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労福協 活動レポート

2019年9月30日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第114号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

40年かかってようやく消費税率10%、EU並みの引き上げ必要

いよいよ明日から消費税率が10%へと上がる。もっとも、食料品と新聞代には8%の軽減税率のままだが、ようやくというか、やっと2ケタの消費税率にたどり着いた、というのが実感である。1979年に大平総理大臣が一般消費税の導入に挑戦するも、総選挙で敗北してから40年、その後中曽根内閣時代に売上税として再び導入しようとするも、これまた参議院議員の岩手選挙区の補欠選挙で自民党候補がまさかの敗北に追い込まれ、断念させられる。

消費税引き上げた政権に、国民は厳しい選挙結果を下してきた

1989年、バブルの絶頂期に、竹下内閣の下で消費税率の引き上げが3%という税率からスタートするわけだが、その年に実施された参議院選挙で自民党が大敗北させられ、消費税の引き上げが政権を揺るがす大問題となって財政当局を悩ませることになる。3%の消費税率導入から30年かかってようやく10%となるわけで、あまりにも時間がかかり過ぎたといえよう。なかには、安倍総理のレガシーとして2度の消費税率の引き上げを評価するものもいるようだが、私に言わせれば「とんでもない」ことである。そもそも税率を引き上げる法案は自社さ合意で作り上げ、安倍総理は8%への引き上げは何とか予定通り実施したものの、10%への引き上げは2度も延期させ、選挙に有利に使いまくった挙句、公明党の要求した軽減税率を導入したり、幼児教育の無償化にまで対象を広げるなど、三党合意を踏みにじったことを忘れてはなるまい。

これからの消費税引き上げには、大連立政策連合が必要だ

既に導入されていたEU諸国では20%が普通で、なかにはデンマークのように25%にまで達している国もあるわけで、これからの少子・超高齢社会を考えた時、日本の消費税率が10%で納まるはずがない。消費税の引き上げの歴史を振り返った時、最初の竹下内閣時代は別にして、次の3%から5%への引き上げは村山内閣の時代の「自社さ」連立政権の時代に法制化し、次の5%から10%への引き上げの法制化も、実は野田内閣の時代に民主党と自民・公明両党の政策連立によって可能となった事を見失ってはなるまい。つまり、消費税率を引き上げるという課題は、日本の政治の現実からすれば政権を失う事に直結する危険性があるだけに、大連立政権あるいは政策連合によって引き上げを進めることが求められると思う。

政府税調の腰抜け答申、経済同友会の桜田氏は17%引上げ発言へ

安倍総理は、当分10%以上の引き上げは視野にない、と明言しているが、経済同友会の桜田謙悟代表幹事は、9月24日の記者会見の場で、17%への引き上げが必要だと明言されている。日本の超高齢社会と財政の持続可能性を維持していく為には、消費税の引き上げが不可欠だという認識である。桜田代表幹事は、新設された全世代型社会保障検討会議のメンバーの一人であり、是非とも会議の中で正論を展開して欲しいと思う。

それに引き換え、政府税制調査会は、第二次安倍政権になって初めて答申を公表したのだが、消費税の引き上げには言及しておらず、安倍内閣に遠慮しているのではないか、と思われても仕方がない。しかも、本来は参議院選挙前に答申を出す予定だったにもかかわらず、選挙に影響を与えない為なのだろう、9月になってようやく答申を公表している体たらくなのだ。中里会長以下、政府税制調査会は何をやっていたのか、かつての石弘光会長時代が懐かしく思われる今日この頃である。こんな政府税制調査会であれば、必要がないのではないか、メンバーを大幅に変えるなり一新して、時の政権に遠慮することなく今後の厳しい時代における骨太な税制改革案を提示して欲しいものだ。

消費税問題が政局の最大の争点へ、れいわに追随するのか野党

これからも引き続き消費税の引き上げ問題について、いろいろな角度から検討を加えて行きたいと思う。とりわけ次の総選挙は、れいわ新選組の提起する消費税の5%への引き下げが野党の選挙協力の条件として提示しているだけに、今後野党側も含めて消費税についてどのような政策を打ち出していくのか、大きな焦点になりつつある。

「関西電力よ、お前もか」、日本の経営者はどうなっているの??!!

東京電力の福島原子力発電所の起こした大問題に引き続いて、今度は関西電力の小浜発電所に絡んでの企業幹部に対する賄賂とも受け取られるお金の存在が明白になるなど、ゴーン事件の日産と同じく経営者の方達の倫理観の欠如は目を覆うばかりである。かつて、高名な経済学者森嶋通夫氏だったと記憶するが、これから出てくる経営者たちは倫理観が欠如した方たちが増え、企業不祥事が増えるに違いない、と喝破されていたことを思い出す。戦前までの教育を受けた日本のリーダーたちは良くも悪くも「きちんとした倫理観」を兼ね備えていたのだが、戦後はそうした倫理観を喪失した大変な時代になるに違いない、と見ておられたのだ。まさに、先見の明ありというところだろうか。それでも、世界の経済の潮流が、ケインズ経済学に立脚し福祉国家をめざしていた戦後の成長の時代はそれほど目立たなかったが、1980年代に入るやサッチャー・レーガンによる新自由主義政策が展開され、むき出しの利益第一主義へと転換し、「今だけ、金だけ、自分だけ」の時代へと至ってしまっている。

国会でのコーポレートガバナンスの論戦が必要ではないか、準備を

それにしても、日本の企業社会はどうなっているのだろうか。前号で日本のコーポレートガバナンスのあり方の問題点について触れたところ、様々な方からの反応があった。会社法の権威であり、私自身が国会議員時代に多くを学ばせて頂いた上村達男早稲田大学名誉教授からも、ご丁寧なメールと資料を添付してくださった。アメリカにおける今回の企業人の方達の声明が持つ重要性を指摘され、日本におけるガバナンスの劣化について問題を指摘されておられた。なんとも、歯がゆい思いをされているに違いない。最近の国会での論戦の中で、株式会社の様々な不祥事について、コーポレートガバナンスの観点からの質問も少なくなっており、国会議員の方達の関心をどのように高めて行けるのか、今後の大きな課題であろう。10月4日からの臨時国会での論戦に期待したい。

元日銀人事局長・元北洋銀行頭取の貴重なコンプライアンス発言

実は先週の26日、元北洋銀行頭取で北海道経済同友会の代表をされていた横内龍三様の、「『企業のリスク管理』~コンプライアンス経営を中心に~」と題する小生主宰のセミナーを、札幌市内で開催させていただいた。横内さまと知り合いになれてかれこれ10年近くなるだろうか、大学時代の日銀に勤めていた友人から紹介され、私自身と同学年という事もあり、以来色々と懇談させていただいてきた方である。当日、これまで日本の企業がコンプライアンスの面でどのような問題を起こしてきたのか、非常に分かりやすい形で問題点を指摘され、企業のリスク管理体制のあり方など、改革のための方策についても具体的に指摘され大いに参考になった次第である。参加した中小企業経営者からは、「今日のお話しを、もっと若い30代ごろに聞いておけばよかった」という感想が聞かれたのだが、若いころのコンプライアンス教育の重要性が必要なのだとおもう。

横内元人事局長「大将を死なせた参謀は去るべし」、日銀を去る

私自身が1997年の山一證券や北海道拓殖銀行の倒産といった金融危機に直面し、国会の場で問題を提起させていただいたわけだが、その当時起きた大蔵省と日銀の過剰接待事件について触れられたことが印象的であった。横内さまは、当時日銀の人事局長として過剰接待問題に対処され、なんと直属の上司が自殺をされるという痛ましい事件に遭遇し、その責任を取って日銀を退職された。その後、学生時代に司法試験に合格されていたので弁護士を開業され、2004年から北洋銀行に招聘されるという経過を色々な思いを込め、縷々述べられていた。日銀のエリートから弁護士、そして北海道を代表する銀行の責任者を経て今日あるのだが、本来は日銀の最高指導部にまで嘱望されていたエリートだったはずが、バブル崩壊後の金融不祥事によって日銀を去られるという誠に潔い処し方を取られたのだ。「大将を死なせた参謀は去るべし」というご本人の発言が、受講された方々にも強く印象付けられたに違いない。横内さまには、引き続き様々な場で活躍される事を強く期待したいと思う。


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