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労福協 活動レポート

2021年9月6日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第208号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

菅総理、自民党総裁選挙に不出馬、安倍・菅政権の総括が必要

9月3日金曜日、菅総理が自民党総裁選挙に出馬しないことを表明し、菅政権は終わりを迎えた。ここに至るまでの菅総理の動きは、先月に引き続いて内閣支持率の30%というデッドラインを下回る結果も出る中、先週1週間の右往左往ぶりにはやや支離滅裂というか、権力を担う政治家の持つべき常識からすれば、考えられないような言動が目について仕方がなかった。横浜市長選挙での敗北の齎した衝撃は、致命的な打撃になった事は間違いあるまい。

「解散権」を封じられた総理大臣、辞任する以外に選択肢ナシ

一番感じたのは、総理大臣の権力は一般的には「内閣改造による人事権の行使によって弱体化し、解散権を行使することによって強まる」と言われてきた。もちろん、例外はあるのだろうが、閣僚の交代はそれを望んでいる者は喜んでも、任命されなかった者には恨みを買う。つまり、敵を増やすこととなるわけで、党内統率力はその分弱体化する。他方、解散権を行使することは、すべての衆議院議員の首を斬るわけで、結果として国民の信任が得られれば、自らの力が信任されたことになる。その権限の行使は、次の総選挙までの最大4年間、民主主義に基づいて強く信任されるわけだ。俗に政治の世界で「解散の時期については嘘をついても良い」とされているのは、それだけ権力側にとって重大な権限であることを物語っているからなのだろう。

もっとも、解散権は、憲法上は内閣に対する不信任案に対抗すべく設定されており、無条件で与えられているとは規定されていないのだが、一度その規定を踏み外しても違憲とは認められないまま今日に至っている。今では、マスコミなどでも総理大臣の特別の権限として「解散権」があるとされているのだが、厳密に考えるとおかしいと思う。この点は、またいつか論じてみたい重要課題である。衆議院議員は何時も、解散による選挙を意識せざるを得ない中で議員活動を続けるという深刻な問題を秘めているわけだ。

国民の支持を失った菅総理の焦り、次々と繰り出す対策の挫折

この間の辞任に至る菅総理大臣の行動を見てみると、先ず党役員人事の要である二階幹事長の辞任を強要し、二階派の人たちの恨みを買っただけでなく、党内全体から総理自らの支持率の低下の責任を二階幹事長にかぶせただけではないかという批判にさらされてしまった。内閣の改造以上に重視されるべき党幹事長というNo2の人事における失敗である。背景には、安倍・麻生両氏と二階氏との確執の中で、安倍・麻生両氏の要望である「二階切り」に応えて両派の支持を獲得し、何とか総裁選挙を乗り切りたいと思っていたのだろうか。あるいは、岸田氏が立候補の際に「党役員任期は。1期1年、最大で3年まで」を打ち出したことで党内支持の広がりを見て、相打ちにしたいと思ったとの見方も出ている。

二階外しでもうまく行かないとみるや、次に繰り出したのが、自民党総裁選挙を先送りし、その前に衆議院の解散・総選挙を実施し、総裁選挙での不利な状況を強行突破しようとしたわけだ。だが安倍前総理や小泉環境相らによって阻止されたようで、一部新聞に報道されるや党内からこれまた総スカンを食らってしまう。結局「解散権」を封じられた総理大臣は、何もできなくなってしまい自ら退陣する以外になくなってしまったというわけだ。「人事」を使って権力の座を射止めたといわれる菅総理だったが、結局「人事」で失敗して究極の人事権である「解散権」が封じられてしまった、というのがここ最近の動きの本質だったのだろう。

安倍・麻生氏らの菅総理への「三くだり半」、「四面楚歌」状態へ

西日本新聞の4日付の記事によれば、2日夜党人事の刷新に向けて、麻生大臣に河野太郎行革担当大臣を党の要職に要請した際、麻生氏は「おまえと一緒に、河野の将来まで沈めるわけにはいかねえだろう」と声を荒らげられたり、安倍前総理にも党人事の協力を求めたが、「三くだり半」を突きつけられたとのことだ。ここで、菅総理は「四面楚歌」に追い込まれ、翌日の総裁選挙不出馬へと進むことになったとのことだ。

では、なぜ1年前に菅総理実現の柱となった二階、安倍、麻生の支持が、総裁選挙を前に崩れたのだろうか。二階幹事長は、今度の総裁選挙でもいち早く菅総理支持を打ちだしていたのに、何ゆえにその二階幹事長を降ろそうとしたのか、先に述べた岸田氏の党人事案に対する広がりがあったことと並んで、背後には安倍や麻生、更には甘利ら「反二階」陣営の暗躍があったのだろうが、この辺りの相剋は今時点では十分に解明されていないようだ。

国民的支持の落ち込みは、「3S政治」にあり、対話能力欠如に在り

ただ肝心なのは、これまでも何度も強調してきたように、安倍政権時代から菅総理にまで続いている「3S」政治、すなわち「説明しない」「説得しない」「責任を取らない」政治によって、国民との対話や討論不足となって、新型コロナ禍という危機の時代のリーダーとしての能力が、厳しく問われてしまったというのが本質的に重要なことであろう。国民からの支持があれば、「3A(安倍・麻生・甘利)対2F(二階)」の対立がどうであれ、自民党総裁再選は問題なくスルーできていたに違いない。問われるべきは、「危機にあって、指導者に求められる重要な資質の一つが国民とのコミュニケーション能力」(4日付日経新聞社説)なのだとつくづく思う。

コロナ禍の下、3週間以上に亘るメディアジャックが許されるのか

さて、今までは菅政権の支持率の低下の下、野党側はその政治責任を追及していればよかったわけだが、菅総理辞任の下で国民的に人気のある政治家が総裁選挙に名乗り上げ始めてきている。おそらく、最大で数名の有力候補者が相争う総裁選が繰り広げられていくのだろう。こうした選挙戦は、ともすればお祭り騒ぎ的に盛り上げていくのが普通の時代の自民党のやり方だった。メディアジャックと言われる事態が延々と29日まで繰り広げられていくわけで、選出された新総裁の国民的人気は一時的にせよ高くなることが予想される。対抗する野党側が、手をこまねいているだけでは、肝心の衆議院選挙での勝利はおぼつかなくなる。ただでさえ野党に対する支持率は高まっておらず、どう戦いを進めていくべきなのか、困惑しているに違いない。国会の開催を要求していた一つの理由として、「菅総理の下での解散・総選挙」を求めていたということが、まことしやかに流布されていたのが今の野党側の正直な実態なのだろう。恥ずかしいことではあるが、支持率の低迷する野党にとって有効な戦略・戦術が出てこなかったのだろう。

国会でのコロナ対策と並行した自民党総裁選挙の短縮を求めるべき

考えるべきは、今はコロナ危機という「戦時状態」であり、野戦病院の建設といったことが飛び交っている時代である。その時に、告示まで10日以上、告示から29日の投開票日まで10日間、合わせて3週間以上もの長期間、自民党総裁選挙報道にうつつを抜かすことが果たして許されることなのかどうか。コロナ対策に万全を期すべく専念したいと述べた菅総理は、国会でのコロナ問題審議と並行して自民党総裁選挙を進めさせていくべきではないか。それと同時に、総裁選挙戦の期間を短くし、総選挙日程を早め、一刻も早く新総理大臣の下でコロナ対策を中心に対策を展開していくべきだろう。

報道によれば、17日には候補者が一堂に会して討論の場が設定されるようだが、コロナ禍の下では街頭演説などは行われないわけで、選挙日程などは大幅に短縮することも可能である。もしも、だらだらとした選挙戦が延々と繰り広げられれば、国民からの批判が強まり、かつてのようにお祭り騒ぎ的な選挙戦は逆効果となりかねないと思う。

野党側は、デジタル時代のデモクラシーの在り方を追求すべき時だ

野党側は、選挙戦の期間中も国民に向けてデジタルを大いに活用した政策・宣伝・対話活動を繰り広げ、堂々と自分たちの政策を打ち出して行くべきだ。9月1日、菅総理のレガシーとしてデジタル庁が発足し、いよいよデジタル社会の本格的な展開が進み始めようとしている。政治においても、デジタルデモクラシーの時代を先頭に立って繰り広げていくチャンスとして、野党側に限らないが、政党・政治家はこのデジタルを活用していくべき時だと思えてならない。

オードリー・タン氏の台湾におけるデジタル時代の実践に学ぼう

デモクラシーとデジタル化について、お隣の台湾ではオードリー・タン氏がデジタル担当政務委員(閣僚)に任命され、着々と成果を上げている。最新号の連合の機関誌『RENGO』8-9月号において、「これからのデジタル×ダイバーシティ×デモクラシー」と題して、台湾におけるデジタル化による政治改革の実践報告や問題提起、さらには連合組合員との質疑応答が掲載されている。その中で、タン氏は

「デジタルは人と人をつなぐものです。私は、デジタルが国境や権威を超えて様々な人々の意見を広く集めることに優れていると気がつきました。そこで、デジタルと民主主義をつなげることを考えました」(8ページ)

と述べ、具体的には、台湾における「ひまわり学生運動をライブ配信」したり、「社会セクターとの共創によるマスクマップ」作成や、ワクチンの配分システムを市民の意見を求める中で作成し成果を上げている。また、選挙における人を選ぶ投票だけでなく、「政策の選択」もインターネットで5000人のオンライン署名が集まれば、立法院での政策として実現できる仕組みが出来上がっていることを紹介している。

最後に、「デジタル担当政務委員としての私の役割は、まさに人々がお互いに語り合える場をオンライン上で提供することです。対面が苦手な人にとっても、そこが一つの居場所になり、社会とつながる場になればうれしいです」(11ページ)とダイバーシティについてもデジタルが大きな役割を果たすと強調されている。

菅政権のレガシー「デジタル庁」発足、民主主義とのコラボレーションの実践により国民の信頼構築へ

日本において、デジタル庁が発足したとはいえ、はたしてデモクラシーのレベルアップにつなげられるのかどうか、政党自身も多くの国民との接点を作り上げ、今後の日本の困難な課題の解決に向けてデジタル化を大いに進めて欲しいものだ。これからの時代、デジタルとデモクラシーのコラボレーションこそ、政治にとって極めて重要な課題であることを痛感させられる。それに早く踏み出した政党・政治家こそが、明日の日本をリードしていけるのだと思う。


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