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2019年8月19日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第108号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

「れいわ」山本代表のインタビュー、その2「財政」について

前回は、消費税廃止に向けた税制改革の問題について触れたのだが、今回は、財政支出の問題に移りたい。「れいわ」の山本代表は、消費税を廃止する際の財源として「新規国債の発行」を提案する。その際、今話題になっている「MMT(現代貨幣理論)」なのか、と言うBusiness Insider側の問いに対して、山本氏は次のように答えている。少し長くなるが、引用したい。

「日本はMMT理論の実験がすでに出来ているという人もいますけど、それは半分合ってて半分合っていないと思います。大量の国債発行でも金利は高騰しないことが実証されているのが日本です。政府は借金が増え過ぎれば国が破たんする可能性もあると言いますけど、本当にやばい状況だったら金利が上がるはず。(中略) 日本はこの30年は金利が下がりっぱなしなんですよ。マイナスなんですね。どうやって破綻するんですかっていう話なんです。

どの国も借金をして投資しているし、だからどの国も成長してゆるやかなインフレになっている。けど日本はそうじゃない。20年瀕死の状態。デフレの時には政府が借金をして人々に大胆な支出をして、景気を軌道に乗せることが必要だということなんですね。これ政府の借金と言われるけど、政府が借金をすることで民間の貯蓄は増えるんですよ。例えば政府が20兆円借金して、その20兆円を社会保障に投資する。誰かの借金は誰かの資産、という常識の話。それを財務省は意図的なミスリードで、一人一人の借金だと刷り込んでいる。そこらへんのからくりを全員でシェアしたときに、前に進んでいくんだろうと」

と述べている。

ここで述べている経済指標の正誤については、この際あまり問わない事にしよう。さらに、日本経済が20年間瀕死の状況でデフレの時代であったのかどうかについても、その解釈については色々とあるが、専門家達の論議としてならいざ知らず、政治家のプロパガンダとしてはとりあえず問題にしないで置く。

山本代表発言の3つの問題点、その1 金利低下は日本だけでない

私には、次の3点が大きな問題として指摘する必要があると思う。

第一点目は、「本当にやばい状況だったら金利が上がるはず」なのに、日本では「20年間瀕死の状態」になっていると言う。実は、日本だけが金利が低下しているのではなく、EUにおいてもドイツなどではマイナス金利になっているし、好況と言われるアメリカにおいても長期国債金利が低下し、インフレ目標2%に到達していないのだ。いずれの国においてもリーマンショック以降金融を緩和し続けてきたにもかかわらず、インフレになっていないのだ。日本だけが問題になっているわけではないことを無視している。

インフレになったら増税に転ずる、それができないのが日本の政治

もっと言えば、もしインフレとなり、金利が目標の2%にまで上昇し始めたら、日本の抱えている国債の利払い費だけでもやがて10兆円単位で増えてくるわけで、その時になって慌てて増税します、と言っても政治の場で増税を簡単に決定できるのか、それはどのくらいの時間で可能となるのか、過去の国民負担増大(増税や保険料アップ)に対する政治家や政党の対応を見れば明らかであろう。政治家や政党は、国民の嫌がることを先延ばしし続けてきたことを忘れてはなるまい。

日銀の異次元金融緩和、実はそれがインフレ抑制し財政ファイナンスとなっている現実、「やばい」と感ずる富裕層はリスク警戒へ

更に、日銀が異次元の金融緩和政策を取っているのは、政府の発行する国債を買い取り、金利を事実上ゼロ近傍に抑えることによって利払い費の高騰を人為的に抑え続けている事も無視できない。いわゆる日銀による「財政ファイナンス」を実践しているわけだ。本当に「やばく」なることを先延ばししたいから、財政ファイナンスで先送りし続けているわけだが、これから起きることは日本の「円」に対する信認が失われる事による「ハイパーインフレーション」こそ、最大の危機となることの恐ろしさだろう。すでに、海外への資産の逃避や「金」への投資などが拡大し始めていると言われ、富裕層であれば確実にこうしたリスクを予測し始め、準備し始めているに違いない。

日本の一人時間あたり実質GDP成長率は、それほど落ちていない

第二点目として、どの国も借金して投資していて、それ故、成長し緩やかなインフレになっているのに、日本だけ酷い状態にしているとの指摘である。

日本ほど借金をして政府支出を拡大してきた国はなく、それが故にグロスで1,000兆円を超す国債残高を積み上げてきたわけだ。日本が過去20年間の名目GDP成長率でみて、先進国の中で低くなっている事は確かだが、1人当たりの実質GDPで見ると、先進国の中ではそれほど見劣りのする成長率ではない。

(この点について、これまでよく引用してきた熊倉正修著『日本のマクロ経済政策』岩波書店刊の153ページにG7各国のマンアワー当たり実質GDP成長率が4-2-(b)で図示されている。それを見ても、2000~2016年までの平均値で見ると日本は遜色のない伸びとなっている)

日本経済は好況で人手不足なのに賃金が上がらない事が問題に

現に日本経済の現況について、失業率が大きく低下し有効求人倍率が1を大きく上回り始めているわけで、これだけの好調な経済環境の下で何故労働者の賃金が上がらないのか、解決すべき課題はそこにこそあるのではないかと言う専門家の指摘が問題の在り処を教えてくれている。

背景には、日本の雇用のあり方の問題点があるように思われてならない。つまり、大企業の下で終身雇用となっている人たちの伸びが停滞するのに、中小企業の下や派遣・請負・契約労働といった非正規・不安定雇用労働者に従事する人たちが急増していて、平均賃金の低下すら生じている。つまり、高度成長期に適合していた大企業労働者の年功的賃金や企業内福祉によって専業主婦や子供の養育を賄えた時代から、そうしたことが大企業でも難しくなりつつあるにもかかわらず、ワークライフバランス自体は大きく転換できないでいる日本の雇用者会の現実、さらに増え続ける非正規・不安定雇用労働者への社会的な生活を支える社会保障インフラのお粗末さが加わり、格差社会に対する告発の根強い闘いが進展し始めていると思う。そこは、「れいわ」が依拠した国民の怒りの根幹であり、それを政治的な場で問題視してきた山本太郎氏の努力に大いに敬意を表したいところである。

政府の借金は民間の貯蓄増で、国民の借金ではないという暴論

第三点目は、政府の借金によって民間の貯蓄は増え、それは誰かの資産となり、財務省の言うように「一人一人の借金だ」はミスリードだ、と言う点である。

確かに、政府が国債を発行すれば、今のところは民間の金融機関が国民の預貯金の範囲で購入し、その民間の国債を日銀が購入する事によって政府の赤字は日銀に移転されるわけだ。日銀の保有する国債は、国債価格がインフレによって低下(暴落)すれば、日銀の損出となって国民の負担に跳ね返ってくる。それは、日銀納付金の減額や場合によっては債務超過として「円」の信認にまで影響は及ぶ。その時、いまは民間金融機関が日銀の当座預金に眠らせている資金を引き揚げ、海外やインフレに強い現物に投資したりして「円」からの避難を開始すする。それと同時に、世界的に「円」の暴落として投資適格対象外となれば、日本の大企業もそれ以下となって社債格付けの低下となり、グローバル経済の下で甚大な影響が及んでくる。こうなれば、国民一人一人が甚大な影響を受けることは間違いない。とりわけ、国際的な資産移転などできない大部分の中低所得層にとって、その被害は覆いかぶさってくる。

山本代表、毎年の予算のなかの「国債費」の重圧、国民の生活を圧迫していませんか

それだけではなく、実は既に毎年の予算において総額100兆円もの予算に占める国債費と言う過去の発行してきた国債の償還元本と支払金利だけでも約25%を占め、これが一般会計を圧迫し続けてきている。この国債費を支払わなければ、デフォルトとなり日本財政は破たんした事になる。それだけに、国債費はどんなことがあっても支払わなければならなくなるわけで、その歳出における影響は社会保障費や教育費などにのしかかってくる。国民の一番求めている社会保障や教育といった生活基盤を、既に毎年圧迫し続けているわけで、今後その分を国が借金で賄おうとすれば、借金を借金で支払うという「ネズミ講」の世界に陥るわけだ。いや、既にその「ネズミ講」の世界にどっぷりとつかり切っているのだ。この毎年の予算に占める国債費の圧力は、国民一人一人の借金として国民生活に大きな影響を与え続けている事をどのように説明されるのだろうか。

「円」の信認が崩壊する時のハイパーインフレこそ大問題では

山本代表は、さすがに借金を増やし続けるのはリミットがあり、「インフレをちゃんと制御しなければいけないというルールつき」だと発言もされている。インフレと言っても、2%程度のインフレすら起きていないわけだが、日々生活をする上での消費者物価については、需要と供給の面で人口減少・高齢社会の下では需要が供給を大きく上回る現物商品はそれほど多くなく、慢性的に需要よりも供給が大きいため物価は停滞しているのが現実である。ただし、サービスは別であり、サービス価格の上昇が起きれば物価への跳ね返りも出でくるだろう。これからのイノベーションによって需要が大きく増え、供給が不足しがちになる経済が出て来ない限り、われわれが想定しているようなインフレは起きなくなっているわけだ。

ただ、国民が使用している不換紙幣「円」が信用を失墜するとなれば、事は別だろう。ハイパーインフレの危険性は、「円」の信用がなくなれば必然となるだけに、それに対する「リスク」、いや「不確実性」に対処しなければならないのだ。山本代表には、あの戦後の焼け野原の光景は映像などで見たことがあるだろうが、戦後のハイパーインフレによる預金封鎖、新円切り替え。資産課税の強化といった経済敗戦の姿を想像できただろうか。暑い夏のひと時、ぜひとも8月15日の敗戦は、経済面の敗戦でもあったことを深く心に刻んでほしい。

これから総選挙に向けて「5%への消費税引き下げ」は絶対にダメだ

まだまだいろいろと問題提起したい事があるが、「れいわ」の山本代表が主張する経済・財政・税制については、どうしても納得ができないし、彼の主張通り進めて行くことによる将来の日本社会の惨状が確実に予測されるだけに、この問題に対する多くの国民が正しい判断ができるよう政治家だけでなく、学者・専門家やマスコミ関係者など声を上げて行く必要があると思う。とりわけ、「れいわ」が次の総選挙で野党共闘の条件に「消費税5%への引き下げ」を絶対的条件として掲げているだけに、その条件を飲むのかどうか、日本の政治の行方にもかかわる一大事として正しく問題を捉えておく必要がある。これから始まる、秋の政治の動きの一つの焦点として、私自身厳しい目で見て行きたい。


お詫び、前号でスウェーデンなどにおいて富裕税として資産保有額の一定税率が徴収されている、と言う指摘をしていましたが、2007年にスウェーデンでは廃止され、フィンランドでも同時期に廃止されたとの読者からの指摘があり、確かめたところ、廃止されていました。しっかりと確認しないまま記載していたこと、お詫びを申し上げます。


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