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労福協 活動レポート

2024年7月22日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第349号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

世界的選挙イヤー、最大の注目はアメリカ大統領選挙ではないか

今年は世界的な選挙イヤーにあたっており、既にイギリスやフランス、更には世界最大の有権者を擁するインドなど、主要な国々で政権交代など大きな変化が起きている。そうした中で、最も注目されるのが11月5日投票のアメリカ大統領選挙であり、同時に実施される上下両院の連邦議会選挙もある。もっとも下院は2年に1回、上院は3分の1ずつ2年ごとに改選で6年任期となっているわけだが、大統領選挙の行方とともに2大政党の動きがどうなるのか、世界を動かしてきたアメリカ政治が大いに気になるところである。

トランプ候補への狙撃事件、神がかった結果に共和党は団結へ

というのも、共和党がウィスコンシン州ミルウォーキーで開催された党大会で、元大統領トランプ氏を再び大統領候補として正式に指名・決定したわけだが、その直前13日、ペンシルベニア州バトラーで演説中に狙撃され、危うく一命をとりとめたものの打たれた耳から血を流しながら右手を突き出して「ファイト」と3回叫び、結果的に共和党は強く結束していくことになった。こうした出来事は、まさに「神がかっている」ともいえるわけで、もはやその勢いは誰も止めることはできないのかもしれない。もっとも、民主・共和両党支持率の差は僅差であり、今の勢いがどう展開するか、予断を許さないことは言うまでもない。

バイデン大統領、81歳の高齢もあり精彩を欠き立候補辞退の声

対する民主党のバイデン大統領は、再選を目指すべく闘ってはいるが、6月13日には自らが提唱した早めの二人の大統領候補によるTV討論会で、トランプ候補を的確に追い詰めることができなかっただけでなく、誰が見ても81歳になるバイデン氏が、大統領として今後4年間まともに仕事ができるのかどうか疑わせるような失態が、全米にテレビを通じて報じられるに至ったわけだ。その後、何とコロナに感染するというアクシデントに見舞われ、勢いを失った動きが続いており、民主党内有力者から陰に陽に大統領候補を辞退するよう勧告を受けるに至っている。報道によれば、バイデン氏が立候補を辞退する可能性が出ているとのことだが、たとえ辞退したとしても民主党内の亀裂は覆い難く、トランプ氏に勝てる可能性がほとんどなくなりかかっているように思える。

共和党の性格の大転換、レーガン時代からトランプ時代へ

18日に実施された共和党全国大会最終日の大統領候補受諾演説において、トランプ氏は93分間という長い演説で、アメリカ全体を代表する大統領として振舞っていくことを訴えていた。演説前半では、物静かに国民に語り掛けていたが、徐々にトランプ節が繰り広げられ、狙撃事件を受けて練り直しをしたという演説だったが、アメリカ第一主義を前面に、レーガン時代の共和党とは様変わりした「大きい政府」論を引き続き打ち出し、落ち込んできた製造業労働者の立場に立った政策を展開していた。副大統領候補にバンス上院議員を選出したこともその象徴と言えよう。かつて、資本家側に立っていた共和党が、トランプの党となったことによる大きな変化を目の当たりにすることとなったわけで、今後もこの傾向は変わらないのだろうか。世の中変われば変わるものだ。

トランプの経済政策、世界はどう連携して問題を回避できるのか

これからどんな選挙戦が展開されていくのか、予断を許さないわけだが、トランプ氏の一挙手一投足に今まで以上に大きな関心が集まることは間違いないだろう。既に、トランプ優勢、というよりトランプ確実という見方の蔓延する中で、彼が提起しようとしている政策によって経済も動き始めたようだ。ニューヨーク株式市場は株価の下落へと進み、東京株式市場でも同様に下落した背景には、トランプ氏の経済政策がインフレ志向で「ドル安(?)」になると専門家はみているとのことだ。トランプ氏の事だから、大統領に就任していなくても、公然と経済政策に口をさしはさんでいくことも予想されるだけに、FRB関係者は忖度することなく自立した金融政策運営ができるのかどうか、これからが正念場を迎えるのだろう。

7月1日のトランプ関連裁判の最高裁判決、保守派優位の決定へ

ちょっと見落とすことができないのが、7月1日にアメリカ連邦最高裁が示したトランプ関連4事件の延期という最高裁決定であり、トランプ大統領時代に指名された保守派判事多数によってこの決定がなされたわけだ。大統領、最高裁、そして大統領選挙と同時に戦われる上下両院の選挙の結果、すべて共和党系で占められてしまう危険性も出てくるわけで、なんとも鬱陶しい判決だったことを思い知らされる。アメリカ民主党関係者にとっては、悪夢のような判決だったのかもしれない。

日本にとっては、最近になった再び為替相場への介入を実施したのではあるが、トランプ優勢と言われる大統領選挙の影響が日米の為替相場にも出てき始めている。円安だったこともあって、外国人による日本の証券市場への投資が増えたわけで、円高になれば海外からの投資が減少し、株価は停滞し始めることになりそうだ。いろいろな要素が絡んでくる国際金融の動きだけに、これからの世界経済の動きから目が離せなくなることは間違いないだろう。「もしトラ」から「ほぼトラ」になった事を受けて、今後の市場の動きから目が離せない。

原真人朝日新聞編集委員のコラム記事、実に的確な問題指摘だ

こうしたアメリカを中心にした世界経済の中で、日本のマクロ経済政策の問題点を鋭く突いた原真人編集委員の書かれたコラムが、朝日新聞20日付の(多事奏論)「デフレ完全脱却『円―弱』招いたトンチンカン」に掲載されており、是非とも多くの国民に読んで欲しい。

原氏は、日本の株価が4万2千円を突破して史上最高値になった事、春闘で33年ぶりに大幅賃上げが実現した事、輸出企業の業績が好調へ、等と最近の経済トピックスを拾い上げ、これらの多くは「円安」が招いたもので、何と東京証券取引所上場株式の株価総額は6月末に1004兆円と大台に乗っているものの、ドル換算では約6.2兆㌦。今年1月末の931兆円、ドル換算した約6.3兆円より安いことを指摘されている。まさに、円安による水膨れが生じているわけで、原氏は「ハリボテの史上最高値」と述べておられる。

日本の株式市場、国民の投資より「円安」下での海外投機の草刈り場か?

正直言って、このドル換算の株価総額の数値には驚かされた。と同時に、日本の株式相場は海外資本の動きによって左右されているのではないか、という思いを裏付けてくれる。他方、日本の国内家計からの証券投資の多くは、海外へと資金流出しており、2015年の過去最高額の倍近くに達すると『週刊東洋経済』7月6日号でコラムニストの野村明弘氏は指摘する。もちろん、こうした資金流出は日本の国力底上げにはマイナスの可能性もあると指摘されている。

なぜこうした「円安」、というより原氏は「極端な『円―弱』」と述べておられるが、どうして起きたのかと問い、11年に及んだ日銀の異次元の金融緩和のもたらしたものだと指摘する。岸田官邸の中で経済政策(新しい資本主義実現本部を事実上仕切っている)に影響力を持つ新原浩朗内閣審議官(経済産業省出身官僚)が、日銀の金融緩和による副作用が円安をもたらしていると指摘しているとのこと。どうして岸田内閣は、国民が2年以上に亘ってインフレに困っているのに「デフレ完全脱却」というトンチンカンな事を言い続けているのか、まことに尤もな疑問を提示しておられる。

「デフレ脱却」というトンチンカンな政策の転換を急ぐべきでは

日銀は好き好んでこうした「トンチンカンな経済政策」を取っているのではなく、アベノミクス以来続いているこの「デフレ脱却」という政府方針(閣議決定)に、いまだに忠実に従っているからなのだ。政府のこうした政策の一刻も速い転換が求められると同時に、日銀も7月末の金融政策決定会合で「私たちの日銀」なのかどうかが試されていると原編集委員は指摘する。トンチンカンな経済政策からの脱却は、河野太郎大臣ですら日銀の金曜政策の転換を公言し始めているではないか。

本当にどうなっているのか、原真人編集委員の指摘に全面賛成するだけに、声を大にして政策転換を急いで欲しいと思う。


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