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労福協 活動レポート

2018年8月6日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第57号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

夏の全国高校野球始まる、野球用具にもAI化が進み始めたようだ

いよいよ夏の高校野球も始まり、高校球児たちの熱い戦いの火ぶたが切られてきた。今年は第100回大会という記念すべき年であり、各地区の予選を勝ち抜いた56校が、真新しい真紅の大優勝旗を目指して熱戦を展開してくれるに違いない。

さて、野球好きの私だが、最近話題になっている「トラックマン」について知らなかった。デンマークのTRACKMAN社が開発した「弾道測定機器」の事で、ボールの球速はもちろん回転軸や回転数、ボールの変化の大きさをデータ化してくれる。既に大リーグの全30球団、日本プロ野球でも導入し始めているが、最近では遂に個人でも自分の投球を詳細にデータ化してくれる野球ボールが登場したという。

アイボール・テクニカルピッチという野球ボール、感覚の数値化へ

アクロディアのIOT野球ボール「i・Ball Technical Pitch(アイボール テクニカルピッチ)」で、硬式野球ボールと同じ重さ・固さ・素材で作られており、これを投げることにより投球データが専用スマートアプリに転送されるし、データは一人だけでなく複数人登録できるとのこと。最近の投球では球速だけでなくその変化が重要で、スプリットだとかカットボールといった動きが、単に数値だけでなくスマホの画面に10分の1の速さで3Dグラフィックが表示されるという。野球はピッチャーの投球が大きなウエイトを占めるだけに、今後このアイボール・テクニカルピッチが活躍するに違いない。

以前、私が長嶋茂雄さんと千歳から羽田までの飛行機で隣に座る幸運を得た時、僅か1時間足らずの短い時間だったが、色々と長嶋さんに質問する機会があった。「長嶋さんが対戦したピッチャーで一番早い剛速球を投げたのは誰ですか?」答えは、最初に対戦した国鉄スワローズの金田正一投手に違いない、と思っていた私だが、なんと「東映フライヤーズの尾崎君ですよ」とのことだった。金田投手については「カネさんの球は軽くてね」「尾崎の球は、重いのにホップするんだよ」といったやり取りだったと記憶する。こうした経験に基づく感覚での発言も、数値化・映像化されるようになればますます関心が高まるに違いない。

とはいえ、このボールは未だバットで打つことは出来ないそうで、実際のプレーでの数値は測れないとのことだ。やはり、本当の球筋は、実際に投げている投手と打っているバッターとの間での感覚が大きくものをいう世界なのだろう。野球のAI化がどのように進んでいくのか、今後の進展にも注目してみたい。それにしても、160kmを超すスピードボールを投げる大谷翔平のスピード記録は、何時、誰が破るのだろうか。今年の高校野球児のなかに逸材が潜んでいないか、注目してみたい。

権丈善一慶應大教授、「医療費膨張を煽る『誤報』はこうして生まれる」(東洋経済オンライン8月3日)を読む

先週号で予告されていた権丈善一慶応義塾大学教授の医療費に関するマスコミなどの「誤報」についての論文が、8月3日の東洋経済オンライン紙上に掲載された。題して「医療費膨張を煽る『誤報』はこうして生まれる 医療費を決めるのは高齢化でなく政治的判断」(https://toyokeizai.net/articles/-/231525)である。

権丈教授が2004年の年金改正問題あたりから社会保障論壇に登場されて間もなく、2006年の医療保険改革の頃に遡られ、2025年の医療費がいくらになるのかの予測値が次から次へと変更された事実を取り上げる。1994年推計では141兆円、2000年は81兆円、2006年は65兆円となっていた。それを受けて「なぜこんなにも予測の失敗を繰り返すのか。過大な予測をわざと出して、医療費抑制機運を高めようとする厚労省の陰謀ではないか!」などと世間では盛り上がっていたことに言及される。

「医療費過大推計はどうして起きたのか」の謎解きに孤軍奮闘へ

この「過大推計」なるものについて、2006年12月に厚生労働省の「医療費の将来見通しに関する検討会」が開催され、権丈教授も委員として参加される。その中で、医療経済学で常識とされていた議論「一国の医療費は、通常の再分配政策と同様に政治的に決められるものであって、それは所得という支払い能力が決める形で現れ、高齢化のような医療ニーズが決めているわけではない」と主張されたようだ。

だが、最初はなかなか理解してもらえなかったようで、事務局が作成した「将来見通しにおける医療費の伸びと経済成長率」の関係を図示した表で、成長率(賃金・所得に連動)が落ちてくると将来見通しが小さくなってくるという医療経済学での常識が理解されはじめる。総医療費を決める(単価×需要/供給×伸び率)のうち、総額に大きく影響する「伸び率」は経済成長(医療の高度化要因もあるが、ウエイトは低い)が決め手となるわけで、結果として経済成長率にかかってくることが理解されていく。

医療費総額は経済成長が決め手、経済前提が変われば結果も変わる、
将来見通しはGDP(国内総生産)比の実質値だけが意味を持つ

過去の診療報酬改定率と経済成長の相関係数を調べてみると、概ね4~5年後に成長率を後追いした診療報酬改定率として表れている事がわかる(相関係数が0.88台と極めて高い)。かくして、前提として置いている経済成長率(賃金)や、物価上昇率が仮定値から外れれば、名目医療費の算定結果も変動するのは当たり前という事になる。

かくして、権丈教授は経済前提の振れの影響を取り除くために、将来見通しは対GDP(国内総生産)比で示された実質値でなければ意味をなさない事を強調する。これは、年金についても同じ指摘だったことを思い出してほしい。

メディアの間違った捉え方、日経新聞や毎日新聞がやり玉に、正確だったのが読売新聞だったとは

さて、それではメディアはこの問題についてどのように論じているのか、社説やヘッドラインを取り上げ厳しい批判が展開されている。

先ず、やり玉に挙がったのが日本経済新聞である。今年5月22日、高齢化がピークに近づく2040年の社会保障費推計値発表の翌日、1面トップ記事のヘッドラインを紹介、「社会保障費、40年度6割増の190兆円、政府推計」とある。社説についても「医療・年金の持続性に陰りみえる長期推計—社会保障費の長期推計は、このままだと医療・介護や年金を持続させられないおそれを映し出した」と紹介。次いで、毎日新聞の記事についても、18年から40年に公的負担の名目値が約30兆円増加する事に対して「現在の消費税率1%で3兆円程度。30兆円の税負担は単純計算すれば10%の規模に相当する」、と名目値で説明する誤りを批判されている。

そうした中で、正確な情報を伝えている社説は全国紙では読売新聞だけだったという事実、即ち「対GDP比でみると1,1倍だ。際限なく膨張して制度が崩壊する、といった一般的なイメージとは異なるのではないか」とある。安倍政権寄りの政治記事が多く、あまり読む機会が少ないだけに、社会保障の論説での読売の主張は新鮮な驚きなのだが、産経も時々嬉しくなるような的確な記事に遭遇する。もっとも、産経は北海道内では販売されていないため、専門家からの資料提供で後からわかることが多いのが難点ではある。

間違った報道は反論するか、誤りを認め訂正する必要があると思う

再び、権丈教授の東洋経済オンラインに戻ろう。教授は、事あるごとに将来の社会保障の話は、名目値で論じてはいけない事を繰り返して強調してこられた。しかし、報道は一部の例外を除いて未だにわかっておらず、誤ったメッセージを流し続け、その誤報を訂正することもない。結果として、その繰り返された誤報のおかげか、社会保障費抑制の方向に世論が傾き、国際的に見ても所得の割には給付費が低いまま、社会保障の抑制にしっかりと成功しているのが悲しい現実である。その上で、次の事を強く主張されている事を特に取り上げておきたい。

「この国が抱える問題はまさに、国民のニーズに見合った社会保障が本当に提供されているのかという事にある一方で、必要な財源確保を何十年間も先送りしてきたゆえ、今後の財政健全化のために社会保障の量的充実も相当に難しいというジレンマに直面している事にある。

そして今、このジレンマの中で、よりニーズに見合った給付を行うという意味での制度の効率化・給付の重点化を、各制度の関係者たちの協力の下に懸命に進めながら、国民の生活を守るために、可能な限りの財源の確保が模索されているのである。

ところが、メディアが不勉強なままで将来の社会保障費を名目値で論じる誤報を続ければ、考えなければならない方向とは異なるメッセージをメディアは発し続け、誤報に誘導された誤った政治的判断につながっていく」

「チコちゃんに叱られる」ではないが、
「ボーと勉強しないで書いてんじゃねーよ」と言われないようにして欲しいものだ

最近NHKの番組で、「チコちゃんに叱られる」という番組が評判になっている。2017年に単発番組で始まり、4月中旬からレギュラー番組となったもので、毎週金曜日夜と土曜日午前に放送されている。そのなかで、世間では当たり前のように使っている言葉の本当の意味は何か、コンピューターで制御された人形のチコちゃんが出演者に尋ねる。例えば、「シルバーシートは何故シルバーと呼ぶのか」とか「ソメイヨシノは何故一斉に咲き始めるのか」と言ったテーマを取り上げ、番組出演者が間違ったり、答えられなくなると「ボーと生きているんじゃねーよ」と激しく怒られる。そして、チコちゃんの正しい答えを裏付けるべく専門家のビデオメッセージが登場する仕掛けだ。

社会保障の問題などは、国民の中で当たり前のように議論されてはいないのだが、極めて重要な問題であるだけに、マスコミ関係者に対して「ボーと勉強しないで書いてんじゃねーよ」と言いたくなってしまう。少なくとも、批判を受けたマスメディアは、正しいと思えば反論をしたり、誤っていれば訂正したりすべきだと思う。チコちゃんならずとも、記者諸君!もっとしっかり勉強して欲しい。


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