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2022年2月28日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第233号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

日本の政治、再び野党戦線の混迷により漂流し始めたのではないか

日本の政党政治は、野党側の混迷によって再び漂流し始めたようだ。

与党と野党という区分は、政権発足時の政策協定などにより、国会での首班指名において同一歩調をとるわけだが、与党側が責任をもって編成した年度予算こそ重要な政策の裏付けとなるだけに、その予算への賛否は重大だ。この予算案に対して国民民主党が賛成に回り、衆議院で22日賛成多数で可決され、参議院に審議の舞台は移った。与党でもない国民民主党が予算案に賛成したのは何故か。玉木代表は、国民民主党が公約した石油価格のトリガー条項を、岸田総理から前向きに受け止めるという答弁が得られたから、などと述べているが、これだけのことで自民・公明連立政権の作成した予算案支持に回ることは、普通あり得ない。国民民主党と岸田政権の間で何らかのやり取りがあったとみるのが常識だろう。おそらく参議院選挙が終われば、政権与党と国民との間で交わされた動きがあるとみている。

岸田内閣発足以降に起きた様々な政治の動き、背景は何だろうか

この動きの前に、政界ではいろいろな動きが出てきている。一つは、今連立を組んでいる自民党と公明党との関係である。今年7月に予定されている参議院選挙で、32ある小選挙区では自民党候補を公明党が支援することとなっていたが、今回からは人物本位で選挙協力をする事へと変わった。背後には、創価学会の動きがあると言われているが、なぜ自民・公明両党の選挙協力に不協和音が出始めてきたのか良く判らない。もちろん公明党側から自民党との連立を離脱するという話が出ているわけではない。ちなみに、国民が今年の予算案支持を表明した際に、山口公明党代表が岸田総理を訪ね、両党の連立の絆をわざわざ再確認したとのことだ。

もう一つの自民党との間で良く判らないのが「日本維新の会」の立ち位置である。政策的に小さな政府を軸にした新自由主義路線に立ち、自民党よりも右側に立つ政党で、与党の組み換えがあるとすれば公明党に代わって維新との連立もありうるのではないか、とみていた。ところが、今回の国民民主党の予算案賛成については正面から「批判」をし、今直ちに自民党との連立には与することはないとまで明言している。とはいえ、維新は国民民主党とも距離を置いており、どんな政権戦略を狙っているのか、支持率では時に自民党に次ぐ第2党になったりしており、次の参議院選挙で大阪・近畿ブロック以外にどの程度の支持の広がりが持てるのか、自民に次ぐ全国政党になれるかどうかのカギを握っている。

野党第一党たる立憲民主党、泉執行部は野党を束ねる力を喪失か?

こうした政党間の動きの中で、野党共闘をどう組み立てていくのか、国会対策レベルでの立憲民主党の右往左往ぶりが気になる。通常国会が開幕して間もなく、国会対策に向けて共産党を除く野党共闘を提示したのだが、その直後共産党側から猛烈な批判があったことを受け、あえなく共産党抜きの野党共闘を引き下げたという醜態を国民の前にさらけ出してしまった。これでは、野党第一党としてのメンツも何もあったものではなく、総選挙での敗北、党支持率の低迷(維新より低い野党第2党への落ち込みも見られる)、連携相手と思ってきた国民民主党の予算案賛成と続き、このままではバラバラのままで参議院選挙へ突入、「敗北」は必至ではないかと思われてきた。少なくとも、野党を束ねて政権与党と対峙していく迫力を完全に喪失していることは間違いない。

立憲民主党支持の基盤だった「連合」、どんなかじ取りをするのか

特に、立憲民主党の支持勢力の中核に存在していた「連合」が、芳野新会長となって以来共産党との共闘を嫌って立憲民主党との間でギクシャクし続けてきた。その連合の共産党との共闘批判のため、来る参議院選挙ではバラバラのままで1人区は戦わざるを得なくなることは必至とみていたが、どうやら1人区で候補者を一本化にすることには漕ぎ着けたようだ。連合会長の国民民主党と立憲民主党との間での微妙な立ち位置の違いが、野党勢力の混乱の一つの要因になっているのかもしれない。とりあえず、維新は別にして共産党も含めて何とか候補者調整を進めていくことになるとしても、果たしてここまでこじれてきた野党間の行き違いが、これから7月までにどの程度の信頼感を回復していけるのか、まことに危うい。

その「連合」が、なんと自民党との間での政策的な連携を強め始めており、国民民主党の予算案の賛成と連合の自民党との連携を強める動きが、なんとも符節が合い過ぎているようで気になる。こうした背後にはトヨタの影がちらついているという見方を説く向きもあるが、一企業がそうした動きをするとも思えず、あまり筋の良くない裏情報なのだろう。

現状肯定に傾く若年層・中堅層、リベラルの痕跡はリタイア層へ

こうした政界の動きを見るにつけ、昨年の総選挙を機に2012年以来続いてきた「政界再編成の混迷時代」が次の新しいステージに突入したのではないかと思えてならない。もちろん、与党自民党内の動きというよりも、それ以外の野党側の濁流が渦巻き始めているわけだ。どんな再編成を見せてくれるのか、国民が求めている政策課題の実現に向けた骨太な対抗政党の確立に向けた論議が不在のままであり、あまり展望のある建設的な明るい話にはなりそうもない。国民の政治に対する意識は、20代30代から40代にかけて「現状肯定」へと確実に変わりつつあり、かつてのリベラルな立場を支持している中心層が70代になったことに愕然とさせられる。

時代は、確実に転換期を迎えているのだ。


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