2023年6月26日
独言居士の戯言(第299号)
北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹
通常国会の終了と日本政治の行く末ついて。この頃思う事
150日間に及ぶ通常国会が先週終わった。岸田総理が国会を解散するのではないか、という与野党がやや緊張する場面もあったし、総理が内閣不信任案を出せば解散・総選挙に打って出るような雰囲気を漂わせていた。テレビ放映から見た時、不敵にも含み笑いをしていたのではないかと思えるように見えた。ところが、2日後に「今国会での解散総選挙はやらない」と会見して一件落着となった次第だ。何があったのか、いろいろと情報が乱れ飛んでいるが、先の総選挙から2年も経っていないわけで、与野党の衆議院議員は正直ほっとしたのが現実ではなかっただろうか。
岸田内閣支持率の急降下、マイナンバー制度への国民の不安か?
なにせ、岸田内閣の支持率が落ち込み始め、朝日新聞の最新の調査では、不支持率46%、支持率42%と逆転したと報じていたが、他のマスコミ各紙の調査でも同様の傾向が出ていたようだ。支持率が逆転するとは尋常なことではないはずだ。というのも、G7の議長国として広島サミットをうまく取り仕切り、特にゼレンスキーウクライナ大統領の参加という劇的な演出も加わり、経済面でも株式市場が3万円台に突入し、先週は3万3000円の大台にまで達していたわけで、これだけ好条件がそろえば解散・総選挙に打って出ても勝利するのではないか、という見方があってもおかしくない。
マイナンバー制度は、もう一度原点に立ち返って改革を求めたい
秘書官にした長男祥太郎氏の不祥事もあったが、最近ではマイナンバーカードに関わる国民の不安の高まりが支持率低下の大きな要因ではなかったのか、と言われているようだ。さすがに政府も事態の深刻さに気付き、岸田総理が責任者となって「マイナンバー情報総点検本部」を設置して問題の把握と改善に向けて動くようだ。システム設計の在り方を含めて、国民の安心感が持てるよう全力を挙げて欲しい。2010年の税制改革大綱に書き込んだ責任者の一人として、何のためにマイナンバーを導入しようとしたのか、その原点(効率性だけでなく公平性実現のためのインフラである)に立ち返って改革が進むことを願うばかりである。
さらに、10増10減に伴う公明党との軋轢が顕在化したことを受け、東京都以外の全国の選挙区にも影響が及ぶと見られているだけに、公明党との和解に向けた努力が求められているのだろうか。この辺りは、水面下での動きがどうなっていくのか、注目すべき点なのだろう。日本維新の会が大阪での公明党とのすみわけを辞めて、すべての選挙区での擁立したことの余波が及んだのかもしれない。
解散の時期は秋の臨時国会か、財源問題の争点化を避けたい総理!?
ただ、考えるべきは防衛予算の増額(5年間43兆円)や子供子育て関係予算3.5兆円という大規模な予算を増額する方針を打ち出していながら、その財源については年末まで先送りにしている。このことが意味するのは、総選挙を年末の予算編成までには実施して、その勝利によって財源問題についての具体論へと入っていくことを進めようとしているのではないだろうか。年末の予算編成後に解散・総選挙ではそのあたりの問題点を野党側から追及され、責任ある与党としての立場が明確にならないのではないだろうか。今回の岸田総理の腹積もりは、結局のところ秋の臨時国会での解散、総選挙、そして総選挙での勝利の上で年末の来年度予算の編成へと突き進むつもりではないだろうか。もっとも、果たしてそれまでに岸田政権にとって有利な条件が出てくるのかどうかどうか、なかなか険しい道になるように思えてならない。特に、得意とされている外交問題の行方は、米中対立の下でのグローバルサウスの動きに岸田外交が対応できるのかどうか、G7広島サミット宣言に基ずく中国との話し合いが成功裏に進めることができるのかどうか、なかなか難問が山積しているようだ。
野党側の戦線はどうなっているのか、野党第1党争いが目的とは
一方、野党側に目をやると、野党第1党を巡る立憲民主党(以下「立憲」)と日本維新の会(以下「維新」)との確執は激しさを増している。世論調査を見ても「維新」の方が「立憲」を支持率や投票先を尋ねたアンケートでは引き離しており、すべての選挙区に候補者を擁立する目的が、立憲から野党第1党のポジションを奪うことにあると明言している。岸田政権の野党でもなく「ゆ」党ではないかと揶揄されても、一向に政治姿勢は変わらないわけで、このままいけば選挙における争点が自民・公明両党の政権運営に対する評価ではなく、野党間の第1党争いがどうなるのかということにも焦点が当たってしまうわけで、およそ国民の負託にどう応えていけるのか、国政への関心が大きく後退して行かないか心配ではある。「維新」にしてみれば、解散の時期が秋以降に伸びたことは、その間の衆議院選挙候補者選びに時間が割けるわけで、ウエルカムに違いない。
混乱をし始めた立憲民主党、党内での公然たる反旗をどうする!
ケンカを売られた格好の「立憲」ではあるが、泉健太代表が早々と150人当選しなければ党首を辞任すると宣言し、選挙協力については「維新」とはもちろん、共産党とも一線を画していくことを明言し、これでは次の総選挙での自民・公明連合軍に利することになってしまうのではないか、と立憲民主党内(小沢一郎氏や小川淳也氏らの動き)での波乱を巻き起こしているようだ。これから秋にもあると言われている総選挙の戦いに向けてどのような戦線を組んでいこうとしているのか、その姿が見えなくなっていることに、何とか野党側の統一を進めて欲しいと思う人たちの嘆きの声が聞こえてくるようだ。今の選挙制度を作ってきた背景には、二大政党制への収れんが起こり、政権交代を通じて国民の声を集約していけるものになるという前提があったわけで、今起きている現実を前にしてもう一度選挙制度の在り方を含めて考え直していく時に来ていないだろうか。「れいわ臨調」なる組織が発足したやに聞いているが、どんな活動をしているのか。最近ではほとんど報じられることがないようだ。
この難局をどう解決していけるのか、新しいリーダー出現に期待
日本の議会制民主主義が、このまま狭い党派間の主導権争いが公然と語られるようになっている現状は、あまりにも酷いと思わなければなるまい。日本の政治戦線はまったく展望を失い始めているようで、国民の政治不信がますます増嵩し、いつか来た道を再び繰り返さないかと心配したくなる。なんとか打開への道筋を絵解きすると同時に、大胆な改革への動きを、「静かに、賢く、力強く」牽引していけるリーダーの出現に期待したいものだ。