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労福協 活動レポート

2025年5月7日独言居士の戯言

独言居士の戯言(第377号)

北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹

立憲民主党も結局「消費税の減税へ」と踏み込む、選挙を意識か?!

先週号で触れた立憲民主党の消費税にかんする減税政策は、4月25日、結果的に食料品に限って原則1年間税率ゼロにするとのことだ。民主党政権時代に10%への引き上げを決めてきた野田代表が決断したわけで、当時一緒に「社会保障・税一体改革」を進めてきた者にとってなんともやりきれない気持ちだ。1年間実施し、その後立憲民主党が公約としている「給付付き税額控除」に変えていくとのことだが、それが本当に1年後にできるというのなら、わざわざ今年慌てて「基幹税である消費税」減税に踏み込む必要性はないのではないか、と思えてならない。

国民が切実に求めている政治課題は何なのか、「将来不安」では

やはり、今年の参議院選挙に向けて、インフレに悩む国民向けに消費減税を打ち出さざるを得ないと野田代表は「政治的に」判断されたのだろう。多くの心ある国民は、政治家の考えていることの底の浅さ(約5兆円となる財源問題への言及ナシ)を見抜く力を持っているだけに、ここはしっかりと踏ん張って欲しかったところである。消費税減税に批判的な発言をしていた枝野幸男最高顧問の反応は、今のところ報道されていないが、政権交代を目指して「責任ある政治」が求められる野党リーダーの方達の「鼎の軽重」が問われていたのは間違いないだろう。今年7月の参議院選挙での良い効果が期待できるとは思えないわけで、国民が何に一番関心を持っているのか、もう少し多面的な角度からの検討が欲しかったと思うが「無いものねだり」なのだろうか。

「給付付き税額控除」の仕組みづくりは大変な作業が必要に

それにしても、1年後に「給付付き税額控除」を導入するというのもなかなか野心的な問題提起ではある。それは、中低所得者の負担軽減のため税金から一定額を控除し、控除しきれなければその分を給付するというもので、一人一人の持っている「マイナンバーと銀行口座を紐づけ」し、今は分離課税となっている金融所得も合算しなければ十分な所得再分配機能は発揮できないはずだ。果たして1年後に1億人の国民をカバーできる壮大な給付システムが出来るのかどうか、私自身民主党時代にこの考え方を打ち出した者の一人として率直に言って自信がない。時間がかかるかもしれないが、所得税の総合課税化に向けて先ずはしっかりとした制度にまで高めていくべきだと思う。

参議院選挙に向けて「大いなる論議」が沸き起こって欲しい

これからゴールデンウイークを経て、都議会議員選挙に引き続いて参議院選挙へと政局が展開していく。前号でも指摘したことだが、昨年の総選挙後に各種マスコミの実施した総ての世論調査を見る限り、立憲民主党の支持率が国民民主党よりも例外なく落ち込んでいるわけで、今回の消費税の減税を打ち出した一つの要因として立憲民主党の支持率の低迷があることは想像に難くない。何故支持率の広がりが欠けているのか、立憲民主党内での大いなる議論が求められているところなのだと思うのだが、外から見る限り党内での大いなる論議が巻き起こっているようには見えない。ここは野田代表の強いリーダーシップの発揮を期待したいところではある。

日本のリベラル政党、小さな政策に焦点を当て過ぎていないか

逆に見れば、国民民主党の支持率が上がってきたのは何故なのか、特に世代別では20代や30代といった若い世代での支持率が、調査によっては自民党支持率以上に高くなっていることが目につく。そこには、インターネットを駆使した宣伝活動もあるのだろうが、「手取りを増やす」といった若者全体が関心を持つことへのメッセージが効果を上げているのかもしれない。もっとも、ここでも財源論が欠けているのだが…。

ある専門家が指摘していたと記憶しているのだが、日本のリベラルに立脚した政党が往々にして陥りがちなのが、国民の中での少数勢力に焦点をあてた政策を強調するあまり、結果として多くの国民の関心事項が後景に追いやられてしまうという欠陥を露呈することが多いとされる。リベラルに立脚しようとしている立憲民主党にとって、これまでの政策がどのように国民から受け止められてきたのか、しっかりと総括すべき時なのではないだろうか。ゴールデンウイークが開けたら直ぐに選挙が待ち受けている、時間はないのだ。

(注)、来週の5月5日号は、連休中につき、お休みにします。

【最近読み終えた本】
瀬木比呂志著『現代日本人の法意識』(講談社現代新書)を読んで

4月25日の毎日新聞の電子版「追跡 公安捜査」で、作家の貴志祐介さんが警視庁公安部による冤罪事件「大川原化工機事件」について、「ホラー小説より恐ろしい。「裁判所は保釈請求を認めず、一人の方を死に至らしめた。これは国家による殺人だと思います」、まさに「事実は小説よりも奇なり」ですと怒りの声をインタビュー記事で述べておられる。この「大川原化工機事件」の問題の核心として、「警察、検察、裁判所の組織としての宿痾(しゅくあ)」と捉え、「出世することがすべてで、一般的な倫理観がマヒしていると感じました」と問題点を次々と指摘されている。

ちょうど、瀬木比呂志元裁判官が書かれた『現代日本人の法意識』(講談社現代新書2024年刊)を読み終えたばかりであったので、「法の支配」より「人の支配」、「人質司法」の横行、「手続き的正義の軽視」等の問題点を、鋭くかつ冷静に分析されている事が脳裏をよぎってくる。瀬木比呂志さんは、既に『絶望の裁判所』という人口に膾炙された名著を同じく講談社現代新書から10年前に出版されており、司法の世界の抱える問題点を厳しく指摘されている。『冤罪』はなぜ起きるのか、それだけでも実に大きな問題なのであり、是非とも一読を勧めたい好著である。


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