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労福協 活動レポート

2018年9月3日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第61号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

暑かった夏だったがいよいよ9月、北海道に住む者にとってはお盆過ぎには秋風が吹き始めるわけで、過ごしやすい日が続く。

石弘光元一橋大学長・元税制調査会長のご逝去に想う

2000年から2006年にかけて、政府税調会長を務められた石弘光元一橋大学学長が8月25日すい臓がんで逝去された。享年81歳であった。私自身、大学時代に石先生との接点は全くと言ってなかったのだが、議員時代に一橋の学長と面談する事が何度かあり、ずいぶんはっきりとものをいう方だな、と思ったのが最初の印象であった。とくに、石先生が都議会議員選挙を控えた2005年の6月頃、政府税調の答申としてサラリーマンの所得税の増税にも言及されたことが、選挙を前にした民主党議員たちからも批判され、住んでおられた自宅にまで嫌がらせが及んだことを小生に語られた事がある。たまたま家を改築された直後の事だっただけに、相当こたえておられたことを思い出す。

WEBRONZAの特集インタビュー記事、硬骨の学者の最後の訴え

その石先生が、おそらく生前最後と言っても良い公的インタビュー記事に登場されている。朝日新聞のWEB?ONZAの特集「平成財政」を語る、の第一回目の記事である。題して「『”硬骨の学者”石弘光・元政府税調会長』『2けたの消費税が必要』と唱えた増税派は今、何を思う」で、インタビューアーは編集委員の原真人氏である。この連載のエッセンスは、既に4月25日と5月6日の朝日本紙で紹介されており、今回は10人のインタビューした記事をWEB?ONZAで順次掲載していくとのことだ。本来は、財政学者を外す方針だったようだが、石先生は別格で「長く政府税制調査会長を務め、増税をめぐる重要なプレイヤーでもあった。政界、官界、学界を横断的に眺めて来た石さんが財政の現状をどう見るか、ぜひお聞きしたいと考え、登場願った」と原編集委員は前置きしている。それだけ、注目されていたキーパーソンだったわけだ。

中身については、是非とも直接読んでほしいのだが、日本の財政再建は「もはや不可能」と厳しく安倍政権の財政運営に批判を投げかけられている。いや、安倍政権だけではなく、歴代の政治家に対して厳しい批判を展開されている。石先生の言葉を引用すると、

「平成をふり返って思うのは、政治家は景気が良くなっても、増えた税収を使い切ろうとすることです。景気が悪い時の財政出動は理解できますが、景気が良くなれば歳出を削減して、財政の健全化を図るのがあるべき姿です。しかし、歴代の政権は、好不況による歳出の調整ができませんでした」

このことは、平成時代だけではないはずで、高度成長が終焉して以降の歴代政権の辿った歴史でもある。大平総理が、自らが赤字国債を発行した事の贖罪として、一般消費税の導入に政治生命、否、まさに本当の命を懸けて訴えられたことを例外として・・・・。

政治家の無責任さ、厳しく批判され続けてきた平成財政の御意見番

政治家が、国民と真正面から向き合わなかった事や、国民も増税の覚悟ができていなかったとも指摘されている。もちろん、景気が良くなれば増税しなくても良い、といった「リフレ派」「上げ潮派」にもアベノミクスなる物にも厳しく批判されている事は言うまでもない。ちなみに、朝日新聞の経済気象台というコラム欄に「安曇野」というペンネームでの掲載をされており、今年6月27日づけの記事の中で、森友・加計問題について厳しく批判を展開されている。こうした政治家のあまりにも無責任さに、我慢がならなかったのだろう。

私自身、社会保障と財政再建を両立させるためには国民から増税をしてもらう必要がある、と民主党内少数派の議員として言いつづけただけに、石先生の指摘には頷くばかりである。石先生とは、私が議員を辞めて札幌に帰って以降、一橋の同期生を中心にした囲碁仲間の一員として、毎年春と秋に南会津の山奥のペンションで、囲碁合宿にご一緒する機会に恵まれた。囲碁のレベルは、最初は互先から2目3目と徐々に差がついたのだが、真っ向勝負の戦いは今でも強く印象に残っている。想えば、今年2月、石先生の発案で雪が降り積もった南会津で、囲碁合宿が企画され、多くの仲間が囲碁三昧に明け暮れる機会があったのだが、雪は飽きるほど見ていると、惜しいことに不参加にしてしまった。今にして思えば、石先生と最後の対局と税制(政)論議をしておけばよかった、と反省する今日この頃である。
この場をお借りして、心からご冥福を祈りたい。合掌。

史上初の100兆円超予算になるか?来年度予算概算要求出そろう

例年通り国の予算の概算要求が出揃い、来年度の予算確定に向けて財務省との査定交渉が始まる。恐らく来年度の予算は、当初予算だけでも100兆円の大台を超すものと見込まれている。というのも、消費税の8%から10%への引き上げにむけ景気対策を重視し、これまで以上に大盤振る舞いの財政支出が容認されるのではないか、という事である。

日本経済が不況局面であるならいざ知らず、GDPの伸び率もそれなりに好調で、なによりも完全失業率が2%代半ばまで低下し、有効求人倍率も正規雇用だけ見ても1倍を超す完全雇用状況にあり、人手不足問題こそ日本経済最大のボトルネックとして問題視され始めている。完全雇用状態にある景気が良い時には、税収が増大し不況期に増発した財政赤字を補填すると同時に、不況期に備えて財政黒字にしなければならないのが「完全雇用余剰」なる物なのだが、この国においては「完全雇用余剰」なる言葉はついぞ聞かれる事の無い世界になったようだ。これから必ず訪れる不況局面では、どのような財政・金融政策を取れるのだろうか、空恐ろしくなってくる。

経産省予算要求に、失敗した「革新機構」を再び増資するとは

来年度の概算予算要求では、社会保障費の伸びをどの程度抑えるのか、に注目が集まっているが、防衛費の伸びや災害対策に名を借りた公共事業の増加からも目が離せない。もちろん、来年度の税収は、年度途中からの消費税の10%への引き上げ以外に大きなものはなく、足らない財源は赤字国債の増発によって賄う事は言うまでもない。もっとも、消費税の引き上げが確実に実施される保証はないわけで、財政支出だけが一方的に実施される事も十分にあり得るわけだ。

そうした中で、気になる記事が目に付いた。8月29日付日本経済新聞に「新・革新機構に1600億円」「経産省、概算要求に増資方針」とある。今まで政府が出資してつくった官民ファンドの産業革新機構を改組して作る新ファンド「産業革新投資機構」に追加出資するとのことだ。今までの官民ファンド「産業革新機構」では、企業救済状態に陥った企業の救済を進めてきたが、期待された成果を上げられず批判を浴びてきた。どだい、企業経営者が血みどろになって企業再生を進めているわけで、経産省が加わった官民ファンドなる者は、結局のところ経産官僚の天下りの受け皿になるのが落ちで、こうした国の財源を使った投資案件が成果を上げると考えるのが先進国に追いつき・追い越せと言った高度成長時代の発想なのであり、時代錯誤も甚だしい。

この新しい組織への改組に対して、機構の志賀俊之会長は「もっと再編(案件)をやりたかつた。いろいろと動いたが動かなかった」「構造改革で利益も出る体質になった。いきさつはともかく望ましい形だ」と記者会見では語ったと報道されている。民間企業出身者としては、色々と難しいことが多くあったのだろう「動かなかった」のは何故なのか、民間企業出身の立場から厳しく究明して欲しいものだ。

財政によるコントロール、財務省の不祥事で霞が関の力関係逆転か

とはいえ、今の時代は通産省から経産省へと名前が変わったことで、経済官庁としてあらゆる所へ口出しをし始め、総理大臣のブレーンとして総理秘書官が内閣官邸内で大きな影響力を揮いはじめている。それだけに、こうした経産省の上手くいかない事が十分に予想される案件でも、無理が通って道理が引っ込み始めてきているのではないか。

経済産業省で今求められている事と言えば、中小企業対策とエネルギー対策ぐらいのもので、産業育成・企業救済などは時代錯誤も甚だしく問題外なのだ。多くの「有能」といわれた官僚が跳梁跋扈し始めた経産省に、定数削減を始めとした改革のメスを入れる必要があることを、もっと声高に問題指摘をしていくべきだ。総定員法の枠で縛られた中央省庁では、人手不足が蔓延していることを想起すべき時だ。かつての財務省ならそうした正論も提起できたし、それなりの受け止め方をしてもらえたのかもしれないが、森友・加計問題などで不祥事を起こした今では、その力はない。いつまで経産省優位の構造が続いて行くのか、この国の行方は危うい。

国民無視の傲慢な対応、経産官僚による官邸コントロールの弊害

そうした中、経産省の公文書の管理について、具体的な個人名を記載しないように指導しているとされ、森友・加計問題の反省が全く生かされず、国民の知る権利への逆行が罷り通ろうとしている。総理や官房長官と余りにも癒着し過ぎている経済産業省ならではの傲慢な対応に、政治家やマスコミは厳しく対峙して行く必要があるようだ。


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