
2025年2月17日
独言居士の戯言(第374号)
北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹
最近の政局はどうなっているのだろうか、石破政権と今後の行方
石破政権の与党である自民党・公明党は昨年の総選挙で敗北し、少数与党という脆弱な体制で再スタートを切ったわけだが、臨時国会を何とか乗り切って今は来年度の予算が衆議院を通過できるかどうか、野党側との修正協議がスタートし始めている。過去、衆議院での予算修正はそれほど頻繁には起きていないわけで、今後国会での与野党協議がどう展開していくのか、今のところは着地点が見えていない。野党側は早くから103万円の壁を178万円に引き上げるよう要求している国民民主党が先行して与党側と協議していたが、政府は103万円から123万円へと引き上げるところまでは来ているが、さらなる引き上げの動きは今週中にも山場を迎えるのだろう。
「国民民主」と「維新」との予算修正は今週が山場か
もう一つの予算修正は、維新の会との教育無償化の予算修正協議で、これもまだ決着がついたとは言えない状況にある。国民民主党の修正を完全に実現したとすれば7~8兆円の財源が必要だと政府与党は見ているが、維新の教育費の無償化要求は6千億円程度だと言われ、受け入れやすい減税規模となっている。国民民主党にとって満額の要求実現とは思っていないにしても、その減税規模は課税最低限を超えるサラリーマン(数千万人)が該当するだけに、その影響は政府予算に大きな影響をもたらす事は間違いない。特に、この課税最低限103万円の引き上げは、課税最低限以下の低所得者層には全く影響しないし、高額所得者になればなるほど減税額が大きくなるわけで、普通のサラリーマンにとっては小遣い程度の減税額しかなくても、2000万円を超すような高額所得者(納税者)層には減税額が大きくなるわけで、所得税を多く支払っている富裕層にとって有利になることを見失ってはなるまい。維新の主張する高校教育の無償化は、該当する人数が限られているわけで、与党側には受け入れられ易いものとなっているようだ。
野党第1党の立憲民主党は、個別要求ではなく、予算全体の見直しのなかから2兆円を上回る組み換え要求を提起しており、政権交代を目指す政党としての立場があるのだろう、個別での要求にはなっていない。
今のところ、この野党3党が予算修正に向けて動きを開始し始めており、TV報道によれば、石破総理からは自民党の担当者に「どこか一つの政党に絞ることなく、できるだけ多くの野党の修正でもって今年度予算を成立させて欲しい」との意向が示されているとのことだ。衆議院段階での予算修正が今週中に実現できるのかどうか、与野党の攻防が注目される一週間となりそうだ。
気になる公明党の最近の動き、斎藤代表は「連立離脱」すら言明
こうした政治状況の中で、気になる動きは公明党である。もちろん、自民党と公明党が連立政権を構成しているわけで、既に四半世紀が経過しようとしている。ところが、昨年の総選挙以降あたりから公明党の動きが変化し始めており、昨年秋には国民民主党との政策面での協議が始まるなど、自民党との連立の基盤に亀裂が出始めたのではないかと思われる動きが顕在化し始めている。昨年末には政治資金の監督を行う第三者機関を設置する法案を両党は衆議院に共同提出している。ここでは公明党が国民民主党の原案に乗ったとのことだが、自民党との連立がありながら国民民主党との政策連立は異常ではある。さらに、今年に入って、斎藤鉄夫代表は「連立」関係について次のように述べている。
「わが党が譲れないもので意見が対立し、合意が得られなかった場合に連立離脱というのはあり得る」
実に重い言葉であり、「選択的夫婦別姓問題」をはじめ、政治資金問題や核軍縮の実現に向けた取り組みなど、自民党とは明らかに一線を画し始めたことは間違いないだろう。昨年の総選挙に引き続いて今年夏の参議院選挙があるわけで、結果如何では政界の大きな流動化が進むことも予想される。
石破総理への保守側からの波乱の芽は無く、政局は「凪」状態?!
参議選後に政界の波乱が出てくるのだろうか?
一方で、石破総裁批判に向けて自民党内の動きがほとんど見られないことも気になるところである。石破総理の政権基盤はきわめて脆弱であり、何時まで持つのかと揶揄されてはきたのだが、党内からの反乱の動きは今のところ表には出てきていない。中道の立場をとってきた石破総理だが、総理になって以降は微妙に保守本流の流れに近寄っているのではないかと思えてならない。保守陣営からは、総裁の座を争った高市早苗氏などがもっと活発に動いても良さそうなのだが、むしろ若手の小林鷹之氏の動きの方がマスコミに取り上げられることが多くなっている。政局が少数与党という弱体化した内閣の下で凪のような状態に陥っているわけで、波乱を巻き起こす力を著しく欠いた無力感だけが政界でも蔓延しているようだ。どこからか、波乱を起こすリーダーは生まれてこないものなのだろうか。
