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労福協 活動レポート

2019年6月4日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第98号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

『私の履歴書』橋田壽賀子さんから石原信雄さんへ

日本経済新聞の一月単位の連載コラム『私の履歴書』では、令和に入って初めての5月が脚本家の橋田壽賀子さん、そして6月は石原信雄元官房副長官と続く。丁度NHKBSプレミアムで、朝ドラ史上最高の傑作であり、日本だけでなく世界の国々でも放映され、視聴率が時に60%を超えた「おしん」が再放映される中での『私の履歴書』だっただけに、実に興味深い思い出が赤裸々に語られていて毎朝の掲載コラムを読むのが楽しかった。

あの小林綾子さん演ずる奉公に出されるおしんが、最上川(?)上流から筏に載せられ親元を離れるシーンを、作者の橋田さんも撮影が終わって思わず涙したシーンは、まさに感動ものだった。なぜか、幼少時代のおしん役・小林さんの後を引き継いだ田中裕子さんが、撮影中橋田さんと一言も言葉を交わすことも目を合わせることもなかったことなど、何故なのだろうか、こんな役回りとは思わなかったという思いだったのだろうか、など想像を掻き立ててくれ続けている。

昭和天皇に見て欲しかった橋田さん、見ていたと聞き思わず笑みが

私自身、1983年4月から翌年3月までの1年間、北海道知事に横路孝弘さんがまさかの当選を果たされ、その下での道庁の労働組合との労使関係のあり方など、いろいろと忙しい毎日だっただけに、ほとんど朝ドラを見ることはなかった。でも、不思議なことに、筏で奉公先に出るおしんのシーンと、「大根めし」を嫌がる奉公先の娘と、喜んで(?)食べているおしんの姿だけは印象に残っている。まだまだこれから10か月間も再放映が続くおしんの生き様に、大正から昭和にかけての激動の歴史をしっかりと見続けて行きたい。橋田さんはおしんの生まれを昭和天皇と同年にしたことを取り上げ、昭和天皇に是非とも見て欲しかったこと、そして昭和天皇が見ておられたことを知って「思わず笑みがこぼれた」と述べておられる。まさに、激動の明治・大正・昭和を生き抜いた壮大な「女たちの歴史物語」だったのだと思う。

石原元官房副長官、政治と官僚のあるべき姿と現実を

さて、6月から始まった石原信雄元副長官の場合、政治と官僚との関係について、どのような人間模様が展開されてきたのか、是非とも今の段階で明らかに出来ることをディスクローズして欲しい。自分が平成4年から18年間の参議院議員時代と2年3か月の内閣官房参与時代、政治と官僚との関係をすこしばかり垣間見てきただけに、石原元副長官の語ってくれる歴史的な証言は貴重である。現在の官邸のありようにもしっかりとメスを入れて欲しいものだ。既に石原副長官の後継であった古川貞次郎さんは、数年前に『私の履歴書』を執筆されており、石原さんと会わせて昭和後期から平成にかけての官邸を中心にした政治ドラマを知るには、欠かす事の出来ない役者の登場である。

これからの1カ月、またワクワクしながら朝刊を読む時間を楽しみたい。

高度成長を支えた終身雇用・年功序列・企業別労組の「岩盤」は変えられるのか、
フリーランスと言う働き方1,000万人時代の課題

またまた日本経済新聞を取り上げて恐縮なのだが、6月1日付のオピニオン欄「Deep Insight」で、藤井一明経済部長が「フリーランスが崩す岩盤」と題して雇用・労働問題を取り上げている。最近のJR東日本の労働組合からの大量脱退に触れ、労働組合組織率の低下という実態に言及。一方、経営側も令和になって経団連中西会長の「就職した時点と同じ事業が続くとは考えにくい」発言や、トヨタ社長の「終身雇用を守っていくのが難しい局面に入ってきた」との見解表明など、企業別労働組合と終身雇用、年功序列という戦後の高度成長を支えてきた「岩盤」の存在が問われ始めて来た事に言及。

問題は「公正な収入」「雇用と同程度の保障制度」にある

だが、それでもなかなか「岩盤」は簡単には崩れそうにないとの見方があるものの、別の側面から「岩盤にひびを入れるかもしれない層の存在」を指摘する。それが「フリーランス」と呼ばれる働き方をする層で、ある調べによれば、個人事業主のほか副業や複数企業との契約などを通じて働く「広義のフリーランス」は日本全体で1,090万人、人口のほぼ1割でここ2~3年はそれでも横ばいとのことだ。その背景には問題点として「公正な収入」や「(通常の)雇用と同程度の保障制度」を上げている。いまは、人手不足だからそれほど問題として社会的には顕在化していないが、景気が陰り始めればフリーランスの中で貧困層が増え、格差が拡大する危険性があるわけで、どのようにしてこうしたフリーランス層の人たちの賃金や社会保障制度を拡充していけるのか、大きな課題になることは必至だろう。

公正取引委員会は頼りになるのか、独占禁止法の「優越的地位の乱用禁止」を活用し、
フリーランスの権利を守れるだろうか

本来頼りになるべき労働組合も力を落としている中で、藤井氏が注目しているのが、公正取引委員会による「優越的地位の乱用」を封じる独占禁止法を活用し、フリーランスの権利を守る具体策を検討し始めたことである。コンビニの店主の労働組合としての交渉権を中労委が否定した事の記憶がまだ残るだけに、こうした力関係で圧倒的に弱い立場の側に立った取り組みの強化こそ、今一番に求められている事だと思う。安倍政権が求めている事とは真逆なものかもしれないが、公正取引委員会は設置法に則ったしっかりとした仕事をすべき時だ。

新聞では、公取委が実施したアンケート調査結果として、次のような切実な声が挙げられている。

▼正社員と同様にみなしているという理由であれもこれもと頼まれる。関係が悪くなるのでやむなく受け入れている。(ライターなど)
▼はじめに提示された以上の費用は、こちらに負担があっても、正しく請求できる方が少ない(インストレーターなど)
▼はじめは少ない数の依頼しか出さないが、直接の対話の中でドンドン増やしていき、報酬は増やさない(技術開発関連)

フリーランスの実態の正確な現状把握から始めるべきでは

先ず政府としては、フリーランスの正確な実態を把握し、法的な位置づけを明確にして保護策を定めるようにすべきことを主張している。いまこそ、巨大な独占的地位を持った企業から、その優越的地位の乱用を調査・監視・摘発・改善を進めて行くことを、公正取引委員会は取り組む必要がある。その為にも、同じ問題を抱えている中小企業やフリーランス労働者などを広く結集すべく、労働組合も努力をしていくべき時ではないだろうか。景気が落ち込み始め、失業者が増大し始めればますますそのことが難しくなるだけに、取り組みが急がれる。

藤井経済部長は「メディアも多面的に感度を上げなければならない」と述べているが、巨大独占企業が支配する経済界を背景にする新聞社として、その発言は重いものがある。日本経済新聞社自身も、独占的な力を持った存在でもあることを深く自覚すべきだろう。

望月衣塑子東京新聞記者の講演、「日本のジャンヌダルク」か!!?

東京新聞の望月衣塑子記者の講演を聞く機会があった。自治労退職者会北海道地域学習会で、6月1日札幌のホテル会場を埋めた聴衆を前に約1時間余りの時間を、文字通り速射砲のような速さで、壇上から平場に降りて聞く人たちと同じ目線で「民主主義とは何か 安倍政権とメディア」と題して自らの官邸における菅官房長官との激しくも筋の通ったやり取りを、しっかりと開示していただいたのだ。私が開催の案内を差し上げ、お誘いした友人から「ジャンヌ・ダルクの現代日本人版?でしょうか」という評価をショートメールで頂戴したのだが、当日出席していた多くの労働組合活動家OBの方達の度肝を抜いたのではないか、と思うだけの迫力に満ち満ちていたように思う。少しだけ要望したいのは、もう少しスピードを緩めていただければ、聞きやすくなると思う。

「権力が隠そうとすることを明るみに」記者としての使命と自覚

おそらく、全国的な場でお話しする機会も多いのだろう、「権力側が隠そうとすることを明るみに出すこと!」を新聞記者としての使命として実践していることがヒシヒシと私にも伝わってきた。これからも、民主主義を報道の場で戦い取るべく、全力を挙げて頑張って欲しい。そして、1人でも多くの方たちに、望月衣塑子さんの話を聞いて欲しい。

一つだけ、レジメに会って説明していただけなかったと思うは「名前は『萩原朔太郎』にちなむ」とあった。あまり萩原朔太郎に通じていないせいか、「衣塑子」という名前が珍しく、その由来について知りたかったが、時間不足だったのだろう。

望月衣塑子さんがモデル?!映画「新聞記者」6月28日から放映へ

ハフィントンポスト誌最新号で、望月さんをモデルにしたと思われる映画「新聞記者」が製作されたことを記念して、望月さん、元文部事務次官の前川さん、そして元ニューヨークタイムス記者のファクラーさんの対談記事が連載で掲載されている。今回は第2回目で、「権力とメディア」がテーマとなっている。望月さんも堂々と政権を厳しく批判しているが、それ以上に前川喜平さんの発言が激しい。特に、文部科学省の人事の実態をよく知るだけに、政権側に忖度する官僚の姿が残念でならないのだろう。ちなみに、映画「新聞記者」は6月28日に全国一斉に公開されるとのこと、是非とも見に行きたい。

さて、来週は恒例の奥会津の合宿に8~10日まで出向く関係で、休刊にしたいと思います。奥会津の新緑の中、大学時代の同窓生を中心に囲碁三昧の3日間を過ごすことにしています。ザル碁の典型ですが、それでも仲間たちとの再会は楽しいものです。


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