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2024年7月16日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第348号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

都知事選挙、蓮舫候補が石丸伸二候補に敗れたことへのショック

東京都知事選挙の結果が出たとき、私自身、少しばかりショック状態になったことを白状せざるを得ない。まさか知名度抜群の蓮舫候補が、無所属で一般的には無名の石丸候補にまで敗れるという結果に対してである。なぜ石丸候補にまで敗れたのだろうか? これから東京知事選挙を巡って多くの専門家や関係者の分析・感想など多角的な情報が出されてくるわけで、それらがどんなものになるのか注目し続けていきたいと思う。当初この都知事選挙は、もしかすると日本の戦後政治史で起きた「時代の変化を画する選挙」になったのではないかと思い始めていたのだが、すこし思い過ごしだったのかもしれない。

投開票日の7日当日、敗れた蓮舫候補の涙をこみ上げながらの言葉を聞いていて、まさか自分が第3位になるとは信じられなかったようだった。選対関係者によれば、多くの熱狂的な支持者が街頭での演説会場に詰めかけ、かなりの手ごたえを感じていたという。マスコミの中間段階での報道で、小池氏が先行しかなり離されていることが、なかなか信じられなかったどころか、どの政党からも支援を受けなかった石丸伸二候補にまで、かなりの差を付けられ一敗地にまみれるとはとても信じられなかったに違いない。

「石丸現象」は何故、どうして起きたのか?

広島県出身である小生だが、正直なところ安芸高田市については何も知らなかったし、そこの市長をされていて都知事に立候補された事への違和感(何のために都知事選挙に、所詮は泡沫候補でしかないのでは)すら抱いていた。今回の選挙結果を受け、改めて石丸伸二候補について調べてみた時、ユーチューブを駆使して市議会での自分の言動などを広げ続けてきたようで、そのフォロワーの数もかなりの数に達していたことを知る。選挙のお手伝いをするボランティアも、あっという間に5000名を超したという。当然ネットを駆使している若い層での知名度は高かったことを知るわけで、「石丸伸二現象」として今回の都知事選挙の結果を改めて良く知る必要があることを痛感させられた。

辻元清美「もう自分たちは通用しないのではないか・・」発言

蓮舫候補必勝に向けて一緒に戦っていた辻元清美参議院議員が、「もう自分たちは通用しないのではないか、昨夜そう思った。既存の政党が嫌われているような気がした。私たち自身がどうアップデートできるかが問われている」と翌日の朝日新聞で発言されていたことが、立憲関係者の多くの声を代弁していると思う。是非とも、立憲民主党関係者には、なぜこんな結果になったのか、全党挙げて総括して欲しいと思う。2019年に解禁された「ネット活用選挙」時代における「新しい選挙スタイル」をどう正しく活用していくことができるのか、改めて問われているように思えてならない。

今回の結果は、2021年の総選挙での野党の敗北のデジャブか

私自身、この選挙で感じた第一印象は、2021年の衆議院選挙で党創立者であった枝野幸男氏率いる立憲民主党が、共産党も含めた野党選挙協力をそれなりに上手く進めたのに、結果は「敗北」したことに通ずるものがあるのではないかと思ったことである。朝日新聞の報道によれば、今秋9月の立憲民主党代表選挙に、枝野前代表が再び立候補する決意を固めたとのことだが、はたして3年前の総選挙での敗北の総括はできているのだろうか。そして、今回の東京都知事選挙での敗因をどう考えておられるのだろうか。立候補を決意したことを、党内最大派閥サンクチュアリーの赤松前衆議院副議長らに表明したとの報道に接するが、こういう行動を見る限り、自分たちリベラルと言われている政治勢力が若者にはどう見られているのか、どうもあまり深く考えられていないのではないかと思えてならない。

6月沖縄県議会選挙、玉城与党の敗北、共産党の議席激減の衝撃

さらにあまり注目されていない選挙結果がある。今年6月に実施された沖縄の県議会議員選挙で、玉城知事の与党勢力が4議席減らして過半数を割ってしまったのだ。特に、共産党の議席が7議席から4議席へと大きく減少したことが脳裏に残っていたこともあり、今回、事実上立憲民主党と共産党が支持した蓮舫候補選挙の在り方が、各マスコミが実施した出口調査を見る限り、無党派支持層という東京都民有権者の最大勢力を占めている人たち、とりわけネットを駆使している若者たちには、ほとんど受け入れられないでいる現実を見せつけられたのだ。

共産党の志位議長は7月10日国会内での記者会見で、「若い世代の支持を広げていくため、政治を変える道筋を力強く示すことが必要だ。ほかの政党や市民団体とともに蓮舫氏を擁立したので、選挙戦からどのような教訓を引き出すのか率直に議論していきたい」と述べ、共産党が目指す未来社会の魅力を広げるべく新著『Q&A共産主義と自由―「資本論」を導きに』(新日本出版社刊)を書かれたとのことだ。相当な危機感が抱いておられるのだろうが、「共産主義」への支持の広がりが本当に期待できると思っておられるのだろうか、野党共闘を巡る今後の在り方への影響が懸念される。

石丸伸二候補躍進について、津田大介氏のコメントから

さて、今回の石丸伸二氏の躍進について書かれた情報を読んでいて、次の二人の問題整理に注目した。

一人は、ジャーナリスト津田大介氏であり、12年前に朝日新書で『ウエブで政治を動かす』を出版したことが現実に起きたことに驚きをもって捉えている。毎日新聞12日朝刊で「YouTubeが都知事選挙を左右 津田大介氏が驚く『石丸現象』」の中で、〈自民も立憲も共産も旧態依然〉という小見出しの中で、次のように述べておられる。

「石丸氏に投票した、特に若い人にとって、自民党や立憲民主党、共産党は、どれも旧態依然として見えたはずだ。見知った古い勢力ではなく、若く、新顔の石丸氏が既存の政治勢力への諦め、不信感みたいなものの受け皿になったのだろう」

更にネット時代におけるユーチューブなどのSNSで街頭演説がみられるようになったことに触れ、

「受動的なテレビ主体の情報収集でなく、自ら検索して情報を取りに行く積極層が現れた。石丸陣営は街頭演説を、ショート動画にして積極的に打ち出した。テレビの影響力の衰退と、ユーチューブの伸長。メディア状況の変化も石丸氏の勢いを支えた」

と述べ、これからメディアがその場限りの視聴率稼ぎを止め、有権者のためになる真の選挙報道を考えないと、こうした動きが増えていくだろうと警鐘を鳴らしておられる。

藤田結子東大准教授、Z世代と身近なリベラル層には分断が走る

もう一人は、これまた毎日新聞の同じコラム欄で「リベラルにはわからない? Z世代が石丸伸二氏を支持する理由」に登場する藤田結子東京大学准教授である。

藤田准教授は、身近なリベラルな知人たちと普段からインタビューしている10~20代の若者とでは、石丸伸二氏への評価がまるで違う事を指摘する。Z世代は都知事選挙では「石丸一択」だったと述べ、「社会を変えたいと感じている若者の方が石丸氏に投票」し、「現状維持で構わない若者は小池氏に投票」、中高年のリベラル層は「社会を変えたいならばなぜ蓮舫氏を支持しないのか」と思うかもしれないが、蓮舫候補の事を良く知らなかったり、「怖い」イメージや「批判ばかり」というネガティブキャンペーンに巻き込まれた者もいたと想定されていた。

藤田教授も、テレビとネットという普段接するメディアが違うため、同じインタビューでも異なった捉え方をしていて「世代間の分断」が生じているとみておられる。どうこれからそうした分断を克服していけるのか、今後の大きな課題とされている。

なぜ「格差是正」の訴えがZ世代に受け入れられないのか、藤田准教授は、若者たちはネオリベな社会で「起業家のようになれ」「自己責任だ」というメッセージを浴びている中で、選挙時に「格差是正だ、平等だ、少子化対策だ」といった訴えは「目下の悩みとかけ離れ」ていて、「は ?」というのが正直な感想だと述べておられる。最後に藤田准教授が次のように見ておられることに注目させられた。

「私が聞き取りをした若者たちにとって石丸氏は推し活の対象ではありませんでした。むしろ代替可能な存在です。SNSが投票行動に与える影響は十分解明されていませんが、既得権益のような大きな敵を設定し、劇場型選挙を仕掛けられれば、第二、第三の石丸氏が登場する可能性はあると思います」

石丸選挙参謀藤川晋之助氏、ブレーンや政策の錬磨も必要では

こうした「石丸選挙」が今後どう展開していけるのか、選挙参謀をしていた藤川晋之助氏は朝日新聞13日付のインタビュー記事で、次のように語っておられる。けだし、その通りなのだろう。

「石丸氏にはブレーンがいない。ブレーンを使って政策を組み立てていかないと続かない。やはり幅広い人たちに信頼される政策が必要だ」

思うに、活字やテレビといった宣伝媒体から、ネット(SNS)やユーチューブといった新しいものへと転換し始めたことは間違いないのだと思う。問題は中身の「政策」であり、政治家の「人材としての質」が問われていることは、間違いなく普遍的なものなのだと思う。それらを束ねる政党という存在無くして日本の統治はできないわけで、石丸氏にとっては前途多難であることは間違いない。


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