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労福協 活動レポート

2022年11月28日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第269号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

支持率低下の岸田内閣、閣僚辞任ドミノ、補正予算案の審議始まる

支持率の落ち込みが続く岸田内閣だが、第2次補正予算を中心にした国会での予算委員会の審議が、NHKテレビ中継入りで25日から始まった。当初は24日から始まる予定だったわけだが、閣僚辞任ドミノ三人目の寺田総務大臣の辞任と後任大臣の認証作業に手間取り、1日遅れて補正予算案審議にようやく入れたわけだ。その審議の中で、再び秋葉復興担当大臣の政治資金スキャンダルなどが野党側から追及され、4人目の辞任も時間の問題だと見られ始めている。

参議院選挙で勝利はしたものの、安倍国葬や旧統一教会と自民党などとの癒着問題が露呈して以来、岸田内閣支持率は3か月連続して落ち込んでいる。朝日新聞の11月12-13日に実施した全国世論調査によると、岸田内閣支持率は37%で前回10月の40%からさらに落ち込み内閣発足以来の最低を記録、不支持率も51%と過半数を超えている。他のNHKや読売新聞などの調査でもほぼ同様の傾向を示しているわけで、岸田内閣は「黄金の3年」どころか一転して「存亡の危機」に直面し始めていることは確かであろう。

旧統一教会の被害者救済に向けた前向きの答弁が出ない総理答弁

それだけに、これから審議される第2次補正予算案が、当初原案から政府案に決定する際、自民党サイドから「総額ありき」で一晩で25兆円から29兆円へと「大判振る舞い」を余儀なくされ、岸田内閣がどう難局を切り抜けていくのか、国会運営でもぎりぎりの攻防に立たされていることは確かであろう。

25日の立憲民主党の泉代表や長妻政調会長との論戦では、一番の国民的な関心事である「旧統一教会」の被害者救済問題で実効性のある法案改正になるよう求められているものの、与党側との十分な打ち合わせが十分になされていないのだろうか、今一歩前向きな答弁ができないで押されっぱなしのように感ぜられた。

補正予算総額29兆円の23兆円は国債発行で賄う驚きの現実

それにしても、一般会計で29兆円、財政投融資など含めた財政規模で39兆円という巨額の予算に対して、その規模の大きさと共に予備費が4.7兆円も含まれている事への批判が広がっている。ただし、その財源の裏付けとなるのが23兆円にも達する巨額の国債であることを野党側は指摘したわけだが、自分たちも参議院選での選挙公約に消費税の減税を前面に出してきたわけで、泉代表以下の立憲民主党の質問の中で財政規律の問題を厳しく指摘する声は、残念ながら聞くことができなかった。日本には、残念ながら財政規律を求める政治勢力が与野党ともに存在していないことを露呈させており、この国の将来に責任を持つ政治が今こそ求められている。

エネルギー価格対策に12兆円支出、総花的で持続不可能ではないか

それにしても、国民生活を物価上昇から守ると称して補正予算案を提示しているのだが、その内容が余りにも総花的かつ持続不可能な無責任政策になっていることに目を向けていく必要がある。来年1月からの電気代の2割、都市ガス代1割強軽減し、ガソリン価格抑制策の継続などと合わせて物価・賃上げ対策に12兆円余を支出することにしている。12兆円とは消費税率に換算して約5%にも達する巨額なものになるわけで、こうした財政支援措置を取り続けることは持続不可能であることは言うまでもない。家計にとって当面助かる話ではあるが、その財源は殆んど国債発行で賄うわけで、そのツケは国民に降りかかってくることは間違いない。物価が2%に上げるために日銀が国債を大量に買い続けているわけで、その国債で物価が上がったからと言って予算措置をするという実に矛盾した政策のおかしさに、一刻も早く気が付くべき時ではないか。アベノミクスの破綻を真正面から追及すべき時なのだ。

防衛予算のGDP2%へ倍加、少子化対策の方が優先されるべきでは

補正予算ではないが、5年後をめどに防衛予算をGDP比1%から2%へと倍増する答申案が「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」(座長=佐々江賢一郎元外務事務次官)によって取りまとめられ、予算審議と同時に政府に対して提示された。防衛予算がGDPの2%という数値はアメリカ・中国に続く世界第3位の軍事大国へとのし上がることになる。本当にそれが日本のこれからの外交・防衛の在り方として国民の合意になりうるものなのか、社会保障や教育といった国民生活を安定化させるための財源はどうなっているのか、今後の論戦に期待したい。とくに、日本が抱える最大の問題は少子化であり、来春発足の子ども庁が進める少子化対策に必要な財源問題は全く見えていない。岸田総理が政策調査会長時代にこども保険の新設というアイディアが出されていたが、どう展開していくのか定かではない。

「新しい資本主義」実効プラン、「1億円の壁」解消はどうなるのか

さらに、岸田総理の提起した「新しい資本主義」の実効プランが週明けの28日に決定されることを予定している。昨年の総裁選挙ではアベノミクスから「分配」を重視する姿勢を示していたのだが、いつの間にか「成長無くして分配なし」へと舞い戻ってしまっている。さらに、金融所得が一律20%の分離課税で1億円以上の高額所得になればなるほど所得の殆んどすべてを株式売買益が占めているため1億円までは所得税の実効税率は順調に引き上がるのに、1億円を超えれば所得税の実効税率が下がり始めるという「1億円の壁」問題を解消するという公約も、株式市場からの反撃にあう中でひっこめてしまっている。今回の資産所得倍増プランでは、NISA(少額貯蓄非課税制度)などの非課税枠の拡大でお茶を濁そうとしているに過ぎない。税制において一番大切な「公平」という大原則が基幹税である所得税においてないがしろにされたままで、株式投資に対する非課税枠の拡大でお茶を濁そうとしているわけで、これでは総理の改革に向けた本気度が問われかねないことは言うまでもない。

「マイナ保険証」方針強行、政府のやり方は本末転倒ではないか

さらに、大きな柱である「脱炭素・デジタル投資」の中で、マイナンバーカードについて2024年までに健康保険証と一体化するという方針を打ち出している。この点については民主党政権時代に社会保障・税一体改革と共に国民の所得や資産を正確に把握することによって、「誰が本当に生活に困っているのか」を正確に掴み、社会保障給付を公平かつ迅速に実施していくために導入しようとしたものであり、今回の「マイナ保険証」導入はそういう目的から逸脱しているわけで、政府のやり方は「本末転倒」であることは言うまでもない。今回の補正予算で12兆円もの巨額の財源を物価対策に投入しようとしているわけだが、大きなダメージを受ける低所得層に焦点を絞って直接投入すれば12兆円もの巨額な財源は必要なくなり、公平さが保たれるわけだ。今の政権には、国民に対して所得や資産のマイナンバーとの紐づけの必要性を真正面から訴えていくことを避け続けているわけで、何のためにマイナンバーが必要なのか、もう一度原点に立ち返る必要性を強く望みたいものだ。


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