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労福協 活動レポート

2021年11月1日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第216号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

総選挙の開票速報が始まり、与党の過半数確保は確実だが、未だ全体動向の確定はできない

いよいよ総選挙の結果が判明する。出口調査の結果も、未だ判然としていない点が多く、与党の過半数維持は確実だが、自民党の過半数233議席はNHK調査では微妙な情勢で、朝日新聞などの出口調査では過半数を確保していると出ている。他方、立憲民主党はNHKの調査では議席増加になると見込まれているが、朝日などの出口調査では現状維持程度と出ている。大きく伸ばしそうなのが日本維新の会で、3倍以上の伸びが予想され、公明党よりも獲得議席が多くなりそうである。

その全体としての結果についての詳しい検討は次の機会にすることにしたい。そうした分析をする際の私が考えている見どころについて、少しく触れておくことにしたい。

岸田政権は安定政権に向けた議席数確保が可能かどうか、注目すべき日本維新の会の獲得議席増の動向は政局に連動しないか?

もちろん第一に重要なポイントは、今回の選挙戦を通じて、与党である自民党と公明党が過半数を確保するかどうかを岸田総理は目標に掲げているが、政治的な本音としては自民党だけで過半数233議席を上回れるかどうか、という点にあると見ていいだろう。単独過半数獲得であれば、最低でも233議席に公明党の獲得予想議席と合わせれば261議席以上となり305議席からは少し減るものの、絶対安定多数の維持が可能で岸田政権は安泰の内に継続されていくに違いない。

だが、自民党だけで過半数が取れないとなれば、引き続き安定した政権を維持運営できるかどうか、たとえ公明党を含めた連立与党で過半数であったとしても、自民党内を中心にいろいろな動きが出てくると考えるべきだろう。岸田政権誕生を支えた背景には、麻生副総裁や甘利幹事長それに安倍元総理らの連合体であり、リベラル(と言われてきた)な宏池会的勢力と保守派の連合体だけに、政権が維持できたとしても内部の力関係はいろいろと動くに違いない。それだけに、単独で過半数割れになると党内でのバランスがどう動くのか、日本維新の会(以下、維新と略す)が議席を増やす勢いだけに、右寄りの勢力の動向などを含めてよく見ておくポイントであろう。

自民・公明連立与党に維新が加わるのか、注目すべき連立の動向

今のところ、与党以外の政党の結果をマスコミ情報で見てみると、維新が大きく躍進し、立憲と共産が少し増やす可能性がありそうだが、維新は改憲勢力であり何時与党入りしたとしてもおかしくない政治ポジションに位置している。躍進が確実視されている大阪府内や近畿ブロック以外での獲得議席の動向が注目点で、公明党よりも上回る結果となれば、与党陣営とりわけ自民党内右派の新自由主義や改憲推進勢力にインパクトを与えるに違いない。

私自身の思いは、維新が自民・公明連立にかわって維新・自民(右派)連立になってもらう方が、解りやすくなるのではないかと考えている。もちろん、公明のポジションがどうなるのか、リベラル側へと自民(左派)ともども加わればベストなのだろう。こんな、夢想をし始めているのだが、正夢とはならないのだろう。

立憲民主党と共産党との選挙共闘の行方はどうなったのか

とはいえやはり、今回の選挙で一番注目すべきは、野党の統一候補の動向であり、立憲民主党と共産党との共闘がうまく行くのかどうか、という点だろう。

マスコミの事前調査報道によれば、自民党候補との間で大接戦を演じている選挙区が40近くに達し、とりわけ大都市部での自民党の大物候補との間で鍔迫り合いが最後まで続いているとのことだ。その動向いかんで、今回の総選挙の大勢が決まるわけだし、これからの政治が自民・公明の与党ブロック(それに維新も加えて)に対抗した左派・リベラルブロックが成立できるのかどうか、極めて重要なポイントになりそうである。

枝野立憲民主党のリーダーとしての責任が問われていないか

気になるのは、枝野代表の評価が世論調査上では上がってこないことである。獲得議席予想でも、朝日新聞などの調査では現状維持のようだが、NHKでは大きく幅のある中で少し増えそうではある。国民に向かって、絶叫調で自民党の安倍・菅政権時代の批判を繰り広げているのだが、国民に対する「説明や説得」は進めるものの、「政治責任」の点で今度の選挙戦で退路を断った獲得目標を提示していないし、立憲民主党内からもそうした政治責任を事前に問う声が聞こえていない。本当に政権交代を目標としてそれが実現しないなら責任を取るという覚悟はなさそうだし、選挙公約の面でも消費税の5%への引き下げや所得1.000万円までは所得税を取らないなど、とんでもない無責任な政策が並んでいて、民主党政権時代の反省ができていないと言わざるを得ない。

今後の左派・リベラルブロックのリーダーとしての存在感は、残念ながら弱いと見ている。民主党政権時代の政治的失敗の残影が、10年経っても色濃く残っていることも大きく影響していると思う。今後の政局における与党陣営の政治的混乱・分立を巻き起こすだけの指導力・胆力があるのかどうか、試されているのかもしれない。

気になる投票率の動向など、詳しい投票分析が必要になっている

肝腎の投票率がどうなるのか、まだ確定的ではないものの、2009年の民主党が政権交代できた時の69.28%には到底ならないとみられている。それでも、野党の統一候補が成立したことによる効果が表れるのかどうか、支持政党なしを含めて今まで投票していなかった層の投票参加が増えるのかどうか、注目したい。特に、世代的な動向が気になるところである。20代や30代、更には40代でも将来に対する展望は持てないが、今の生活には満足しているという意識を持つ層が増え、政党支持では自民党や維新に対する支持する層が増えているとのことだ。今回の選挙での年齢別や学歴別、就業・雇用形態別の動向など、注意深く見ていく必要がある。それとともに、コロナ禍によるリモートワークなど、首都圏の本社機能のある地域と、郊外や地方との格差がどうなるのか、結果をよく見てみたい点である。

コロナ禍終息の下、分配問題での一致で対立軸が弱まった選挙結果

政策の面では、コロナ禍の終息が誰の目にも明らかになっているわけで、自民党にとっては逆風が凪の状態へと好転したことや、「分配」問題の重視という点での与野党の大きな違いが出ていないことにより、政策上の対立点が解りにくくなっていることは確かであろう。すべての政党が、財源問題を考えない無責任なバラマキ政策であるがゆえに、再分配政策としての社会保障や税制の在り方がほとんど議論されないまま来てしまったことには、「無理ゲー社会」と言われる深刻な状態に置かれた人たちにとって展望は暗いままだ。
これでは、政治とカネの問題や森友・加計・桜を見る会問題などのスキャンダル、あるいは選択的夫婦別姓やLGBT、原発問題といった論点の対立が目立つ程度でしかなく、どうみても投票率が上がりそうな雰囲気はないし、政治が大きく変革することも期待できないとみている。

はたして、国民はどんな審判を下したのか、大物議員の小選挙区での落選という情報も出ており、特に甘利自民党幹事長の小選挙区での落選となれば、岸田政権に与える打撃は極めて大きい。どう展開していくのか、最後まで予断を許さないようだ。結局は、自民の減少した議席を維新がカバーしただけなのかもしれない。新自由主義的な流れが再び強くならないことを祈るばかりである。

韓流ドラマ『イカゲーム』が世界的にブームになっているようだ

ネット・フリックスで放映中の韓国サバイバルテレビシリーズ「イカゲーム」(ファン・ドンヒョク監督、全9話)を見た。韓国国内だけでなく、全世界的に評判が高いようで、9月中旬から放映を始めたネット・フリックスの利益に大きく寄与しているとのことだ。

韓国社会の貧困や格差など、社会問題を風刺したドラマでは

内容は、韓国社会の中で、様々な理由で切羽詰まり、金が必要になったメンバー456名が、ある招待状によって秘密の場所(孤島)に集められ、456億ウオン(日本円で約50億円)という大金を目指して、一ゲームごとに敗者が殺されるという「生々しい殺人ゲーム」が展開されていく。一度目のゲームが終わった後は、参加者の過半数が同意して元の世界に戻るのだが、結果として再び参加せざるを得ないそれぞれの参加者の抱える酷い現実を描き出している。

最後の一人に至る殺人ゲーム(それが韓国の子供たちの間で一時流行したイカゲーム)と並行して、こうしたゲームを主宰する側に飛び込んで内部を暴こうとする警察官(警察の仕事としてではなく、兄の失踪を確かめることが目的)の動きと並行しながら、生々しい殺人ゲームの最終勝利者が文字通り死闘の中で456億ウオンもの巨額のお金を獲得する。456人のそれぞれつけられた番号の456番ソン・ギフン氏が手にすることになる。手にした456億ウオンは直ちには使われることなく、様々な展開が描かれるが、最後は娘の留学先のアメリカへと旅立つことを決意する。

何故最後の勝者はアメリカ行きを中止し、再びゲームへ向かったのか

こうした「イカゲーム」を誰が何の目的で企画したのか、実はゲーム参加者番号001オ・イルナムという痴呆がかった年老いた爺さんが黒幕で、自分も参加するゲームにして昔の遊びを楽しみたいとのことで始めたことが最後に明らかになる。そのオ・イルナム爺さんが亡くなった後にもかかわらず、再び同じ企てが繰り広げられていることを最終勝利者ソン・ギフン氏は知り、アメリカへの旅立ちを飛行場で搭乗直前に辞めて再び殺人ゲームが行われるところへと向かうところでシリーズは終わっている。

韓国映画の実力は、確実に評価を高めている、経済力でも

現代社会の中で、何らかの要因で金を必要とする人たちが、殺人ゲームに参加してでも巨額の賞金を得ようとする現実、一度はこんなゲームに参加することを否定するものの、再び参加せざるを得ない現実の韓国社会、今の時代の抱える貧困や生きづらさを見事にカリカチュライズしたドラマとしても描き切っている。韓国映画界の実力は、ポン・ジュノン監督による「パラサイト 半地下の家族」で第7回カンヌ映画祭の最高賞であるパルムドール受賞を獲得しているほど高く、テレビドラマシリーズであるこの『イカゲーム』においても、その力はいかんなく発揮されているように思われる。いわゆる「韓流ドラマ」には、世界の人々を虜にする何かがあるのだろう。そういえば、韓国の一人当たりの実質賃金水準が、日本を超えたと報じられている。経済力においても文化の面でも、韓国のパワーに後れを取り始めていないだろうか。


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