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労福協 活動レポート

2019年8月5日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第106号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

どうなる日韓関係、どうする日韓関係、最近特に思う事について

日本の世相はどうなっているのだろうか。愛知県名古屋市で開催されていたトリエンナーレ展が、開会して3日で中止に追い込まれてしまった。「表現の不自由展・その後」という主題で、過去の表現の自由との関係で、広く展示されなくなった作品を集めての企画だったわけだが、その中に従軍慰安婦像や昭和天皇を含む肖像群が燃える映像など、最近のネトウヨにとってはトンデモナイ展示と受け止められることが必至の物も含まれていた。

開催が始まるや、テロ予告や脅迫が相次ぎとても継続して開催できる状況にない、と主催者側の大村愛知県知事と津田大介芸術監督が判断したわけだ。とくに、「京アニ」事件が起きたことも、大村知事には一定の影響を与えたようだ。人命尊重と言う立場は、もちろん重要な観点であることは誰も否定はしないだろう。だが、それほど簡単に今回の事態を捉えていいものだろうか。

表現の自由が失われていいはずがない、ビエンナーレ中止は残念

たしかに、今年に入って今日に至るまで、日韓関係は急速に冷え込み、今では両国間の貿易通商問題から安全保障問題にまで暗雲が垂れこみ始めた中での、最悪の時期の開催となってしまったことは確かだろう。だが、それで芸術祭が開催中止に追い込まれるという事は、表現の自由という国民の基本的な権利が失われる事にも通じるわけで、そのまま問題なしとすることは絶対に出来ない。

とくに、主催者側の実行委員会会長代行だった河村たかし名古屋市長が、2日の視察の後で「日本国民の心を踏みにじる行為」と大村知事に抗議文を提出していたし、大阪維新の松井代表も「公金を投入しながら、われわれの先祖があまりにも人としての失格者というか、けだもの的に取り扱われるような展示をすることは、違うんじゃないか」とも発言している。さらに菅官房長官も、「補助金交付の決定にあたっては、事実関係を確認、精査して適切に対応したい」と発言している。要は、税金と言うお金を出す以上はこんな展示は許されるべきではない、という事なのだろう。

リベラルな立場からは「中止は相手の思うつぼ」なのだが・・・

この問題を報じた朝日新聞4日朝刊では、メディア法の専門である元上智大学教授田島康彦氏のコメントとして「政治家が展示内容について中止を求め、補助金について『精査する』とチェックを入れるなど、今回は、広い意味での表現の自由の侵害や、検閲的な行為があったと言える。非常に問題だ」と指摘し、早稲田大学戸波江二名誉教授(憲法学)は、同じ観点から今回の中止決定を「きわめて残念」で、「混乱を理由に取りやめるのは、反対派の思うつぼだ」とまで厳しく捉えている。そうだと思う。

私自身の経験の中で、元朝日新聞記者で現在『週刊金曜日』の代表をされている植村隆さんが、今から3~4年前に札幌にある北星学園大学の講座を担当されていた時、「従軍慰安婦問題の捏造記者」という攻撃を受け、学園の理事会で大きな問題になった事を思い出す。(私自身は、当時学園の監査役で理事会に出席していて、発言もさせて頂いていた。)結論として、講座担当を任期中は辞めさせられることなく終えられたわけだが、キリスト教に基づく比較的リベラルな校風で知られた北星学園においてさえ、植村さんに対する風当たりもかなり強く存在していたわけで、ましてや今日のような日韓関係の下では、その攻撃たるや比較できない程炎上するに至る事は必至だっただろう。

芸塾監督の津田大介氏、想定以上の大きいリスクにより中止判断へ

芸術監督を務められた津田大介氏は、記者会見の場で中止に至る理由として「抗議が殺到する、脅迫が来るのもすべて想定していて、現実のリスクが大きいものが出てきたら中止せざるを得ないと思っていた」とのことだ。

さらに記者が「河村名古屋市長や菅官房長官の発言は影響したのか」と質問したことに対して、
「一切ない。そういう状況がある中でこそ生きてくる企画だと思っていた。安全管理上の問題が大きくなったのがほぼ唯一の理由」と答えている。津田氏はさらに「何かのタブーに触れるものがあった場合、SNSを使った圧力やスクラムが出てきている」し、主催者が公的機関なのでそれへの対応と表現の自由がぶつかっているのが現状だが、今回の企画は成功すれば希望になれると考えたが、現実は「劇薬だった」と述べている。さらに、こうした事態に至ったことについて「それはジャーナリストとしてのエゴだったのではないかとも、感じています」と反省の弁を述べている。

津田大介氏は朝日新聞「論壇時評」の評者、どう今回の事態を論ずるのだろうか

津田大介氏は、朝日新聞の毎月1回掲載されている「論壇時評」の執筆者であり、津田氏が取った今回の企画と中止決定に至った経緯を、8月号で「ジャーナリストとしてのエゴ」をどのように論じるのか、注目してみて行きたい。

泥沼化する日韓関係、事態をどう打開していけるのか

それにしても、日本と韓国の関係は泥沼化に陥っていて、事態は放置できない程の深刻な状態になりつつある。従軍慰安婦問題から第二次大戦中の強制徴用工の問題の韓国最高裁判決、さらには自衛隊機に対する韓国軍からのレーダー照射事件、そして日本側からの輸出入貿易に関する「ホワイト国指定の取り消し」や貿易品目の輸出規制の強化など、これでもか、これでもかという双方の批判の投げ合いが眼前で展開され、同盟国内における諍いの仲裁にアメリカが出てくるなど、抜き差しならない日韓関係に至っている。今後の展開がどうなるのか、来年の東京オリンピックのボイコットすら噂され始めているようだ。

歴史の教訓、殴った方は忘れても、殴られた方は簡単には忘れない

日本側からすれば、戦前の徴用工の問題は1965年の日韓条約で解決済みだ、と言う原則を貫こうとしているわけだが、韓国側はそれでは民間人に対する償いは出来ていない、という事なのだろう。報道からは、それ以上の事はなかなか理解しにくいわけだが、ある専門家が主張しているように、1965年という時代の日本と韓国の経済力の格差は今とは比べ物にならないほど大きく、対等な力関係とは言えない中での条約調印をせまられた、というのが韓国側の本音なのかもしれない。ちなみに、今の国民一人当たりGDPは、日韓ともに3万ドル台となっていて、共に先進国の仲間であることを日本側はあまり理解していない事が多い。

とはいえ、韓国側も日本側もどうしたらウィンウインの関係に持って行けるのか、ここはしっかりと腰を据えた日韓関係を構築していくべきだろう。経済だけでなく教育や文化・芸術・スポーツ等の世界も含めた日韓の新しい視点での関係構築が求められるのではないか。2001年のサッカーワールドカップの日韓共催と言う企画は、最初に聞いたときには「まさか、日韓で共催とは」と驚いたものだが、終わってみれば「共催して良かったのだ」と思ったりした事を思い出す。

平成上皇の天皇時代の発言に注目、ウィンウイン関係構築に向けて

政治の世界に天皇の発言を持ちだす事には十分注意する必要があるが、私自身この2001年12月18日の平成天皇誕生日における裕仁天皇の発言ほど心を揺さぶられたことはない。その時の記者の質問と天皇の発言を引用しておきたい。この時の平成天皇の発言に、日本の政治家を始めとするリーダーの方達は耳を傾け、冷静に考えて行くべき時ではないかと思う。

「問3 世界的なイベントであるサッカーのワールドカップが来年,日本と韓国の共同開催で行われます。開催が近づくにつれ,両国の市民レベルの交流も活発化していますが,歴史的,地理的にも近い国である韓国に対し,陛下が持っておられる関心,思いなどをお聞かせください。

天皇陛下
日本と韓国との人々の間には,古くから深い交流があったことは,日本書紀などに詳しく記されています。韓国から移住した人々や,招へいされた人々によって,様々な文化や技術が伝えられました。宮内庁楽部の楽師の中には,当時の移住者の子孫で,代々楽師を務め,今も折々に雅楽を演奏している人があります。こうした文化や技術が,日本の人々の熱意と韓国の人々の友好的態度によって日本にもたらされたことは,幸いなことだったと思います。日本のその後の発展に,大きく寄与したことと思っています。私自身としては,桓武天皇の生母が百済の武寧王の子孫であると,続日本紀に記されていることに,韓国とのゆかりを感じています。武寧王は日本との関係が深く,この時以来,日本に五経博士が代々招へいされるようになりました。また,武寧王の子,聖明王は,日本に仏教を伝えたことで知られております。
しかし,残念なことに,韓国との交流は,このような交流ばかりではありませんでした。このことを,私どもは忘れてはならないと思います。
ワールドカップを控え,両国民の交流が盛んになってきていますが,それが良い方向に向かうためには,両国の人々が,それぞれの国が歩んできた道を,個々の出来事において正確に知ることに努め,個人個人として,互いの立場を理解していくことが大切と考えます。ワールドカップが両国民の協力により滞りなく行われ,このことを通して,両国民の間に理解と信頼感が深まることを願っております。」


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