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労福協 活動レポート

2018年9月24日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第63号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

自民党総裁選挙、国会議員票と地方党員票の落差が意味するもの

自民党総裁選挙が終わり、予想通り安倍三選にはなったものの、当初予想されたような圧勝とはいかなかったようだ。国会議員以外の100万人近く登録されている地方党員票では、安倍総理は辛うじて過半数の55%、対立候補の石破元幹事長は45%近く獲得し善戦したと見ていい。あれだけ有力派閥の支持を得て、国会議員票は圧勝に近かったものの、地方の党員票ではそれとは異なる意思が示されたことは、自民党のある意味での健全性を示すものだろうか。

森友・加計問題をはじめ、安倍政権の抱えている政治の劣化を感じている党員が危機感を感じていたことは間違いない。来年は統一自治体選挙があり、地方自治体の議員には国民の意識が直接肌で感じて来ているだけに、派閥の締め付けに応じた国会議員のように、唯々諾々とは追随する事がなかったのだろう。それだけ、危機感が強かったのではないかと想像できる。統一自治体選挙と参議院選挙が重なる12年に一度の「猪年現象」は、ここのところずっと自民党の敗北が続いている。野党が落ち込んでいるものの、来年の政治が大きく変わる可能性が出始めるのかもしれない。

私の住んでいる北海道では、所属する12名の衆参国会議員は全員安倍総理に投票したのだが、党員票は55%でしかなく、党員意識と永田町の国会議員との間の違いが歴然としていた。全国的にもこうした結果が多くの地域でみられるようで、今後の安倍政権の行方には「盤石」と言えない選挙結果だったと言えよう。

丹羽宇一郎元中国大使のコメントが、的確に問題を指摘している

色々と政治の専門家や各界各層の有力者の方たちがコメントをマスコミ各紙に発言されていたが、21日付の朝日新聞コラム欄で、丹羽宇一郎元中国大使が「国民を信じ『不都合』直視を」と題して、次のような諸点についてインタビュー発言をされていたことが一番ポイントをついていたようだ。

アベノミクスに対して設備投資も個人消費も伸び悩み、日本企業の実力も繋がっていない。経済財政諮問会議は人口減少への対策、財政再建、社会保障改革といった根幹への切り込み不足。外交では、長期政権のメリットを生かせず日中も日露も水面下での本音を探れないまま、日米間をはじめとする本当のパイプは無いのでは。企業経営でも、長期に誰も文句が言えない体制では権力は腐るという教訓が現実へ、森友・加計問題など国民の圧倒的多数の声に頬かむり。

最後に、「もっと国民を信頼し、『不都合な真実』を直視して、誠実に、丁寧に話しすべきです。長期政権を担う以上、『皆さんに負担をかけるかもしれないが、日本の将来のためにがまんしてほしい。必ず課題を解決します』と胸を張ってほしい。企業経営の幹部は社員を信じることです。社員を信頼できない社長に、企業を立て直すことはできません。政治で言えば、首相と国民の関係も同じです。信なくば国立たず、です」と述べておられる。今の世の中を真剣に考えておられるリーダー達の、共通した思いを代弁しておられるように思われた。

石破元幹事長は善戦したが、小泉新次郎世代に期待したい

それにしても、善戦健闘したとされる石破元幹事長だが、現職安倍総理への批判の受け皿にはなり得てはいるものの、果たして今日本の直面している難問に対する骨太な対抗戦略を持ち得ているのかどうか、やや心もとない思いを感じたのだが、どうだろうか。若手の小泉新次郎筆頭副幹事長ら若手の、これからの動きに注目したいと思う。

スウェーデンでの選挙結果、ネオナチ政党民主党が躍進とは!?

少し時期が連れたので、あまり注目されなかった選挙結果がある。北欧の福祉国家のモデルとして有名な、スウェーデンの総選挙が9月9日に実施された。結果は、政権与党の社会民主労働党が議席を減らし、改選前より12議席少ない101議席、得票率も100年ぶりに3割を切ってしまつた。第2党で野党の中道右派・穏健党も僅かに社民党中心の左派連合に及ばず、ともに過半数を制することができなかった。ネオナチの流れを汲む極右・民主党が、改選前の42議席から62議席へと伸ばしたものの、第3党でしかなかった。一時は、第1党になるのではないか、とすら予想する向きもあったのだが、さすがにそこまでは行かなかったようだ。

背景には、移民・難民に対する寛容な政権への反発があるようだ

結果として、左派連合も中道右派連合も多数を制することができず、ともに極右の民主党との連立を否定しており、連立協議に決着がついたとの報道には接していない。問題は、何故極右の民主党が支持率を伸ばしているのかという点であるが、難民の受け入れに寛容な政権に対して国民のなかには批判が拡大している事があり、今後のスウェーデンを始めとする福祉国家においても、難民・移民の受け入れに不寛容な国民が増え始めている事にある。ドイツにせよスウェーデンにせよ、いままで国際社会に開かれた民主主義国家のなかでの国民意識の転換が進み、ポピュリズムが拡大し始めている事に注目しておく必要がありそうだ。

日本でも外国人労働力の受け入れ拡大へ、対策は大丈夫か

というのも、日本でも労働力不足を背景に、外国人労働力の活用へと大きく舵を切り始めており、それが「移民」政策へと転換する事になれば、外国人の定着となって日本社会との軋轢も増大し始めてくる。すでに、ヘイトスピーチの拡大が国粋主義的勢力によって進められ始めており、さらにそれが強まることも十分に予想される。今は、日本経済が比較的好況局面にあり、労働力不足が深刻になっているために、外国人労働力に依存する事に期待する人が多いのだが、一度不況局面に至れば、外国人労働者の排斥問題すら起きかねない事は十分予想される。それだけに、今後の外国人労働者の受け入れに当たっては、十分な配慮と対策が講じられるべきであり、秋の臨時国会での大きな争点になる入管法改正論議において、それらの点についてしっかりと議論を尽くし対応して欲しい。

米中関税引き上げ競争(戦争)の拡大、妥協する動きの無い対立へ

さて、経済の問題では米中の関税引き上げ競争(戦争)に火が付き、どこまで続くのか国際社会の大きな懸念材料となってきている。アメリカのトランプ大統領にしてみれば、今年秋の中間選挙での勝利に向けて保護主義を前面に出して支持を集めようとしているわけで、どう妥協をするのかといった事は眼中にはなさそうである。対する中国も、真正面から対抗手段を取ってきており、世界経済のなかの1位と2位の経済大国のぶつかり合いは、様々なところに悪しき影響が出始めている。こうした保護貿易には、百害あって一利なし、なのだ。今後、どのように展開して行くのか、仲介役が出る気配もなく、世界経済の足を引っ張るだけでしかなく、為す術もないのが実情だ。当面、中間選挙においてアメリカ国民の英知に期待する他はなさそうだ。

アメリカの株式市場が活況化しているのは何故なのか

そうした中で、驚くことにアメリカ証券市場は活況を呈しているという。FRBの金利引き上げが進められ、金融の正常化が進むことによってドルがアメリカに還流し始め、これまで金融緩和による低金利のドルが流入していたアルゼンチン等では金融危機が生じているという。では、アメリカの株式市場の上昇の要因は何なのだろうか。株式市場を通じて資本の増強を図り、設備投資が活発になっているというよりも、企業が持つ余剰資金を自社株買いに投入している事が目立っているようだ。つまり、再び資金余剰が生じていて、その資金が株式に投入され株価の上昇が進み、それを受けて更にお金が投入されバブル化し始めている事への警戒感が出始めているのだ。

リーマンショックから10年、再びバブルから金融危機への芽

リーマンショックから10年、再び金融危機が襲ってくる危険性を多くの専門家は指摘し始めている。さすがに商業銀行など規制当局の監視下にある金融機関は、それほど危険性は出ていないものの、影の銀行と言われるヘッジファンドやプライベートエクイティファンドなどが暗躍し、低格付けの比較的利回りが高い債券などに投入され、再び金融危機の危険性が高まりつつあると何人かの専門家は指摘する。

「プロシクリカリティ」と「大きすぎて潰せない」現実に直面
トランプ政権誕生の一因は、リーマンショックへの国民の怒り

いざ金融危機が発生し始めれば、十分に担保価値があると思われていた証券や債券などは、だれも見向きをしないで投げ売りされ価格が暴落してしまう事が起きるのだ。プロシクリカリティと言われる景気循環増幅効果によって、上昇し始めた価格はますます上昇する傾向にあるのに対して、いったん下落し始めた資産価格が予想以上に暴落し、担保価値の暴落でキャッシュ不足に追い込まれる事態に直面するわけだ。そうした価格の大変動がありながら、時価会計主義による弊害もより深刻化する。そのリスクへの対応ができなくなれば、金融危機が現実化する。そうして、もう一つの弊害は「大きすぎて潰せない」という政策であり、国民がバブルを起した大企業・金融機関を救済する事への強い憤りを惹起する。トランプ大統領の側近だったバノン氏が、トランプに託した思いの背景にはこうした大企業の救済に税金が使われたのに対して、普通の庶民は何の対策も講じられなかったという怨念が込められていたわけで、まさにトランプを生んだのは、リーマンショックという金融危機でもあったことを見失ってはなるまい。

世界経済の動きには、再び暗雲が垂れこみ始めつつあるようだ

アメリカは、バブルの危険性に対してはあまり事前の対策を打たないで、バブルが起きた後で対策を打つと言われており、約10年に一度の周期的なバブルの発生が常態化している。国民の生活や雇用などに与える影響もさることながら、アメリカは基軸通貨国であり世界経済のけん引役でもあるだけに、世界経済に与える影響は計り知れないのだ。なんとも、迷惑な経済政策と言わざるを得ないのだが、それが今の現実なのだ。


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