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労福協 活動レポート

2022年11月14日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第267号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

アメリカ中間選挙、「赤い旋風」吹かず、民主党が上院支配維持

世界的に注目されていたアメリカ中間選挙は、下院では共和党が過半数を上回る公算が強まっているものの、上院は接戦を演じていたネバダ州で民主党の勝利が確定し、再選挙となるジョージアで仮に負けたとしても50議席でこれまで同様ハリス副大統領票で過半数を確保できることとなる。

全体としては、「赤い旋風」と名づけた共和党の圧勝には至らず、当初苦戦するだろうと見られていた民主党の善戦(勝利と見る向きもある)が目立ったことは間違いないだろう。共和党は下院での勝利に必要な218議席には未だに至っておらず、下院での勝利と言っても民主党との差は僅差になるものとみられており、共和党内での結束が維持できるかどうかのほうが問題だとされ始めている。郵便投票などが開票され始めるや下院でも民主党がかなり追い上げており、投票後4日経っても決着がつかず、大接戦になっているようだ。

民主党と共和党の分断、アメリカ民主主義をどう立て直せるのか

全体の最終結果が出ていない中で、今度の中間選挙をどのように総括したらよいのだろうか。10日付日経新聞に掲載されていた「出口調査」(シカゴ大学世論調査センターの「AP VoteCast」から)の結果を見た時、生まれた年代によって支持政党が異なる米国社会の「分断」が浮き彫りになったとの評価が出ているのが目に留まった。若者が民主党を支持する比率が高く、人種別でも白人では共和党が過半数でも、これから増えると見込まれる非白人は65%が民主党支持となっている。背景には、民主党と共和党の激しい対立(価値観の相剋)が存在しているわけで、この対立の存在こそが大統領選挙結果を認めなかったり、議事堂侵入事件などを繰り広げてきた背景にあるわけだ。

世界の途上国は、米欧先進国の民主主義の現実を注視している

アメリカ社会が民主主義の国と言いながら「分断国家」(「市民戦争」と言う人すら出ている)となっている事の回復をどう進めていけるのか、ウクライナ侵攻を進めたロシアや1か月前に党大会を開催し習近平独裁体制を作り上げ世界覇権に向けてアメリカとの対決を強めようとしている中国といかに対峙していけるのか、世界の多くの国々はアメリカをはじめとする先進国の民主主義の行方に重大な関心を持っているわけで、今次の中間選挙の行方は、その帰趨を占ううえで重要だったのだが、どう強化していけるのか未だ結論は見えていないようだ。

インフレが鈍化した情報、選挙前ならどんな結果になったのか

それにしても、中間選挙直後に発表されたアメリカ10月の消費者物価指数の対前年比で7.7%と市場の予想より低かったことが、今後のFRBの金利引き上げの動きを弱めていくとの予想からニューヨークダウが1200ドル以上も値上げとなり、その余波を受けた週末の東京株式市場も600円近い値上がりを記録し、このところ円安によって苦しめられていた外為市場でも1ドル130円台にまで円高となって週末を終えている。もし、このアメリカの消費者物価指数の発表が中間選挙前であれば、インフレを起こした責任を問われた民主党にとって追い風となった事は間違いないだろう。

それにしても、ここまで金利を引き上げてもなお雇用状況は落ち込んでいないようで、FRBによる金融政策でインフレを退治していけるのかどうか、先週紹介した渡辺努教授ではないが大いに疑問ではある。

岸田政権はどうなっていくのか、あまりにもお粗末な国会運営

目を国内に転じてみる時、岸田政権の不安定さがあちこちに露呈し始めている。「黄金の3年間」どころではなく「黄金の3週間」だったのではないか、等と揶揄されている始末である。安倍元総理の「国葬」、旧統一教会と多くの自民党政治家とのズブズブの関係、更には自ら任命した大臣の更迭が相次いでおり、山際経産大臣から葉梨法務大臣と続き、次は寺田総務大臣ではないか等「辞任ドミノ」が噂されている。国会運営の面でも国対委員長が、あろうことか野党の国対委員長との会談を拒否し、幹事長が前面に出て修復を図ったり、国会日程で10月には鈴木財務大臣の外遊、11月の今週は岸田総理の外遊で予算委員会の審議に入れないことなど、国会運営のギクシャクぶりが誰の目にも明らかとなっている。

国民最大の関心事項である旧統一教会に絡む犠牲者救済措置の法案作成などでも、与党側のやる気のなさが露呈しており、今国会での法案成立すら危ぶまれているのが現実だ。岸田内閣の支持率が毎日新聞や共同通信社の世論調査で30%という内閣存続の危険ラインを割り込み、このまま政権を維持していけるのかどうか、厳しい局面に差し掛かっているようだ。

社会保障制度改革が前進し始めるような最近の報道に注目

こうした中で、私が注目しているのが社会保障分野での改革の動きである。内閣府に設置された「全世代型社会保障構築会議」で、年金をはじめ医療や介護などの審議が着々と進められているようで、時折、全国紙の1面にそれほど大きな活字ではないがさらりと良い動きが書かれている。11月10日、日経新聞朝刊の1面に「バートの厚生年金加入 企業の規模要件撤廃 政府検討」とあり、冒頭で次のように記載されている。

「政府はパートやアルバイトらの短時間労働者が厚生年金や健康保険に入れる要件を緩和する検討に入る。有識者による全世代型社会保障構築会議を近く開き、対象となる法人の拡大などを提起する。手厚い給付を受ける労働者を増やし、保険料の下支えで社会保障制度の安定につなげる」

過去の議論では、国民年金から厚生年金制度加入について2024年10月から101人以上の企業規模から51人以上までの規模にまで拡大することが決まっていたのだが、さらに企業規模の要件撤廃にまでもっていこうとしている。

全く大賛成であり、税制とも絡むのだが「103万円の壁」「130万円の壁」といつた就労を阻害させるような制度の廃止と共に、年金保険や健康保険における企業規模や勤務時間、所得制限などの壁を打破して欲しいと思う。

厚生年金加入の企業規模撤廃と基礎年金40年加入から45年へ

さらに、年金の基礎年金部分の40年間の加入期間を45年間まで5年延長することも提起されているようで、この実現のためには基礎年金の2分の1が税金で補填されていたわけで、5年間延長すれば約1兆円の税金(消費税)投入が不可欠となる。これも、基礎(国民)年金の引き上げにつながる改革であり、大いに前に進めて欲しいわけだが、消費税の引き上げという難関が待ち受けている。

国民の老後生活をいかに安定化させるのか、この財政支出は内需の拡大という経済政策としての社会保障の役割を果たすことでもあり、まさに「ワイズスペンディング」なのだ。国民に対して丁寧にその必要性を訴え、是非ともこうした中身を持った答申案を国会で法改正として実現させていくよう与野党に求めたいものだ。岸田内閣の行く末が心配ではあるが、宏池会の伝統を生かして国民生活の安定・安心・充実に力を入れて欲しい。


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