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労福協 活動レポート

2019年10月28日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第118号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

ソフトバンク・ホークス、日本シリーズ三連覇を達成したのだが!!!

今年の秋のスポーツは、日本で初めて開催されたワールドカップ・ラグビー大会で、日本チームが史上初のベストエイト入りするなどの快進撃により、私のような俄かラグビーファンも急増し大いに盛り上がっている。優勝候補の筆頭と言われ、大会三連覇を目指したニュージーランドは、準決勝でイングランドに敗退してしまったため、どこのチームが優勝するのか混とんとしてきた。

日本のスポーツの秋と言えば、やはりプロ野球を上げるべきだろう。セパ両リーグのペナントレースでの覇者と、それぞれ2位3位チームからクライマックスシリーズで勝ち上がってきたチームが対戦し、セリーグはリーグ優勝した読売ジャイアンツ、パリーグは昨年に引き続いてリーグ2位のソフトバンク・ホークスがリーグ覇者の西武ライオンズを破っての日本シリーズ出場となったわけだ。結果は、ホークスがジャイアンツに4連勝し3年連続日本一となったが、あまりにも力の差が出たことも在るのだろう、ラグビーに比較して何となく盛り上がりに欠けた日本シリーズだったように思われる。これからのプロ野球も、今までのようなスタイルに安住していれば、国民から見放されるに違いない。

プロ野球界の盟主の座は、ジャイアンツからホークスに移ったのか

野球談議で言えば、何故ソフトバンクが、何故パリーグがこんなに強いのか、いろいろと論議され、DH制度のせいではないか、とセリーグもDH制を導入するべきだ、等とかしましい論議も続いているようだ。球団別に選手に対する人件費の額をダイヤモンドオンラインで観たことがあるが、やはりソフトバンク・ホークスがダントツのトップであったことを記憶する。ソフトバンク・ホークスも含めてプロ野球球団経営の内訳は公表されていないが、選手の年俸に関する唯一の公表データとして日本プロ野球選手会のものがある。ただ、残念なことに、これはすべての選手をカバーしていないし、自主申告制のため過少申告もあり得るそうだ。推定額ではトップがソフトバンクの65億円強、2位が巨人の55億円、3位が阪神の40億円と、2018年末の東洋経済オンラインで推計されていた。

かつては球界の盟主と言われたジャイアンツではなく、今やソフトバンクが選手の年俸面でもリードしているようだ。とくに、球団経営に対して、チケットを機動的に価格変動させたり、合理的な経営などを取り入れているようだ。この世界も、やはり球団経営のガバナンスの良し悪しが大きく左右する時代なのだろうか。

ソフトバンクグループの抱える深刻な経営危機、
犯罪会計学のパイオニア細野祐二氏の創った「ブロードシューター」が警告する問題

というところまではスポーツ談義の延長なのだが、これから先は企業経営や会計、さらには税の問題に焦点を当てたい。それは、ソフトバンクグループ(以下SBGと略)という企業が抱える問題である。

約半年前にこの通信で紹介した「犯罪会計学」という分野を開拓した元公認会計士細野祐二さんを記憶されている方がおられるだろうか。岩波書店から『会計と犯罪』を出版され、粉飾決算の問題や特捜検察の抱える問題、さらには昨年秋から始まったカルロスゴーン事件についても分析されている。私自身参議員時代から面識があり色々と勉強させていただいたが、その分析力の高さに何を隠そう驚かされた一人である。

ブロードシューターが警告した、ライザップ、ZOZO、SBG

その細野さんが1年以上前から複式簿記研究会を設立され、「ブロードシューター(=粉飾発見器)」というソフトを開発し、日本の上場企業を中心にブロードシューターによる会計分析を展開され、メンバーを募って複式簿記研究会でその成果を披歴され続けている。私自身にもその結果が送られてきており、良く解からないものの「何でこんな優良企業と言われるところが危険なのだろうか」等と思いながら、漫然と資料を見ていたことがある。主な企業としては、ライザップ、ZOZO、ソフトバンクと続いていたように私の記憶にはあった思う。その後、こうしたブロードシューターが打ち出してきた危険信号の灯った企業は、やはり財務上の問題がその後明らかになり、その正確性についてまたまた驚かされている。

細野氏主宰「複式簿記研究会」での「ソフトバンクの研究」

先日、10月21日に開催された第16回複式簿記研究会では、「ソフトバンクの研究」が開催され、細野さんがSBGの公開されたデータを基に会計分析され、冒頭では、今やSBGは資金繰りに困惑を極め、慌ただしく右往左往しているはずだ、と述べておられたのが印象的であった。なんと、SBGは有利子負債総額15,8兆円の日本一の借金王となっており、全ての借入金に財務返済条項がついているとのこと。支払金利も6~7%、すべてドル建てでジャンク扱い。故に機関投資家は買えない代物でしかない。だから債務返済条項がついているわけだ。携帯事業だけはしっかりと利益を上げているが、日本の携帯料金の高さが問題になっているだけに、今後の主力事業に対する政府の方針如何ではSBGそのものの存亡にかかわってくる。細野さんは、11月6日に開催されるSBGの会計に関する孫正義会長の記者発表に注目すべきと述べておられる。

そういえば、このところ日本経済新聞をはじめ新聞の経済欄でSBGに関する記事が多く掲載され、27日日曜日の本紙でもSBGがアメリカのシェアオフィスを運営するウイー・カンパニー支援を決めたことを株式市場が不安視している、との記事を掲載している。支援の中身が、傘下の「ビジョンファンド」ではなく、SBG本体が主導する事になった事でSBG株が下落し社債も売り圧力がかかっていると報じている。

まだまだ多くの興味深い分析が、2時間余に及ぶ研究会の中で実に分かりやすく繰り広げられた動画が送られてきたのだが、会員限定閲覧のためこの通信にURLを記載することは出来ないのが残念である。

国際会計基準、未実現利益を先取りする時価会計原則は大問題

以下、私が感じた問題についてもう少し触れておきたい。SBGについて、企業会計は国際会計基準で実施され、国内会計基準ではない事に注意する必要がある。というのも、国内会計基準では取得原価会計だが、国際会計基準では時価会計となっており、SBGは先述したように国際会計基準を採用している。時価会計によってこれから先5~10年間の事業計画を策定し、将来生み出すキャッシュフローを予測、そのキャッシュフローの現在割引価値を評価益として算出し会計に計上するもので、事業計画がうまくいくという前提で必ず評価益が出る仕組みにしているのだ。そんな馬鹿な、と思ってもそれが国際会計基準として堂々とまかり通っているわけで、細野氏はそこを厳しく問うている。

国際会計基準を採用する監査法人の監査料金は国内基準の4倍

それ以外にも、SBGが抱えている問題点について、いろいろな角度から分析されていて、動画を観ながら余りにも酷いSBGの実態に驚いてしまった。なんと、会計基準を国内基準で監査する監査料金は、国際会計基準に転換すれば実に4倍近くの監査報酬となって監査法人を潤すことになる。SBGはデロイト・トーマツ監査法人グループが担当しており、トーマツグループは70億円近い報酬を手にしている。と同時に、単に監査するだけでなく、SBGの支払う法人税をわずか年間500万円しか納めなくて良い「節税」スキームを考案してコンサルタントしているのも、監査法人グループなのだ。どだい、監査対象企業から監査報酬を得ていて、まともな監査が出来るのかどうか、誰が考えても粉飾決算を生み出す要因の一つになっているといえよう。

国際会計基準の「のれん代」償却方法にも問題を秘めている

国際会計基準と国内会計基準のもう一つの大きな違いは「のれん代」の会計処理である。国内基準では20年以内に償却する必要があるが、国際基準では焼却されないままで、減損段階で処理されるようだ。ここでも、粉飾ではないかと思われかねない会計基準のトリックが採用されており、投資家の目を狂わせかねない問題点を秘めている。

もう一度、SBGに立ち返ろう。ソフトバンクホークスの経営において野球界をリードしてきたわけだが、本体のSBG自体が大きな窮地に落ち込んでいるわけで、孫正義会長にとって3年連続日本一を心から喜んでいる余裕は残念ながら無さそうだ。


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