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労福協 活動レポート

2023年10月23日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第315号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

NHKスペシャル『映像の世紀』「砂漠の英雄と百年の悲劇」は絶好のタイミングでの放映、
イスラエル・パレスチナ紛争の背景に迫る

イスラエルへのパレスチナのハマスによる軍事侵攻からやや2週間、ハマスが統治するガザ地区へのイスラエルによる攻撃の激化とともに、ガザ地区へのイスラエル軍による陸上侵攻が進められようとしているが、今のところ攻撃を中止するようにとの様々な努力が世界各国から寄せられており、実行に移されてはいない。だが、ネタニアフ首相はガザ地区を支配するハマスを完全破壊・制覇する動きを放棄していない。この攻撃が実行に移され始めればどんな展開へと進んでいくのか、ガザ地区だけでなくヨルダン川西岸まで併合してこの機会にパレスチナ住民を追い出そうという動きすら予測され始めているとのことだ。第5次中東戦争という規模を大きく超え、ウクライナとロシアの戦争も絡んで第三次世界大戦もありうるという悲観的な見方すら喧伝され始めている。日本を始めG7主要国ではハマスに対する非難の声が強まってはいるが、イスラエルとパレスチナの問題には、長い歴史的な経過があり、なぜこんな深刻な対立が続いているのか、よく理解する必要があることは間違いない。

そんな思いにふけっていた時、1週間前の10月16日午後22時から45分間、NHKスペシャル『映像の世紀 バタフライエフェクト』があり、「砂漠の英雄と百年の悲劇」と題して、今日イスラエルとパレスチナの戦いがなぜ起きてきたのか、山根基代アナウンサーの落ち着いた声と加古隆さんのバックミュージックがなんとも言えない情感を呼び、その歴史的な背景に迫る力作といえよう、イスラエルとパレスチナの問題が深刻化している今の時期、是非とも多くの日本国民が見て欲しいドキュメンタリー番組であった。

イギリスによる100年前の2つの密約、それが今日の紛争へ

NHKによる番組開始の内容の紹介は次のように語られていた。

「古来パレスチナは、アラブ人とユダヤ人が共存して暮らす場所だった。そこに対立の火種を持ち込んだのは、イギリスだった。両民族に独立国家建設を約束したのだ。イギリスの情報将校ロレンスは、第一次世界大戦中にオスマン帝国に潜入、アラブ民族独立をあおり、オスマン帝国打倒をもちかけた。しかし一方でイギリスはユダヤ人にも同じ約束をしていた。百年前のひとりの英雄の裏切りから始まる、憎しみの連鎖の物語である。」

イスラエルの独立は1948年、前年の国連総会での決議によってパレスチナの地がユダヤ人による国家として認められ、パレスチナから多くのアラブ系住民が追放された時から深刻な対立が今日まで続く。それをもたらしたのは、イギリスの一人の軍人でありアラビアのロレンスとして映画化された情報将校ロレンス氏であり、彼はアラブ人に対してこのパレスチナの土地はアラブ人のものにと約束する。他方、イギリス政府はこの地域の石油利権に目を付けており、第一次世界大戦を勝利に導くために大富豪であったユダヤ人であるロスチャイルドからの戦費調達の見返りに、当時オスマン帝国の支配下にあったパレスチナをカナンの地としてユダヤ民族の土地として認めるという決定的な対立の原因の種をまいたのだ。このイギリス政府の約束が、国連総会の議決となってイスラエル国家が認められたものの、その日から今日に至るまでのアラブ人たちのパレスチナ奪還に向けた壮絶な戦いが展開されてくるのだ。

アラビアのロレンスが死の直前に遺した言葉、今の現実を憂う

番組の最後に、ロレンスがなくなる(1935年5月死去、享年46歳)前に語ったとされる次のような言葉が述べられている。

「年がたつにつれ、私は自分が演じた役割をますます憎み軽蔑するようになった。もしも私がアラブ人に対するイギリスの取り決めを無くすことができたならば、いろいろな民族が手を取り合う新しい共和国が作れたのかもしれない。アラブ人とユダヤ人は強国の圧政に苦しんだ従兄弟のような存在だ。アラブ人がユダヤ人を助け、ユダヤ人がアラブ人を助ける未来を私は願っている」

今日のイスラエルとパレスチナ難民の熾烈な戦いを見た時、ロレンスのこの言葉が実に見事に今の課題を明示していると思う。

ユダヤ民族が作り上げたイスラエル初代の大統領に、あのアインシュタイン博士が嘱望されたのだが、アインシュタイン博士は断っている。パレスチナ民族に対するあまりにも酷いやり方への抗議であったとのことだ。さらに、直近ではユダヤ人でイスラエル出身のノバル・ノア・ハラリ(ヘブライ大学)教授が10月11日のワシントンポスト紙への「ポピュリズムの代償だ」という寄稿文の中で、ネタニアフ政権を強く批判し、イスラエル建国の理想である「国内には民主主義を、国外には平和を」実現するよう求めている。

アメリカと中国、世界は両大国がどう動くのか注目している

これからどう展開していくのか、あまり国際政治に精通していないものが語る資格は無いのかもしれないが、アメリカを中心にしたG7の国々に対抗すべく中国が、世界のグローバルサウスを意識しながらどうふるまっていくのか、BRICSの拡大や一帯一路政策による影響力の拡大など、国際的な分野での目覚ましい動きが気になる。いずれにせよ、一刻も早い戦闘の中止と両民族の和解に向けて全力を挙げていくべき時ではないだろうか。


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