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労福協 活動レポート

2019年12月30日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第126号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

れいわ元年をふり返って、つれづれに思う事を述べたい

れいわ元年も終わろうとしている。何かがおかしくなっていることを感ずるのだが、それが何なのかしっかりと自分なりの納得感をもって感ずることができない。

12年に1回の「いのしし年」、なぜ野党が勝利できなかったのか

政治の世界で言えば今年は猪年、12年に1回4月の統一自治体選挙が終わると、自分の選挙で手一杯となった自民党の自治体議員の方たちが、7月の参議院選挙に力が入らなくなり、投票率の低下とともに選挙結果も敗北することが多かった歴史がある。12年前の2007年参議院選挙は、安倍第一期政権で「年金未納問題」等で惨敗し、さらにその12年前の1995年には、なんと44,5%と史上最低の投票率の下で「進新党」が躍進し、自民党が敗北(日本社会党も大敗)したことを記憶されているだろうか。このことを30年以上前に初めて指摘したのが朝日新聞記者の石川真澄氏であったが、今年に関しては投票率の低下(48,8%と史上二番目の低さ)は当たっているものの、選挙結果は自民党の敗北とまではいかなかったし、野党側では「れいわ新選組」の躍進が見られたものの、立憲民主党も国民民主党も大きな前進どころか、比例区投票の結果を見ると、むしろ2年前の総選挙からみても大きく落ち込んでしまっている。

国民の意識構造が大きく転換へ、「れいわ」が台風の目に

なぜ、こうした結果になってしまったのだろうか、国民の政治に対する意識が構造的に大転換していること以外には考えられないわけで、自民党支持が急激に高まっているというよりも、既存の野党側への支持率が大きく低下し、それだけ無党派層が増加していると見たほうが良さそうである。野党側といえば、2009年から3年3ヶ月続いた民主党政権が崩壊し、民主党が分裂しその回復に向けて再び合従連衡への道を模索しつつあるものの、国民的な期待の盛り上がりには程遠い。むしろ、「れいわ」の方が山本太郎というキャラのたった政治家のパフォーマンスによって国民的支持を獲得し始めており、野党側の台風の目は明らかに「れいわ」であり「山本太郎」となっていると見ていい。それが左派的なポピュリズムの現れとみているのだが、どうこれから展開していくのか注目したい。

立憲民主党と国民民主党の合流、それでは国民の期待は出てこない

今進められている野党の合流話も、所詮は民主党政権時代の復活としてしか見られておらず、新しいワクワクとするような政治の展開にまでは到底及んでいない。むしろ、いま国民が求めている政権交代まで展望した政治ドラマは、「れいわ」や共産党まで含めた野党共闘が本当に実現できるのかどうか、にかかっていると見て良い。小選挙区で勝てるかどうか、それこそが1994年の選挙制度改革によって日本の衆議院選挙のカギを握ることになったのだ。

世界的に中道左派・社会民主主義勢力の衰退とポピュリズム台頭へ

格差社会が広がり、国民生活が大きく落ち込んでいるなかで、どうして安倍政権に対する支持へと結果するのか、まともな野党勢力が出来ていないことにあるのだ、と結論づけるにはどうも躊躇してしまう。というのも、世界の先進国を見渡してみる時、中道左派を形成している社会民主主義政党の凋落が続いているだけでなく、中道右派勢力も政権の座から追いやられる国々も出てくるなど、ポピュリズムの蔓延が喧伝さされている。

日本人の意識構造が大きく転換してきた事との関係に注目すべきだ

おそらく、「れいわ」の動きも「左派ポピュリズム」の流れとして捉えられるのだろうが、戦後の高度成長期には資本主義と調和してきたリベラルデモクラシーが、どこかに問題を抱えてきているのだろう。選挙だけで政治を見るだけでなく、なぜ国民の底辺での政治的運動が広がらなくなっているのか、特に日本の政治の状況を見るとき、若者の政治意識が「現状肯定」的になっていることの原因こそ明らかにしなければなるまい。

1973年に初めて実施されたNHKの「日本人の意識調査」は、5年毎に実施され、第10回目に当たる2018年の調査結果はデータとして既に公表されている。たんなる電話による簡便な調査と違って、調査員が直接個人に対して面接しながら調査されるだけに貴重な情報であり、早くその分析を読みたいのたが、来年には『現代日本人の意識構造』(第9版)として出版されるのだろうか。私にとっては、出版が待ち遠しい一冊である。

小熊英二『日本社会の仕組み』にみる「大企業型」「地元型」「残余型」の三分類と政治意識の関係に注目

少し視点が異なるのだが、日本の雇用形態の特異性から問題を捉えてみることも必要になっているのかもしれない。浜口桂一郎JILPT(労働政策研究・研修機構)所長が、かねて『新しい労働者会』(岩波新書2009年刊)で提起してこられた、雇用におけるメンバーシップ型とジョブ型という違いは、大企業本工労働者・公務員労働者と中小企業労働者・自営業者とを分ける基準だと見ていたが、最近の小熊英二慶應義塾大学教授が『日本社会の仕組み』(講談社現代新書2019年刊)の中で、国民の意識を「大企業型」「地元型」「残余型」と3分類する捉え方に新鮮さを感ずる。メンバーシップ型の大企業や公務員労働者の存在は、それほど減少しているわけではなく、「大企業型」は26%、「地元型」は36%、「残余型」が38%と推計されている。

日本社会の「保守」層を形成していた「地元型」には、自営業・農漁民層等は激減して今日に至っており、残りの中小企業労働者や増え続ける非正規労働者等が急激に増大している。大企業や公務員労働者と言っても、非正規雇用が増え続けており、その多くは「地元型」に多い自営業の減少によるものとなっている。こうした変化は、衆議院の選挙制度の大転換と同様1990年代に起きており、日本社会の構造変動があったと見ており、国民の意識を理解するうえで、こうした捉え方に今後とも注目していくべきだろう。

中小企業労働者や増大する非正規労働者をどう結集していけるのか

今、立憲民主党と国民民主党、さらには社会民主党の合流話は、25%程度しかいない大企業本工労働者と公務員労働者の枠内の話であり、しかもその中の多くは「支持政党なし」が多数を占め、立憲民社党や国民民主党を併せてもせいぜい10%台そこそこでしかない。どうやって過半数の支持を獲得していけるのか、中小企業労働者や非正規労働者等を結集していく以外にないのではないだろうか。

「乾坤一擲」の大勝負、全野党の結集に向けた「連合」の力を

先日、ある連合本部の役員の方にお話をする機会があり、「れいわ」も含めた全野党の結集ができるのかどうか、聞いてみた。結論的には、「れいわ」の主張する財源問題について、不足する財源は「赤字国債」の発行で賄うべきだとする政策についての違和感を主張されていた。そうだろうと思うのは、私一人ではないわけで、至極真っ当な主張だと思う。であるが故に、連合が財源論の問題についてしっかりとした調整に今から乗り出していくべき時ではないか、と主張したのだが、なかなか理解してもらえなかったようだ。立憲民主党と国民民主党の合流の橋渡しに力を入れておられるのは、参議院の比例区で思うような成果が出ない労働組合推薦候補の勝利という、実に「狭い」問題になっているように思われる。ここは、本当に政権を奪いに行くべく「乾坤一擲」の大勝負をかけて行くべき時ではないか、頑張って欲しいものだ。

「れいわ」の提起する消費税5%引下げを棚上げできるかどうか

私自身の考え方については、前号でも述べたように「れいわ」の主張する通貨主権を持つ国においては、財政赤字になってデフォルトすることは無い、という主張には大反対であり、国債の金利が成長率を上回って大きく跳ね上がる時を迎えれば、「円」に対する信頼を喪失する事は間違いないわけで、無責任だと思っている。それゆえ、「れいわ」の主張する「消費税5%への引き下げという財源問題で野党が選挙協力する」事は在ってはならないと思うのだが、合意できない時には「一時棚上げ」しておき、社会保障や教育の充実をすすめ、格差社会から脱却を進めさせていくための政権交代を実現させていくべきだと思う。

衆議院だけでなく、参議院の多数派結集まで辛抱の時間なのだが

特に、衆議院で勝利したとしても、参議院では3年に1度の半数改選だけに、6年以上の時間軸を置いて政権戦略を組み立てていく必要がある。大変な作業だけに、野党の側の合流だけでなく、しっかりとした政権戦略の策定が望まれよう。しっかりとした政策の基本を組み立て、5~10年にも及ぶ政治勢力の結集を持続できる力量が問われているのだと思う。

その際、残念ながら、民主党政権時代に大臣や主要な党役員を経験した方達には、後掲に退いてもらうことが望ましい。民主党政権時代の面影はこの際必要がないのではなく、邪魔になるというぐらいの覚悟でやるべきなのだと思う。これは、決して「排除の論理」ではないのだ。

来年に向けて、おおいに躍動する年にしていきたいものだ。


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