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労福協 活動レポート

2019年5月13日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第95号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

米中経済対立の激化、為替の全面引上げの動きはどうなるのか

米中の経済対立が、大型連休中から激しくなってきた。これまで順調に推移していると見られていた米中の経済交渉協議が突然暗転したのは、トランプ大統領の発信した5月5日のツイッターによる中国に対する関税引き上げ方針からだった。中国劉鶴副首相らとの閣僚級の会議はあったものの、米通商代表部(USTR)は10日中国から輸入品全てに制裁関税を課す準備を始めたと発表した。現在は対象外となっている約3,000億ドル(約33兆円)分に対して、「第4弾」の関税発動を実施する事となる。トランプ氏は、中国とは交渉は続けると表明してはいるものの、中国に対する圧力を一段と強める方針を打ち出したわけだ。具体的な詳細は今週13日に発表されるとのことだが、現実に発動するとしても2か月近くかかると見られている。

これまで中国に対して、第1弾は昨年7月にロボットや工作機械など約800品目、約340億ドル、第2弾として昨年8月に半導体や化学品など約300品目、約160億ドル、第3弾として昨年9月に家具や家電など約4700品目を実施してきたが、今回第4弾として、第3弾に適用されていた関税率10%を更に25%へと引き上げることと、新たにiPhoneなども対象に3250億ドルに達する大規模になるものと見込まれている。

為替引上げの影響は、アメリカより中国の方が打撃を受けている

対中国に対する関税引き上げの打撃は、当然のことながら米中両国にとって大きな影響を与えることは間違いない。これまでは、関税引き上げた国の方が大きな打撃を受けるとされてきたのが通説であった。ところが、欧州のシンクタンク、エコンポール・ヨーロッパが推計した結果について日本経済新聞11日朝刊一面に掲載しているところによれば、関税引き上げ対象品目については米国の消費者物価が4,5%の上昇にとどまるのに対して、中国の生産者物価は20,5%も下落するという驚くべき結果となっており、実に関税引き上げの約8割を中国側が被るというものになっている。

とはいえ、今度の関税引き上げは、日用品も含む膨大なもので、1920年恐慌時に記録した関税引き上げ水準をはるかに凌駕するレベルに達するものとなりそうだ。それだけに、アメリカのみならず世界経済のけん引役を果たしていた中国経済の落ち込みが続けば、サプライチェーンの一角を占める日本に対しても大きな影響は避けられない。政府や多くのエコノミストたちが、2019年下期には中国経済が持ち直すという前提で日本経済も回復すると予測していただけに、日本企業の設備投資にも影響が出、今後のGDP水準も落ち込むことは必至だろう。

為替引上げの背後にある、米中の覇権争いが激化する事の懸念

さらに考えておかなければならない事は、この貿易をめぐる米中の為替切り上げ戦争だけの事ではない事だ。アメリカは国家資本主義のまま拡大を続ける中国の技術覇権、経済覇権を封じ込めようとしているわけで、今後も経済的な覇権競争をめぐる対立は繰り返すものと見ておく必要がある。中国への積極的な投資については得策ではない、という見方も増えて行くことが予想される。

日本経済は、オリンピック関係や不動産投資需要、さらにはインバウンド関連投資などが一巡した後だけに、中国の景気停滞の影響は深刻なものとなる可能性がある。その結果、成長率のゼロ近傍への低下の下、金融政策はもはや限界であり、財政へのウエイトがかかることも予想される。今の段階では消費税引き上げを断念するまでには至らないものの、更なる財政支出の拡大のもたらす財政規律の悪化は、国民の将来不安となって消費の減退を招き、一向に景気の回復感が望めない状態が続くことになるだろう。

「令和」の時代の幕開けは、予想以上に暗いものになりそうだ。考えてみれば、このところの日本経済の低位安定は、お隣の中国の経済成長と言うエンジンに辛うじて支えられてきたことが大きかったわけで、今後の米中関係から目が離せなくなってきた。

6月の日露首脳会談、平和条約交渉には大きな成果は無さそうだ

日本経済新聞の外交欄で、日ロの平和条約締結と領土問題についての記事が掲載されていた。6月のプーチン大統領の来日で安倍総理との首脳会談に向けた日ロの外務大臣交渉が、まったく進展していない事を伝えている。昨年末には、日ロの間の北方領土の解決に向けた平和条約の締結の可能性が予想され、その行方如何によっては衆参同時選挙もありうる、という見方すら出ていた。結果として、その進展ははかばかしくなく、北方四島の帰属表現を政府の外交文書の中から削除したことに対して、今やおひざ元の自民党内からもクレームがつく有り様なのだ。

「『森・プーチン』の20年の重み」日経新聞記事に注目

この記事と並んで「『森・プーチン』20年の重み・・・」と題して桃井裕理記者の記事の中身を読んで、森元総理に対する私自身の評価を見直さなければ、と思わずにはいられなかった。それは、プーチン大統領が2001年の3月、森総理(当時)とイルクーツク声明に署名し、「平和条約締結後に日本に歯舞群島と色丹島を引き渡す」という1956年の日ソ共同宣言が交渉の基本であることを、大統領となって初めて確認した時のことだ。その時から既にロシア側は、アメリカが軍事基地を作らないと保証できるのか、強い懸念をプーチン氏は森総理に表明していた。安倍総理に引き継ぐ時にも、森氏は基地問題をどうするのか、これをよく考えないと交渉は難しいと忠告したと言う。

2001年3月、寒風吹きすさぶイルクーツクの墓地でのやり取り

プーチン氏は、それでも交渉を続けてきた一つの理由として、「森氏への信頼」があったとのことだが、それは森氏が、イルクーツクに分骨している日ソ交流に尽くした父・茂喜氏の墓参時に、寒風が吹きすさぶ中、森氏がコートも手袋も付けずに参拝している事に対してプーチン氏が「寒くないのか」と声をかけた時の森氏の答えが記事となっている。

「父親の墓だからではない。この地ではたくさんの日本人が抑留され、飢えと極寒に苦しんで亡くなっていった。どうして自分がコートや手袋を着けていられるだろうか」

これを聞いたプーチン氏は、慌ててコートと手袋を脱いだという。エリツィン氏からプーチン氏へと大統領が代わって以降、森元総理の長い付き合いが続くわけだが、森氏はプーチン氏がまだ無名の時にも色々な配慮をしてきたとのことで、二人の友情について記事を読む者にある種の感銘を与えてくれる。かつて、森総理の事を「蚤の心臓、サメの脳みそ」といって揶揄する記事が流布された時代があったが、どうしてどうしてプーチン氏とのやり取りは、日ロ外交政治史の中でも忘れてはならない一コマではなかろうか。

森元総理は気配りの人、首脳同士の信頼と言う「財産」の重要性

私自身、参議院議員当選直後の商工委員会で、通産大臣だった森氏に質問をしたことがあるが、何を質問したのか記憶にないものの、質問者に対する実に気配りある答弁をされた事にやや驚いたことがある。最近における政治家の言動が、ともすれば国民の顰蹙を買うお粗末なレベルでしかない事が多いだけに、森元総理のイルクーツクでの言動に改めて心を動かされた思いであった。

この記事の最後に、6月の首脳会談に向け「安倍首相も森氏に期待している」と首相周辺の声を紹介し、約20年の時を経た「森―プーチンライン」はどう動くのか、と記者は書いているのだが、個人的な友情に頼るしかない今日の日ロ交渉は、結局上手くいかないのではないだろうか。領土問題と言う重大な国益を賭けた解決のためには、文字通り国の総力をかけた戦略的な外交交渉こそが、今必要なのだろう。どうやら安倍政権には、日ロの平和条約締結は無理ではないだろうか。対北朝鮮との外交でも、お粗末な結果しか生み出せていないようだ。


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