。そこでは、アメリカやEUは好況に支えられて安定した消費者物価上昇率が実現(アメリカ2.0%、ユーロ圏1.3%)しているが、日本も1.1%とやや低いものの相応の水準になった事を指摘する。日本はモノの物価は2.0%(3月)と高いのだが、サービスの価格は0.2%と欧米に比べ際立って低い水準で、しかも1998年以来ずっとそれが続いている事を指摘。サービスの中でウエイトの高い帰属家賃が下落し消費者が節約志向にある、と見ておられる。節約志向になっているのは、賃金があまり上がらない中で教養娯楽費などへの支出を抑制してからだとされている。

モノの物価は2%へ、サービスの物価は0.%前後が98年以降継続

中島理事長は、それでも今年に入ってサービス物価が上昇し始めたと見ておられ、GDPギャップの2017年第2四半期から需要超過に転じ、消費者マインドも過去3年半ほど改善が続いており、インフレ圧力に繋がる可能性を見ておられるようだ。

果たして、2%という目標達成が実現できるのかどうか、中島理事長の予想が本当にインフレマインドの定着まで持続できるのか、注目して行きたい。というのも、今年の賃金の引き上げは大企業レベルで2%台そこそこでしかなく、人手不足だと言われる非正規労働者や中小企業労働者の多くは、賃上げがそれほど進んでいるようには見えない。

サービス価格は人件費が大部分、社会保障関係のサービス価格は殆どが公的に決まる、
社会保障関係費の抑制がサービス価格停滞の原因の一つでは

それよりも、中島理事長がモノとサービスにわけて物価動向の違いを指摘しておられる事こそ重要に思えてならない。というのも、サービスのなかで医療や介護・保育と言った社会保障関連のウエイトが国民生活の中で大きくなってきており、その分野は人件費が圧倒的割合を占める業態である。それゆえ、そこでのサービス価格の太宗は、社会保険制度という制度の中で決定されるわけで、1990年代後半のバブル崩壊後の金融危機以降、国家財政の厳しい中でこうした公的サービス分野の財政は大きく切り込まれ続けてきたことを物語っている。

それだけに、サービス価格が上がるためには、税か保険料という公的負担を引き上げて行くのか、それとも私的負担を引き上げるしかない。この間、公的負担をしないまま、最低限の社会保障水準を維持するために赤字国債を発行しながらパッチワーク的に対処してきたツケが、労働力不足でありながら殆ど賃金の上昇へと結実していないのだ。デフレからの脱却に向けた歩みが進んで行かない理由は色々とあるが、最大の問題はしっかりとした公的サービスを充実できるだけの国の財政力の不足であり、税・社会保障を通じた所得再分配機能の低下からの一刻も早い脱却である。

デビッド・アトキンソン著『新・生産性立国論』(東洋経済刊)は面白い、
日本は最低賃金の底上げを図るべきことを主張

こうした点について、実に分かりやすい論陣を張っておられるのがデービッド・アトキンソン氏である。アトキンソン氏は、90年代のバブル崩壊以降外資系のゴールドマンサックスのアナリストで、日本の金融危機問題に論陣を張って来られた方だが、最近では『新・生産性立国論』を東洋経済新報社から上梓し、金融から離れた日本経済の問題点を鋭く追及されている。

その、アトキンソン氏は、日本の最低賃金が余りにも低く、購買力平価に換算したドル換算した価格では6.5ドルでしかなく、お隣の韓国7.4ドルよりも低く、フランスやドイツ、さらにはアメリカの8.50ドルにも離されている事を指摘。日本の生産性の高さに比べてその水準の低さを指摘するとともに、労働者の質はWEF(World Economic Forum)の調査で見ると世界一高い評価なのに、最低賃金が先進国の中では最低の部類に属していることに唖然とされている。

つまり、日本は最低賃金を大きく引き上げても大丈夫だし、そのことによる内需の拡大が需要不足でデフレに陥っている経済に良い効果をもたらすことを強調している。

最低賃金の引き上げに堪えられない企業は退出すべき、と主張

もちろん、最低賃金引き上げに対応できなくなる企業が出てくるだろうが、そのような企業は日本で経営する力が無いわけで、最低賃金に対応できるようなイノベーションを起す努力を進めさせていくべきことを強調している。日本の貧困や格差問題の解消には、最低賃金の底上げこそが重要だと指摘することの分かりやすさに納得感を持つ人が多いと思う。その考え方の背後には、供給サイドだけでなく、需要サイドから経済を見て、内需を拡大して行かなければ、いくら安く作っても売れなければどうしようもない、という厳然たる経済の論理があるからだ。是非とも、『新・生産性立国論』を一度手に取って読んでほしい。


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