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2022年7月4日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第249号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

参議選挙の与党勝利必至、岸田内閣は「黄金の3年間」になるのか

参議院選挙はいよいよ後半の1週間を迎える。どんなマスコミ関係の予想を見ても、自民・公明与党が過半数を超すことは確実のようで、序盤の世論調査に続いて実施される最終盤情勢では、与党と維新や国民といった憲法改正賛成勢力が3分の2を占めるのか、さらには野党第1党の座(比例選挙での)を、立憲がとるのか維新が奪い取るのか、といったあたりがマスコミの関心の的になっているようだ。もちろん、投票率が大きく上昇すれば一つの波乱要素となるのだが、どうもそんな雰囲気は感じられない。

問題は、昨年9月に発足した岸田内閣が11月衆議院選挙でまさかの勝利を得、今回の参議院選挙でも与党過半数で勝つことができれば、今後3年間は衆議院解散がなければ国政選挙は無く、一般的には与党側が思い通りの政権運営ができる「黄金の3年間」と呼ばれる貴重な時間が得られるわけだ。発足して半年あまり、岸田政権はコロナ禍が終息に向かいつつある(最近では少し増えつつあることに要注意)中で、この参議院選挙で勝利を得るべくひたすら安全運転を心がけているようで、これまでは特別に国民から見てすばらしい実績を上げたわけでもないのに、内閣支持率が比較的高いまま参議院選挙戦に突入できたようだ。

ただ、ここにきて物価高とそれを加速させる「円安」という国民生活を圧迫する要因がじわじわと押し寄せており、参議院選挙結果にも多少の悪影響が出始めるのではないかと言われているが、どんな最終的な結果になるのか、投票率の低下が続くようでは大きな波乱はなく、マスコミ各紙の予想通りの展開となるのだろう。

過去の国政選挙のない3年間、「黄金の3年間」は殆んど無い

だが、本当にこれからの3年間が「黄金の3年間」になるのかどうか、過去の政治史の中で3年間も国政選挙がなかった時の歴史を振り返ったノンフィクション作家塩田潮氏の『週刊東洋経済』最新号(7月9日号)の定期コラム【フォーカス政治】に書かれた「岸田政権『黄金の3年』に潜む危うさ」を読むと、戦後の政治史の中で国政選挙が3年間もなかった時には政局が混迷することもあり、果たして「黄金の3年間」となるのかどうか、そう簡単なことではないとみておられる。むしろ、その3年間をものともしないで解散総選挙に打って出た小泉政権や安倍政権のような、「リスクを恐れない政治力を行使することの重要性」を指摘されていて、時機を得た興味深いコラムであった。

社会保障制度を巡る大改革が待ったなし、「悪夢の3年間」では?

それを裏付けるように、同じ最新の『週刊東洋経済』誌において、人口減少社会に突入し、少子高齢化の下で経済も成長力を弱体化させる中で、年金や医療・介護・少子化といった社会保障制度の行く末についての特集が組まれている。おそらく、岸田内閣が発足して設立された「全世代型社会保障構築会議」(略称「全社会議」座長は清家篤慶應義塾大学元塾長)が参議院選挙前に「中間報告」をまとめており、そこで指摘されている社会保障の今後の課題についての問題提起となっている。その点は、この「全社会議」を一貫してリードしてこられた香取照幸上智大学教授と権丈善一慶応義塾大学教授の対談記事「参院選後、社会保障改革はどうなる?」を企画されていることでもうかがい知ることができる。

権丈教授、統治の危機が逆に改革のチャンス、安定は何も動かないかもしれない

2ページばかりの短い対談記事なので十分に理解したとは言えないのだが、聞き手の野村明弘コラムニストが「参議院選挙後は『悪夢の3年』になるのではないでしょうか」という問いに対して権丈教授は

「これから政治の危機になるというが、社会保障は分配を手段とした統治システムだ。統治の危機が来れば、逆に改革が一気に動き出す可能性もある。

1961年の国民皆保険・皆年金は、野党第一党だった日本社会党が最大議席の時に誕生した。育児休業制度や介護保険制度、社会保障・税の一体改革も政治が大混乱する中で生まれた。今後3年、政治が安定すれば、逆に何も動かないかもしれない」

と述べておられる。

動き始める社会保障関係諸会議と来年から始まる国会での論議

果たして、少子化を始めとして年金や医療・介護・子育てといった全世代型の社会保障制度の全面的な改革はどのように進むのだろうか。参議院選挙が終われば再び「全社会議」も8月から再開されるし、何よりも高齢社会の中での存在感が高まっている年金制度についても、9月から社会保障制度審議会年金部会の議論もスタートする。

年金制度の正しい理解の上での将来構想構築へ、建設的論戦を期待

年金制度については、現役世代の賃金上昇が停滞する下で少子高齢化の進展に伴い、所得代替率が50%を切ってしまうのではないか、これからの年金支給額がマクロ経済スライドにより低下することへの国民の関心もあり、3年後の2025年に向けた財政検証と大型の年金改革案の提案もありうるのではないかと想定されている。となれば、年金制度についての論議が23年か24年には国会で繰り広げられていくに違いない。正しい年金制度についての理解の下での論戦になるのか、それとも再び間違った理解の下で国民の不安を煽るような低レベル論議になるのか、国会の存在意義が問われることは間違いない。

日本医師会の反対する”かかりつけ医”など、医療保険制度改革へ

さらに、医療についてもかかりつけ医の制度化の問題など日本医師会の大反対がある中でどのような論議が「全社会議」で取りまとめられるのか、2023年の国会では医療保険制度の改革についての論戦も始まろうとしている。また、翌24年は、医療保険と介護保険の報酬同時改定の時期に当たっており、5年に一度の年金の財政検証も公表されるわけで、まさに社会保障制度についての改革の方向を決めるべき節目の年になることは必至だろう。さらに、少子化社会をどのように克服していけるのか、雇用の在り方や子育ての制度改革を含めて、まさに将来の日本をどうするのか、財源の確保という大問題も含めて真剣な論戦を開始せざるを得ない時期を迎えることは必至である。 

「黄金の3年間」か「改革の3年間」か、「貴重な3年間」にする力を岸田政権は持てるのか

こうした日本の将来を大きく左右する社会保障制度の改革を控えているだけに、「黄金の3年間」として岸田政権がこの半年余り取り続けてきた「自分の主張を持たないで時流に任せてきた」やり方では、到底乗り越えることはできないのではないかと思えてならない。この3年間は「改革の3年間」であり、日本のこれからの行く末を決定づける「貴重な3年間」なのであり、国民の安心・安全を確保していかなければ簡単に政権の座から転げ落ちてしまうのではないだろうか。外交や経済においても大きな問題を抱えている岸田政権、ここはどんな「転身」を示すことができるのか、国民は注目してみているのだ。


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