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2019年7月8日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第102号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

第25回参議院選挙が始まる、序盤は与党が勝利の勢いだが??!!

参議院選挙が始まった。鹿児島地方は豪雨災害に見舞われたようだが、梅雨の無い北海道は連日好天に恵まれている。私自身の3回の経験からしても、この時期に参議院選挙を迎える北海道、一番良い季節の中での選挙戦となるわけで、毎日の選挙活動による疲れもそれほど苦にならなかったように感じたものだ。それでも17日間の日程は、長いようでいて広大な面積を誇る北海道にとっては短い。地方の有権者にとって、一度候補者の話を聞ければ良い方で、多くの道民にとって参議院選挙はなかなか遠い存在なのだろう。

さて、その選挙戦、序盤の情勢が一斉に新聞紙上に掲載されていた。共同通信と朝日新聞の情報だけだが、どちらも自民党と公明党で悠々過半数を確保できる見通しだ、と報じている。憲法改正に必要な議席確保に向けて与党と維新の会などを加えれば、ひょっとすると実現可能なところにまで届きそうだという。内閣支持率だけでなく、政党の支持率を見てもこのような結果となるのは十分に予想されるわけで、今後の選挙戦でどのような”どんでん返し”が起きるのかわからないものの、今のままでは安倍政権は安泰になりそうだ。ひょっとすると次の衆議院選挙でも勝利すれば、案外総裁任期延長論も出てくるかもしれない。あまり嬉しくない事ではあるが、選挙で勝ち続ければ可能性有りと見た。

争点は何なのか、まさか憲法改正ではあるまい、国会とは何なのか

おそらく、投票率は前回よりも下がると見ている。争点として年金による高齢期の生活問題が浮かび上がってきたものの、12年前の年金記録問題による民主党の圧勝の時のような状況とは程遠く、むしろ民主党政権時代の年金改革がほとんど何もできなかったことが想起され、現政権に対する批判票としての拡がりには程遠い。安倍総理が持ち出してきた憲法改正についても、どう見ても国民的な関心の高まりに欠けており、それが選挙の争点として打ち出したとしても、今なぜ憲法改正なのか、国の最高法規の改正にうつつを抜かす時だとも思えない。かくして、何が選挙の争点なのか、私には一向に明らかになって来ないのだ。

こんな国会は要らないのでは、低投票率を目論む与党陣営の狙い

国民の眼からは、国会での論議が遠くなり、何のための国会なのかという思いが強くなり始めているに違いない。国権の最高機関としての国会での与野党の論戦の場が形骸化し、予算委員会での総理大臣出席の下での重要な課題に関する論戦すら参議院選挙への影響を考えての事だろうか、逃げ回っていたという印象が強い。所詮、数こそ力とばかりに押し切り、時に野党側をこき下ろして論点をすり替え、内閣人事局による官僚人事を巧みに操り、政権に忖度する行政が罷り通っている。こうして、国民の眼からみて、こんな国会なんかいらないじゃないか、という見方が静かに広がってきているのだと見る向きもあり、それが政権側の狙いなのではないか、とさえ思われてくる。

1人区統一候補にはこぎ着けた野党側、でも迫力不足は否めない

野党側は、なんとか32ある1人区での統一候補を立てる事には辿りついたものの熱気に乏しく、国会最終盤で内閣不信任案の提案を、衆参同時選挙を誘発するという政権側のブラフにおののき一時躊躇した事など、野党側は本気で政権側に取って代わる力を持てそうにないと有権者からみくびられているのだろう。さらに、参議院選挙の複数区内での立憲民主党と国民民主党の対立すら喧伝されている。なによりも、民主党政権時代の様々な統治能力を疑われる思いが国民の脳裏に残存しているだけに、どうしても政権批判が広く・深く・確実に広がって行かないのだ。残念ではあるが、それが野党側を取り巻いている現実なのだ、という事から再出発していく以外にない。

若年層の満足感増大、自民党支持の拡大、どう打開できるのか

野党側として深刻に考えさせる問題は、若い世代の自民党支持の拡大であり、そのすそ野は確実に広がりつつあることだろう。日経新聞が7月6日の1面トップ「チャートは語る feat.参議選(上)」で「政権支持 20代は7割 高齢層より高く『分断』映す」という特集記事を掲載している。日経新聞による6月世論調査の結果を伝えているが、安倍政権支持率は60歳以上が49%なのに、20代は7割だったこと、段々と若者と60歳以上層との差が拡大している事をとりあげ、かつての「怒れる若者」は消えてしまったのか、と問題を指摘する。その背景として、日本の若者の「幸福度」は統計的にも高まっており、内閣府の調査では18~29歳で『生活に不満がある』と答えた人は16年以降3年連続で20%を下回り、その要因として若者世代の「就職環境の改善」と世帯収入の増加を上げている。

こうした若者の意識の変化は確実に広がっており、かつては野党である社会党支持者が多かった労働組合員の意識調査で見ても、20代さらには30代にまで自民党支持の方が立憲民主党支持よりも多くなって来つつある。このトレンドが続けば、労働組合の政党支持の動きも大転換しかねない。こうした調査で垣間見えてくるのは、若い方たちには「今だけ、自分だけ、お金だけ」という発想が蔓延しつつあり、前提となっている日本の政治・経済・社会が「持続可能性」を失いつつある現実を見ていないように思えてならない。

日本の政治・経済・社会の持続可能性、真実を突きつける政治を

それだけに、そうした今の政権側があえて語ろうとしていない政治・経済・社会の不都合な現実を、野党側がしっかりと掘り下げ、国会での論戦を通じて問題を提起し、確固とした政治理念・政策思想に裏打ちされた持続可能で実現可能性のある政策にまで高めて行くべきであろう。そうした地道な努力を進めながら、優れた人材を発掘していく事しか再建の道は残されていない。時間はかかるが、そうした努力を期待したいものだ。

熊倉正修著『日本のマクロ経済政策』(岩波新書6月刊)を読んで

さて、今の日本が抱えている政治・経済・社会の持続可能性が失われつつあるという問題について、マクロ経済政策の分野で実に明快かつ鋭く、丹念に論じた著書を紹介したい。著者は熊倉正修明治学院大学教授で、『日本のマクロ経済政策』という6月末に出版された岩波新書である。新書ではあるが、今進められている安倍政権の経済政策(安倍政権だけでなく日本の経済政策全般に言及)に対する厳しい批判が展開されており、本来であれば参議院選挙で野党側がしっかりと追及すべき論点が満載されており、国会での今後の論戦においても、十分に活用できると思う。

この著書で展開されているのは、第1章、第2章で「通貨政策」で為替介入と外為特会の問題を取り上げ、第3章で金融政策として、デフレ対策という名の財政ファイナンスとなっている事を、第4章は財政政策を取り上げ、「経済成長なくして財政再建なし」という政策の持つ問題を、最後の第5章では「マクロ経済政策と民主主義」と全体の整理を進め、「日本が生まれ変わることは可能か」どうかを論じている。

アベノミクスだけでなく、日本のマクロ経済政策の問題を鋭く指摘

私が一番の興味深い指摘と思ったのは、俗に「アベノミクス」といわれている経済政策について、「客観的、長期的な視点が放棄され、目先の景気浮揚に役立ちそうなことなら何でもやるという姿勢が鮮明」であり、そこには「従来の日本の経済政策」の問題点が凝縮されたものになっているという「序章 漂流する日本のマクロ経済政策」での指摘である。
では熊倉氏の言う「従来の日本の経済政策」とは何なのか、少し冗長になるが箇条書きしてみる。(いずれも序章からの抜粋で、4ページより)

・「客観的な分析を軽視し、主観や世論をもとに場当たり的に政策を運営すること」
・「目先の政治的軋轢が少なければ、後に問題を引き起こす可能性が高い政策であっても実施してしまうこと(あるいは、後に問題が生じることが予想されても、その対応が政治的軋轢を伴う場合、どこまでも先延ばししようとすること)」
・「それを疑問視したり批判したりする声が上がっても、真摯に応えようとせず、情報を歪曲したり隠避したりするなどして既存の政策を続けようとする」

といった点であり、日本のあらゆるマクロ経済政策に蔓延していると指摘し、とりわけ日本の財政の現実に対して、見かけは小康状態だが、内実は「末期症状」と厳しく批判、その他の経済政策もこの影響をうけていると問題視する。

こうした「質の悪い経済政策」の背景には「政府や官僚、中央銀行に対して、責任ある政策運営を求める仕組みが欠如していること…」があり、かくして日本の財政危機は「シルバー民主主義」で悪くなっているのではなく、「民主政治の未熟さを示すものだ」と痛烈に批判されている。

日本財政の現実、日本の民主主義の未熟さに問題ありとの指摘

詳しい中身についての紹介は出来ないものの、財政という政治の要諦を為す分野での民主主義の未熟さ、お粗末さに問題があることの指摘はその通りであろう。ただし、国民に本当の真実を語り、選挙とういう試練を乗り越えて行けるのかどうか、民主主義のもとでのマクロ経済政策運営の困難性をどのように克服していけるのか、最終章での提起は「政治家や官僚に対して、持続的で合理的な政策運営を促す仕組みの必要性」を指摘し、数十年単位の財政計画と客観的立場から評価する独立機関の必要性に言及している。

医療・介護の自由化・市場化の提起はいただけないのだが!!!???

この著書において、気になるのは医療・介護分野での人手不足に対して、賃金や価格の自由化を求めている事である。医療・介護分野といった社会的共通資本といわれる分野は、市場原理に任せることなく公的保険制度を充実させていく必要があるわけで、その中での働く人たちの賃金やサービスの価格の引き上げなど、財源を確保しつつ進めるべきだと思うだけに、自由化の提案には反対せざるを得ない。

とはいえ、新書でありながら実に興味深い論点を提示しているだけに、何時か書評として取り上げてみたい。


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