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労福協 活動レポート

2018年8月20日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第59号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

100回を迎えた夏の全国高校野球、支えた審判団への信頼に想う

いよいよ甲子園は、今日からベストフォーが対戦する。プロ野球との違いを感ずる事がいろいろあるが、最近のプロ野球のルール改正との関係では、リプレー検証制度がない高校野球の清々しさだろうか。準々決勝最後の戦い1点差で迎えた9回裏ノーアウト満塁の場面で、金足高校のスクイズが成功し、2塁ランナーまでホームに還り劇的な逆転サヨナラゲームとなった事は、球史に残る一場面として記憶される事だろう。テレビで観戦していると、ホームでのアウトセーフは微妙ではないか、と思われた。もしプロ野球なら、リプレー検証になっているに違いなく劇的なドラマに水を差す格好になるわけで、やはり高校野球にはリプレー検証は導入すべきではないと思う。その分、審判の責任は重いわけだが、それも高校野球をしっかりと支えている重要な基盤になっているのだ。審判は、あくまでも独立した立場で、自らの良心に従って誰からの圧力も介入もなくジャッジしている信頼があるからこそ、成り立っているわけだ。100回を数えた高校野球だが、これからも全国の野球ファンに素晴らしい心に残り続けるドラマを作り続けていけるよう、関係者には一層努力して欲しいと思う。

さて今大会の行方であるが、ここまでくれば、やはり東北の金足農業高校に東北初の優勝旗を持って帰って欲しいものだ。

資本主義のビークルたる株式会社、粉飾決算を防げないガバナンス

ちょっと何時ものトーンではない高校野球談議になってしまったが、いまの資本主義のビークルとして大きな役割を果たしている株式会社のガバナンスにとって、重要な社会的な判断システムに会計監査がある。広く日本だけでなく世界から資本市場を利用している上場会社にとって、会計監査の重要性は言うまでもないことだろう。会社の内部にも監査役が設置されたり、外部からの取締役・監査役などを設置する事になっているが、もう一つその内部監査の正しさを証明する外部監査が必要になる。株式会社が巨大化すれば、当然のことながら監査事務も個人の会計監査では対応できず、監査法人による集団での監査が実施される事になる。

日本でも4大監査法人を始めとする外部監査が実施されているのだが、残念なことに粉飾決算が後を絶たない。最近では、東芝やオリンパスでも発覚し、世間を揺るがす大問題になってきた。私自身、議員時代に財政金融委員会に所属していたとき、この粉飾決算問題の追及を進めてきた。日本航空であったり日興コーディアル証券の問題など、数多くの企業を取り上げ国会の場で論議をしてきたが、そのこともあったのであろう、2009年の政権交代を経て日本航空の再建問題などにまで財務副大臣時代に携わることになる。この点については、またいつかお話しする機会を作りたい。

朝日新聞8月15/16日付『けいざい+』「不正を見抜くAI」を読む

この会計監査の問題にAIを導入して不正会計を見抜くようにしてはどうか、といった新しい取り組みについて、朝日新聞の「けいざい+」欄で8月15・16の2日間「不正を見抜くAI」が取り上げていた。

そこでは、AIが最も得意とするディープラーニングを企業の財務データに適用し、さまざまな不正のパターンを学習させ、企業ごとの財務データの「不正確率」を割り出させランク付けされるというもの。その結果と会計士が連携すれば、粉飾発見を効率よく発見できることになると見ている。なかには、会計士が経験上持っている「懐疑心」をAIに学ばせたり、経営者の性格(例えば,経営者の自己愛が強い補不正を起しやすいといった事)までAIに分析させたりすることすら進められようとしている。

さらに、日本を代表する4大監査法人(トーマツ、EY新日本、あずさ、PwCあらた)における具体的に取り組みも紹介しているが、背景として複雑さを増す監査を巡る環境があることを指摘する。一つは不正を見逃してはいけないというプレッシャーであり、さらに公認会計士試験の志願者数がここ10年余りで半減する人材不足があり、AIに頼らざるをえない現実があるようだ。

AI監査実用化は監査現場を一変させても、粉飾決算はなくせない

こうしたAI化を進めるうえでの課題として、企業側との財務データをリアルタイムで共有するシステムがなかなか進まない事を上げている。
結論的に2日間のレポートの締めくくりとして、次の言葉を紹介している。

「監査法人の開発担当者らは口をそろえる。『AI監査が実用化されれば、監査の現場は一変する』」

たしかに、AIが監査実務に入ってくれば、AIが学習したことによる様々なデータ分析は、量的にも質的にも向上してくることは間違いない。是非ともAI化を進めて行く必要がある。

監査法人収入は、監査対象企業の監査料で成り立っている現実

だが、本当にそれで粉飾決算はなく.だろうか。私は、決してなくならないだろうと思っている。それは、監査法人の監査料が、監査対象の企業の側が負担をすることにあるわけで、利益相反の関係にあることをこの朝日新聞のレポートは触れていない。つまり、相手からお金をもらって監査する時、どうしても手心を加えざるを得なくなる誘因を内包しているわけだ。一度、その手心が加われば、次の監査も、その次の監査も問題を抱え続けざるを得なくなることは必然なのだ。

監査法人のローテーション化なども提案されているのだが!!!???

私自身、参議院議員時代にこの点の問題を指摘し、出来れば監査法人の5年、あるいは10年といった期間で交代制にすること(ローテーション)を提起してきたのだが、残念ながら採用されることなく今日に至っている。交代制になれば、次の監査法人によって過去の監査についても洗い直しが為されるわけで、馴れ合いによる粉飾決算などが監視される事になると考えたわけだ。今も、監査法人による監査期間の制限が議論されているが、実現していない。

卑近な例で恐縮であるが、私自身がある学校法人の非常勤監査を頼まれたことがあり、そこでも大手監査法人が外部監査を実施していた。監査内容に問題があったわけではないが、どんな問題があるのか、外部から会計資料の集約表だけ見せられても判断できるものではない。そこで、監査法人の交代制を提案したことがあったが、残念ながら受け止められることなく、次の改選期には私自身が解任されてしまった。おそらく、全国の様々な法人の監査が実施されていても、監査が本当に正しく実施されているのかどうか、問題が明らかになって初めてその問題点が露呈する。それでは遅いのだ。

日経新聞電子版3月28日記事「『粉飾分析官』が挑戦状、弱腰監査法人にNO ガバナンスの掟」、
細野祐二元会計士の挑戦に注目

こうしたことを早くから指摘し続けてきた元公認会計士が、今新しい動きを作り上げようと努力されている。細野祐二元公認会計士であり、私自身が日本航空や日興コーディアル証券の粉飾問題の国会での追及にあたって、実に多くのご教示をいただいた会計のプロである。最近では、東芝やオリンパスの粉飾問題を雑誌『世界』や『週刊エコノミスト』などで鋭く分析され、注目されてきた。武田薬品の大型買収にも問題提起をされ続けておられるので、ご存じの方も多いと思う。

その細野氏の動きを伝えた記事が、日経新聞電子版に「『粉飾分析官』が挑戦状、弱腰監査法人にNO ガバナンスの掟」と題して掲載されている。今年3月28日の記事で、少し時間はたっているが、なかなか興味深い。

東証上場主要100社の財務分析、ソフトバンクや電通も問題企業に

この記事では、細野氏が東証上場主要100社の最新のデータによって財務分析を行い、独自の分析によって評点を付け、安全度の評点を0~マイナス455まで分布するレポートを公表したものである。ゼロは安全の最高点で、評点のマイナスが大きいほど粉飾の動機が強いと見ている。実際に過去の経営不振や粉飾で話題を呼んだ5社を取り上げ、今回の評価シートに当てはめてみると、3社が「危険」、2社が「警戒」となっている。今回の100社レポートの内、この危険や警戒対象となった企業には、あのソフトバンクや電通なども入っており、それぞれ海外の買収企業の「のれん代」に問題があると指摘している。「のれん代」とは、簡単に言えば買収金額と買収企業の純資産額の差額の事であり、東芝はもちろん、ソフトバンクや電通が、巨額で買収した海外企業分について問題があると見ているからだ。

国際会計基準に則った適用が言えない監査法人、
顧客からの高額報酬による独立性・主体性・公正性の欠如に問題指摘

この「のれん代」について、国際会計基準(IFRS)は必要に応じて減損する事を求めているが、日本基準では定額償却を義務付けているに過ぎない。ソフトバンクも電通もIFRSの任意適用企業でしかないので、とりあえず基準違反とは言えないのだろう。問題はこの国際会計基準が期待されているのは、独立した第3者機関である専門の監査法人が、厳格な判断をすることが大前提になる。細野氏は、先ほど述べたように「監査法人は企業から高額の監査報酬を受けているから、顧客と対等な立場でモノを言えない」と主張しておられる。その結果、日本の企業社会の監査について、監査法人は甘いのではないかということにつながる。つまり、ソフトバンクにしろ電通にしても、巨額の買収を手掛けているが、価値を生まない企業であれば、減損にしなければならないにもかかわらず、企業側に監査法人から強く言えなかったのではないか、と見ることが重要になる。

欧米には監査法人とは別の『粉飾分析官』が存在、日本も必要では

今回の記事で初めて知ったのだが、「欧米の資本市場では監査法人とは別に、会計に詳しい『粉飾分析官』なる者が企業の財務諸表を読み込んで警告する慣行がある」ようで、細野氏がめざすものがまさにこれであり「監査法人とは異なる立場で企業を監視し、多面的に会計を分析する土壌を日本にも根付かせたい」という細野氏の発言を引用して記事を終えている。

『粉飾分析官』、その存立の為には財源・人材が必要、支援体制の重要性、
始まった細野元会計士の上場3,600社の財務諸表分析

さて、問題はこうした細野氏の目指そうとされている『粉飾分析官』なるものも、どうしたら経済的に成り立つ仕事に出来るのか、という点にかかってくる。会計監査法人が監査料を監査する企業から受け取っているわけだが、粉飾検査官の仕事の対価を誰が、どのように支払うのか、問題はやはりこの問題に行き着く。

細野氏は、欧米ではこの監査法人の監査報告をリスクヘッジするべく、独立した財務諸表分析ファームが存在し、企業側はこの分析も購入して対応しているとのことだ。日本においても、このような独立した「財務諸表分析ファーム」の仕事を立ち上げるべきだが、いくら細野氏が提言しても今のところ誰も出て来ない。それ故、細野氏は自分が私財をなげうって全上場3600社のIT型財務諸表分析をやり始められたのである。そのIT型財務諸表分析の第一弾として上場会社100社の分析をし、その後、3月15日と4月16日に日経225社のうち銀行・証券・鉄道・電力・ガスを除く193社の分析を行い、財務諸表危険度分析による評価結果を公表しておられる。

以下、今年4月にその分析結果を公表されているのだが、その総括表を細野さんのホームページから抜き出して掲載しておく。「安全」「準安全」「要注意」「要警戒」「危険」という5段階での分類になっている。より詳しいことについては、ホームページからアクセスして欲しい。(https://yuji-hosono.com/)

それにしても、こうした努力を続けておられる細野さんのご努力には尊敬の念を抱かざるを得ない。この企画を成功させるためにも、細野さんの進めておられる企画に対して、多くの支持・支援が欠かせない。先月の読者の皆様方には、細野さんが進めておられる「複式簿記研究会セミナー」のご案内を出せていただいたことがあるが、引き続いてのご支援をお願いしたいと思う。
180820


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