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労福協 活動レポート

2019年4月29日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第93号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

大型連休初日のメーデー、50年前の初めて参加した頃を懐かしむ

平成が終わり、令和の時代に入ろうとしている。と同時に、連続10日間という大型連休に突入し、多くの国民が海外や行楽地を訪れるようだ。だが、あるマスコミの調査によれば、10連休を喜んでいるよりも、どう過ごしていいのか戸惑っている人の方が多いという結果に同感したい。日本型雇用の典型的だった80年代までのサラリーマンにとって、連休とは猛烈な働き方から暫しホッとするひと時だったという思いがあるものの、今の時代の「働く人」の在りようは、正規労働よりも非正規、契約、請負、そして派遣やパートと言う形で多様化しており、「労働者」と言うひと塊ではとらえきれなくなっているように思えてならない。さらに、次のようなある労働法学者の捉え方に、なんだか納得してしまいそうだ。

「労働者は、もはや階級としても国民としても一体性を持つものではない。これを多様性(diversity)という観点から眺めることには抵抗がある。そんな高尚なものではないからだ。むしろ、多数ないし群(multitude)として、内部に種々の差異と格差を抱えながらも、働いて生きている者どもという点では、同様にしか見えない人々、経済の動静に落ち葉のように翻弄される、この私でもあり君でもあるが決して我々といった一体感など持ちようもない群衆こそが、現在の労働者の原像に相応しい。」(元久洋一、小宮文人編『労働法の基本』法律文化社刊の「はしがき」より)

北海道に来て45年、大学を出て初めてメーデーに出て以来50年、今年初めて5月1日以外の日のメーデーへ参加となったのだが、50年前の真っ青に晴れ渡った代々木公園メーデー会場に、数えきれない-ほど多くの労働者が、赤旗がたなびく下で労働歌を合掌していたのが懐かしい思い出である。

北海道のメーデーは、伝統的に5月1日に大通公園で開催されてきたのだが、組織率の低迷や組合員の意識の変化も大きく転換しているのだろう、大通公園の一丁角の会場で、かつては全道労協系の組合員で溢れかえっていたのに、今では退職者会の参加が多くても、隙間が目立つ今年のメーデーだった。主催者発表の会場参加者5,000人、おそらくかなりの”鯖を読んでいる”のだろう、参加者からも苦笑が聞こえてきたようだ。これから令和時代の労働運動がどのように展開していくのか、気にはなるのだが、なかなか労働者の連帯・団結・行動の行く末は見えてこない。日本経済の動きを大きく変えて行けるかどうか、雇用・賃金・時短、そして何よりも生産性の行く末にかかっているだけに、労働組合の課題も重要なのだ。

税理士協会役員の投稿、社会保障と税の一体改革としての理解を

消費税の問題について、今年10月からの10%への引き上げと同時に、食料品と新聞に対する軽減税率8%の導入問題がある。私の地元紙「北海道新聞」の日曜日の定番のコラム「寒風(けいざい)温風」欄で、先週21日、地元北海道税理士会調査研究部長渡部喜彦氏が「消費税の問題点」と題する小論が掲載されていた。見出しには「『軽減税率』は見直すべき」とある。結論的には、私も軽減税率には大反対であり、国会での消費税論議において絶えず反対の論陣を張って来たし、税制担当の財務副大臣としても一貫して主張してきた。

消費税逆進性対策の為の軽減税率批判の指摘、一面的ではないか

このコラムの中で、10%への引き上げについては「財政事情や多様化する社会保障財源問題からやむを得ない」と言う税理士会の態度を明確にされている。

ただ、「軽減税率」と4年後から本格移行になる「適格請求書等保存方式」(インボイス方式)についても、強く反対を打ち出されている。その理由として、軽減税率については消費税の持つ低所得層にとって負担感が大きくなる「逆進制」を、軽減税率にすることは「その効果の危うさと取引の境界を見極めることの難しさ」から、税務トラブルを誘発するため逆進性対策には適さないと判断している国は多い、と。だが、どう逆進性対策を取るべきなのか、具体的な対案は提起されていない。

もともとインボイスは、消費税導入時に整備しておくべきだった

もう一方のインボイスの問題については、2種類の複数税率であれば「区分記載請求書等」で対応は十分可能であるとして、インボイス導入には反対されている。消費税にインボイスが付されていない事は、非課税業者からの取引でも課税業者として扱う事が可能となるだけに、消費者からすれば「益税」(時には、「損税」になる)の問題が指摘されて久しい。それだけに、きちんとしたインボイスを導入し、大企業であれ中小企業であれ、正しく課税していく必要があることは「公平」という税の持つべき必要条件にとって絶対に必要不可欠である。国民の納得が得られない税制にしておくことは、税を扱う税理士の皆さん方に是非とも変えて欲しいものだ。

年金制度を消費税のみで支える考え方、今は誰も述べていない!!!

実は、このコラムで取り上げたいのは、社会保障制度と税の一体改革と言う観点の重要性である。渡部部長は最後の件で次のように述べておられる。

「現状の年金制度を消費税のみで支えることができる税率は16,8%と試算されています。その過程としてまず10%に増税するはずが、突如として、大きな歳入棄損が生じる軽減税率の導入が決まりました」

今の年金制度は、消費税だけで賄われているわけではない。基礎年金部分の2分の1が税による負担だけであり、それは2004年の年金改革で3分の1負担から2分の1負担と改正され、ようやく2014年の消費税率5%から8%への引き上げの際、消費税1%分2,5兆円の財源を基礎年金部分に投入することで実現できたのだ。「年金制度を消費税のみで支えることができる税率は16,8%と試算」というのは、何時、誰が、どこで指摘しているのか、どうにも理解できない。今は、国民年金保険料は月額16,900円、厚生年金保険料は所得金額の18,3%(労資折半)で固定されていて、これを総て消費税に変えることはフィージビリティからも不可能だし、仮に全額税方式への転換をするとすれば、制度の転換・完成に向けて40年以上もかかる代物となる。

消費税の逆進性対策は、歳入だけでなく社会保障施策と一体で実現

もう一つは、最初の問題である消費税の持つ「逆進制」に対する対策をどのように考えて行くべきか、である。このコラムでは字数が限られているせいなのかもしれないが、読者である国民にとっては歴史的に「消費税」に対する嫌悪感が根強いだけに、ここはきちんとした逆進性対策を展開すべきだと思う。それは、税=歳入だけでなく社会保障=歳出も含めて考えなければならないといことだ。確かに、消費税の欠陥としてどんな低所得者からも比例税率で税を負担させるわけだが、歳出において年金・医療・介護・子育て・その他各種福祉施策に充当することで、低所得者層には消費税負担以上の受益が受けられることになり、歳入と歳出を併せて消費税の逆進性の解消を図る、という視点の重要性を指摘すべきであろう。

税理士会の調査研究部長がこのような認識でおられる事に、やや危機感を持った次第だが、直接お会いしたりして意見交換もしていないものの、北海道内で圧倒的な読者層を誇る「北海道新聞」の名物コラム欄に掲載された小論だけに、見逃すことができず、こうして批判の論を展開させていただいたわけだ。

税を担当する税理士さん達と、社会保障を担当する社会保険労務士さん達の間には、主管官庁が財務省・国税庁と厚生労働省・社会保険庁など分断されており、相互の理解がどのようになされているのか、大きな問題があることを痛感させられる。今後、社会保障・税一体改革の視点で、税制改革や社会保障改革を捉えて行くべきことの重要性を強く指摘しておきたい。

再びMMT(現代金融理論)について、前号の指摘の誤りについて

さて、前号で取り上げたMMT(現代金融理論)であるが、多くの読者から反応があり、この問題は来年のアメリカ大統領選挙戦での一つの争点になりつつあるだけでなく、日本の今取られている安倍政権の異次元の金融緩和と、基礎的財政収支の黒字化すら先送りする財政政策への、お墨付きを与える理論として取り上げられるのではないか、と言う予感を持つだけに、これからも引き続き取り上げて行きたい。

実は、前号の記載の中で、ドーマー条件を日本に当てはめた際の数値について、正しく記載していなかったことをお詫びして、再び掲載しておきたい。

ドーマー条件については、次のとおりである。

190422
(Y=GDP B=累積債務残高 r=利子率 g=GDP成長率 T=税収額 G=経常歳出額 -1は一年前の数値)

いま前年のGDP=500兆円 累積債務額B=1,000兆円 成長率g=1% 利子率r=2%とし、今年のGDPも500兆円と仮定する。

右の項の最初の(r-g)(B-1/Y-1)は過去の累積債務に対する支払うべき債務額で、(2%-1%)つまり支払うべき利子率が1%大きいため、成長率分だけ増える税収の伸びよりも増えることになる。つまり、1,000兆円×0,01=10兆円だけ負担が増えることになる。これに対して、税収は増税がなければ(税収-経常歳出)で、10兆円分プラスにならなければ、その分「歳入欠陥」となって翌年度の財政赤字が増大していく。(ちなみに、成長率1%分の税収増はあるが、せいぜい租税弾性値は1,1なので、GDP比ではほとんど無視し得るレベルで、利子率の上昇による歳出増もあり、財政再建には貢献しない)

こうした財政赤字が続けば財政赤字は発散し、財政の持続可能性が喪失する。それだけに、毎年1%の利子率が成長率を上回れば10兆円、即ち消費税率に換算して4%もの税収増が必要になるのだ。もし、2%もの差が出れば、20兆円、消費税率に換算して8%もの消費税率が必要とされるわけで、持続可能性を高めるためには財政再建は不可欠なのだ。【毎年のGDP(500兆円)=Yは、計算上通分すれば無くなるので、このように理解できる】

金利r>成長率gが長い歴史では当たり前、今が異常なのだ

つまり、日本の財政は、金利の上昇に対して極めて脆弱な構造に陥っているわけで、今日銀の異次元金融緩和によって辛うじて成長率の方が利子率よりも上回っているため、こうした財政赤字の問題は露呈していない。でも、金利よりも成長率の方が低いという状態は何時までも続くことはありえないわけで、財政が持続可能性を持てなくなるリスクに対して、一刻も早くこうした事態から抜け出す必要があるわけだ。


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