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労福協 活動レポート

2023年4月17日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第289号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

統一自治体選挙、後半戦が始まる。最大の焦点は「維新」の動向だ

統一自治体選挙の前半戦が終わり、これからは23日投開票となる後半戦がスタートし始めている。それに、5つの衆参補欠選挙も同じ日に投開票されるわけで、今後の政治の動きを占ううえで見逃すことのできない政治イベントが続いていく。前半戦の都道府県知事選挙は9つの道府県知事選挙だけとなり、47分の9では2割にも満たず、統一とはなかなか程遠くなっているのだが、道府県議会議員と政令市長・議員選挙は多くの当該自治体で闘われた結果が明らかになっている。特に、政令市の増加が進んでおり、現段階では20市を数える。神奈川県などは横浜、川崎に続き相模原市も指定され県全体人口の圧倒的多数は政令市で占められている。

維新は所属自治体議員の倍増で600人の地方議員を目座したが?!

この前半戦の結果は、あまり多くの解説記事や論評がなされていないように思われるのだが、やはり一番の注目点は「日本維新の会」の躍進であろう。後半戦の戦いを経なければ、全体としての評価を下せないのかもしれないが、馬場代表が今年の統一自治体選挙で獲得議席を600人という目標を掲げ倍増を目指すとのことだった。その目標は、明らかに野党第1党の座を奪うことにあるわけで、その観点からは、多くの道府県会議員や政令市議会議員を当選させており、後半戦の戦いの結果をみないとまだ何とも言えないのだが、今のところ見事に目標をクリヤーしつつあると言えよう。

大坂・近畿だけではなく、北海道も新しい道議札幌市議の誕生へ

もともと強固な地盤を誇る大阪だけでなく、今回は奈良県知事でも自民党内の内紛の中で漁夫の利を得て当選し近畿圏での勢力拡大とともに、私の住んでいる北海道の札幌市でも、新しく道議会議員が1名、市議会議員5人が当選するなど維新の影響が北海道の道都にまで進展している。(もっとも、鈴木宗男氏は新党大地という北海道を基盤にした地域政党を立ち上げており、自身は維新で参議院に当選し所属している)。

大きかった昨年参議選挙の比例区得票数784万票、野党第1党だ

2010年に橋下徹氏の強烈な個性に裏打ちされて大阪維新の会が立ち上げられ、2012年には54名の衆議院議員を当選させたのだが、その後大阪における知事や市長戦では勝利し続けたものの、全国的な展開という点ではあまり進んでいなかった。それだけに、お隣の兵庫県などへの影響力の拡大は見られたものの、大阪圏を中心にした地域政党というイメージが強かったわけだ。とくに、橋下氏が第一線を退いて「大阪都構想」などの失敗はあったものの、それなりの政治勢力を維持し、首都圏への進出にも一定の成果を上げてきた。特に、岸田内閣の下での国政選挙での躍進、とりわけ昨年7月の参議院選挙での比例得票数では、784万票と立憲民主党の677万票を100万票以上引き離し、比例区での野党第1党の座を獲得したことの意義が大きかった。馬場代表は、先ほどの自治体議員倍増とともに、昨年9月には「公明党との協力は白紙に戻す」と宣言し、次の総選挙にはすべての選挙区に立候補させる意向を明らかにしている。明らかに次の総選挙で野党第1党の座を獲得し、更には政権政党の座を目指していくことを隠そうとしていない。

これから維新は、政権獲得に向けどんな戦線を構築していくのか?

こうした勢いをどう評価してよいのだろうか。自民党に対抗していく政治勢力として野党第1党の立憲民主党が伸び悩んでおり、野党共闘を束ねていくうえで国会内の維新との共闘も今年の予算審議までは何とか進めていけたのだが、原発問題や最近の小西洋之参議院議員の「憲法調査会の毎週審議は猿のやること」という発言と、その後の言動を捉えて立憲民主党との間がギクシャクしつつあり、統一自治体選挙や5つの衆参補欠選挙後の政局の中で維新の立ち位置がどう変わっていくのか、なかなか見通しがたいものがある。おそらくは、立憲との共闘は著しく萎んでいくのだろう。

自民党内を揺さぶる維新、政界再編成の中核になれるかどうか?

ただ、維新の政治理念や政策の柱は新自由主義に立脚しているわけで、自民党との連携を求めていったとしても不思議ではない。安倍政権や菅政権時代には維新との蜜月が指摘されていたこともあるが、岸田政権になってそれ程密接な関係が構築されたとは言えないわけで、今後、やや上向きかけた岸田内閣支持率の下で、5月のG7広島サミットを大過なく議長としてやり遂げ、少子化対策での財源問題での方向性を打ち出すことにより、解散・総選挙に打って出ることも十分ありうるとみるべきなのだろう。大阪府のIR誘致にゴーサインを出したのは、多分に維新対策なのではないかと見る向きもある。

問題は、維新が彼らの目標通り野党第1党の座に就いたとき、自民党政権は引き続き公明党との連立政権を続けていけるのか(行くのか)どうか、という点で政界の再編成が起きてくるのではないかと密かに夢想しつつある。自民党内の旧安倍派という最大派閥は今の岸田政権とはそれ程そりが合わないわけで、自民党内の維新と提携する政治勢力になる可能性はないのだろうか。他方で、岸田政権は比較的リベラルな宏池会のリーダーであり、アメリカの力を借りて防衛力強化に乗り出してはいるが、賃上げや子育て問題などでの国民生活重視にも力を入れているわけで、維新の主張する「既得権の打破」「身を切る改革」がどのような政治改革や行政改革となってくるのか、今は未だ全体像が持ちにくいが、大阪における維新の実績をどう評価したらよいのかが問われているのかもしれない。大阪都構想の挫折、最近ではカジノ構想の認可という形で近畿経済圏の発展を進めようとしているのだろうが、大型イベントに対する国民の期待はそれほど高くないだけに、地に着いた国民生活をどうしていくのか、今後の政策課題がどのように構想されるのか、注目していきたい。

自由民主党の「鵺」的性格を揺さぶり、2大政治勢力結集へ向かう

私自身は、維新が統一自治体選挙の勢いを持続させることができ、次の総選挙での自民党に肉薄することのできる支持基盤を獲得できれば、自民党の中での非リベラル系の政治家集団とリベラルに近い政治家集団へと、分裂の仕掛けをする動きが出てくるように思えてならない。もともと自由民主党は、自由党と民主党が左派社会党と右派社会党が合同したことによって第1党が日本社会党になることを阻止するために合同して出来た政党である。それだけに、新しい政権交代可能な政党が出来上がる可能性が出てくれば、自民党内の隠されていた内部矛盾が露呈してくることは十分にありだろう。現に、民主党政権時代に自民党を離党してきた何人かの政治家がいたことを思い出して欲しい。

果たして、維新に中期的な政党をマネージしていく力があるのか

今の選挙制度が変わらないという前提に立てば、2大政治勢力による政権交代を目指した戦線構築が不可欠なのであり、自民党という政権政党が一枚岩で居続けられるのかどうか、維新が野党第1党として自民に対抗していける政治勢力の中核として束ねていけるのかどうか、恐らく10年単位での政界再編成の序幕が切って落とされていくのではないかとみている。もちろん、その間の維新という政党のガバナンスがうまく行くという前提の話だ。

かつて社会党が野党第1党として存在していたわけだが、社会主義世界体制の崩壊によってその政治理念(ソーシャリズムなのかソーシャルデモクラシーなのか曖昧)も崩壊し、民主党という形でリベラル政党という立場へと移ろうとしたのだが、あまりにも雑多な政治理念を包含しすぎてしまい、2009年に政権交代を実現させたにもかかわらず、統治能力を失い今や分散化し分解途上にあることは見てのとおりである。

北海道知事選挙における与野党対決型選挙が意味するもの、
2023年のシンボル的な意味を持つ「完敗」ではなかったか

北海道の知事選挙で、全国で唯一の与野党対決型という知事選挙の結果は野党側の惨敗で崩れ去ってしまった。立憲民主、国民民主、共産、社民といった政党が推薦や支持していながら、50万票に達しなかったことに象徴されるように、これからの日本の政治は保守対「革新」ではなく、保守対リベラルに対立軸を置きながら、幅広い政治戦線を構築できた政治勢力がリーダーシップを取っていくという形になっていくのではないかと思ったりする。リベラルの中身は、体制転換ではなく、市場経済ではあるが、社会保障や教育といった国民生活にとって不可欠な分野を国や自治体が灌漑用水のように取り囲み(コモン)、所得や資産格差だけでなく学歴格差やジェンダーギャップなど社会的な格差をどう解消していけるのか、外交安全保障においては、米中2大陣営が対立する中で、どうその間を取り持ちつつグローバルサウスを取り込んで、国連を中心にした安全保障の新しい仕組みを改革していくために力を尽くしていくことなどが考えられるだろう。もちろん、G7の枠組みの中で行動していくことは言うまでもないし、日本の主体性を保ちつつ日米の絆を強めていくべきことも当然の事であろう。

こうした将来の政治戦線が、後から振り返った時、2023年という年が大きな転換点だったことを思い出させてくれるのではないだろうか。次の焦点は、明らかに解散総選挙になってきた。それにしても、岸田総理の遊説中の暴漢による襲撃、民主主義が危うくなり始めているのだろうか。被害にあわなくてよかったと胸をなでおろしている。


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