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労福協 活動レポート

2019年1月28日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第80号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

外国人労働者の受け入れ問題、必要なら移民政策として正式に受け入れるべきだ

昨年末の在日外国人の数が146万人に達し、過去最高を記録したと報道されている。対前年度の実数の伸びは約18万人、伸び率は14,2%と極めて高い数値を示している。実に5年間で2倍伸びているわけで、昨年の入管法等の改正により、おそらくこれからも外国人の増加が急ピッチで進むことが予想される。

政府は正式には「移民」を受け容れるとは言わないものの、4月から導入される技能レベルⅡと認定される労働者の場合、家族の帯同も許されるわけで、どう見ても移民としか言いようがない。これから増大する外国人とどのように共生社会を創り上げて行けるのか、不安視される治安問題だけでなく、生活のあらゆる領域にわたる問題に、地域社会は対応していく必要がある。それだけに解決すべき課題は多く、しかも難問だらけである。正式に移民として受け入れることを決定し、憲法で保障された人間としての様々な権利を保障する必要があるにもかかわらず、頑なにそれを認めようとしていない今の政権の姿勢にこそ根本的な問題がある。

法務省、技能実習制度の違法・不法の実態に厳しい態度へ

特に、最近では外国人労働力を受け容れる動きが加速している中で、技能実習生の労働条件や滞在条件をめぐる違法・不法な扱いが問題になるケースが多発している。最近では、三菱自動車やパナソニックと言った日本を代表する大企業における技能実習生の就労実態の違法性が指摘され、法務省は技能実習生の認定取り消し措置を決定し、今後5年間に亘って技能実習生の就労認定だけでなく、新しい法律に基づく外国人技能労働者の受け入れについても認可しない方針にするようだ。法務省として、国会での外国人技能実習生の酷い実態を指摘されたことを受け、相当厳しく対応していく方針に切り替えざるを得なかったに違いない。

労働力不足の現実、「世界最良の移民の国へ」向かうべきだが!!??

この外国人労働者受け入れの問題について、『週刊金曜日』1月25日付の最新号が「移民大国 ニッポン」特集を掲載している。これまでも「技能実習生」について、その不当性・不法性ついて厳しく指摘してきた左派的立場のオピニオン誌ではあるが、その主張のトーンは「移民として受け入れ、正社員として雇用を」というものになっているようだ。
この号より2号前(1月11日号)のコラム「風速計」では、法政大学総長の田中優子氏が「世界最良の移民の国へ」と題して、労働力が不足している中小企業や介護の現実を指摘し、「日本人が今、日本人以外の人々の助けを必要としているのは、紛れもない事実だ。単純な排斥主義や治安悪化論は、もはや甘い」(4頁)とされる。問題は、受け入れ環境をどのようにつくりあげて行けるのか、ということにあり「世界最良の移民の国をつくろうではないか」と結びの言葉で締めくくられている。

日本の労働者と移民労働者が連帯できる取り組みは可能か!!??

日本の労働者の賃金が抑えつけられている時、移民の導入による労働力不足の緩和を進めることによって、総体的な賃金水準を低位安定にしてしまう事への対応が、何らかの形で求められているように思えてならない。それは、デビッド・アトキンソン氏が主張するように、「最低賃金」の永続的な引き上げを進めて行く事であり、不十分な働き方の更なる改革ではないだろうか。それらと一体のものとして、日本の労働者と連帯した取り組み抜きには、上手く機能しない事もしっかりと認識しておくべきだろう。

この問題に関しては衆議院議長からの斡旋で、入管法の改正に伴う政令や規則の改正がまとまれば、国会の場で改めて集中的な審議を実施する事になっていた。今月23日に、衆参の法務委員会が閉会中に開催されたようだが、報道によれば問題点となっている事に対する答弁は、相変わらず極めて不十分なものでしかなく、新しい外国人労働者の導入問題は疑問だらけのようだ。果たして、4月1日からこの新法律に基づいて、外国人労働者の導入が円滑に進められるのかどうか、極めて怪しくなっている。

関係審議会などの場で十分な専門家の論議や現状の問題点などを調査・分析することなく、経済界からの強い要請の下、初めに「外国人労働力導入ありき」からスタートしている事に問題があるわけで、しっかりとした国会審議を通じて問題点の整理を進め、必要があれば施行を延期してでも納得できるものにすべきであろう。拙速なやり方が罷り通れば、今後に禍根を残すだけであろう。

証拠に基づく政策立案(EBPM)について、
上西充子法政大教授の「恣意的運用が横行 監視を」(朝日新聞)「耕論」より

少し話が変わるが、朝日新聞のオピニオン欄で「その政策、何を根拠に」と題する「耕論」が26日朝刊に掲載されていた。経験や前例ではなく、統計データなど「証拠」に基づく政策立案を国が進めようとしている事への、3人の有識者がコメントを書いておられる。その中で、法政大学教授の上西充子さんが「恣意的運用が横行 監視を」に注目した。

裁量労働制の労働時間データ、恣意的使い方の問題提起へ

この中で上西教授は、政府が「まず実態を調査し、そのデータを詳細に分析して政策を作る」ことには否定しないが、今の政府の手順は逆になっていて、「まず安倍政権が政策の方針を作り、役所はその方針に合うデータを取るために知恵を絞る。結果を加工したり、都合の悪いデータは出さなかったり、そもそも集めなかったり、恣意的な運用が横行」していると厳しい。そして、昨年の働き方改革において「裁量労働制の労働者の労働時間が一般の労働者よりも長い」調査結果を伏せて、別のデータを審議会に提出していた」ことを自身のブログで明らかにし、それを国会で野党側が安倍総理にも質問して政府の資料の恣意性を追求、結果的に裁量労働制の拡大は法案から削除された事例を取り上げている。

背景にある内閣人事局による省庁幹部人事の掌握、政権への忖度

かくして、上西教授は「厚労省の『データ加工』は、もはや役所がやってはいけないレベルにまで踏み出してしまった」と痛感されている。そして、「ここまで役所が政権を忖度するようになったのは、内閣人事局が省庁の幹部人事を一手に握るようになり、政権に都合が悪い動きをした人は左遷し、政権の意向に沿った人を昇格させているとされる事が背景にあると思います」と論断しておられる。私もまったく同じ意見であり、こうした弊害をどう改革していくべきなのか、一度手にした権限を簡単には手放さないのが政治家の性であるだけに、本当に深刻な問題である。厚労省の毎月勤労統計を始め、国の56ある基幹統計の内22の統計でずさんな扱いが続いていたことに対しても、上西氏は厳しい批判をされている。

中国GDP統計のお粗末さを嗤えない日本の現実、根本的改革を

関連して、お隣の中国の統計についての専門家の指摘が面白い。2月2日付『週刊東洋経済』最新号、「株価崩落に備えよ」特集の中で、三菱モルガンスタンレー証券の藤戸則弘氏とマネックス証券の大槻奈那氏の対談の中で、藤戸氏が「中国のGDPを『イデオロギー指数』と呼んでいます。国が年率6,5%成長と決めたら、統計数字もその前後で発表される。(中略)。国家の統計ではなく、新車販売台数やスマートフォンの出荷台数など、個別の業界の数字を見て行く必要があります」(26ページ)と述べておられる。同じような指摘は、かつて李克強首相ですら指摘(電力使用や貨物運搬実績などを重視)していたことがあり、政府統計に対する信頼は殆ど無きに等しい現実があることは間違いない。

日本の現状は、こうした中国と同じように「安倍政権支持データ」によって忖度(粉飾)され始めているのではないだろうか。残念ながら、とても中国の事を批判できる状態にはなっていないのだ。今国会で、あらためてこうした問題の根源に迫る原因を除去していくよう、政府だけでなく与野党ともに改革していくべきである。

白川方明著『中央銀行』を読み終えて、「書評」でなく「読後感」

白川方明前日本銀行総裁が書かれた『中央銀行』(2018年東洋経済新報社刊)を、一応読み終えることができた。「一応」というのも、なにせ本文だけで700ページを超す大著であるだけに、目を通すだけでも相当の時間がかかったというわけだ。昨年12月に買い込み、年末から読み始めて何とか正月3が日で読み終えたいと思ったのだが、残念ながらやや1か月近くかかってしまった。

「書評」などは、とても書けるほど読み込んでいるわけでもなく、「読後感」を述べるとしたら、この本は「平成バブルの成立・崩壊・再建」の最良の「記録であり」、セントラル・バンカーとしての苦闘の歴史を、理論・政策と実務にわたって実に分かりやすく書かれた経済書だと思う。また、必ず後世に引き継がれるべき問題点が実に分かりやすく、かつ丁寧にまとめられており、経済学を学ぶ者にとって必読の書になるに違いない。国会議員時代には、質問などもさせていただき白川前総裁の人柄も良く存じているつもりだが、この本を読んでも白川前総裁の実に丁寧に、論点をきちんと整理され、問題の正鵠を外さない姿勢が滲み出ていて懐かしく感じた次第である。

近く「英語版」も出版されるとのこと、その意義は大きい

内容については、別の機会に少し触れて行くつもりだが、一つだけ触れておきたい。この本で白川前総裁が日本で起きたことを、世界の国の方たちに正しく理解してもらうためには、英語でもこの本を書くことが必要だ、と指摘され近々英語版を出版されるとのことだ。凄いことだし、是非とも日本の平成バブルの成立・崩壊・再建の歴史について、正しい理解を広めて欲しい。

アメリカ界隈で起き、アメリカの学者や専門家達が問題視していること以外には、この世界ではきちんと取り上げられることの殆どない事への悔しい思いが、英訳本の出版を企画されている事の背景にあるのであろう。第二次世界大戦後、世界最大のバブルを経験した日本、高度成長から低成長へと成熟した経済への移行と人口減少社会に直面した日本、その経験はこれからの先進国が辿るであろう課題に対する貴重な問題提起にもなるはずだ。否、リーマンショックとその後の歴史は、そのことを如実に示したものといえよう。

日本のアメリカ追随の経済学専門家達や政権への痛烈な批判の書

そのことは、日本の学者・エコノミストの方達の経済・金融・財政政策の多くが、アメリカ仕込みの理論(その多くがシカゴ学派中心の新古典派経済理論)による分析で以て一方的に論断し、日本の現実に適用しても効果が出ていない現実を、いくら主張したとしても受け入れてもらえなかった悔しさとともに、その方たちへの痛烈な批判となっている事を知る。白川前総裁は、自身の後を継いだ黒田日銀の金融政策については、直接的には何も語っておられない。しかし、セントラル・バンカーとしての5年間の政策についての言及された「第2部総裁時代」と、「第3部中央銀行の使命」の行間には、かなり厳しい批判が滲み出ているように思われる。それは、黒田総裁だけではなく、総裁以下の人事権を持った安倍政権の金融政策への「介入」のあり方への批判も含まれている。

結局、日本に必要なのは、優れた人材なのであり、中央銀行にとってはそれこそが命といえるものなのだ、ということに尽きているのかもしれない。


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