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労福協 活動レポート

2023年8月28日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第307号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

介護保険制度の施行から23年、その重要性を改めて認識へ

来年で80歳の大台を迎え夫婦ともども後期高齢者の仲間入り、そろそろ世間で言うところの『終活』を考えなければ、と思い始めていた矢先に、妻が骨折・入院・退院後のリハビリなど介護保険「要支援2」と認定され、自立に向けての介護サービスを受けるところまで来ている。

先週木曜日に近くのデイサービスを見学する機会があり、妻と一緒に出向いてきた。できたばかりの新しいメディカルビルのワンフロアー約50坪近い広さの中で、介護保険制度の要支援以上の高齢者約40人近い人たちが元気よく様々な体操器具を駆使しながら汗をかいていたり、インストラクターの指導の下で一斉に体を動かす運動を実践されている現場を、期せずして初めてこの目で確かめることと相成った次第だ。一言で言って、やや嬉しい驚きであった。

初めて見たデイサービスの現場の迫力、やや驚いたのが現実

参加されている高齢者の動きはお世辞にも力感がこもったものとは言えないものの、全体の流れの中で見た時、大半が70代以上と思われる高齢者(圧倒的に女性が多い)の方達の迫力を感じさせてくれるのに十分なものであった。参加者は、介護認定では要支援や要介護でも自分の力で動くことができる方たちなので、こうした体を駆使した動きが展開できるのだろう。逆に、こうした運動ができるからこそ体力や気力が維持できているに違いない。もし介護サービスが無ければ、要介護の度合いも進んでしまい、娘や息子たち親族にとって、最悪の場合介護離職を迫られることにもなりかねないわけで、つくづく介護保険制度のありがたさを目の当たりに見ることができた。

もちろん、デイサービスだけでなく、様々な介護保険制度によるサービスの提供がなされているわけで、毎年のように介護保険財政は増大し続けている。従事しておられるインストラクターや整体師やあんまマッサージ師の方達も、生き生きと仕事に従事されていたように思えたが、介護労働に対する報酬の少なさには問題があり、なかなか人材が集められないという話を聞くだけに今後の大きな課題と言えよう。「制度あって人なし」では機能しないのだ。

故今井澄参議院議員の奮闘する姿が懐かしく思い出される

思えば、介護保険制度が発足したのが2000年からであり、介護保険制度が法律として国会を通ったのが1997年であった。国会に議席を得たのが92年7月、一緒に同期で参議院議員に当選した故今井澄(医師であり東大全共闘安田講堂攻防の闘士)議員から、与党(自社さ)内で構想中の介護保険制度についてその創設の意義などを教えていただいたのだが、正直言ってその当時は余りその重要性を理解していたとは言えなかった。寝たきりだった父親が96年に他界し、母親は亡くなる102歳の最後まで、ほぼ自立した生活を送ることで介護保険の制度とはほとんど無縁だったと認識していたからだろうか。

早く保険適用の範囲を満20歳以上へと拡大したいものだ

だが、今日における介護保険制度の果たしている役割は、誰もがその重要性を指摘するに違いない。今は40歳から被保険者となることになっているが、出来るだけ早く20歳から保険に加入することヘの移行が求められていると思う。その際は、20歳から介護保険での治療などもできるようにサービス拡大が必要となることは言うまでもない。学生時代にスポーツなどで脊椎の損傷などに遭遇するリスクがあるだけに、早期に実現させたいものだ。

介護保険制度が20世紀末にできた背景、自民党の政権からの離脱

それにしても、よくぞこうした国民の負担を伴う社会保険制度が、1997年に法律として成立したものだと感心する。今政治の現場では、こども保険の論議が検討され、必要とする財源の中心を年金・医療・介護などの社会保険金の中から拠出してはどうかという権丈善一慶応大学教授の提案が有力視され、年末までに結論が出されることになっているが、その前途はそれほど容易ではない。1997年に新しい介護保険制度が実現できた背景には、政権交代による危機感が自民党政権において拡がり、自社さ政権時代に論議が進展したことが挙げられよう。今井澄さんも、当選1回生でありながら与党社会党(民主党)の代表として自民党の厚生労働部会長さんたちと激しく議論を展開されていたことを思い出す。

この直後には、日本の金融危機が深刻化しデフレ経済へと暗転するだけに、ぎりぎりのタイミングで奇跡的に介護保険法が成立したことに感謝すべきだろう。と同時に、自社さ時代に消費税率の引き上げへと舵を切ることができたことにも注目すべきだろう。

「介護保険制度を作ってよかったね」故今井澄氏の声が聞こえる

今井さんは2002年9月1日に癌で亡くなられたわけだが、天国から「峰さん、介護保険制度を作ってよかったね」と微笑みながらささやいてくれていると感ずる今日この頃である。自由民主党も支持基盤の経済界を説得するために相当汗をかいてくれたに違いない。なにせ保険制度は労働者だけでなく雇用する企業側からも保険料を拠出するわけで、経済界の同意無くして成立できないのだ。それだけ、政権交代という事態に直面した自民党・経済界の危機感のあらわれと見ていいのだろう。

「子育て支援連帯基金」制度早期成立に向けて努力して欲しい

先にも述べたように、今年年末の予算編成期までに「子育て連帯支援基金」制度の財源問題の解決が求められている。こども保険という新しい制度ではなく各保険制度からの拠出金を中心にした世界でもあまり例のないユニークな財源作りが打ち出されている。新しい拠出金を創るためにも、経済界からの同意が必要となることは言うまでもない。何としても、「子育て支援連帯基金」制度の成立に向けて、与野党の合意の下で早期に成立させてほしいものだ。10年、20年後に、あの時「子育て支援連帯基金」制度を作っていてよかった、と思える時代は必ずやってくる。介護保険制度から23年、やや四半世紀を過ぎようとする今日まで、色々な改正が進められてきたわけで、使い勝手も徐々に向上させてきており、多くの国民にとって不可欠なインフラストラクチャーとしてその存在感を増している。今後も、今ある制度の改革と共に、高齢者の難問の一つである住宅のありようなどについても、いろいろな改良を加えながら、高齢社会を乗り切れるよう国民全員が努力していく必要性を痛感する今日この頃ではある。


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