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労福協 活動レポート

2021年11月29日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第220号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

高木郁郎日本女子大名誉教授の久しぶりのインタビュー記事

朝日新聞11月22日付朝刊の生活欄で、高木郁郎日本女子大学名誉教授が「連合よ いまこそ労働者を見よ」「存在感を高めるには」どうしたらよいのか等など、顔写真入りのインタビュー記事が大きく掲載されていた。久方ぶりに高木郁郎さん(こう呼ばせていただきたい)の登場であり、恐らく80歳代になられているわけで、まだまだお元気そうであることに先ずは安心した。東大を卒業後、総評調査部に勤務され、その後大学で教鞭を取られたわけで、私にしてみれば労働界での大先輩にあたる人であったし、よくいろいろな問題について勉強させてもらい、時に労働運動の行く末についても大いに議論させていただいた方でもある。

芳野連合新会長への好意的な期待、55年体制時代の郷愁も残る?

冒頭で、新しく連合会長に中小企業(?)労組出身で女性という、いずれの分野でも初めてとなる芳野友子会長に好意的で期待感を表明されている。今までの連合の運動スタイルに関して、「連合があまりにも政府と協調路線を取りながら政策実現をめざしてきた」ことが問題であり、「労働者よりも霞が関の方を向き、厚生労働省の審議会に出てくる資料を尊重している。やっぱり労働者の現実を直視して大衆運動を組織する側面もないと、何かを大きく推進できません」となかなか厳しい。

政治との関係で、「特定の政党を支持しようとすることが、連合の存在意義を失わせています。政治に深入りせず、連合は労働者の利益を反映できる政策実現の司令塔となっていけばよい」と述べておられるのだが、他方で『2大政治勢力のような態勢を作って自公政権と闘い、政権交代をめざす大きな流れは忘れないで欲しい』ことも指摘されている。こうしたインタビューのやり取りを読んで感ずることは、『55年体制』時代の「総評・社会党ブロック」に対する思いが今でも心の奥底に強くあるのだろうか、「連合よ、もう一度労働者を奮い立たせてほしい」と思っておられるのだろう。それにしても、懐かしい高木郁郎さんのインタビュー記事であった。

芳野会長の落ち着いた記者会見、官公労初の新事務局長にも注目

さて、その芳野友子連合会長であるが、11月18日に定例の記者会見が実施されている。40分近い動画が記者との間で質疑も含めて放映され、総選挙の結果や立憲民主党の代表選挙など、あまり澱むこともなく持論を展開されており、パソコン上の動画を見ながらの印象としては、初めての女性会長として、実にしっかりとした記者団とのやり取りに終始されていることを感じた。共産党系の全労連議長も小畑雅子さんで、くしくも日本の2つのナショナルセンター代表が二人とも女性になった事を知り、ようやく労働界にもジェンダーギャップ解消に向け新しい動きの胎動を感じさせてくれる。

連合の組織を強化すべき時、中小企業や非正規労働者の組織化を

芳野会長誕生の背景にはどんなことがあったのか、連合構成の産別間の政治的な動きについて定かには知らないものの、私自身はもう一人の連合の重要なポストである事務局長に、これまでの民間単産出身者から日教組出身の清水秀行さんが就任されたことに注目したい。民間大単産を中心にスタートした連合が、実質的な「官民一体」になって組織を強化していかなければならない時代になった事を意味しているのだと思う。さらに言えば、中小企業や非正規労働者など、これまで労働組合に組織できにくかった分野での組織化を強力に進めて欲しい。地方組織が主力になるのかもしれないが、かつての「屈強な総評オルグ300人」体制ができていたことを知る者の一人として、何とか頑張ってほしいと思う。もちろん、高木郁郎さんが政策実現の「司令塔」として存在感を高めて欲しいと述べていることを、是非とも強力に実践して欲しい。

連合民間単産と立憲のこじれた背景、前回参議選の不信感の残存

その芳野会長が、立憲民主党との間で共産党との関係で厳しい批判を展開されているのだが、その背景にはどうも2019年の参議院選挙における立憲民主党と国民民主党の軋轢があったことについて、『週刊金曜日』11月19日号の山口二郎法政大教授と中島岳志東工大教授の対談の中で明らかにされている。国民民主党は19年の参議院選挙に際して、連合傘下の民間産別出身の候補者5人全員の当選は難しいと判断して助けを求め、中島教授は、「国民民主党から合併の相談を受け、立憲民主党に優位な条件を預かって枝野さんのところにもっていきましたが、うまくいきませんでした」と述べ、静岡選挙区での国民民主党と立憲民主党の候補者のバッティングや民間産別候補の落選(芳野会長出身のJAMと電機連合)となり、「この時、産別(旧同盟系中心のこと、峰崎記)の人たちが枝野さんに抱いた怒りは激しいものがありました。このことが大きな傷になり、今でも癒えていません」と述べておられる。

山口二郎・中島岳志両教授の対談(『週刊金曜日』11月19日号)、かなり深くコミットされてきた現実

山口教授も「この時の選挙の不信感が重なり、産別は立憲民主党主導の野党再編に抵抗し続けたわけです」と同じことを指摘している。この前回の参議院選挙での立憲と国民の対立のもとで共に勝利することができず、枝野氏は国民民主党との合流を提起するものの、玉木代表たちは参加せず、今日に至っているわけだ。山口教授や中島教授は、今回の総選挙に向けて「市民連合」という橋渡し役を担ったわけだが、かなり野党側の最高指導部に食い込んで選挙協力等を推進してこられたことが良く判る対談になっている。もし、19年の参議院選挙での両党の信頼関係を強化していれば、野党側の力はもっと発揮できていたわけで、お二人の対談を読む限り、枝野代表の責任は重いものがあると言えないだろうか。この辺りは当事者の言い分や、いろいろな条件もあったわけで、歴史の審判に委ねる問題なのかもしれない。

その枝野個人商店と揶揄されていた立憲民主党の代表選挙が30日に投開票される。どなたが代表になられても連合との関係は不可欠であり、賃金・雇用問題の安心こそ国民が一番切実に求めているだけに、しっかりとした関係を築いて欲しいものだ。


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