
2025年8月10日
独言居士の戯言(第387号)
北海道労福協政策アドバイザー(元参議院議員) 峰崎 直樹
注目を集めた石破総理挨拶、広島・長崎の記念式典に向けて
8月の日本は、過去の歴史と向き合う季節となる。6日の広島、9日の長崎の原爆投下による被災者を追悼し、15日には「終戦」ならぬ「敗戦」記念日へと連なる。旧盆を迎える者にとって、個人の先祖と日本の過去を静かに振り返る日々が重なり、なんとも厳かな気分になるのが不思議である。たまたま今年は敗戦後80周年(昭和100年)という節目の年にあたっており、石破総理がこれらの節目でどのような挨拶をするのか、注目されたことは確かである。
多くの人たちに強い感動を与えた広島・長崎での挨拶
広島での式典では、挨拶の最後に引用された歌人・正田篠枝さんの短歌 “太き骨は先生ならむ そのそばに 小さきあたまの骨 あつまれり”を二度にわたって朗読されている。実に亡くなられた方達への思いがこもっていたように思われた。
長崎では原爆治療にあたられた医師永井博士の言葉を引用され、”願わくば、この浦上をして世界最後の原子野たらしめたまえ”と述べ、広島・長崎の惨禍を二度と繰り返してはならないと力強く訴えかけられた。日本の国民だけでなく世界に向けての平和アッピールであることはもちろんだろう。私氏自身、今まで歴代の総理大臣の挨拶の中でも出色の出来ではなかったかと思う。おそらくは、用意された原案に推敲に次ぐ推敲を重ねられたに違いない。ともすればマンネリ化した式典となり、総理大臣の式辞もありきたりのモノを代読することが多かったわけで、石破総理の誠実さがにじみ出ていたと言えよう。と同時に、石破総理の平和にかける強い思いが凝縮されたものだと思う。
石破総理が直面する政治の現実、党内での信任を勝ち取れるのか
さて、政治の現実に舞い戻ると、石破総理にとってなかなか厳しいものがある。先の参議院選挙での敗北によって、衆議院に続いて参議院でも与党が過半数割れに追い込まれ、国会運営が難しくなるわけで、当然のことながら与党自民党内からも責任を取って退陣を迫る声が強く打ちだされてきた。臨時国会が終了した後の8月8日、自民党の両院議員総会が開催され、総理の責任を問う意見が出されたもののその場での退陣には至らず、8月末以降”秋の政局”へと問題が継続されていくようだ。石破総理は案外打たれ強い性格のようで、衆参両院で少数派となったとしても、粘り強く政権を維持し続けていくのではないかと思うのだが、数がモノを言う国会であるだけにこれから秋の政局の動きに注目したい。リベラルすぎる石破総理に対抗すべく、岩盤保守層を基盤とする自民党内の対抗勢力も手をこまねいてはいないのだろう。石破総理にとっては、先ずは自民党内でのヘゲモニー争いからスタートせざるを得ないようだ。展開次第では、政界の大再編成が起きる可能性もなきにしもあらずだと思うのだが、そこまで機は熟していないのかもしれない。
それにしても、8月4日に実施された衆議院の予算委員会での野田代表との党首同士の論戦は、実にかみ合った良い討論が展開され、もしかすると大連立もあり得るのかな、と思わせるに十分なものだったと思う。この論戦を見ることによって、先の通常国会の最終盤で石破内閣総理大臣に対する不信任案を立憲民主党が出さなかった理由を知ることができたように思われるのだが、少しく思い過ごしであろうか。
