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労福協 活動レポート

2020年3月16日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第137号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

新型コロナウイルスの世界的蔓延、WHOパンデミック宣言は遅い

新型コロナウイルスの蔓延によって、世界の政治・経済・社会は大混乱状態に陥ってしまった。感染源と思われている中国は、どうやら峠を越したようで、封鎖された武漢市に在る日系企業の工場も操業再開したと報じられている。ぜひとも中国は、自国での感染にかかわる事実の全貌を、ぜひとも情報公開してほしいと切実に思う。感染した国は、イタリアだけでなくヨーロッパの全域にまで広がりつつあり、アメリカも含めて感染の勢いは地球大にまで広がったようだ。

今回の新型コロナウイルス感染状況について、双日総研の吉崎達彦氏の発信する「溜池通信」最新号で指摘されているジョンズホプキンス大学のCOVID-19サイトに公表されている「全世界の感染状況」が分かりやすい。2月28日時点では全世界で82,557人、内訳は①中国79,498人,②韓国1,766人で、⑥日本214人だったのが、直近のデータでは全世界感染者数は127,863人で①中国80,932人②イタリア12,462人で、日本は639人12位へと低下している。なんとフランス、スペイン、ドイツアメリカが急増し5位から8位まで軒を連ねている。中心はアジアからヨーロッパ・アメリカに移動したのだ。

東京オリンピック・パラリンピックの7月開催は絶望的か

WHOは遅きに失したとはいえ、さすがにパンデミックになったことを世界に向かって宣言したわけで、今後のさまざまビッグイベントは中止や延期に追い込まれている。東京オリンピック・パラリンピックに関しても、当然ながらその開催を危ぶむ声が出始めており、トランプ大統領ですら延期をしたほうが良いのではないかと発言している。日本政府としても、オリンピック・パラリンピックだけはなんとしても開催したいと思っているのだろうが、自国だけの感染状況だけでなく、世界全体がパンデミックになったことによって国際社会全体が参加できる状況が危うくなったわけで、どう考えても予定通りの7月開催は相当に困難になったとみるべきだ。

ショック・ドクトリンを思い出させる特措法改正論議

こうした危機的な出来事が発生する時といえでも、政治においては憲法などで基本的人権の尊重が求められ、権力の強権的な発動が当然のこととして制限されるべきは言うまでもない。ところが、ナオミ・クラインが『ショック・ドクトリン』で述べているように、大惨事に便乗して憲法で保障された基本的人権にまで権力側が制限を加えることが起きるわけで、今回の日本の「特別措置法改正」の議決には、相当に警戒すべき問題だったのではないか。立憲民主党からの造反者は検事出身の山尾志桜里代議士だけだったが、法案においては「緊急事態宣言」について国会の事前の同意がしっかりと明記されていない。なんとか付帯決議で可能な限りで事前報告が求められるようにしたとはいえ、付帯決議には法的拘束力はなく、最低でも「付則」にまで引き上げることを考えておくべきだったといえまいか。どさくさに紛れて、国民の基本的な権利が蹂躙されることは法治国家として自殺行為であるのは、ナチスの例を見ても明らかだろう。日本人は、ただでさえ一時の全体の「雰囲気」に流れされやすいだけに、十分に警戒しなければなるまい。

医療保険制度に問題のあるアメリカ、インフルエンザとコロナも

それにしても、イタリアなどでは感染者数だけでなく死亡者の数も急増しており、どうして国によってこのような格差が生じるのか、よくわからないことが多い。また、アメリカは新型コロナウイルスではない新型インフルエンザによる感染者数が増えているし、何よりも死亡者が1万人を超えていることに驚かされる。背景には、医療健康保険制度の不備があり、金がないために医療にかかれない低所得層が2,000万人以上いるといわれていることも影響しているのだろうか。これに、新型コロナウイルスが加われば、トランプならずとも「非常事態宣言」を発するのも選挙対策という側面はあるのだろうが、わかるような気がする。でもサンダースが公約しているように、医療保険制度の改革こそ求め続けていくべきだろう。

大混乱の世界の株式市場、コロナウイルス終息の展望まで続くのか

今回の新型コロナウイルスによる影響は、経済的にも大きな影響をもたらしている。世界の金融の中心であるニューヨーク株式市場では、先週1週間に2回も大幅な下落によってサーキットブレーカーが作動し、史上最大の下げ幅も記録するなど大荒れの展開になっている。もちろん東京市場も同様で、先週末には日経225が、一時は17,000円の大台を割り込むまで下落しており、日銀をはじめとする公的資金による買いが入ったものの、今後の株価底入れの見通しが立たない中では焼け石に水でしかないようだ。特に、日銀の買い入れたETFはすでに約30兆円に達しており、19.500円を割り込むと額面割れになると黒田総裁が参議院の予算委員会で発言している。今のままでは、3月期の含みの損失額が日銀資本金1億円を凌駕する債務超過になるようだ。

株価の下落がどこまで行くのか、疑心暗鬼が高まるだけに、今後の経済をどう立て直していけるのか、新型コロナウイルスの感染が終わらない限りなかなか展望できないわけで、国際社会が一致協力していく必要があることは間違いない。

不思議な動きを示す国際石油市場、価格が暴落なのに増産とは

こうした中で、どうにも理解しにくいのが国際的な石油市場における出来事である。世界の石油市場は中国の経済停滞はもちろん、国際社会全体の景気の低迷によって需要が大きく低下する中で、OPECやロシアとの減産に向けた合意ができないどころか、サウジアラビアは増産体制を強化する方針にまで至っている。原油価格が下落する中での増産は、ますます価格の下落を引き起こすわけで、その意図は何なのか、率直に言ってよく理解できない。一説にはアメリカのシェールオイルを標的にし、原油価格が低くなればコスト高のシェールオイルは価格競争力を失うわけで、それを目指しているのではないかといわれている。

また、ロシアにおいても1バレル60ドルで財政予算が組み立てられており、今1バレル30ドルを切るような価格に落ち込んでいるなかで、OPECとの協調減産できないのも不思議な話である。

それにしても、よく理解できない事態が経済的に危機的状況の下で展開されている姿は、世界資本主義の不毛な戦いが展開されているように思えてならない。時代は、脱石炭、脱石油という方向に向かっているだけに、世界の主要石油産油国は何を考えているのだろうか。

北海道新聞の特集「ネットと政治」、世耕参院幹事長のツイート分析

私の購読している北海道新聞が、3月15日から「ネットと政治」の特集を5回にわたって連載し始めた。第1回目は世耕弘成参議院幹事長を取り上げ、彼の発信したツイッターがなんと5,083万人のアカウントに配信されたと報じている。世耕弘成参議院幹事長は出身がNTTで、広報担当の専門家として在籍していた。その後、参議院議員に当選し、幹事長の前には経済産業大臣や総理側近の政治家としての存在感を高めてきていた。特に、広報面での責任者として重用されたことは間違いない。

その世耕氏のツイッターのフォロアーは27万人でしかない(とはいえ、政治家としては多い部類だろう)が、何と彼のツイッターをリツイートしてくれる高須クリニックの高須克弥院長自身のフォロアーが60万人いて一気に拡散されたと分析している。こうした影響力あるフォロアーが高須氏以外にもいて、5万人から30万人にまで拡散できる有力な5人で、彼らのフォロワーは76万人に達している。かくして、さらにその拡散した情報は鼠算式に拡大し、冒頭に述べたように実に5,083万人に及んだとのことだ。なんと国民の半分近い人たちに世耕氏のツイッターは拡散され、世論誘導が進んでいるとみている。

情報は政治的に操作されている現実、権力者の常とう手段だ

さらに、注目すべきは、ツイッターの拡散において「ボット」と呼ばれる自動的に投稿や返信をするプログラムがあり、特定の時間に自動投稿したり、キーワードに反応して返信やリツイートするものもあるとのことだ。それ自体違法ではないとのことだが、影響力は大きく、世論調査に使われた例もあるとして、2014年の衆議院選挙の際、「投開票日前後のツイッターの投稿を分析し、3割ほどがほぼ同内容のボットによる可能性が高い」というドイツのエアランゲン・ニュルンベルグ大のシェーファー教授の研究結果を引用している。さらに、シェーファー教授が「『安倍総理を叩くなや』など政権擁護の投稿が目立ったことにも注目し、『政権を支持するネトウヨ(ネット右翼)がボットを使って世論形成した可能性が高い』との論文を発表した」ことを取り上げている。

また、インターネットの検索順位も操作されていて、選挙の投票において特定候補の不利益情報を集中させるべく、自民党のIT対策を手伝う専門家の発言を引用している。

この特集記事を書いた東京報道部の広田孝明記者は、「SNS、ビッグデータ、人工知能(AI)。進化を続けるインターネット環境が、民主主義を揺さぶっている」と警告を発している。最後に自民党のIT関係を手伝った専門家の言葉で、この第一回の特集記事を締めくくっている。「権力者は、何時の時代もメディアを統治のツールとして使おうとしてきた」「日本の第一人者がやっている。完璧ですよ」と。当分、世耕氏の動向から目が離せない。

新聞・テレビから携帯・スマホ・インターネットの時代へ

最近読んだNHK放送文化研究所編『現代日本人の意識構造』(第9版)の中で、コミュニケーションツールとして、新聞の凋落、テレビの低下に反比例するかのように携帯電話やスマホが急増している。2018年の調査では、新聞は52%でテレビは79%と8割を切ったのに、急増する携帯・スマホは65%と新聞を追い抜いている。しかも、新聞は70代で78%とピーク、携帯・スマホは20代後半が91%と群を抜いている。ちなみに、新聞は10代後半から20代前半は一桁台しか読んでいない現実がある。なんとも、考えさせられる数値ではある。

[お詫び]
前号において、慶應義塾大学の権丈義一教授の引用した論文の出所を「ダイヤモンドオンライン」としていました。間違いであり、正しくは「東洋経済オンライン」でございます。ただし、引用したアドレスは間違っていません。
また、文中で「国民年金保険の支給額がマクロ経済スライドの適用で約3割も下げられる」としていましたが、今回の財政検証においてはいずれのケースでも「マクロ経済スライドによる調整期間において、新規裁定時の年金額は、賃金の上昇によってモデル年金ベースでは物価上昇分を割り引いても増加」することが明記されています。かつての機械的な試算の数値をそのまま書いてしまったことも含めて、深くお詫び申し上げます。


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