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労福協 活動レポート

2018年7月30日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第56号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

異常気象の常態化、これで東京オリンピックは出来るのか

北海道もようやく猛暑がやって来たようで、先週の後半は札幌でも30度を超す日があり、クーラーをつけたり水分の補給を怠らないよう熱中症対策に努めてきた。ただ、仁木町の知り合いのサクランボ農家は大変だったようで、一番重要な時期の降雨と冷涼な気候が災いし、生産量・熟成が思うようにいかなかったようだ。来年も同じような天候だと、農家の方達もこれからの生業の在り方を考えざるを得なくなるわけで、安定的になって欲しいものだ。

それにしても、埼玉県熊谷市で23日に観測された41.1度には驚かされた。日本で記録された最高温度の新記録であり、連日の40度近い暑さが続いている日本列島を象徴している。こんな「命に危険がある暑さ」のなかで、果たしてオリンピックが開催され、マラソンを始め屋外競技ができるのだろうか。秋への開催時期の変更など、早く決断をしなければ競技に参加しない、できない選手が続出しないとも限らない。IPCCの予測では、今後猛暑や豪雨が多発することも十分あり得るとしており、2040年には産業革命前比1.5度地球の温度が上昇するとのことだ。もはや20年以上先の事ではなく、今既にその段階に到達し始めているのではないか、と思ったりする。しかも、日本だけでなく世界的に異常気象が広がっているようだ。

ここ2~3年の異常気象を経験した日本にとって、もはや地球温暖化のもたらす異常気象は、「異常」ではなくなりつつあるのかもしれない。ローマクラブの警告から早くも50年、しっかりと対策していなかったつけが現実化し始めているのだろう。地球環境と資源は有限なのだ。今からでも遅くは無い、最大限の努力が必要だ。

異常な通常国会が閉幕したが、中央省庁人事も異常が常態化へ

国会が終了して、中央省庁の人事が動き始めている。そこには森友・加計問題の影が見え隠れしていて、政治が大きく官僚人事に介入し始めている事を感じさせてくれる。

まず注目されたのが財務省であり、事務次官と国税庁長官の後任人事が決まった。事務次官には主計局長だった岡本薫明氏が就任したのだが、森友問題での処分を受けたこともあり、当初は星野主税局長や浅川財務官の名前が全国紙に挙がるなど、やや迷走(誰が?!)したものの、来年の消費税率の引き上げに向けた体制づくりとして、省内安定を優先したようだ。それにしても、麻生大臣の記者会見の言動には自分の「責任」の意識が全くないどころか、居丈高な姿勢が前面に出てきており、何ともやりきれない思いが募る。

色々と指摘されているのが、経済産業省の柳瀬唯夫審議官が退職したことであり、後任には同期生が就任し、これ以上経産省の役人として加計問題にかかわらせたくない、という事なのだろう。まだ引退には年齢が若く、加計学園問題への隠蔽工作の一環ではないのか、いろいろな疑問が残る人事の一つである。

農林水産省の人事、いつ経済産業省に掌握されたのか、いっその事「農商務省」に戻してはどうか!!!???

それ以上に私が感じたことは、農林水産省の事務次官になったのが経産省に出向していた末松広行産業技術環境局長だったことだ。前事務次官も岩盤規制改革とされた農協改革に力を入れ、菅官房長官の覚えも目出度く予想外の事務次官人事と言われていた。今回も、また順当な人事ではなかったようで、農水省内の雰囲気がどのようになるのか、農水大臣が通産官僚出身の斎藤健衆院議員であり、農林水産行政において経産省寄りの改革が目に付くと思うのは、自分の思い過ごしだろうか。農水省は、経産省の出先機関に成り下がろうとしているのかもしれない。農業政策の行方がどのようになるのか、気がかりな点ではある。こんな状況になるなら、仕事が少なくなったはずの経産省も含めた農商務省へと改名・出直ししたらどうなのか、揶揄したくなる。

さらに、文部科学省のキャリア官僚の不祥事も続いて出ているのだが、前川元事務次官の安倍政権に対する厳しい言動と関係していないのか気になる。もちろん、不祥事自体はとんでもない事ではあるが、何とも最近の官僚人事の在り方には、内閣人事局を政治が掌握したことの弊害が、年々強くなり始めているように思えてならない。物言えば唇寒し、になっていない事を祈るばかりである。

日本の公務員制度はどこへ?良き公務員制度は民主主義の基盤だ

日本のキャリアシステムの安定さは、人事権は形式的には各省大臣にあるものの、比較的キャリア官僚の「自治が優先されていた」と言われ、政治に対して中立的で在任中は不祥事を起こさない事だったと言われてきた。退任後の生活は退職金と年金(恩給)、《天下り》による収入によって安定したからだと言われたのだが、徐々に切り込まれ始めている。もはや、政治が公然と介入し始め、時の政権に忖度する事が常態化し始めている。閉会した通常国会での様々な出来事は、そのことが露わになった事を誰の目にも明らかにしたことは間違いない。まさに、民主主義の危機であり異常である。

そのことをどのように是正していけるのか、政治・行政の抱える課題は深刻だと言えよう。イギリス流の二大政党制をモデルにしたと言われる今の統治機構は、実質的に行政権の長である内閣総理大臣の権限が強くなることを基本にしている。だが、それには世論の動向によって政権交代が可能であるという前提が必要なわけで、それが画餅に帰し始めている今、何をどのように改革していくべきなのか、深刻な難問である。

「年金ようかん」どう分ける、朝日新聞連載『平成経済』を読む

さて、朝日新聞が毎週日曜日に連載している『平成経済』「第4部老いる国縮む社会9」は、今や世界一の高齢社会を支えるべき「年金問題」である。

そこでは、2004年の年金改革によって確定給付から確定拠出へと制度の根幹が大きく転換したこと、さらに、年金拠出額が厚生年金で所得の13%強から18.3%へ、国民年金は月額13,300円から16,900円へと毎年引き上げられ、2017年度まで好不況関係なく安定的に引き上げられてきた。今年度からは、その水準で確定したわけだが、国民の年金制度に関する理解度はなかなか進まない。若者にとっては、遠い将来の事でしかなく、老後生活における年金への関心が出始めるのは、50歳前後あたりからだろうか。政治の世界でも、かつて年金記録問題を追及して一躍「ミスター年金」といわれた民主党政治家もいたが、今では国会でもほとんど問題にならなくなってしまっている。

財政検証による高齢社会の年金制度安定に向けた3つの課題

問題が無くなったからではない。高齢者が増え続けている高齢社会であるが、支え手である労働者の数とともに賃金水準(経済成長率と相関)がどうなるのか、によって年金財源の総量は確定する(その他、積立金による収入もあるが、総額の1割弱)。こうした数値を5年ごとに100年先を見通し、収入と給付のバランス(年金給付を現役時代の所得の50%を目途としている)を検証し、それをどのように年金受給者と現役世代が分配して行くのか、それが大きな問題として取り上げられているわけだ。

2014年の検証の結果、大きな課題は3つあると整理されている。一つは、今回の連載で取り上げられているマクロ経済スライドであり、二つには被用者保険制度の更なる適用拡大、三つめには保険料拠出期間と受給開始年齢の選択制、である。

今回の問題指摘は、世代間のマクロ経済スライド改革の在り方

マクロ経済スライドは、本来であれば他の先進国が羨む制度として設計されたものだ。というのも、賃金や物価が上昇しても、そのすべてを年金受給額に反映するのではなく、現役世代が減った分と今後の平均余命の伸び0.9%を差し引くことにしたわけで、すでに年金を受給している世代にも適用するところがミソだったわけだ。ところが、この間マクロ経済スライドを適用したのは2015年度だけで、あとは1%以上の物価上昇にまで到達することなく、マクロ経済スライドは適用されなかった。2004年段階では、まさかこれほどの経済成長率が低下し物価もデフレ状態が続くと考えられなかったのだろう。

それをどう改革したのか、本来どんな条件であれ、毎年マクロスライドを適用すべきだったにもかかわらず、キャリーオーバー方式として、引き上げ率がスライド率に到達するまで先送りとなってしまったのだ。

退職者連合、「自分だけの年金」から「子や孫も含めた私たちの年金」への方針転換には頭が下がる

かくして、この年金問題に関心を持った慶応大学の学生さんたちが、政治家や官僚、とくに既に年金を受給している退職者連合の方達に突撃してインタビューした結果を記事にしている。退職者連合の川端政策委員長は自治労の出身で、私も時々上京してお話をさせて頂いているのだが、「既得権を守ればよい」という発想ではなく、「自分の年金」から「自分たちの子や孫も含めた『私たちの年金』」という考え方へと転換された事を指摘している。そして、退職者連合の政府への政策要求も、年金の「名目下限の堅持」を削り、「将来の年金受給者世代が貧困に陥らない年金水準を確保」へと昨年度から加えたのだ。実に明快であり、清々しい。

社説の誤りを指摘された権丈善一教授、日経新聞はどう答えようとしているのか、
マスコミの矜持が問われている

こうした取り組みによって、少しずつではあれ年金に対する理解は深められてはいるものの、まだまだ全体のものになるには程遠い。2004年改革ごろから彗星のごとく社会保障の論議の場に参戦された慶應義塾大学の権丈善一教授は、最近(7月25日)の東洋経済オンライン紙上で「社会保障への不勉強が生み出す『誤報』の正体」として、日本経済新聞の3つの社説をとりあげ、「誤報で国民の年金不信は高まった」と厳しく指摘されている。
(https://toyokeizai.net/articles/-/229977)

ここでは、公的年金の財源問題について批判されているのだが、次には医療費に焦点を合わせた批判を予告されている。新聞社における「社説」は論説委員の方たちが論議をして書かれると考えるのが普通であり、このようなまちがった報道を展開し続ける新聞社の報道姿勢には、論説委員各位の責任が厳しく問われているわけで、反論があれば反論し、間違いがあれば正していくのがジャーナリストとしてのあるべき姿勢だと言わなければなるまい。今後の展開を見守って行きたい。


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