2020年2月17日
独言居士の戯言(第133号)
北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹
新たな危険段階に移った新型コロナウイルス肺炎感染問題の現実
新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)の感染問題が、より一層深刻さを増してきた。加藤厚生労働大臣は、2月15日に開いた記者会見で、これまで水際対策重視から転換し、検査や治療ができる医療機関を拡充するなど重症者を減らすための対策を加速させる方針を決めた。その背景には、13日以降、北海道、千葉、神奈川、愛知、和歌山で感染経路が不明な国内感染が相次いだことがあるようだ。あきらかに、「これまでとは状況が異なる」事態に至っているわけだ。
「水際対策」やクルーズ船対策の失敗、国際社会の厳しい目
このことは、これまで日本政府の取ってきたザルのような「水際対策」、即ち「37,5度以上の発熱」「呼吸器症状」それに「湖北省への渡航・居住歴」を検査の対象としてきたわけだが、多くの感染者は「水際対策」をすり抜け、結果として全国にウイルスを蔓延し始めたわけで、完全に失敗だったことが明確になった。さらに横浜港に停泊中のクルーズ船に対する政府の対応も、国際社会から批判が相次いでいるようだ。
発生源とされた中国でもその猛威は衰えておらず、患者数や死者の拡大が続き、武漢のある湖北省に続いて浙江省についても日本の外務省は渡航制限を呼びかけている。中国国内の経済的な打撃も深刻なようで、習近平体制の存亡をかけた取り組みが展開されようとしている。その日本への経済的な影響は、中国各地の日系企業はもちろん、春節を利用した日本への観光客の激減は、地域社会に大きな打撃を与えたことは間違いない。今後、どの程度の影響となってくるのか、ウイルス感染の推移は未だに終息を展望できないでいるだけに、予測がつかないようだ。
北海道で初めて確認された患者、年齢と性別以外は非公表とは?
私の住んでいる北海道でも15日、初めて新型コロナウイルスへの感染が確認されたわけだが、50代男性という事以外は公表していない。東京都や大阪府の場合、居住市町村や職業、さらには行動歴まで積極的に公表しているのに、道地域保健課は記者会見のやり取りで「全国統一の考え方に基づき、厚労省の発表内容で報告している」と述べ、極めて消極的対応に終始している。はたして、道民の不安に対して、もっと寄り添うような対応が出来ないものか、理解に苦しむ。個人情報に関するプライバシー保護に留意しつつも、事は500万人道民の命と健康の問題であり、道民の不安を解消する事の必要性こそ重視されるべきだろう。さらに、居住地域も明らかにしない事に対して、風評被害が出る事への恐れが指摘されるのだが、逆に地域名が明らかにされない事による疑心暗鬼が広がる事もあるわけで、道の姿勢には問題がある。
「ダイヤモンドプリンセス号」は現代の「タイタニック号」なのか
一番気になっていたのが、横浜港に係留されている豪華クルーズ船「ダイヤモンドプリンセス」号で次々と患者が発見され、16日には70人が新たに確認され、これまで累計で355人を数えるまで感染者数が拡大してきていることだ。中国国内を除けば、最大の感染者数を数えるに至っており、「21世紀のタイタニック号」とまで揶揄されている。「船内監禁感染拡大事件」と言う人まで出ている。さすがに、アメリカ政府はクルーズ船乗客アメリカ人に対して、チャーター機でアメリカ国内に連れ帰る方針を打ち出すまでに至っている。その後カナダ政府もチャーター機派遣を決定したようだ。日本政府のクルーズ船に対する処置がどうだったのか、国際社会からの非難が聞こえ始めてきている。
政府は、16日夜に専門家を交えた対策会議を招集しているが、ここはしっかりとした根本的な対策を確立し、国民に対して強いメッセージを打ち出して欲しい。
SARSからMERSそしてCOVID19へ、感染病は次々起きるもの
今回の新型コロナウイルスの問題について、その感染源は何なのか、どうして河北省の武漢なのか、武漢にあるウイルスなどの研究機関との関係は無いのか、など是非とも情報公開を徹底的に進め、今後の対策に生かして欲しい。というのも、2002年11月中国広東省から始まったSARS(重症急性呼吸器症候群)と医療従事者の感染率(2割)の高さなど、よく似た状況を示しており、あれから20年近く経過した中国は、今や世界一の人口を誇る世界第2位の経済大国としてヒトやモノの移動は激しくなっており、それだけに中国における情報公開が重要になっているのだ。2002年がSARSで、2013年はサウジアラビアに発生したMERS(中東呼吸器症候群)、そして今回の新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)と続き、おそらくふたたび何年か後に、新しい感染症が起きてくる可能性が高いと見るべきだろう。とくに、WHOの会長の出身国が、中国からの高額の援助を受けているが故に、中国政府の対応に公正な判断が為されていないのでしないか、という批判が聞こえてくる。この際、国際社会全体が、力を合わせて真相解明や対策のあり方への経験を正しく広げていくべきだろう。
北海道新聞コラム「異聞風聞」、斎藤編集委員の興味深い指摘!
北海道新聞2月16日付朝刊のコラム「異聞風聞」において、編集委員の斎藤佳典氏が書かれた記事で、朝日新聞の科学記者であつた石弘之さんが北大の特任教授時代の13年前、社内勉強会講師として語ったことを書いておられる。「感染症が猛威を振るうとしたら中国ですよ」「あれだけの人口が旅行や仕事で移動すれば、直ぐに流行します」と。残念ながら、その予測が当たってしまったようだ。もっとも、斉藤編集委員は、ウイルスにどう向き合うべきなのか、という点について「ウイルスは人類生誕前から存在していた。その全てを敵に回しても勝ち目はない」わけで、「動物の生息域をみだりに侵さないとか、平和共存の道を探れるはずだ。緊張が増して良い結果をもたらさないのは国際社会と似ている」と述べておられる。けだし、よくよく考えていくべき課題なのかもしれない。
国会論戦、安倍総理のヤジで国会は機能停止へ、やりきれない現実
国会の方に目を転じてみると、総理大臣のヤジで国会の予算委員会が空転してしまうなど、この国の政治は一体どうなっているのか空しくなってくる。安倍晋三という政治家は、自分に自信がないのか痛い点を追及されると直ぐに直情的に反応する癖があるようで、政治家としての素質としてはお粗末極まりない。質問が「桜を見る会」の自らの疑惑に集中しているのは、ウソをついてそれを糊塗しようとすればするほど辻褄が合わなくなり、墓穴を掘り続けていくから野党側も追及していくわけだ。何ともお粗末なやり取りが続いているし、疑惑が晴れない以上今後も総理が安倍氏であれば延々と続くに違いない。
COVID19がこれほど大きな問題になっている時、この問題にどう対処していくべきなのか、国会での議論の中心を、当面この問題に当てても良いのではなかろうか。にも拘わらず安倍総理がきちんとした野党側の追及に対してまともに応えないわけで、安倍総理の責任は重大で、自らの存在自体が厳しく問われる局面に至っているのではないだろうか。
法務省東京高検検事長の定年延長問題、法治国家の崩壊を招く暴挙
一大国民運動が提起されてしかるべきでは!!!
とくに、法務省東京高検検事長の定年延長問題については、法律の解釈を勝手に都合よく変え、自らの政権にとって好都合な配慮を期待させるような人事が罷り通ろうとしている事は、断じて許されることは無い。果たしてこれで「法治国家」と言えるのだろうか。さすがに、今回の東京高検検事長定年延長には与党側の議員からも批判の声が上がり始めているやに聞く。当然の事だろう。同じようなことは、内閣法制局長官の人事でも集団的自衛権の解釈を変える為に、慣例を打破してでも実行したことを忘れることは出来ない。
ここまで酷い人事が罷り通ることが許されれば、この国の土台が崩れ落ちることとなるわけで、絶対に見過ごすことは出来ない。立憲民主党や国民民主党を始め野党側は、日弁連はもちろん連合や市民団体など広く国民各界各層に呼びかけ、一大大衆行動を巻き起こし、国会に対する抗議行動はもちろん、全国的な民主主義擁護の一大キャンペーンを展開する時期に来ているのではないか。安保法制問題で国会を取り巻いた闘いを、もう一度取り組むべき時だと思うのだが、どうだろうか。