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労福協 活動レポート

2021年3月22日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第185号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

NHK「クローズアップ現代+」キャスター交代へ、政治の関与は?!

NHKの特集番組「クローズアップ現代」の担当キャスターが交代する。一説によれば、武田真一キャスターが政権与党幹部に対して厳しい論評を加えたことから政治的圧力で交替させられたのではないか、という説があるが、事の真相は知る由もない。前任の国谷裕子キャスターの交代についても同じような問題が指摘されたことがあり、NHKに対する自民党政権側からの干渉問題についてはしっかりと監視していく必要がありそうだ。

愛知県知事リコール不正署名の真相に迫る、誰が主導したのか???

その武田キャスターが担当した最後の「クローズアップ現代」は、愛知県知事の「リコール不正署名の真相」だった。必要署名数の半数に達する約43万5千人にもの署名が集められたと称していたが、何とその83%が不正であることが判明し、検察の捜査が続けられているさなかでの特集番組だった。

今回の不正署名が発覚したのは、代表者の一人であった伊藤幸男氏がたまたま中身を点検してみると、同一筆跡が続々出てきて法律に違反する不正な署名活動であったことを、責任者の一人として正直に明らかにしたからに他ならない。もし、成立していなければ選挙管理委員会に提出しなくてもいいわけで、中身の点検をしなかったら、43万5千人のリコール署名が集まったとだけ宣伝され続けたに違いない。その中身は、誰も点検することなく有耶無耶になったに違いない。そうであれば、大村知事を政治的に貶めるためにリコール制度が使われたことになり、民主主義が冒涜されたわけだ。

派手に応援した河村市長、責任はないのか、市長選再出馬の怪

この運動の責任者だった高須代表や派手に支援し続けた河村名古屋市長らの責任は極めて重い。にもかかわらず河村市長は、市長選に再出馬するとのことだ。少なくとも、事件の全容が解明されるまでは出馬すべきではないのではないか、と思っていたら、名古屋の市民グループの方達が実施した「河村市長の引退に賛同する署名」が3万1880筆集まったとのことだ。今後どう展開するのか、注目していきたいと思う。問題は今司法の手で解明されているわけで、先ずはその責任が誰にあるのか、しっかりと解明して欲しい。

武田キャスターの「クロ現+」最後の言葉、心に沁みる珠玉の名言

今回のリコールに必要な財源集めとなったクラウドファンディングや佐賀県でのアルバイトを使った代筆記入作業などをはじめ、いろいろと指摘したい問題は山ほどあるのだが、こうした丁寧に調査・分析・問題摘出をした報道番組を作り続けてきたNHKのスタッフの方達には、頭が下がる。と当時に、今回をもって担当キャスターを交代する武田真一さんの最後の言葉が本当に心に沁みた。少し長くなるが素晴らしい珠玉のような言葉であり、全文を引用しておきたい。

「武田:民主主義は常に変わらずそこにあるものではなく、悪意によって容易にゆがめられるおそれがあるということ。それを機能させていくためには、一人一人の努力が必要であることを改めて心に留めておかなくてはならないと思います。そして私たちメディアが、そのプロセスをしっかり監視していく、責任の重さを強く感じます。

さて、私はきょう(3月18日)でこの番組を離れます。4年間、本当にありがとうございました。この4年、私の心に刻み込まれているのは、社会の中で懸命に生きている皆さまの声です。それは決して、希望に満ちた声ばかりではありませんでした。大切な人を亡くした、あすの暮らしが見えない、災害や新型コロナで思いがけず人生を狂わされた。私たちの周りには、多くの課題があることも思い知らされてきました。私に何ができるんだろう。何度も自問しました。せめて皆さまの声を私の心に深く浸して分かろうと努力しよう、皆さんの声を私の心と共振させて、さらに大きな波紋にして社会に伝えよう、それが何かの糸口になるのではないか。そう考えてきましたが、いかがだったでしょうか。

あとは若いキャスターに引き継ぎたいと思います。クローズアップ現代+は、これからもひるまず伝え続けていきます。」

最後の「クローズアップ現代+は、これからもひるまず伝え続けていきます」という言葉が、やけに心に残ったのは「ひるむ」ことが多い世相だからだろうか。武田真一キャスター、ご苦労様でした。これからも”ひるまず”頑張ってください。

3.11東日本大震災から10年、今も困難極める東電福島原発事故処理

3.11東日本大震災から10年を過ぎ、さまざまな角度から震災後の日本の姿が論議されつつある。そうした中で、東電福島第一原発の過酷事故がもたらした課題は依然として解決の目途すら立っていない。メルトダウンした原子炉内のデブリの取り出しは進まず、毎日流入する汚染水の貯蔵は限界に達しているとされる。政府・東電は、海に排出する時期を虎視眈々と窺っていることは間違いない。風評被害に悩み続けてきた福島の漁民の方達にとって、とても尋常な気持ちではいられないことだけに、現実に実施されば深刻な打撃を受けることは必至だ。

これだけの過酷な大事故が起きていながら、原子力発電所の再開に向けた動きが強まりつつあり、特に菅内閣がCO2排出ゼロを打ち出す中で、原子力からの脱却どころか、当然のことだと言わんばかりに原子力依存の姿勢をにじませ始めている。

原発再稼働の司法判断の揺れ、本当に再稼働させて良いのだろうか

他方で、原発の再開をめぐる訴訟に対する判決が相次いでおり、3月に入って水戸地裁では日本原燃東海第2原発の運転差し止め判決を下しているが、広島高裁では、広島地裁で出された四国電力伊方原発3号機の運転差し止めの仮処分を取り消すなど、原発再稼働を巡る司法の判断も揺れ続けている。

東海第2原発に関して裁判所は、災害時に避難すべき経路が確保されておらず、人口が密集しているだけに「非難が容易でないこと」は明らかで、避難計画を策定している自治体は30キロ圏内14市町村中5市町にとどまり、その計画でも複数の避難経路ではないことを指摘し、「人格権侵害の具体的危険がある」と判断している。半径30キロ圏内の人口が100万人近いだけに、この問題を解決することは困難であろう。

一方、伊方原発3号機の方は、日本列島にある最大の断層帯「中央構造線」が北側の佐多岬半島に沿うように入っており、また半径150キロ以内に活火山である阿蘇山大噴火の危険性も指摘されてきた。今回の高裁判決では、大規模自然災害の発生時期や規模について、科学的知見が定まっていないと前提し、地裁判断を覆している。ただ、東電の柏崎刈羽原発で問題視されたテロ対策施策が伊方原発でも完成しておらず、その実現は早くても10月以降になるとみられている。

地裁から高裁へと行くに従い、原発容認的な司法判断が強まっているようで、本当にこれで国民生活の安心・安全を保障できるのかどうか、まことに心もとない。

村上達也元東海村村長、ウエブ『論座』で反原発を大いに語る

実は、最近の朝日新聞のウエブ『論座』で、元東海原発のある東海村村長だった村上達也氏がインタビューに応じて、自身が反原発に転換したことをはじめ原発の抱える問題点について述べておられる。村上元村長は東海村出身で一橋大学を卒業され地元の金融機関に勤め、1995年に村長選に立候補し当選、4期16年で勇退されている。その間、2011年3月11日に事故を起こした福島原発と同じく、東海原発も大型の津波に襲われ、危うく全電源喪失という大事故になる寸前だったという生々しい体験を語っておられる。

また村長就任の半年前に、旧動燃の東海事業所の爆発事故があり、もんじゅのナトリウム漏れ事故と同様、動燃の隠ぺい体質を厳しく批判される。さらに、1999年住友金属鉱山系のJCOによる臨界事故が発生、村長として村民をいち早く疎開させるなど努力してこられ、2011年3月11日の大震災・大津波に直面した時、脱原発を明言される。

脱原発に向け「廃炉」や「廃棄物処理」等「衰退期の研究」の重要性

原子力の村でありながら脱原発を進めることに対する疑問について問われると、今後は、廃炉や廃棄物処理といった「衰退期の研究」の重要性を指摘する。原発に依存した自治体の財政運営は、再び原発増設に依存するようになり、自立への道は遠ざけられると述べている。原発についてよく政府が述べる「国策」とは、「国の権威や権力を振りかざすときに使われる。まさに問答無用、それに異論を唱えるのは反逆者だ」ということだと喝破されている。

東海原発再稼働に向けて、東電をはじめとする電力会社の仲間から財源を拠出されているが、これは国民の税金や電気料金から出てくるわけで、原子力発電所から出る廃棄物の問題も含めて、大問題だと指摘し続けておられる。誠に歯切れがよい。

今井一氏の『論座』論文にも注目、「地元の同意」とは何か

もう一つ、『論座』に「原発事故から10年、この国の2つの『病巣』を抉る」(上・下)というジャーナリスト今井一氏の論文が掲載されている。そこでは、副題に「『民意』を嫌う間接民主主義」とあるように、原発推進の際に問われる「地元の合意」の内実に問題があると指摘される。つまり、多くの場合、「地元の合意」とは、原発所在地市町村長・議会と都道府県知事・議会の同意によって進められること(間接民主主義)が圧倒的に多いことの問題である。原発には反対でも、知事や町村長、議会議員の選挙では原発問題だけで選出することはまれであり、原発のような大問題は直接住民投票に委ねるべきだ、という主張を展開されている。

新潟県巻町の反原発の戦い、元社会党福島県議が原発容認へ転換し双葉町長へ、住民の意思が動かした歴史の事実

そして、あらゆる地方自治体住民の持つ権利を駆使して戦い続けてきた新潟県の巻町や刈羽村等の反原発の粘り強い戦いを紹介する。他方、福島県議会議員で反原発を主張して落選していた社会党の元県議岩本忠夫氏が、双葉町長となって原発推進に転換していくことに言及されて、彼を当選させたのも、落選させたのも、町長として原発増設を求めるようにさせたのも、すべて選挙権を持つ住民だったことを指摘する。

立法府の一員としても、直接民主主義の義務化を原発再稼働の「地元同意」条件にさせていくべき時だ

その際、自分は参議員時代一体何をしてきたのだろうか、と反省させられたのは次の指摘である。

「…原発設置の『地元同意』に関して、この国が間接民主主義を絶対化している通例は、何ら変わっていないし行政府からも立法府からも『変えよう』という声は聞こえてこない。与野党を問わず、国会議員から、『地元同意』の確認については『直接民主制』を導入しようという提案を耳にしたこともない」

今井氏は、イタリアにおいては憲法第75条の国民投票で「50万人以上の有権者あるいは5つ以上の州議会が、法律あるいは法律の効力を持つ行為のすべてまたは一部の廃止を求める場合は、それを決めるために国民投票が実施される」と引用し、過去原発にかかわる3件の国民投票が実施されたことに触れている。

今からでも遅くはない、再稼働に必要な「地元合意」には、原発に影響を受ける地域住民の直接投票実施を求めていくべきだ。直接投票を求める条例制定運動が進められる場合もあるが、原発の再稼働に際してそれを義務付けることが必要不可欠だと痛感させられた次第だ。


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